ビジネスにおいて、面談や訪問のアポイントを電話で行う営業手法であるテレアポを行う際には、どのスタッフでも同様に受け答えができるためのトークスクリプトを作成すると非常に効率的にアポイントを進めることができます。テレアポトークスクリプトとはどのように構成されていて、作成する際にはどのようなコツが必要でしょうか。今回は営業手法のひとつであるテレアポトークスクリプトについて、作成するメリットや詳しい作成手順、作成時のNG例もあわせて解説します。

テレアポトークスクリプトとは?


はじめに「テレアポ」とは、テレフォン・アポイントメントの略語で、企業において面談や訪問のアポイントを電話で行う営業手法のことを表します。商品・サービスの販売を目的として電話営業をすることもテレアポと呼びますが、本記事では面談や訪問のアポイントのことをテレアポとして解説していきます。

テレアポトークスクリプトとは、テレアポを行う際に会話をスムーズに進めるためのマニュアル、台本のことを指します。テレアポにおける会話の流れやよく耳にする質問などがまとめられてあり、どのスタッフが対応しても同様に受け答えができるように作られているため、テレアポをするのが初めてという従業員でもスムーズに対応できるほか、企業イメージの統一や業務の効率化にもつながります。

テレアポトークスクリプトの作り方

テレアポの際の会話の流れを記載したテレアポトークスクリプトとは、どのような内容で構成されているのでしょうか。ここではテレアポトークを実際に実践する際のポイントとして7つの手順に分けて解説します。

テレアポトークスクリプトの作り方
  • 挨拶
  • 自己紹介
  • つかみ(フロントトーク/キャッチ)
  • 案内・質問
  • 反応への対応・切り返し
  • クロージング(判断してもらう)
  • アポを取る

挨拶

テレアポにおいては、ほとんどの場合がお互い初めて会話を交わす相手となります。丁寧に挨拶をしたいところですが、実は堅苦しい挨拶のほうがいかにも営業電話だという雰囲気が伝わって相手も警戒してしまうことがあります。そのため、「おはようございます」などの日常のシンプルな挨拶から入るほうが、安心感や親近感が伝わることが見込めます。また、電話の声色は低めに伝わることが多いため、普段の声色よりワントーン高めにして明るくさわやかな挨拶を意識することをおすすめします。

自己紹介

自己紹介は相手に自分を印象づけるための大事なポイントです。企業名と自分の名前だけでは、よく知られた企業でもない限り、「どこの誰なんだろう」と不審に思われてしまう可能性があります。そこで、「どのような事業でどのような担当をしている」ということが理解できるような自己紹介にするとよいでしょう。その際には、誰にでも理解できる言葉を選ぶことがスマートです。できる限り専門用語を使用することは避けるとよいでしょう。

つかみ(フロントトーク/キャッチ)

テレアポで電話をかけた際に、断られたり、電話を切られたりする確率が高いとされるタイミングが、いわゆる”つかみ”の場面です。”フロントトーク”、”キャッチ”とも呼ばれます。この場面で相手に話を聞いてもらえるかどうかというのは、相手の興味をいかに惹きつけるかということにつながるのですが、それには具体的なベネフィット、つまり、明確な数字や実績を相手の利益として提示することで、相手に興味を持たせるということがポイントとなります。相手にとってその数字や実績が魅力的であるほど、相手の心をつかめることが期待できるでしょう。

案内・質問

上記の”つかみ”のあとでそのまま会話を継続できそうな場合には本題に入ります。見出しには”案内・質問”とありますが、実際にはこちらから案内するのではなく、相手への質問をもとに会話を進めていくことがポイントです。例えば、商品・サービスについてこちらから先に案内しはじめるのではなく、「○○のことで何かお困りではありませんか?」と尋ねるほうが、相手はそのことについての悩みを意識しやすくなり、「そういえば先日…」という相手の会話につながることが見込めます。その際は、決して相手の話をさえぎらずに、最後まで話を聞くことに集中しましょう。

反応への対応・切り返し

テレアポにおける最終的な目的はもちろんアポイントを取ることです。それまでに相手がどのような対応を取ってきたとしても、それについて議論したり、相手を言い負かしたりすることは避けましょう。電話では一対一であっても、相手が不快な印象を持ってしまうことで、オペレーターだけでなく商品・サービスや企業について関心を示さなくなる恐れがあります。相手の返答については「おっしゃるとおりです」「そうですね」などと一度は共感の姿勢を示し、その後、「本件について御社内で話題になったのであれば、お役に立てるお話です」と再度話題提供をして相手の関心をさらに引き出すことが重要です。

クロージング(判断してもらう)

会話のクロージングとは、こちら側が主導権を握って進めるのではなく、相手の背中を押しながら最終的に判断してもらう段階です。あきらかにこちら側が主導権を握っているということが相手に伝わると、アポイントを取る段階で相手が不安になって結果的に断られてしまうことになりかねません。あくまで相手の選択を尊重しているということを示しつつ、最終的に相手自身が判断したのだと思わせるような誘導をしましょう。「もし必要なければそれでも構いません」と、相手の判断に委ねているという姿勢を言葉にすると、相手も選択しやすくなることが見込めます。

アポを取る

アポイントが決まりそうだと判断できたら、日時の設定をします。その際に重要なのは、相手に日時を提示させるのではなく、こちらで日時を提案するということです。相手に日時の設定を委ねてしまうと、迷った挙句に「やっぱり結構です」となってしまう恐れもあります。ただし、相手が選択できるように「○日の午前と午後ならどちらがよろしいですか?」というような提案をするとよいでしょう。その際は、相手の意欲が低下しないように、テレアポをしている日からできるだけ近い日を提案しましょう。

テレアポトークスクリプト作成時に意識したいポイント

テレアポ時の会話をスムーズに進めるためのマニュアルである、テレアポトークスクリプトを作成する際には、どのスタッフでも同じ対応ができる内容にすることが重要です。具体的にどのようなことを意識するとよいのか、テレアポトークスクリプト作成時のポイントを解説します。

テレアポトークスクリプト作成時に意識したいポイント
  • テレアポのゴールやターゲットを明確にする
  • トークの流れに沿ってスクリプトを作る
  • 話し方のニュアンスを明確にする
  • ニーズを引き出しやすい内容にする
  • 相手に合ったトークができるよう工夫する

テレアポのゴールやターゲットを明確にする

テレアポに限らず、自社の商品・サービスの営業を行う際には、ゴールやターゲットを設定することを忘れてはなりません。ゴールに関してなら、新サービスの紹介、もしくは既存商品に対する顧客単価向上や顧客満足度向上などがあげられます。また、ターゲットについては、売り込みたい商品・サービスのターゲット層を明確にすることが重要です。ゴールやターゲットが明確になれば、それに沿ったテレアポトークスクリプトを作成すればよく、さらにターゲットに合致した見込み客がすでに多くいるのであれば、テレアポトークスクリプトには詳しいヒアリングは必要ない場合もあるため、ターゲットと見込み客のバランスを確認する必要もあるでしょう。

トークの流れに沿ってスクリプトを作る

テレアポが不慣れであり、電話をかける相手とは初めて会話するという場合、定型的なスクリプトだけを用意してしまうと、会話が脱線してしまった場合の対処法がわからなくなります。フローチャートのように、起こりやすいと考えられる会話の流れを、会話のステップごとにわかりやすくまとめておくことで、不慣れな従業員でも対応しやすくなります。また、相手からの質問だけではなく、反論に対してのスクリプトも用意することで、どの従業員でもスムーズに対応することが期待できるでしょう。

話し方のニュアンスを明確にする

企業向けではなく、一般家庭向けのテレアポの電話を受けた際にも、いかにもマニュアル通り一辺倒な話し方のオペレーターでは、早く電話を切ってしまおうと思われることも少なくありません。反対に、相手に寄り添っているとわかる、抑揚のある話し方のオペレーターであれば、話を聞いてみたいと思われることも期待できるでしょう。話す内容が問題なのではなく、相手が「自分に対して話をしてくれている」とわかるような話し方であれば、もう電話を切りたいと思われることなく機会損失を防ぐことができます。

ニーズを引き出しやすい内容にする

テレアポでのトークとして、アポイントに結びつくカギには相手のニーズを引き出すことにあります。そのために重要なのは、相手に対して興味を持って話を聞くことです。自社の商品・サービスが相手の悩み解決につながるものであるなら、相手とともに悩みを解決しようという姿勢で対話をすることで、アポイントにつながることが期待できるでしょう。

相手に合ったトークができるよう工夫する

先にも解説したとおり、どれほど綿密に定型的なトークスクリプトを作成したとしても、相手によって話が脱線することはあります。その場合、目の前にあるトークスクリプトを絶対とせずに相手にあわせてトークできるような柔軟性が必要です。相手が誰であっても、トークスクリプト通りに内容を繰り返しているのではそれ以上の進歩は得られません。たとえば、担当者が不在の場合や用件を問われた場合など、どのようなケースが考えられるかを想定しておくことで、相手にあわせたトークが展開できるでしょう。

テレアポトークスクリプトのNG例


テレアポトークスクリプトを作成する際に、できるだけ避けたい項目があります。ここではテレアポトークスクリープト作成におけるNG例を3つ解説します。

顧客のふりをするなどの嘘を付く

相手企業にテレアポを行う際、テレアポではなく顧客として電話をかけているそぶりをすることで、受付からの電話がつながりやすくなることも考えられます。しかし、その目的であることを相手企業に気づかれてしまった場合には、自身の企業自体を不審がられてしまい、信頼回復が難しくなります。テレアポの成功には誠実性と信頼性は不可欠となります。そのため、トークスクリプトにおいても事実に基づいた信頼の持てる内容にし、誤解を招くような内容も避けるよう心がけましょう。

セールス感や営業電話感が強すぎる

個人はもちろん、企業においてもセールス電話というのは日々受けているものです。そのため、受付担当であれば電話を受けた段階で「これは営業電話だな」ということを容易にわかり、電話を取り次いでもらうことが難しくなります。何の会社なのかわからないような名乗り方であったり、マニュアル通りに一気に商品説明を始めたりするようでは、なおさら不信感を持ってしまうでしょう。馴れ馴れしい言葉使いはNGですが、言葉使いに配慮しながら、相手の警戒心を解くような工夫が必要です。

「はい・いいえ」で答えられる質問が多い

自社の商品・サービスにおいて、「興味がありますか?」の質問では「はい・いいえ」で会話が終わってしまいます。イエス・ノーで終わるクローズドクエスチョンではなく、その後の会話につながるような複数の選択ができる質問を設定するとよいでしょう。

テレアポトークスクリプトを作成するメリット


自社の営業手法としてテレアポを取り入れる際、テレアポトークスクリプトを作成するのには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、テレアポトークスクリプト作成のメリットとして3つ解説します。

トークの進め方が明確になる

定型のトークスクリプトだけでなく、よくある質問や、会話が脱線した場合の対応なども詳細にまとめておくことで、それらを理解しておくだけで相手との会話を整理しつつ、集中することができます。詳細なトークスクリプトを覚えておくことで明確なアプローチ方法で適切で効果的な会話を展開することができ、必要に応じて顧客のフォローアップをするなどの余裕あるトークを進められるでしょう。

組織全体のパフォーマンスが安定しやすくなる

わかりやすいトークスクリプトが用意されていることで、テレアポ担当が初めて仕事につく場合でも安定した対応をすることができ、組織全体としてのパフォーマンスの安定を期待できます。さらに、作成したトークスクリプトをもとにしたトレーニングをすることで、テレアポのスキルだけでなく、組織としての営業スキルを身につけることにもつながるでしょう。

新人教育に役立つ

テレアポトークスクリプトは、他社営業に対して自社の商品・サービスを紹介するための内容が詰まったマニュアルであるため、新人が自社商品・サービスを理解するための研修資料にも役立ちます。トークスクリプトを頭に入れることで、自分自身も不明瞭なままの営業にならずに、スムーズで効果的な営業トークを展開することができるでしょう。

テレアポトークスクリプトを作成するデメリット


自社でテレアポを行うためにトークスクリプトを作成する際には、そのトークスクリプトにテレアポの担当者が固執しすぎないように注意する必要があります。テレアポ担当が営業担当と兼任している場合、トークスクリプトに固執するあまりに独自の持ち味を活かした自然な会話ができずに、機械的なコミュニケーションになってしまう恐れがあります。そのため、トークスクリプトに記載されていない不測の自体に対応できず、営業成績にまで影響することも考えられるでしょう。トークスクリプトへの過度な依存にならないよう注意が必要です。

まとめ


企業間で面談や訪問のアポイントを電話で行う営業手法のテレアポは、どのスタッフが対応しても同様に受け答えができるようなトークスクリプトが非常に有効です。実際にテレアポを行うことを想定したうえで、ターゲット層や目的を明確に設定をし、組織全体で安定したパフォーマンスができるようなトークスクリプトを目指してみてはいかがでしょうか。

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