マーケティングにもさまざまな手法がありますが、方法によっては顧客の信頼を裏切ることになり、企業のイメージを低下させる可能性があります。特に、芸能人やインフルエンサーなどを活用した「ステマ」という行為は、企業や起用した人物の信頼や評価を傷つけてしまうため避けるべきです。
特に、画像に特化したSNSであるインスタグラムは、ステマだと思われかねない投稿がよく見られます。2019年に株式会社018が実施した調査によれば、インスタグラムを利用するインフルエンサーのうち、「実際にステマをしたことがある」という人が約7割と、実際にステマが横行していることがうかがえる結果が出ています。
参考:現役インフルエンサーの70%以上が有料案件でステルスマーケティング投稿の経験あり。合計218名にPR投稿に関する意識調査のアンケート結果を発表。
しかし、企業の担当者によっては「なぜインスタグラムにはステマが横行しているのだろう」「ステマにならないようにSNSマーケティングするにはどうすればよいのだろう」と思う人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ステマの概要やインスタグラムでステマが横行する理由、ステマにならないようにするためのポイントやマーケティングにインフルエンサーを起用する際の注意点について説明します。
目次
そもそもステマ(ステルスマーケティング)とは?
そもそもステマとは、「ステルスマーケティング」という言葉を省略したもので、宣伝であると顧客に気づかれないように動画や画像、口コミやレビューなどの情報を発信する行為です。
たとえば、企業が芸能人やインフルエンサー、有名ブロガーなどに報酬を支払って、宣伝であると分からないように商品やサービスのレビューを依頼したり、企業内の人物が顧客になりすまして商品やサービスの魅力をアピールしたりするケースが当てはまります。
このような行為によって一時的に売上が伸びたとしても、消費者にステマであると判断されると、情報が急速に拡散され、企業だけでなく情報発信した人間の信用まで失ってしまいます。故意にステマをすることは絶対にいけませんが、うっかりステマと捉えられるようなマーケティングをしないようにするため、担当者は「どのような手法がステマとなるのか」よく理解しておく必要があります。
インスタでステマが横行する理由とは?
顧客への影響力は高いものの、企業に損害を与えるリスクが大きいステマですが、先述したように、画像に特化したSNSである「インスタグラム」はステマと思われる投稿がたくさんあるようです。
インターネットを利用して情報発信する媒体はほかにもたくさんありますが、なぜインスタグラムでステマが横行しているのでしょうか。
以下では、インスタグラムでステマが横行する理由について説明します。
効果的なマーケティングを意図的にできるから
現代のインターネットやテレビは、自社商品やサービスをアピールする広告であふれています。中には効果を誇張する広告もあるため、「広告に表示されている内容を完全に信用していない」という消費者も多いでしょう。
しかし、影響力のある人物が口コミやレビューなどで企業の商品やサービスを紹介すると、それがステマだと気づかずに信用してしまう顧客もいるようです。
特に、インスタグラムには「インスタグラマー」と呼ばれる、ファンをたくさん獲得しているユーザーが多数存在します。
そのような人物が、報酬をもらっていることを隠して商品やサービスをアピールすると、投稿を見たファンは「人気のあるインスタグラマーが紹介している商品だから高い効果が得られるはずだ」「自分も同じ商品を手に入れたい」と思い、注文や来店といった行動につながります。
このように、インスタグラマーを利用することで、意図的かつ容易に顧客の興味や関心を高められるので、ステマをする企業が後を絶たないのだと推測されます。
企業のステマに対する認識が不足しているから
先述したように、ステマが発覚すると企業や起用した人物の信頼を損ねてしまいます。
しかし社内で「どのようなマーケティングがステマに該当するのか」という線引きが明確になっていないと、知らないうちに担当者がステマと認定されるような行為をしてしまう可能性があります。
「意図していないのに、気がついたらステマをしているという評判が広まり、売上が下がってしまった」のようなトラブルを避けるためにも、ステマに関する認識を企業内で統一させましょう。
ステマにならないようにインスタを活用する方法
画像投稿に特化したSNSであるインスタグラムは、視覚的なアピールができるので顧客にインパクトを与えやすいというメリットがあります。しかし、投稿内容やレビューを依頼する人物との関係性などによっては顧客にステマだと疑われかねないので、慎重にマーケティング施策を考えなければなりません。
以下では、ステマにならないようにインスタグラムでマーケティングをおこなうポイントを説明します。
広告主とインフルエンサーの関係性を記載する
企業がインフルエンサーを起用する場合は、投稿に広告主とインフルエンサーの関係性を記載することで、ステマと捉えられるリスクを小さくできます。
たとえば、「この投稿は、○○社とタイアップしたものです」と投稿すれば、「このインフルエンサーは企業から金銭や商品、サービスの提供を受けて投稿している」ということが顧客に伝わります。ほかにも、「〇〇社から来月発売の新商品をいただきました」「○○社から新サービスの体験イベントに招待してもらいました」のような投稿があると、企業とインフルエンサーにつながりがあることが伝わるので、ステマだと思われにくくなります。
また、インフルエンサーとの間に業者が介入しているケースもあります。その場合、中間業者の関係性を伝えるだけでは、「販売元の企業との関係性を隠している」と思われる可能性があるため、販売元の企業との関係性が伝わるような投稿にする必要があります。
投稿する方法は、必ずしもテキストでなければならないわけではありません。インスタグラムでは画像や動画の投稿もできるので、その中で企業との関係性を伝える方法もあります。
ただし「画像内にタイアップの記載があるものの、内容が見にくい」「音声が聞き取りにくい」という場合、「意図的に企業との関係性を隠そうとしている」と思われかねません。企業との関係性が一目瞭然で伝わる投稿になっているかという視点でチェックすることが大切です。
ハッシュタグで広告であることをアピールする
ステマと捉えられないためには、広告主との関係性を明示することが大切と伝えました。投稿の世界観を損なわずに、なるべく自然に広告であることをアピールするには、「ハッシュタグ」を活用するのがおすすめです。ハッシュタグとは、特定のキーワードをタグとして機能させる仕組みです。
たとえば、「#サービス提供」「#プレゼント企画」「#モニター」といったハッシュタグを投稿に含めれば、企業から商品やサービスなどを受け取って広告していることが伝わりやすくなります。また、金銭も受け取っている場合は、「#プロモーション」「#提供」「#タイアップ」などのハッシュタグを含めると自然に伝わるでしょう。
虚偽の情報を発信しない
企業の商品やサービスへの興味・関心を高めるためには、なるべく魅力的な投稿をする必要があります。しかし、顧客に注目してもらおうと虚偽の情報を発信すると、それが発覚したときに企業の信用を著しく損ねてしまいます。
たとえば、「いいね」や「コメント」を対価を支払って集めて顧客にアピールしたり、顧客から集めたレビューを改ざんして投稿したりすることが挙げられます。虚偽の情報発信をする方法はほかにもたくさんありますが、顧客を欺く投稿にならないよう倫理観を持ってマーケティングをおこなうことが大切です。
実際にあったステマの事例を紹介
ここまでは、ステマにならないようにインスタグラムでマーケティングするポイントについて説明しました。ステマにもさまざまな種類がありますが、実際にあった事例を知っておくとさらに理解を深められます。
以下では、実際にあったステマの事例を2つ紹介します。
ゲーム機メーカーの事例
2000年代前半はゲーム機市場の競争が激しかったため、多くのゲーム機メーカーがシェアを奪い合っていました。あるゲーム機メーカーも、市場でシェアを拡大させるためにさまざまなマーケティング施策に取り組んでいましたが、あるとき主力のゲーム機に不具合があることが発見され、メーカーに危機が訪れました。
そのゲーム機メーカーは、素性を隠したまま、不具合のあるゲーム機を擁護しつつ他社のゲーム機の評判を落とす情報をインターネット上に多数投稿していました。その後、不具合を起こしたゲーム機メーカーが組織的に投稿したものであることが発覚し、顧客からの評判を落としてしまいました。
参考:ステマ(ステルスマーケティング)とは?事例6選と絶対にやってはいけない3つの理由
グルメサイトの事例
飲食店の予約や口コミの投稿ができるグルメサイトでは、多くの利用者が、ユーザーの評価を参考に利用する店舗を決めています。しかし、あるグルメサイトでは、業者が飲食店に高評価や前向きなコメントをたくさん投稿する見返りに、店舗から金銭を受け取るという行為が2012年に判明したため、顧客の信頼を損ねてしまいました。
また、この行為はグルメサイトがおこなっていたわけでなく、サイトに登録している店舗と業者の間でおこなわれていたため、グルメサイトにとっては意図せず評判が落ちたことになります。このように、企業が知らないところでステマがおこなわれるケースもあるため、ステマを予防するルールや仕組みづくりをすることが大切です。
マーケティングにインフルエンサーを起用する際の注意点
マーケティングにインフルエンサーを起用する場合は、企業との関係性を示すだけでなく次の注意点を意識することも大切です。
以下では、これらの注意点について詳しく説明します。
日頃からインフルエンサーの投稿をチェックする
先述したように、多くの顧客に影響力があるインフルエンサーであれば、誰でも起用してよいわけではありません。インフルエンサーによっては商品やサービスと関連性のない投稿ばかりしていたり、企業のコンセプトやイメージにそぐわない投稿をしていたりする場合があります。
そのようなインフルエンサーが企業の商品やサービスをアピールするとなると、思ったような集客効果や売上を出せなくなるだけでなく、かえって企業のイメージを低下させかねません。起用するインフルエンサーを選ぶ際は、日頃からどのような投稿をしており、フォロワーとどのようなコミュニケーションを取っているかをチェックしましょう。
競合が起用したインフルエンサーに依頼するのは避ける
起用するインフルエンサーを決めても、人物によってはすでに競合他社が起用しているかもしれません。そのような人物を起用すると、1人のインフルエンサーが短期間で複数社の商品やサービスを紹介することになるため、顧客に違和感を与える可能性があります。
たとえ顧客との関係性を明示していても、「報酬を受け取るためにいいことだけを紹介しているのではないか」と思われるかもしれません。投稿の信頼性が疑われると、マーケティングをしても顧客の興味や関心を高めにくくなります。インフルエンサーを起用する際は、なるべく競合が起用していない人物を選びましょう。
まとめ
ここでは、ステマがどのような行為なのか、なぜインスタグラムでステマが横行しているのかを説明したうえで、ステマにならないようにインスタグラムをマーケティングに活用するポイントやインフルエンサーを起用する際の注意点について説明しました。
インターネットやSNS、ITツールの普及によってマーケティング手法の幅は広がりましたが、気がつかないうちにステマをしている場合があるので、実践しようとするマーケティングがステマに該当しないかを慎重に検討する必要があります。ここで説明した内容を参考にして、ステマにならないように集客数や売上を伸ばせるマーケティングをしましょう。