企業が提供する商品サービスの魅力をより多くの消費者に知ってもらうためには、発信する情報を広く拡散させることが大切です。しかし、最近のインターネットはさまざまな企業が発信する情報であふれているため、自社の情報を広めるのは簡単ではありません。
そのような状況下で自社の認知度を高める手法として、「バズマーケティング」があります。バズマーケティングはマーケティング手法の1つで「言葉は聞いたことがあるけれど、詳しいことはよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。
そのような方に向けて、この記事では「そもそもバズマーケティングとは何か?」という概要から、メリットや具体的な手法、バズマーケティングに成功した企業の事例について詳しく説明します。
目次
そもそもバズマーケティングとは?
バズマーケティングとは、口コミを戦略的に活用して企業の情報を広めるマーケティング手法です。とくにSNS上で自社や自店に関する情報拡散を狙うのがバズマーケティングの基本となっています。「バズ」は、英語の「Buzz」が由来となっており、「がやがや言う・うわさになる」といった意味合いがあります。日常会話やテレビ、動画などで「バズる」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
SNS上で消費者の支持や共感を集める投稿は、「いいね」「シェア」などの機能によって、フォロワーの先にいるフォロワーにも連鎖的に閲覧されるようになります。場合によっては、2~3日間などの短期間で数百万の人に投稿を見てもらえるケースもあるようです。
バズマーケティングと似たマーケティング手法として「バイラルマーケティング」という言葉があります。2つの手法は口コミを活用して、商品やサービスの認知獲得を目指すという点は共通していますが、企業の戦略が異なります。具体的に、バズマーケティングは扱っている商品やサービスをバズらせるために企業が能動的に活動するという特徴があります。
一方で、バイラルマーケティングは商品やサービスの口コミが人から人へと自然と広がるように戦略を立てていきます。
参考:Vol.234-2 「バズる」考察 ~あるツイートを追って~
バズマーケティングをおこなうメリット
それでは、バズマーケティングをおこなうメリットとは何なのでしょうか?
ここでは、代表的な5つのメリットを紹介します。
- 企業の情報が幅広く拡散され認知度を高められる
- 消費者からの評価を集められる
- 商品やサービスのブランディングにつながる
- 集客数や売上を伸ばしやすくなる
- コストパフォーマンスが高い
企業の情報が幅広く拡散され認知度を高められる
バズマーケティングの大きなメリットは、企業や店舗に関する情報を幅広く拡散させ、認知度を高められることです。どれだけ魅力的な商品やサービスを販売していても、まずは消費者に認知してもらえなければ購入を検討してもらうことすらできません。
「有名人が〇〇社のファッションアイテムをおすすめしていた」「SNSで投稿を拡散した人に限って期間限定でITツールを無料体験できる」といった情報がたくさんの消費者に広まれば、企業や商品・サービスの認知度を上げ、興味を持ってもらいやすくなるでしょう。
また、従来は人と人の会話を通して口コミが広まっていましたが、近年はインターネット上で手軽に口コミを広められるようになっています。「いいね」「シェア」などの操作はボタン一つで簡単にできるため、情報が広まるまでの時間が短くなりやすいのもバズマーケティングのメリットだといえます。
消費者からの評価を集められる
企業が消費者の求める商品やサービスを提供できているか、効果の高いマーケティングができているかを評価するためには、消費者の声を確認することが大切です。バズマーケティングではたくさんの消費者の声が広まるため、多種多様な評価を集められます。
また、一般的に消費者目線で発信される忖度(そんたく)のない口コミ情報は企業が一方的に発信する情報よりも信頼されやすいと言われています。ニールセンが2020年に行った調査によれば、「インターネット上の口コミを信頼する」と回答した人が36%という結果となりました(バナー広告をはじめとしたインターネット広告の信頼度は10~18%)。
「〇〇店の新メニューがすごく美味しかった」「以前よりも利便性の高いサービスになっていて驚いた」といった口コミが広まれば、購入を前向きに検討してもらいやすくなります。一方で「デザインはいいが、価格がやや高く感じる」といった反応が多ければ、「仕入れや製造コストを抑えて販売価格を抑えよう」のような対策を立案できるでしょう。
参考:オンラインで検討してから店舗で購入する割合が増加/口コミへの信頼度は低下【ニールセン デジタル調査】 (2024年5月時点)
商品やサービスのブランディングにつながる
消費者の信頼感を高められるバズマーケティングは、商品やサービスのブランディングにもつながります。
商品やサービスに関して、消費者同士でコミュニケーションをする過程で「この商品・サービスにはこのような特徴がある」という意識づけがなされます。そうすることで、市場の中で、競合他社と異なる独自のポジションを確立することも可能です。
「洗剤を購入するのであれば、SNSでいい香りがすると話題になった〇〇を購入しよう」「40代の主婦の間で口コミ評価が高い化粧水といえば〇〇」といったブランドを構築できれば、マーケティングのコストを抑えながらでも、商品やサービスを手にとってもらいやすくなるでしょう。
集客数や売上を伸ばしやすくなる
バズマーケティングでは、企業の商品やサービスに関する認知度を高められるため、集客数や売上を伸ばしやすくなるというメリットもあります。
とくに、新商品や新サービスを発売する場合、消費者の多くは「購入して失敗したくない」という気持ちから、購入に消極的になりがちです。発売開始しても市場に受け入れられるまでに一定の期間がかかるので、開発コストやマーケティングにかかる費用を回収して利益につなげるのは簡単ではないでしょう。
しかし、バズマーケティングで商品やサービスに関する魅力的な情報を広め、消費者が感じうる不安や疑問を解消しておけば、発売してから短期間で多くの集客数や売上を出すことも可能です。
「〇〇店のオープンが待ち遠しい」「〇〇社が発売する新製品を発売日に手に入れたい」と思わせるマーケティングができれば、バズマーケティングが成功したといえるでしょう。
コストパフォーマンスが高い
SNSを活用するバズマーケティングは、広告やCMを出す場合と比較して、コストが安くなる傾向にあります。なぜなら、SNS上で商品やサービスで拡散し、認知向上を主にサポートしてくれるのは、消費者だからです。そのため、消費者が拡散したくなるような商品やサービスの提供や戦略を立案できれば、実際にバズることにも期待ができるでしょう。そして、商品やサービスの認知向上やイメージアップにつなげることができれば、費用対効果にも期待が持てます。
バズマーケティングをおこなうデメリット
上記では、バズマーケティングをおこなうメリットを解説しましたが、バズマーケティングをおこなうデメリットもいくつか存在します。一般的には3つのデメリットが挙げられます。
まず1つ目は、効果が瞬間的に終わってしまう恐れがあることです。バズマーケティングの特性上、短い期間で商品やサービスの認知をしてもらえる強みがある一方で、継続的に効果を持続させることが難しいとされています。そのため、瞬間的な認知で終わってしまわず、継続的に認知し続けてもらえるように、リーピーター特典を設けたり、商品やサービスの改良を行ったりして、消費者を飽きさせない工夫をすることが重要です。
2つ目は、ネガティブな口コミが広がる恐れがあることです。バズマーケティングでは、消費者の口コミによって、商品やサービスを認知してもらうマーケティング手法のため、ポジティブな声がある一方で、ネガティブな声を避けることは難しいでしょう。そのためネガティブな意見も受け止め、よりよい商品やサービスの改良のヒントに活用するようにしましょう。
最後に3つ目として、誤った情報が拡散される恐れがあることです。SNSでの拡散は消費者が行うため、正しい情報だけでなく、誤った情報が拡散されることも想定され、コントロールはできません。間違った情報で認知されてしまうと、企業のイメージダウンや客離れにつながることも考えられます。
そのため、バズマーケティングは、コントロールすることができないマーケティング手法ということを念頭に置き、定期的に拡散された情報が正しいものなのか確認・修正対応を行うようにしましょう。
バズマーケティングの具体的な手法とは?
企業にさまざまなメリットをもたらすバズマーケティングですが、実際にどのような手法で取り組めばよいのでしょうか。バズマーケティングの手法として、次の3つが挙げられます。
- インフルエンサーを起用する
- 企業自身が情報発信をする
- SNSを活用した特典を用意する
インフルエンサーを起用する
インフルエンサーとは、主にSNSを使った情報発信で世間に大きな影響力を及ぼす人物のことです。
具体例として、SNSの活動を通して多くのファンを抱えるユーチューバーやインスタグラマーが分かりやすいでしょう。芸能人やモデル、俳優といった人物はもちろん、タレント事務所に所属していない個人が大きな影響力を持つケースも多くなっています。
インフルエンサーは、それぞれの個性を活かしたコンテンツを発信して注目を集めていますが、これをマーケティングに活かせば、企業が提供する商品やサービスに対して、たくさんの消費者に興味を持ってもらいやすくなります。
たとえば、「グルメ系コンテンツで支持を集めているインフルエンサーに自社の焼き肉店を利用してもらい、動画を配信してもらう」「新デザインのファッションアイテムを人気インスタグラマーに紹介してもらう」といった手法をとれば、インフルエンサーを支持している消費者に広く企業の情報を拡散できます。
企業自身が情報発信をする
企業自身が情報発信をする方法には、SNSの活用やプレリリース配信を行うという手段があります。多くのユーザーに情報発信をしたいと考えた際、例えばインフルエンサーに企業の商品やサービスの魅力を紹介してもらうことが1つの手段として挙げられますが、予算やテーマによっては「起用するインフルエンサーが見つからない」というケースもあるでしょう。その場合、企業や店舗自身でSNSのアカウントを作り、投稿や動画配信をすることで情報を拡散することも可能です。
また、とくにフォロワーが少ないアカウントの場合、単純にSNSに投稿しただけでは、拡散させるのは簡単ではありません。そのような場合でも消費者にシェアしてもらうためには、投稿内容をしっかりと練る必要があります。
シェアしてもらうための具体的なアイデア例について以下にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
- 時事ネタに合わせた投稿
- 企業の専門性を活かしたお役立ちコンテンツを投稿
- シェアすることで消費者にメリットがあるような投稿
- エンターテイメント性の高い投稿(感動・面白い投稿)
また、企業の情報発信の手段として、SNSを活用する以外にも、プレスリリース配信というもので情報発信を行うことが可能です。プレスリリース配信とは、企業や組織が新商品・新サービスなどをマスコミに知らせるための文書のことを指します。
新聞社やニュースサイトの目に留まって記事化された情報は、インフルエンサーや情報感度の高いユーザーに届く可能性もあるため、バズマーケティングで多くの人に情報を届けるには、プレスリリース配信は重要な要素となるでしょう。
SNSを活用した特典を用意する
戦略的に情報を拡散してもらうためには、SNSを活用した特典を用意するのもおすすめです。
X(旧Twitter)で見かける「フォロー&リツイートで○○プレゼント」といったキャンペーンも、特典を用意することで話題性をつくる戦略の1つです。
特典の具体例として、「特定のキーワードを含んだ投稿をした人にはクーポンプレゼント」「口コミを投稿してくれた人にはドリンク1杯サービス」といったものが挙げられます。SNSで投稿してもらう際には、オリジナルのハッシュタグを活用してもらうようにするとよいでしょう。オリジナルハッシュタグとは、企業がキャンペーンのために独自で作ったものを指します。「#○○」という形で表示され、消費者が日常的に使用したくなるようなオリジナルハッシュタグを作ることができれば、さらなる情報の拡散に期待することができるでしょう。また、特典自体に話題性のあるものを用意することで、さらに情報の拡散をさせやすくすることもできます。
バズマーケティングを成功させるポイント
バズマーケティングを成功させるには、どのようなポイントを抑える必要があるのでしょうか。ここでは、バズマーケティングを成功させるためのポイントを3つ紹介します。
ターゲットの特徴に合わせてSNSを利用する
バズマーケティングのようなSNSマーケティングでは、自社の商品やサービスを利用する消費者の特徴と一致するSNSを選択、もしくは組み合わせて使用することが重要です。例えばインスタグラムでは、写真投稿がメインのSNSでユーザー層は10代から20代が中心となっています。各SNSの特徴やユーザー層を理解して、自社がアピールしたいのはどんなユーザーかを把握してSNS運用をするようにしましょう。
SNSごとの特徴をこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください
トレンドを意識した内容にする
トレンドを意識した内容を発信することで、SNSを利用しているユーザーの興味・関心を引き、拡散されることに期待ができます。トレンドの移り変わりに合わせて、アピールする商品やサービスを変えたり、アピール方法を変えるなど工夫するようにしましょう。
バズマーケティングの経験やノウハウを掴む
バズマーケティングで成功させるには、経験やノウハウを掴むことが重要です。自己流で進めてしまうと求めている効果を実感することができないという状況に陥ってしまう場合もあります。自社にノウハウがないという場合は、バズマーケティングで過去成功した企業の事例や同業種の企業で実施していたキャンペーンなどの戦略を取り入れることができないかを検討することも大切です。
バズマーケティングの成功事例
ここまでは、バズマーケティングの具体的な手法について説明しました。バズマーケティングに関する理解をさらに深めるには、他社の事例を知っておくことも大切です。以下では、バズマーケティングの事例を3つ紹介します。
「ケータイ代が一生無料」キャンペーン事例
国内の大手電気通信事業会社の事例です。この会社は2013年に、フェイスブックページの開設1周年を記念して、「一生分の携帯電話の利用料金(5,188,000円)が1名に当たる」キャンペーンを実施し、話題作りに成功しました。
フェイスブックページへの「いいね!」を参加条件にすることで、多くの新規ユーザーに自社のページが閲覧されるようにしています。「ケータイ代が一生無料」という商品自体のインパクトも大きいため、口コミが広く拡散したようです。
参考:[2013年4月第4回]話題のソーシャルメディアキャンペーン事例 今週のまとめ!《ソフトバンク、HIS、映画「めめめのくらげ」×UHA味覚糖”e-ma”など9選》 (2024年5月時点)
「商品を買わない理由を買い取る」事例
ある国内大手製菓メーカーでは、「商品を買わない理由を100円で買い取る」というキャンペーンをX(旧Twitter)でおこなうことで消費者の注目を集めることに成功しました。
口コミと聞くと、「自社に好意的な口コミ」だけに目が行きがちですが、この企業は「商品を購入しない理由」に関する口コミに限定して買い取ったのが特徴です。
「あえて否定的な口コミを集めて、商品やサービスの改善に取り組む」という意外性が注目され、開始翌日に4万件以上のリツイートを集めることができました。
集まった口コミをもとに自社商品を改善させられただけでなく、公式SNSのファンを増やして消費者同士のコミュニケーションを増やせたので、企業や認知度をさらに高めることに成功しています。
参考:苦境逆手に、森永焼きチョコ「ベイク」の自虐ツイートに大反響 (2024年5月時点)
「「投票形式で販売する商品を決める」口コミ事例
アイスメーカーでは、「投票で1位になった過去に登場したフレーバーを復活させる」という投票企画を実施しました。各SNSアカウントから1日1回投票することができ、投票した人の中から抽選で1位になったフレーバーをプレゼントするというキャンペーン内容でした。過去に販売されていたフレーバーを再び楽しむことができるという、過去の体験をユーザーに想起させた結果、投票数は16万票を突破しました。
参考:10個の事例から学ぶ「バズマーケティング」を成功させるためのコツ | LISKUL (2024年5月時点)
まとめ
今回はバズマーケティングの活用するメリットとデメリット、具体的な手法や事例について紹介しました。バズマーケティングは情報が一気に拡散され、多くの人に情報を知ってもらえることに期待できますが、瞬間的な情報の拡散になってしまう可能性もあります。そのため、メリットやデメリットを把握したうえで、自社で扱っている商品やサービスと合致するかなどで導入の検討を行うようにしましょう。