「企業が主力としている商品を顧客に購入してもらえない」「おすすめ商品をどれだけアピールしても集客につながらない」と悩む企業の担当者も多いのではないでしょうか。
商品やサービスの種類によっては、「価格が高い」「契約するハードルが高い」のように、簡単に売上につなげられないものも多いでしょう。
そのような悩みを抱えている場合、「フロントエンド商品」「バックエンド商品」をうまく使い分けて顧客にアピールすれば、顧客の購入へのハードルを下げて、計画的に売上を伸ばせる見込みがあります。
ここでは、フロントエンド商品に焦点を当てて、概要や商品戦略のコツ、これらの商品戦略に成功した企業の事例について説明します。
目次
フロントエンド商品とは?
そもそもフロントエンド商品とは、「フロント(前の)」という言葉が含まれているように、顧客を呼び込むために、始めに提供する商品やサービスのことをいいます。
わかりやすい例として、健康食品や化粧品の無料サンプルや、脱毛サロンの「ワンコインで通い放題キャンペーン」があります。魅力的な価格で商品やサービスを体験できるので、多くのユーザーの関心を引くことに成功しています。
フロントエンド商品の種類や品質によって、顧客が企業に興味を持ってくれるか、今後継続的に利用してくれるかが変わるため、顧客にとって魅力的な商品にするよう慎重に検討しなければなりません。
バックエンド商品とは?
フロントエンド商品とあわせて設定される商品に、「バックエンド商品」があります。バックエンド商品は、「バック(後ろの)」という言葉が含まれているように、フロントエンド商品を購入してもらった後に販売する商品やサービスを指します。
たとえば、ハンバーグ専門店のバックエンド商品としては、付け合せのポテトやドリンクやデザートなどが挙げられます。また、脱毛サロンでは、全身脱毛などの単価の高いサービスがバックエンド商品に該当します。
バックエンド商品が魅力的であっても、フロントエンド商品の品質が期待よりも低く顧客の満足度を高められなければ購入・利用してもらうことはできません。
バックエンド商品の購入数を増やしたいのであれば、顧客の興味や関心を引くだけでなく、購入後も満足してもらえるようなフロントエンド商品を用意する必要があります。
フロントエンド商品を展開するメリット
では、フロントエンド商品を展開すると、どのようなメリットが生じるのでしょうか。フロントエンド商品を展開するメリットとして、次の3つが挙げられます。
以下では、これらのメリットについて詳しく説明します。
新規顧客を獲得しやすくなる
フロントエンド商品を用意すると、消費者の興味や関心を高められるため、新規顧客を獲得しやすくなります。「購入するメリットが大きい」と感じるものほど、顧客に商品やサービスを利用してもらいやすくなるので、なるべく購入するハードルが低いものを選ぶのがポイントです。
たとえば、パソコンを販売する店舗の場合、パソコン関連商品の割引セールを実施してお得感を出すことで、顧客を集めやすくなります。「ついでに店内にあるパソコンも見てみよう」と思ってもらえれば、バックエンド商品であるパソコンの販売につなげられるでしょう。また、「他社よりもお得に商品が手に入るから今後も利用しよう」と思ってもらえれば、継続的に売上を出すことにもつながります。
短期的な成果が見込める
先述したように、フロントエンド商品を用意すると新規顧客を集めやすくなるため、短期的に企業の売上を伸ばすことができます。特に、オープンしたばかりの店舗では、顧客の認知度が低いため売上の不安定な時期が長くなりがちです。しかし、フロントエンド商品を用意して短期間で売上を伸ばすことができれば、早期に事業を安定させられます。
たとえば、ラーメン店をオープンして「1ヵ月間は大盛り・替え玉無料で提供する」という施策を取れば、短期間で顧客を集めて主力商品であるラーメンの売上を伸ばせるでしょう。エステサロンをオープンした場合は、「カウンセリング無料キャンペーン」を打ち出すことで、「カウンセリングだけでも受けてみたい」と思う顧客を効率的に集め、施術の予約につなげられます。
効率的なマーケティングにつなげられる
フロントエンド商品で多くの顧客を呼び込み、データを分析すれば、より効率的なマーケティング施策を考えられます。
たとえば、スーパーで野菜の特売セールを実施して多くの顧客を呼び込めば、それだけたくさんの顧客がレジを通過します。レジで顧客1人ひとりの年代や性別、来店人数などを入力し、データを分析して「特売セールに来店した顧客層は50代の主婦が多い」という結果が得られれば、「周辺エリアの新聞折込チラシで店舗の情報をアピールする」のような施策を取ることができます。
的確なデータ分析にもとづいてマーケティングすれば、効率的にターゲット層に情報を届けて集客につなげられます。
フロントエンド商品を展開するデメリット
実施することでさまざまなメリットが得られるフロントエンド商品戦略ですが、次のデメリットもあります。
以下では、これらのデメリットについて詳しく説明します。
バックエンド商品につなげる仕組みづくりが必要
先述したようにフロントエンド商品を用意すれば、短期間で顧客を集めて売上を出せます。しかし、メインで販売したいバックエンド商品を購入してもらうには、フロントエンド商品からバックエンド商品につなげる仕組みづくりが必要です。
もし「引っ越しの見積もりを無料でおこないます」のようなアピールをして多くの顧客を呼び込めても、収益源となる引っ越しの契約に結びつかなければ意味がありません。
「この場で申し込めばクオカードプレゼント」「エアコンの取り付けや取り外しを無料でおこなう」など、「この企業で契約すれば他社よりもお得に引越しできるかもしれない」と思ってもらえる仕組みを整えれば、バックエンド商品である引っ越し契約につなげやすくなります。
バックエンド商品が購入される機会を失う可能性がある
フロントエンド商品を用意すると、バックエンド商品の購入を目的として来店した顧客の購入機会を失う可能性があります。
たとえば、「子どもの入学式のためにスーツを購入しよう」と来店した顧客がいた場合、フロントエンド商品として「前年モデルのドレスを半額で提供する」という施策を取ると、「スーツではなく、割安で販売されているドレスを購入しよう」と思われてスーツの売上が伸び悩むかもしれません。居酒屋で「生ビール半額キャンペーン」を打ち出すと、「高級なワインを飲みたい」と思っている顧客が生ビールを注文することでワインが売れにくくなる可能性があります。
このような事態を避けるには、「スーツを購入した人だけを対象に前年モデルのドレスを半額で販売する」「会計金額3,000円以上であれば生ビールを半額にする」のような施策によって、バックエンド商品の売上を伸ばす戦略を考える必要があります。
フロントエンド商品・バックエンド商品戦略のコツ
ここまでは、フロントエンド商品戦略のメリットデメリットについて説明しました。フロントエンド商品・バックエンド商品戦略を成功させるには、次のコツを意識することも大切です。
以下では、これらのコツについて詳しく説明します。
フロントエンド商品とバックエンド商品で一貫性を持たせる
フロントエンド商品・バックエンド商品戦略を取る場合、それぞれの商品で一貫性を持たせることが大切です。もしエステサロンが「初回来店でネイルケア無料」というキャンペーンを打ち出した場合、来店した顧客に痩身エステの施術を契約させるのは困難でしょう。
バックエンド商品を計画的に販売するには、その商品がフロントエンド商品と関連性があるものでなければなりません。
この場合、「初回来店でカウンセリング無料」というキャンペーンを打ち出せば、顧客がネイルケアのニーズが高いのか、瘦身エステのニーズが高いのかを判断して、適切なサービスを提案できます。フロントエンド商品からうまくバックエンド商品へとつなげれば、それだけ大きな売上を出せるでしょう。
生涯顧客価値を考えて戦略を考える
フロントエンド商品を販売するときは、より多くの顧客に存在を知ってもらう必要があります。事業の規模を拡大するためには、宣伝・広告にコストを使い、フロントエンド商品の認知を広げるのも選択肢の1つです。
新規顧客を集めるために一時的なコストがかかっても、生涯顧客価値が高ければ結果的に企業の利益はプラスになります。
生涯顧客価値とは、顧客が企業と関係を持つ期間で企業にもたらす利益のことです。
たとえば、パスタ店に訪れる顧客の平均購入金額が、1回あたり1,200円だとします。そして、顧客が1年あたり3回来店して5年間店舗を利用してくれるのであれば、生涯顧客価値は18,000円になります。
もし、フロントエンド商品を用意して顧客を1人集めるのに2,000円の費用がかかるのであれば、初回来店時の利益は800円マイナスになります。しかし、生涯顧客価値を考えるとそのマイナスは長期的に回収できます。
このように、長期的に集客数や売上を伸ばすには、生涯顧客価値を考えながらフロントエンド商品を設定することも大切です。
フロントエンド商品・バックエンド商品戦略の成功事例
フロントエンド商品・バックエンド商品戦略をより具体的にイメージするには、他社の戦略を知ることも重要です。
以下では、この戦略で成功した他社の事例を紹介します。
ハンバーガーチェーン店の成功事例
ある大手ハンバーガーチェーン店では、フロントエンド商品として「100円のハンバーガーやコーヒー」「お得なクーポン」を設定し、消費者の興味や関心を高めています。
来店した顧客に対しては、バックエンド商品の「セットメニュー」「デザート」を購入してもらうことで、売上を伸ばしています。
ただ割安で商品を注文してもらうだけでなく、より単価の高い商品の注文も同時に促しているため、フロントエンド商品からバックエンド商品の購入にうまく移行させています。
動画配信サービスの成功事例
ある海外の動画配信サービスは、バックエンド商品を「動画配信サービスの利用」として集客しています。
動画配信サービスを手がける企業は多いため、顧客を獲得するのは簡単ではありません。また、「サービスを利用して満足できなかったらどうしよう」「利用したいコンテンツがなかったら後悔しそう」という顧客も多いため、利用するまでのハードルが高いサービスであることも、集客が難しい要因となっています。
しかし、このサービスでは、「2週間の無料お試し期間」というフロントエンド商品を設けることで、顧客の利用ハードルを下げることに成功しています。実際にサービスを利用体験してもらい、コンテンツに満足すれば継続利用してもらう仕組みを設けたことから、「費用がかからないなら試しに利用してみよう」と思ってもらい、本格的なサービス利用につなげられています。
まとめ
ここでは、フロントエンド商品の概要やメリットデメリット、フロントエンド商品・バックエンド商品戦略のコツや他社の成功事例について説明しました。
業種やターゲットによって設定すべきフロントエンド商品は異なるため、さまざまな施策を試し、バックエンド商品の売上につながる施策へ改善することが大切です。ここで説明した内容を参考にして、集客数や売上アップにつながる商品戦略を考えましょう。
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