ウェブ上でツールを用いて取引先と打ちあわせや会議を行う、非対面型のオンライン営業は、ウェブ環境さえあれば場所を選ばずに行える効率的な営業手法です。オンライン営業には、対面型の営業と比較してさまざまなメリットがある一方で、オンライン営業ならではのデメリットも存在します。オンライン営業を成功させるにはどのような点に注意して進めればよいのでしょうか。また、対面型営業と両立させる方法はあるのでしょうか。今回は、オンライン営業を成功に導く8つのコツと、対面型営業との比較について解説していきます。
オンライン営業のメリット
オンライン営業とは、対面ではなくウェブ上で行う営業手法を指します。ウェブ環境があれば実施できる手法ですが、オンライン営業を取り入れることでどのようなメリットがあるのか、3つの観点で解説します。
移動時間やコストが削減でき、業務が効率化する
訪問営業などの対面式の営業の場合、商談の日程に加えて、移動時間なども含めて考慮しなければなりません。その点、オンライン営業ならオフィスや近隣で行えるのであれば移動時間の考慮の必要がないため、移動時間のかわりに準備の時間に充てられるなど、時間を浪費することなく有効活用することができます。また、移動の必要がないため、それにともなう移動経費や宿泊費の削減にもつながります。
場所を問わず活動でき、営業機会を増やしやすい
対面式の営業の場合、相手先へ訪問したり、面談場所を別途用意したりするなどの場所の選定が必要となり、相手先にも負担がかかってしまいます。一方オンライン営業では、お互いがオフィスのデスクや自宅からでも商談することが可能です。そのため、各都道府県だけでなく海外との顧客との商談など、営業機会の拡大につながります。ただし、オフィスや自宅以外にホテルなどどのような場所でもオンラインで商談ができるようにウェブ環境を整えておくことが重要です。どのようなウェブ会議システムで対応できるように、操作方法を習得しておきましょう。
フィードバックやナレッジ共有がしやすくなる
オンライン営業ではウェブ会議システムによっては録画や録音が容易にできるため、商談後に社内で振り返りを行ってフィードバックしたり、情報が属人化しないように社内でナレッジ共有したりすることがしやすくなります。商談時のトーク内容をブラッシュアップすることで営業スキルの向上も期待できるでしょう。
オンライン営業のデメリット
場所を選ばず、時間の有効活用もできるオンライン営業ですが、メリットだけではありません。ここでは、オンライン営業にどのようなデメリットがあるのかを、3つの点について解説します。
通信環境の影響を受ける
場所を問わず行えるのがオンライン営業のメリットですが、通信環境の影響を受けやすいというのがデメリットとしてあげられます。いくら自社や自宅での通信環境が整っていたとしても、相手先の通信環境が不安定であれば、商談がスムーズに進まないことも考えられます。その場合、お互いの負荷のかからないようなウェブ会議システムであるか、パソコンや周辺機器のスペックが非対応になっていないかなどを確認し、万が一通信が途絶えた場合の対処法などもあらかじめ準備しておきましょう。
相手の反応がわかりにくい
ノートPCやPCモニターでは、お互いが映る部分は顔周辺のみであり、手元などのリアクションは見えにくいと考えられます。さらに相手によってはカメラオフ設定をされて音声だけでしかやりとりできないとなると、相手の興味・関心といった反応が把握しにくくなるでしょう。また、商談資料に集中するあまりに会話が途絶えてしまうことも起こり得ます。質問を受ける時間を別途設けるなど、相手の反応を把握しやすいような進め方を考える必要があります。
関係構築が難しい
対面式の営業が主流だった時代には、”ただ名刺を交換するだけ”、”資料をお渡しするだけ”といったことや飛び込み営業もありました。しかしオンライン営業を行う場合はそのようなことのために時間を割いてもらうということはより難しく、明確な用件がない限りはオンラインでのアポイントは取りにくいでしょう。また、対面式の営業の場合、応接室までの移動距離の間や玄関先までの間といったなかでの雑談での関係構築も可能でしたが、そのような時間を作ることが難しいオンライン営業では、相手の本音やパーソナルな情報を収集するのも難度が高くなります。関係構築に必要な雑談の時間を取れるように、ウェブ会議でも早めに入室してお互いが話しやすくなるような雰囲気作りを心がけましょう。
オンライン営業を成功に導く8つのコツ
メリットとデメリット両方を持つオンライン営業を成功させるにはどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。ここでは、オンライン営業を成功に導く8つのコツを解説します。
- 商談前に参加者の情報を集めておく
- わかりやすく図示された資料を用意する
- トークスクリプトを作成しておく
- リマインドメールや資料を送る
- 通信環境、ツール、画面のチェックを行う
- 時間配分を意識する
- 話し方や相手の反応を意識する
- サンクスメールの送付と振り返りを行う
コツ1:商談前に参加者の情報を集めておく
オンライン営業では、対面式のような名刺交換を行うタイミングがなく、名刺でわかるような相手の詳細な情報を知ることが難しい場合があります。そのため、複数人での商談になった場合には、相手の役職や立ち位置がわからずに商談がすすめにくいということも起こりうるでしょう。その場合、商談の窓口となる相手先に参加者を確認し、必要があれば名刺交換ツールなどを活用するとよいでしょう。相手先の情報を集めておくことで、企業全体としてのニーズや課題を把握でき、商談がスムーズになることが見込めます。
コツ2:わかりやすく図示された資料を用意する
オンライン営業の場合、用意する資料はデータとして提示することになります。そのため、データ保存方法によっては解像度が低かったり、デザインが細かすぎたりすることで、相手のPC上で見にくくなってしまうことも考えられるでしょう。オンライン営業での資料はなにより見やすく、わかりやすいものである必要があります。たとえば資料の文字量が多いと感じたら一部は図表に作り直すなど、相手先に伝わりやすい資料にしましょう。また、ウェブ会議システムによってはチャット機能を活用してウェブサイトのURLを添付すれば、お互いにひとつのサイトを共有しながら会議を進められます。
コツ3:トークスクリプトを作成しておく
対面式営業とは異なる、オンライン営業の強みのひとつは、事前に社内で用意しているトークスクリプトを見ながら進められるということにあります。営業時の台本ともいえるトークスクリプトは、これから営業を進めたいと考えている自社商品・サービスの詳細や商談の進め方が書かれてあるものです。例えば商談の最中に、伝えたい事柄を忘れてしまった場合にも、トークスクリプトを読み直すことで会話を続けることができます。ウェブ会議システムのなかに、自分だけが資料を見ることができるツールもありますが、相手に見えてしまわないように注意しましょう。
コツ4:リマインドメールや資料を送る
これは対面式営業にもいえることですが、商談の前日には必ず商談日時のリマインドとしてメールなどの連絡をとっておきましょう。特にオンライン営業の場合は、対面式の営業よりも軽く受け取られることもあるため、商談の参加可否は必ず取っておくことが重要です。その際には商談で用いる資料を添付しておくことで、相手先も事前に商談の詳細を把握しておくことができます。また、リマインドを送る際にウェブ会議システムのマニュアルや参加URLなども添えておくと、より丁寧な印象を与えます。
コツ5:通信環境、ツール、画面のチェックを行う
オンライン営業のデメリットの項目でも解説したように、通信環境の影響を受けやすいというのがオンライン営業の特徴です。音声が途切れたり、話が聞こえにくくなったりするなどの回線トラブルは相手先にストレスを与えてしまう恐れもあります。パソコン環境のカメラやマイクのチェックだけではなく、ウェブ面談を行う室内に屋外からなどの雑音が入らないかをチェックしておきましょう。また、基本的なことではありますが、プレゼンなどで相手先に共有する資料が正しいものであるか、相手先に見せて問題ないものかは入念に確認しましょう。
コツ6:時間配分を意識する
オンライン営業に限らず対面営業でもいえることですが、商談やプレゼンの時間配分を意識しておきましょう。自社のプレゼンテーションが長すぎて相手先の集中力が途切れてしまうだけでなく、相手先のヒアリングの時間が長くなり、相手に疲れさせてしまうことも考えられます。トークスクリプトを準備する際に時間配分も明記しておくとよいでしょう。商談は一般的には60分とされていますが、商談内容に応じて増減してみるとよいでしょう。
コツ7:話し方や相手の反応を意識する
オンライン営業の場合、商談中に説明用の資料が画面上に表示されてしまうと、相手の表情や反応を細かく把握することはできません。それは双方にいえることですので、こちらから説明する場合には、重要な事柄を大きめの声でゆっくりと話したり、必要に応じてスピードや声の大小に強弱をつけたりするなどを意識しましょう。
また、オンライン営業の場合には自身の主張だけに集中せずに、「ここまでの説明で不明点はございますか?」などと相手に質問をなげかけて、その都度相互のすりあわせを行うとよいでしょう。
コツ8:サンクスメールの送付と振り返りを行う
商談後に大切なのは、いわゆる「サンクスメール」です。商談の時間を取っていただいたことへの感謝と、宿題事項や今後の日程などを明記するとよいでしょう。今回の商談で相手先が前向きな反応であったとすれば、商談中に要望があった資料についてはサンクスメールに添付し、次回のアポイントまで取れるように促しましょう。
また、社内での今回の商談についての振り返りとしては、オンラインの商談に参加していた他のメンバーとの社内共有を行い、相手先とのタイミング次第で、今回の商談についての営業品質やフィードバックといったアンケートを行うことでもスキルアップにつながるでしょう。
オンライン営業と対面営業を使い分けるポイント
時間の短縮やコスト削減ができ、場所を選ばないのがオンライン営業の主な強みですが、対面式での営業にもメリットは存在します。それぞれどのように使い分ければ、効率的な営業ができるのでしょうか。
オンライン営業と対面営業双方にかかわるキーワードに「コミュニケーション」というものがあげられます。例えば対面営業ではお互いの反応や本音が伝わりやすく、面談を重ねていくことで深い信頼関係を築くことが期待できます。一方オンライン営業ではお互いの反応が見えにくいことから、対面営業と比較すると信頼関係を築くことが難しいといえるでしょう。その反面、対面営業では時間やコスト面などが非効率である一方で、オンライン営業では時間の短縮やコスト削減などの強みがあります。
そのため、相手のニーズを把握するためのヒアリングはオンラインで行い、その後の相手へのアプローチや意思決定となるクロージングの際は対面で面談を行うといった使い分けがポイントになります。もちろん相手先からクレームや指摘があった場合には、時間やコストをかけてでも相手先まで足を運び、謝意と誠意を見せることが重要です。
また、相手が決断しやすいような低額の商品・サービスであればオンライン営業にし、意思決定までに段階が必要になるような高額な商品・サービスであれば、訪問して商談するといった使い分けも効率的でしょう。オンライン営業と対面営業の特徴をふまえて、うまく使い分けをすることで新たな営業方式の構築が可能になります。
オンライン営業に必要なツール
オンライン営業を取り入れる際にどのようなツールを用意するとより効果的な営業を展開できるでしょうか。最後に、オンライン営業に必要なツールとして2種類を解説します。
Web会議システム
Web会議システムとは、オンライン会議システムとも呼ばれるシステムで、遠隔地同士でもビデオ会議や音声会話ができることから、オンライン営業だけでなく、全国各地に支店のある企業での社内ミーティングやオンラインセミナーなどにも用いられています。お互いの顔を見ながら会話ができ、画面共有や録音・録画機能も搭載されているシステムであれば、商談の振り返りやスキルアップにも活用できます。
主なツールとしては「Zoom」、「Google Meet」「Microsoft Teams」があげられます。それぞれ有料プランと無料プランによって利用できる機能が異なります。選ぶ際には、目的と機能があっているもの、操作しやすいもの、何よりセキュリティがしっかりしているものを検討しましょう。また、相手先からシステムの指定をされる場合もあるため、複数のツールを使いこなせるように用意しておくこともおすすめです。
ビジネスチャットツール
ビジネスチャットツールとは、テキストベースのビジネス向けチャットツールです。代表的なものに「Slack」「Microsoft Teams」「Discord」があります。コミュニケーションとしてのチャットだけではなく、タスク管理機能や業務進捗管理機能といったビジネスに特化した機能がついています。メールのように書き出しの挨拶文から始めずに、相手によっては用件のやりとりだけで済むことからレスポンスが早く、ツールとして導入しておくと便利です。
ビジネスチャットツールは、チャットグループに加わっているユーザー数やチャットグループの数によって料金が異なることがあり、ツールによってカレンダーやメールなど他のツールとの連携も可能なため、目的にあったツールを検討するとよいでしょう。
まとめ
今回は、オンライン営業を成功させるためのコツと、対面営業との効率的な使い分け方について解説しました。
時間やコストを削減でき、場所を選ばずに進められるオンライン営業は営業機会を作りやすい営業方法です。一方、対面営業と比較すると相手の反応が見えにくく、信頼関係構築に時間を要する場合もあります。自身が進めたいと考えている営業にはどちらが向いているのか、特徴をうまく使いわけながら、ビジネスツールと組みあわせて効率的で効果的な営業を進めてみてはいかがでしょうか。
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