店舗の売上を高めるためには、新規顧客の開拓も大切ですが「ファンを増やしてリピート利用につなげる」ことも大切です。店舗のリピート率を高める手法のひとつとして、「顧客ロイヤルティを高めること」が挙げられます。

しかし、「顧客ロイヤルティはどのように計測すればよいの?」「顧客ロイヤルティを高めるにはどうすればよいのだろう?」といった疑問を持つ人も多いでしょう。そこで今回は、顧客ロイヤルティの概要やそれを高めるメリット、顧客ロイヤルティの計測方法などついて、事例を交えて説明します。

そもそも顧客ロイヤルティとは?

顧客ロイヤルティの4つの構成要素
顧客ロイヤルティとは、顧客が企業の商品やサービスに対して感じている「信頼」や「愛着」です。ロイヤルティ(Loyalty)は英語で、「忠誠心」を意味しており、顧客がロイヤルティを高めることで継続的な購入が期待できます。顧客ロイヤリティと呼ばれる場合もあります。

上記の図のように、顧客ロイヤルティは「心理的なロイヤルティ」と「行動的なロイヤルティ」に分類されます。心理的なロイヤルティを高めるだけでは、潜在的なファンが増えるだけで購入やサービス利用に結びつきづらいです。一方で行動的なロイヤルティを高めるだけでは、一時的なファンの獲得はできますが、将来的に利用し続けてもらえません。

また、自社の商品を定期的に購入したり、サービスを定期的に利用したりするだけでなく、友人やSNSを通じて他の人に勧める人をロイヤルカスタマーと呼ばれています。一般消費者をロイヤルカスタマーに成長させるには、心理面・行動面双方のロイヤルティを高めることが大切です。

顧客ロイヤルティと似たマーケティング用語として「顧客満足度」がありますが、顧客満足度とは、顧客が自社の商品・サービスに対してどの程度満足しているのかを示す指標です。「信頼」や「愛着」で評価を測る顧客ロイヤルティとは似ているようで異なります。

顧客ロイヤルティを高める4つのメリット

では、顧客ロイヤルティを高めることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?代表的なメリットとしては、次の4つがあります。

顧客ロイヤルティを高める4つのメリット
  • リピート顧客の増加が狙える
  • 解約率が低下しやすくなる
  • 顧客単価が上がりやすくなる
  • よい口コミが広まりやすく企業を認知してもらえる

リピート顧客の増加が狙える

一般的に新規顧客の獲得はリピート顧客の獲得よりもコストがかかる傾向があると言われています。理由としては、そもそも認知がされていないため、認知してもらう必要がある、購入したことのない商品や利用したことのないサービスには信頼性がなく、どのようなものなのかの不安を解消する保証制度や無料トライアルが必要となるなどが挙げられます。

一方で、リピート顧客は既に商品やサービスを認知していて、利用したことがあるためリピート獲得にコストがかかりづらくなります。加えて、顧客ロイヤルティを高めるとリピート顧客の増加につながります。なぜなら企業が提供する商品やサービスへの信頼・愛着が高まると、「この企業が好きになった」「この商品を使い続けたい」と思ってもらえるからです。

たとえば、「今まで受けたことのないサービスに満足した」「他社の商品よりも使い勝手がよい」といった感動体験は、顧客ロイヤルティを高めやすくなります。もちろん、一度顧客を満足させただけではロイヤルティを十分に高められないので、継続的なアプローチが大切です。「どうすれば自社の商品に満足し続けてもらえるか」「どうすれば信頼感を高められるか」を考えた事業運営をすることで、顧客ロイヤルティを高め、リピート顧客を増やせるでしょう。

解約率が低下しやすくなる

顧客ロイヤルティを高めれば、サブスクリプションのような月額料金制のサービスの解約率を低下させられます。顧客のサービスに対する信頼感や愛着が高まると、「他社のサービスに乗り換えよう」という意識を持ちにくくなるからです。

アニメソングに特化した音楽配信サービスを例にすると、「ほかのサービスよりも聴きたい楽曲数が多い」「あまり知られていないアニメの主題歌まで聴ける」といった特長があれば、ロイヤルティが高まり解約率を抑えやすくなります。

地域密着型のコーヒーショップで考えると、「毎月一定の料金を支払えば毎日コーヒーが1杯ずつ飲める」などのサービスを提供すれば、地元住民から長く利用される店舗になりやすくなるでしょう。

顧客単価が上がりやすくなる

顧客ロイヤルティを高めると、リピート顧客を増やせるだけでなく、「顧客単価(顧客1人あたりの一回の平均購入金額)」も上がります。獲得した顧客が企業のファンになれば、特定の商品だけでなく関連商品も一緒に購入してくれる可能性が高まるからです。

たとえば、家具を販売する店舗の場合、「ダイニングテーブルを購入した顧客が、一緒にチェアや食器などを購入してくれる」ということが考えられます。顧客ロイヤルティが高ければ、このように一回で複数の商品を購入してくれるため、顧客単価が上がりやすくなります。

よい口コミが広まりやすく企業を認知してもらえる

インターネットやスマートフォンが普及し、顧客の口コミは企業のイメージや集客数、売上などに大きな影響を与えています。そのため、顧客ロイヤルティを高めれば、企業によい印象をもってもらえるため、ネット上によい口コミが広がることに期待ができます。

たとえば、「先日購入した○○がとても使いやすかった」「新しい服を購入したら、着まわしやすくて満足している」といった口コミなどです。このようなよい口コミをSNSやブログなどに投稿してもらえれば、幅広い消費者に企業の魅力を知ってもらえます。口コミは商品の購入やサービスを利用した顧客が投稿してくれるものになるため、企業側は広告費の削減にもつなげることができます。さらに口コミを通じて、広告やチラシなどが届かなかった顧客にも認知してもらえるので、集客数や売上の増加に期待ができます。

顧客ロイヤルティを測る指標とは

さまざまなメリットがある顧客ロイヤルティですが、どのように測定すればよいのでしょうか?主な計測方法としては、次の5つがあります。

顧客ロイヤルティを測る指標
  • 購入回数を集計する
  • 利用時間や頻度・継続利用を確認する
  • 口コミや紹介の数をまとめる
  • 生涯顧客価値(LTV)を計算する
  • NPS®を計測する

購入回数を集計する

購入回数は、「一定期間に顧客1人あたりが何回商品を購入したか」を表すものです。「1ヵ月あたりの購入回数」「1年あたりの購入回数」のように、企業ごとに目安とする期間を設定し、その推移を比較します。

たとえば、1ヵ月あたりの平均購入回数が3回の場合、4回以上商品を購入している顧客は「顧客ロイヤルティが高い」と判断できます。反対に、購入回数が2回以下であれば「顧客ロイヤルティが比較的低い」と考えられます。

月ごとの購入回数を比較する企業が多いですが、業種によっては前年の同じ月と比較するのが適しているケースもあります。アパレル企業のように季節に応じて販売する商品が異なる場合、前年の同じ時期と比較したほうが精度が高いでしょう。

利用時間や頻度・継続利用を確認する

サービスの利用時間や頻度、継続利用の意向があるかを集計することも顧客ロイヤルティを計測する方法のひとつです。サービスの利用時間や頻度に関しては、購入回数が少なくても、1回あたりのサービス利用時間が長かったり、1回の利用期間内で頻繁にサービスを利用していたりすれば、愛着や信頼度が高いといえます。

たとえば、クラウド型のITツールで、「30日プランを利用する顧客は、1日あたり2時間サービスを利用している」というデータが得られた場合、3時間以上サービスを利用する顧客は「顧客ロイヤルティが高い」と判断できます。

頻度の観点で計測すると、サブスクリプションサービスを提供するコーヒーショップで、「顧客は1ヵ月で平均7回店舗を利用している」という結果が出れば、8回以上利用した顧客は「顧客ロイヤルティが高い」といえます。

また、サービスの継続利用の意向があるかで顧客ロイヤルティを計測することができます。その際は、NRS(ネットリピータースコア)という数値を活用するのも1つの手段です。NRSとは、継続利用をしたいかを測定するために用いる指標です。1年後や半年後にサービスを利用しているかといった問いに1~5段階(5段階が積極的に利用したい)で回答してもらい継続利用の意向があるかを把握することに活用できます。

口コミや紹介の数をまとめる

顧客ロイヤルティの高い顧客は、「その企業の商品やサービスの良さを他者に伝えたい」という意識を持ちやすくなります。そのような良い口コミや紹介の数を計測することでも、顧客ロイヤルティの高さを計測できます。

SNSで口コミ件数を測定する際は、「#○○ショップ」のように店舗名や特定のキーワードを含んだハッシュタグを検索すると、投稿数を測定しやすくなります。また、紹介による来店数を把握する際は、「紹介による来店で〇%OFF」のように特典を設けると精度の高い測定が可能です。

生涯顧客価値(LTV)を計算する

LTVは「Life Time Value(ライフタイムバリュー)」の略称で、ある企業に対して1人の顧客が取引や利用を開始して終了するまでにどのくらいの価値をもたらしたかの生涯顧客価値を指します。LTVは顧客がサービスを利用する頻度、平均購入額、利用期間などの要素で構成されます。この指標には感情の要素が含まれていないため、行動面の顧客ロイヤルティを計測することに活用できます。

生涯顧客価値(LTV)については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

生涯顧客価値(LTV)とはどのような指標?高める方法も解説

NPS®を計測する

NPS®(Net Promoter Score)は、顧客ロイヤルティを数値化する指標です。可視化しにくい顧客ロイヤルティを数値で表せるので、従業員のモチベーション維持や店舗の目標設定・評価に活用できるのがメリットです。

NPS®を計測する際は、アンケートを使用します。たとえば、「弊社の商品を知人に勧めたいと思いますか?」といった質問を用意し、0~10点の中から点数を選んでもらいます。NPS®の点数は、次のように分類されます。

  • 0〜6点:商品やサービスに不満を持つ批判者
  • 7〜8点:不満も満足もしていない中立者
  • 9〜10点:商品やサービスに満足している推薦者

そして、NPS®を求める計算式は、次のようになります。

  • NPS®=推薦者の割合(%)-批判者の割合(%)

たとえば、推薦者の割合が30%、批判者の割合が15%の場合、NPS®は15ポイントです。
NPS®が高いほど、顧客ロイヤルティが高いと判断できます。

NPSⓇについては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

NPS®とはどのような指標?計算方法やメリット、活用事例を紹介


※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。

顧客ロイヤルティを高める手法とは?

では、顧客ロイヤルティを高めるにはどうすればよいのでしょうか?顧客ロイヤルティを高める手法として、次の3つが挙げられます。

顧客ロイヤルティを高める手法
  • SNSやアンケートを活用する
  • 顧客ごとの好みに合わせたサービスを提供する
  • ロイヤルティプログラムを設定する

SNSやアンケートを活用する

顧客ロイヤルティを高めるために、SNSやアンケートで顧客の声を集めて活用したり改善したりすることは、サービスや商品に対する満足度の確認に適した手法になります。

SNSの場合、たとえば、企業の投稿に「購入後、使い方がよく分からなかった」といった商品やサービスに満足していない投稿があれば、改善するきっかけになります。「商品に不具合があった」といったコメントがあれば、「返品や交換の対応をさせていただきますので、○○(カスタマーセンターの連絡先)へご連絡ください」といった対応も可能です。また、アンケートで集めた質問や要望は、メールマガジンやDM、HPなどで回答することで顧客の声に耳を傾けているという印象を与えることにつながるでしょう。

このように、顧客の声を活かして戦略を立てたり、顧客とのコミュニケーションを充実させたりすれば、顧客ロイヤルティを高めやすくなります。

顧客ごとの好みに合わせたサービスを提供する

顧客から得た情報を記録し、好みに合わせたサービスを提供するのも、顧客ロイヤルティを高める方法のひとつです。

たとえば、「Aさんが来店したらひざ掛けを提供する」「Bさんは暖かいお茶の方が好き」などの情報を記録し、スタッフ全員に共有すれば、顧客が再来店したときに、好みに合わせてサービスを提供できます。結果、顧客はそのサービスや店舗に愛着を持つので、顧客ロイヤルティが高まるでしょう。

ロイヤルティプログラムを設定する

「多くの顧客を抱えており、それぞれに合わせたサービスの提供が難しい」という場合も多いでしょう。そのような場合、「ロイヤルティプログラム」を設定するのがおすすめです。

ロイヤルティプログラムとは、一定期間商品やサービスを利用し続けた顧客に対して、特別なサービスを提供する仕組みです。

たとえば、「入学式や卒業式に合わせて豪華キャンペーンの案内を送る」、「誕生日にメッセージ付きのクーポン券を配布する」などが挙げられます。このように、顧客ごとに適したタイミングで適切なアプローチをすれば、企業への信頼感や愛着を高めやすくなります。

顧客ロイヤルティを高めることに成功した事例

顧客ロイヤルティのイメージを深めるには、他社の成功事例を知っておくのも大切です。
以下では、顧客ロイヤルティを高めることに成功した事例を紹介します。

損害保険会社の事例

ある損害保険会社では、先述したNPSⓇをうまく活用して顧客ロイヤルティの向上に成功しています。

具体的には、NPSⓇを測定する際のアンケートで「顧客ロイヤルティが低い」と判定した顧客に対して、責任者が直接ヒアリングする施策を取っています。それにより顧客の信頼感が高まり、よい口コミも広がりました。このように、顧客ロイヤルティが低い層にターゲットを絞って施策を打つのも有効でしょう。

美容整形外科クリニックの事例

ある美容整形外科クリニックでは、前月に来店した顧客を対象に、毎月NPSⓇ調査を実施しています。算出したNPSⓇスコアで各クリニックをランク付けし、スコアの平均値も可視化することで、具体的な数値目標を立てやすくしました。

その結果、各店舗が競争意識を持ってNPSⓇの向上に取り組むようになり、結果的に高い顧客ロイヤルティを得ることに成功しています。施術別・施術者別にNPSⓇスコアを出して具体的な改善点を見出したのも、効率的に顧客ロイヤルティを高められた要因といえるでしょう。

まとめ

ここでは、顧客ロイヤルティの概要や高めるメリット、顧客ロイヤルティを高める手法や成功事例について説明しました。

顧客ロイヤルティはすぐに高めるのは難しいため、長期的な視野で施策を進めることが大切です。ここで説明した内容を参考にして顧客ロイヤルティを高め、安定的な集客や売上を維持しましょう。

ロイヤルカスタマーについては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

ロイヤルカスタマーが重要な理由は?分析・育成方法や成功事例を紹介

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