不動産会社を経営するうえで「集客」できるかどうかは、売り上げに直結します。ただし不動産会社の集客方法には多くの種類があるものの、いずれも簡単ではありません。
「正しい集客の方法がわからない」「集客してもなかなか効果が出ない」といった悩みを持つ方も多いでしょう。そこで今回は、不動産会社向けにオンラインやオフラインの広告手法をそれぞれ紹介します。
本記事を読むことで、自社が取り組むべき広告手法の選択に役立つでしょう。また、あわせて不動産会社の集客が難しい理由についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
不動産会社の集客が難しい理由とは?
不動産業界での集客が難しい理由は1つではありません。ここでは代表的な理由を3つ解説します。
人口減少が進んでいるから
不動産会社の集客が難しい理由の1つに「人口減少」が挙げられます。昨今、日本の人口減少は深刻な問題となっており、それは不動産会社においても例外ではありません。
総務省の発表では、2008年をピークに総人口は減少に転じており、2050年には日本の総人口は1億人を下回ると予測されています。また人口構成も変化し、1997年には、65歳以上の高齢人口が14歳未満の若年人口の割合を上回るともされているのです。
この現状からも、不動産業界における不動産売買や賃貸などの顧客数は減少すると予想ができます。顧客数の減少は、業者間での競争が激化させ、正しい集客方法を実施できない不動産会社は、生き残りが難しくなる可能性があるのです。
他社との差別化が難しくなったから
2つの理由として、集客においての「他社との差別化」が難しくなったことも挙げられます。昨今、不動産の情報はインターネットを利用すれば、誰でもすぐに入手可能です。
情報自体は飽和状態であり、従来どおりの情報を発信するだけでは、他社との差別化を図れなくなっています。今後は不動産会社ごとの独自情報を発信するなど、これまでとは異なる集客方法を選ぶ必要があるでしょう。
消費者の購買プロセスが変化したから
消費者の購買における過程の変化も大きく影響しています。前述のとおり、不動産に関する情報はインターネットを利用すればすぐに入手できる時代です。
その影響から、不動産購入や賃貸契約の検討や購入までにかかる時間は長くなっており、プロセス自体も変化しています。オンラインとオフラインのいずれも活用した新たな集客方法を検討し、他社との差別化が図られる施策が今後の不動産会社には求められるでしょう。
オンラインで不動産会社の集客数を増やす方法
不動産会社の集客は難しくなっているものの、オンラインでは集客方法は増えています。ここではオンラインで不動産会社の集客数を増やす具体的な方法を紹介します。
ホームページ
不動産会社の集客方法の代表格ともいえるのが「ホームページ」です。自社の名前で直接検索する人の受け皿ともなるホームページは、会社の信頼性を示す重要な役割を果たします。
ただし、GoogleやYahoo!などの検索エンジンの上位は大手企業が専有しており、中小の不動産会社が集客する方法としては、難易度が高いかもしれません。
リスティング広告
リスティング広告とは、検索エンジンで調べたキーワードの内容をもとに、それに連動した広告を検索結果として表示する広告種類です。「検索連動型広告」や「PPC」とも呼ばれ、広告をクリックされるたびに費用が発生します。
このリスティング広告を用いることで、自社のホームページが上位に表示されていない場合でも「エリア名×不動産売却」「エリア名×賃貸」といったワードで検索する人に直接アプローチが可能です。
ただし、同じキーワードで広告を出す不動産会社が多い場合、その分掲載費用も高くなります。人気の高いキーワードでは「1クリック数千円」というケースも珍しくありません。
SNS
オンラインでの集客方法として「SNS」も有効です。情報発信やコミュニケーション、コミュニティ形成が出来るオンラインサービスで、次のようなものが代表的です。
- X(旧Twitter)
- YouTube
- TikTok
SNSの特徴は「強い拡散力」です。不動産に関する情報を手軽に発信できうえ、無料で始められる点も大きなメリットとなるでしょう。
物件の外観や内観の写真、間取り図などユーザーの得たい情報を表示できる点が強みとして挙げられます。また、エリア名などで検索する人に対し、アカウントや投稿を表示させれば、潜在的なユーザーの獲得にもつながるでしょう。
ポータルサイト
「SUUMO」「ホームズ」「at home」といった不動産に関するポータルサイトも代表的な広告方法の1つです。不動産探しの第一歩としてポータルサイトから検索する人も多く、現在でも効果の高い広告方法の1つといえます。
ポータルサイトでの集客における差別化のポイントは「高性能カメラで魅力ある写真を使う」「物件の周辺施設や通勤などに関する情報を盛り込む」などが挙げられるでしょう。他社にはない情報をいかに発信できるかが、集客結果に大きく影響します。
ただし、ポータルサイトはサービスの利用時間に応じて料金を課す従量課金制や問い合せ数に応じて料金を課す反響課金制であることが一般的です。ポータルサイトごとに特徴や料金体系が異り、余計な費用がかかる可能性もあるため、実施前には各サイトごとの内容を比較検討しましょう。
一括査定サイト
不動産の一括査定サイトも活用したい広告方法です。一括査定サイトとは、不動産に関する売却額の見積りなどを、複数社から一括取得できるサイトを指します。
その方法も対象物件の築年数や間取り、地域などを入力するだけと簡単なことから、利用者が多いのも特徴です。不動産会社は自社の情報を一括査定サイトに登録し、問い合わせがあればその分の報酬を支払います。
ただし、問い合わせから実際の取引成立までには、売主との関係構築が欠かせません。メールや対面でのコミュニケーションなど、粘り強さが必要となる方法ともいえます。
アプリ
不動産に関する情報が掲載される「アプリ」の利用もおすすめです。アプリを利用することで顧客は実際に来店せずとも、オンライン上で内見や契約に関するやり取りができます。
また、アプリは自社が登録している情報と顧客が求めている情報がマッチすれば表示されやすく、Googleの検索順位のような難しい対策をせずとも、問い合わせにつながりやすいというメリットがあります。その種類も豊富に存在するので、自社に合うアプリがあれば、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
オフラインで不動産会社の集客数を増やす方法
ここからはオフラインで不動産会社の集客数を増やす方法について解説します。いずれも以前から存在する方法ですが、やり方によっては高い広告効果を期待できます。
ポスティングチラシ
ポスティングチラシとは各家庭のポストにチラシなどを直接投函することです。配布する地域に限定する場合に有効な広告といえます。
デザインや訴求方法によってその効果が大きく変わるため、予算にあわせて配布量やサイズ、カラーなどの最適なプランを考える必要があります。ただし、印刷や配布にかかる費用はすべて先出となるため、イベント開催や売出しのスタート時など実施のタイミングは慎重に決定しましょう。
折込チラシ
折込チラシは、毎日配達される新聞に折り込んだ形の広告です。目を通してもらえる確率が高く、地域や日付の指定できるため、より的を絞ったアプローチができます。
特に新聞の購読率が高い年齢層への効果が高く、不動産売却の依頼獲得には積極的に利用したい広告方法の1つです。
ティッシュ配布
オフラインの代表ともいえるティッシュ配布は配り方によっては大きな効果を期待できる広告方法です。具体的には大型商業施設や駅前などの人が多く集まる場所で、物件情報を記載したポケットティッシュなどを配布します。
ティッシュは大量発注するほど単価が安くなります。ただし、デザインのレイアウトや配色、フォントなどによっても反応率が変化するので注意しましょう。
旗
旗は物件の存在をお客様に知ってもらうのに有効な広告の1つです。空き家や分譲地、売家を知るきっかけとして、は大きな効果を期待できます。
旗に入れるメッセージは、運転中などにも目にとまりやすいよう「入居者募集中」「オープンハウス開催」「モデルハウス公開中」「不動産フェア」といったような、伝えたいメッセージを端的に表すのがおすすめです。
看板
看板はお店の顔そのものであり、お客さんがこのお店に決めるかどうかを決定する重要な要素です。用途や場所に合った看板を設置することで、目的に応じた集客ができます。 不動産会社が利用する看板には次にようなものがあります。
- 置き看板
- 仮囲いシート
- 足場幕
- 懸垂幕など
制作時はサイズや材質、文字のフォントやデザインなどを工夫することで、より広告効果が高まるでしょう。
不動産会社が集客をする際の注意点
不動産の取引では大きな金額を扱うため、広告にも厳重なルールが設定されています。そのルールに違反すると罰金だけでなく、免許の取り消し処分にまで発展する場合があるため注意が必要です。宅地建物取引業法では、次の3つに対して明示するよう定められています。
- 誇大広告の禁止
- 広告の開始時期の制限
- 取引態様の明示
いずれもインターネット広告を含め、すべての広告に共通の規制です。そこで、不動産会社が集客をする際の2つの注意点についてみていきましょう。
顧客が理解しやすい用語を使う
公正競争規約では広告などを顧客が容易に理解できる表示を行うように義務付けてます。つまり「顧客が理解しやすい用語を使いましょう」という意味です。次の13類型に関し、表示基準が設置されおり「気づいた時には違反をしていた」といったことがないよう注意しましょう。
取引態様:売主、貸主、代理、媒介の別をこれらの用語を用いて表示する。専任媒介契約または専属専任媒介契約の場合に「媒介(専任)」または「媒介(専属専任)」と表示しても差し支えない。物件の所在地:地番を表示しなければならない。
交通利便性: 最寄り駅または停留所の名称および徒歩所要時間を明示する。
各種施設までの距離または所要時間 道路距離を表示するときは、起点および着点を明示して表示する。徒歩による所要時間は80mを1分間とし、1分未満の端数は切り上げて表示する。物件の面積:土地または建物の面積はメートル法で表示する。
1㎡未満の数値は切り捨てで表示する。私道負担面積:私道部分も取引の対象となっている場合は、敷地面積と私道面積を明確に分けて表示する。
部屋の広さ:居室の広さを畳数で表示する場合は、畳1枚あたり1.62㎡以上の広さがあるという意味で用いなければならない。
物件の形質:居室と認められない部屋は納戸(N)やサービスルーム(S)と明示しなければならない。地目は登記地目を表示し、現況地目と異なるときは現況地目を併記しなければならない。
写真・絵図:写真は取引するものの写真を表示するのが原則である。未完成の建物を表示する場合、一定の要件を満たす完成予想図等であれば表示することができる。
設備・施設等 水道は公営水道または井戸等の別を表示しなければならない。ガスは都市ガスまたはLPガス等の別を表示しなければならない。団地の外の生活関連施設:学校、病院等は原則として現に利用できるものを表示しなければならない。
価格・賃料:土地は1区画、建物は1戸あたりの価格を表示する。
賃料については1ヶ月あたりの賃料を表示する。
管理費・共益費・修繕積立金 :管理費や共益費、修繕積立金については1戸あたりの月額を表示する。
おとり広告にならないようにする
不動産の取引においては、顧客を誘導するような広告を禁止しています。その例に「おとり広告」があり、気づかないうちに違反していたというケースも少なくありません。景品表示法では、次の3つを不当表示として規定しています。
1.取引の申出に係る不動産が存在しないため、実際には取引することができない不動産についての表示(例…実在しない住所・地番を掲載した物件)2.取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引の対象となり得ない不動産についての表示(例…売約済みの物件)
3.取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引する意思がない不動産についての表示(例…希望者に他の物件を勧めるなど当該物件の取引に応じない場合)
この他にも特定用語の使用基準などのルールがあるため、広告を出す際には事前に確認し、必ず遵守しましょう。
まとめ
ここまで、不動産会社向けのオンラインやオフラインの広告手法や集客をする際の注意点などを紹介しました。
不動産会社が取り組める集客方法はさまざまな種類があり、得たい効果やタイミング、予算などにあわせて自社に合う広告を選ぶ必要があります。
また、不動産会社が打つ広告のすべては公正競争規約の遵守が基本であり、対象はインターネット広告やSNS、チラシ、旗、看板など多岐に渡ります。
不動産会社の集客が難しいとされる理由は、人口減少などを原因としたニーズの変化を正確に捉えつつも、広告に対する厳しく規制を守る必要がある点です。
自社に合う集客方法を確率し、集客に強い不動産会社を目指していきましょう。