自社の商品・サービスや事業内容について、認知向上を図る方法のひとつに「パブリシティ活動」があります。取材などを通じてマスメディアに取り上げてもらう広報PR方法ですが、パブリシティは認知向上を少ない費用で図れるなどのメリット以外にも、必ず取り上げてもらえるとは限らないなどの注意点もあります。今回はパブリシティ活動について、パブリシティの特徴や種類、活動を行う際の注意点などを詳しく解説していきます。

パブリシティとは?


パブリシティとは、自社製品や自社事業について、取材などを通じてマスメディアに取り上げてもらう広報PR方法のことを指します。広報PR方法にはほかにも似た言葉があるため、パブリシティとの違いも含めて解説していきます。

ノンペイドパブリシティとペイドパブリシティ

パブリシティとは大きく分けると「ノンペイドパブリシティ」と、「ペイドパブリシティ」の2種類があります。今回取り上げるパブリシティは、「ノンペイドパブリシティ」のことを指しています。広告費を払わない(ノンペイド)であることから、必ずマスメディアに取り上げてもらえるとは限りません。また、発信する内容についてはマスメディア次第となり自社側でコントロールすることはできませんが、そのかわり、そのパブリシティが成功すると自社発信の広告以上に情報の信頼性が高くなることが見込めます。

一方の「ペイドパブリシティ」とは、広告費を払って行う広報PR方法を指します。特定のメッセージをマスメディアに確実に取り上げてほしい場合に適した方法ですが、広告費がかかることは考慮に入れなければなりません。

広報やPRとの違い

「広報」とは、自社が関係者や一般向けに情報発信を行うことで良好な関係を保つために行う活動です。一方「PR」とは「Public Relations」の略で、自社の顧客や投資家、従業員といったステークホルダーとの関係性を維持するための活動を指します。また、広報は自社側からの情報発信であるのに対して、PRは企業・団体や社会との関係構築のための双方が行うコミュニケーション活動といえます。

広告との違い

「広告」とは、広告主である自社がテレビ・ラジオCMや新聞広告といった広告枠を購入して、自社の商品・サービスなどの伝えたい内容を自由に発信するものです。パブリシティの場合、自社側が内容をコントロールすることはできず、マスメディア側の裁量になりますが、その点、広告と比較するとマスメディア発信のほうが消費者の信頼度は高くなります。

パブリシティの種類


パブリシティには主に「WEBパブリシティ」「プリントパブリシティ」「テレビパブリシティ」の3種類があります。主な違いは下表のとおりです。

WEBパブリシティ プリントパブリシティ テレビパブリシティ
掲載媒体 ネットニュース、SNS、ブログなどのWEB媒体 新聞、雑誌、フリーペーパーなどの紙媒体 テレビ番組内での紹介
特徴 情報が拡散する速度が速い一方、情報の正確性に注意する必要がある 媒体によって読者層が異なるため、自社がターゲットとする年齢、性別、興味関心などの層に見合った媒体を選ぶ必要がある テレビを視聴している幅広い年齢層にアピール可能

パブリシティのメリット

マスメディアに取り上げてもらうことで自社のメッセージ発信につなげる方法のパブリシティは、利用することで自社にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、パブリシティを活用するメリットとして3点を解説します。

パブリシティのメリット
  • メディアを通じた認知向上が期待できる
  • 少ない費用で実施できる
  • 社会からの信頼性や公正性の向上が期待できる

メディアを通じた認知向上が期待できる

パブリシティとしてマスメディアに記事として取り扱ってもらうことで、自社の商品・サービスなどの情報の認知向上を期待することができます。さらにパブリシティとしてマスメディアに取り上げてもらった情報は、SNSや口コミで拡散されることも期待できるでしょう。

少ない費用で実施できる

パブリシティについて先に紹介したように、ノンペイドパブリシティの場合は広告費用がかかりません。そのうえでマスメディアの記事で注目を集めることは、広告よりも少ない費用で実施できると考えられます。

社会からの信頼性や公正性の向上が期待できる

こちらも先で解説しましたが、ノンペイドパブリシティの場合、自社の商品・サービスなどの情報であっても、発信する内容についてはマスメディア次第となります。自社が発信する広告よりも、情報の信頼性や公正性が高くなると考えられます。

パブリシティのデメリット

広告費をかけずに情報発信できるパブリシティですが、活用するにはデメリットもあります。ここではパブリシティ活用のデメリットを2点解説します。

パブリシティのデメリット
  • 確実に取り上げてもらえるとは限らない
  • メディアの発信内容をコントロールできない

確実に取り上げてもらえるとは限らない

ノンペイドのパブリシティである以上、発信したい情報をコントロールするのはマスメディア側になります。さらに、その情報を確実に各媒体で取り上げてもらえるとは限らないということも把握しておく必要があるでしょう。マスメディアのニーズに合致する情報であるか、どのように伝わるかということを事前に熟考することも重要です。

メディアの発信内容をコントロールできない

先に解説したように、広告費のかからないパブリシティである以上は、発信内容を決めるのはマスメディア側です。そのため、発信内容についての取捨選択などのコントロールができないだけでなく、自社の意図しない内容が発信される可能性があることも理解しておきましょう。発信内容に明らかな誤りがあった場合は内容の差し替えも対応してもらえる場合がありますが、基本的には自社からの要望は強要できないと心得ておくことが重要です。

パブリシティの具体的な活動方法


パブリシティを効率的に活用したい場合、どのような方法で行うのがよいのでしょうか。ここでは、パブリシティの具体的な活動方法について3点解説します。

メディアへのプレスリリース

プレスリリースとは、企業や団体が自社の商品・サービスなどの新情報や企業情報を報道機関(マスメディア)に対して文書や資料としてまとめたものを指します。マスメディアの記者は日頃から数百枚などのプレスリリースからニュースをピックアップしています。そのため、情報の内容以外にも文書のまとめ方や情報提供のタイミングもポイントとなります。また、内容に応じて発信先のマスメディアをまとめたリストを作成しておくのも有効でしょう。

記者会見やイベントを開く

記者会見やPRイベントの実施は、プレスリリースの文字だけでは紹介しきれない魅力を伝えることができる手段です。自社の担当が直接記者と対話したり、商品・サービスを実際に見てもらったりすることで、具体的な情報が伝わりやすくなることが見込めます。

メディアとの信頼関係を築く

記者や編集者といったマスメディア関係者とコミュニケーションをとりながら、良好な信頼関係を築くことで良好なメディア露出を獲得・維持することを「メディアリレーションズ」といいます。プレスリリース配信もメディアリレーションズのひとつです。信頼関係を築くことが重要なため、一方的な要求にならないよう、記事掲載に関する強要をしないように注意が必要です。

パブリシティの事例


パブリシティの具体的な活動方法をうまく活用して、自社商品の売り上げ増加につなげた事例として、ここでは2つの企業の成功例を紹介します。

飲むグラ(有限会社 味源)

食品の製造・卸売企業の有限会社味源では、シリアル食品のひとつであるグラノーラを牛乳に溶かして飲むパウダーグラノーラシリーズ「飲むグラ」の新商品を発表した際、テレビ番組で取り上げられました。すると、取り上げられる前には2か月で2万個程度だった売り上げ個数が、放映後の2か月で約10倍ほどに増加したそうです。
※現在は取り扱いはございません。

参考:有限会社 味源(あじげん)(2025年3月時点)

チョコビール(サンクトガーレン有限会社)

神奈川県にある老舗の地ビール会社であるサンクトガーレン有限会社ではバレンタインデーに向けて、チョコレートを使わずにビール本来の原料でチョコレート風味を再現した自社製品の「チョコビール」のPRキャンペーンを実施しました。プレスリリースを出したところ多くのWEBメディアから注目を集め、キャンペーンの成功につながりました。その後もバレンタインギフトの定番としてチョコビールが販売され、これをきっかけにチョコビール以外の商品も新聞に掲載されるなど、マスメディアに取り上げられるようになりました。

参考:元祖地ビール「サンクトガーレン」公式ホームページ(2025年3月時点)

パブリシティ活動の注意点

パブリシティ活動を効果的に行う際にはいくつか注意しなければならない点があります。最後に、パブリシティ活動を行う際の注意点を3つ解説します。

パブリシティ活動の注意点
  • 広告との違いを意識する
  • Win-Winを意識する
  • 取材を受ける準備は怠らない

広告との違いを意識する

冒頭にも解説したように、広告の場合は、自社が広告主となって広告枠を購入し、自社の商品・サービスなどの情報を自由に発信することが可能ですが、パブリシティの場合はあくまで「報道」であり、マスメディア側の裁量となります。ニュースバリューがないと判断されれば取り上げられることがなく、内容も客観性が含まれます。広告との違いを意識しながら、パブリシティの特性を理解して、マスメディアとの関係構築やリスク管理も含めた対応戦略を練っておく必要があるでしょう。

Win-Winを意識する

マスメディアが行う報道とはあくまで読者や視聴者、社会全体のために行うものであり、一企業の広報PRを行うわけではありません。また、客観性が含まれるパブリシティは、どのような切り口で表現するかはマスメディアの裁量となります。そのため、日頃から関係性を良好に保ち、自社とマスメディア双方に利益をもたらす、Win-Winを意識した活動を心がけていきましょう。

取材を受ける準備は怠らない

パブリシティの取材が決まった場合には、記者などの取材側からの連絡には迅速に回答し、スムーズにコミュニケーションが図れるように進めましょう。また、パブリシティはあくまでマスメディア側の発信となるため、発信内容には正確さやわかりやすさが求められます。取材側からあらかじめ質問内容を提示されることもありますが、取材当日にあわてないように事前に質問内容をまとめるだけでなく、自社がどのようなメッセージを伝えたいのかをイメージしておくなど、取材を受ける準備を怠らないようにしましょう。

まとめ


自社の商品・サービスや事業内容について、取材などを通じてマスメディアに取り上げてもらうパブリシティは、マスメディアを通じた認知向上や信頼性の向上を少ない費用で実現することが見込める広報PR方法です。パブリシティはマスメディア側の裁量となるため、必ず取り上げてもらえるとは限らない場合もありますが、マスメディアとの良好な関係性を保ちながら、自社をどのように伝えてもらいたいかを意識して、パブリシティ活動を行っていきましょう。

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