ウェブサイトの閲覧中に、ふと目についた広告をなにげなくクリックし、紹介されている商品を購入した、という経験をされた方もいるのではないでしょうか。これは消費者の行動心理をついて広告と心理学の関係性をうまく利用したものです。

広告と心理学は無関係なようで非常に深い関係性があります。今回は心理学を用いた広告効果の高め方について具体例とともに紹介します。自社商品の広告検討の際にご参考ください。

広告と心理学の関係性

ウェブサイトの閲覧中にさまざまな広告が目に留まり、特に気にならないこともあれば、その広告を実際にクリックして詳細を見ることもあるなど、広告の内容によってその後の行動が異なります。それは見る側である消費者の関心の度合いによるものであり、広告はそのような消費者の行動心理をうまく活用しています。

見込み客ともなる消費者の関心の度合いは、商品に対して関心の低い、または商品を知らない消費者層を「潜在層」、商品を認知して関心を抱くまで至った層を「準顕在層」、さらに購入を検討するまでに至った層を「顕在層」と大きく3種類に分けることができます。

心理学を知る前に「ファネル」を理解しておこう

「ファネル(funnel)」とは、日本語で「ろうと」「じょうご」を指し、口の小さい容器に液体を移すときに用いられる逆三角形をした器具のことです。このことから、消費者の購入意欲の強さを潜在層、準顕在層、顕在層、最後に購入と、逆三角形の形で分類してあらわしたものをマーケティング用語でファネルといいます。

潜在層に広告を出す際におすすめの心理学的効果

ここからは、広告効果を得るために応用できる心理的効果を消費者層ごとに紹介していきます。

まず、商品に対して関心の低い、またはそもそも商品を知らない消費者層である潜在層には、何より自社商品の広告に注意を引かせる必要があります。

カクテルパーティー効果

カクテルパーティーはあまり日本では身近ではないですが、大勢の人々が会場に集まってそれぞれ会話をしている賑やかな場面を想像してみてください。パーティーでなくても大勢の中にいながら自分が興味関心のあるワードだけはなぜか聞き取れたという経験がある人もいるでしょう。つまり、たくさんある情報量の中で、自分の興味関心のある事柄には反応し、それ以外はシャットアウトするという現象を「カクテルパーティー効果」といいます。

広告に例えると、「夜眠れなくて悩んでいませんか?」「遺伝や体質だからと諦めるのはまだ早い」などと、消費者が持つ悩みと結びつけて打ち出すケースが見られます。

カリギュラ効果

人は「見てはだめ」「開けてはだめ」と禁止されるとかえって気になって開けて見たくなるものです。それを応用したのが「カリギュラ効果」といい、心理学での法則としてあげられる現象です。

例えば、「真剣にお悩みの方はクリックしてください」とするよりも、「真剣にお悩みの方以外はクリック禁止」と表現した方が、ターゲットに対してかえって注意を引くことができる言い回しになります。また、「たった3週間で!?続きはこちら!」というように、すべてを言い切らない表現にするのもカリギュラ効果を用いたものになります。

ただし、このカリギュラ効果を用いる際には注意点があり、なぜ禁止したのか、全てを言い切らないのかをクリックした先で明らかにしないと、消費者にストレスを与えることとなり、かえって関心を失ってしまうことにつながります。

スノッブ効果

「スノッブ(snob)」とは、「上に媚び、下に横柄な人」や「自分の愛好するものが至上であると鼻にかける人」といった、少々皮肉めいた意味があります。商品の希少性や高価さで他人と差別化したい、自分の個性を知ってもらいたいという消費者心理をついた広告効果を「スノッブ効果」といいます。

日本人は比較的集団意識が強い国民性なので、極端に他人と差別化するのではなく、だいたい周りと一緒だけれども、その中でも少し差別化ができて個性として表現できるものを好む傾向にあります。「限定○個」「日本未発売、初上陸」などといった表現がこの効果を狙ったものです。

準潜在層に広告を出す際におすすめの心理学的効果

商品を認知して関心を抱くまで至った層である「準顕在層」へは、関心を抱いたところから購買意欲を促すといったアプローチが必要です。

ザイオンス効果(単純接触効果)

ザイオンス効果とは、アメリカの社会心理学者であるロバート・ザイオンスが1968年に論文で発表した心理効果で、マーケティングだけでなく恋愛でも応用される手法です。最初は全く関心がなく、どちらかといえば批判的だったものが、何度も接触するうちに親近感が増したり、好感度が高まったりするという効果のことを指します。

ザイオンス効果を応用して、伝えたいメッセージを何度も発信したり、アプローチする頻度を増やしたりすることで、消費者を振り向かせて好感を抱かせることが可能となります。ただし、恋愛と同様で、何度も同じ方法だけでは逆に嫌がられてしまうこともあるため、アプローチの仕方や内容には変化をつけることが必要です。

シャルパンティエ効果

1kgの毛布と1kgの鉄アレイをそれぞれ持ってみて、鉄アレイの方が重く感じるという錯覚を心理学で「シャルパンティエ効果」といいます。同じ重さであるにもかかわらず、小さいものは軽くて大きいものは重いというイメージで持ち上げたところ、小さい鉄アレイも大きい毛布と同じ力で持ち上げなければならなかったという、錯覚から起こる現象を指します。

シャルパンティエ効果を応用して、頭の中で思い浮かべることができる数字を用いた方が錯覚の効果を得られる見込みがあります。例えば「ビタミンC1000mg配合!」とするよりも「レモン50個分のビタミンC配合!」の方が、効果が得られそうという錯覚が起きる傾向があるということです。

顕在層に広告を出す際におすすめの心理学的効果

最後に、購入を検討するまでに至った層である「顕在層」へのアプローチに有効な心理学的効果を紹介します。この層はすでに購入を検討している段階のため、より納得できるようなアプローチが必要です。

バンドワゴン効果

「バンドワゴン」とは、パレードの隊列の先頭を走るマーチングバンドの車のことを指し、「jump on the bandwagon」が流行に乗るという意味です。そのことからわかるように、多勢や大衆が支持しているということをアピールすることで購買意欲を促進させる効果をバンドワゴン効果といいます。

「みんなが知っている」「行列ができる」といった言葉もバンドワゴン効果を狙ったものです。大衆性をもとにアプローチできる手法ですが、中にはみんなと一緒だということを好まない消費者も存在するため、ターゲットを絞った使い方が有効です。

マッチングリスク意識

サプリメントなどの健康食品を購入する際やシェイプアップのためのジムに入会する際に「効果が出なかったらどうしよう」と悩むことがあります。その「自分には合わないかもしれない」という不安感を「マッチングリスク意識」といいます。

そのような不安を抱えた消費者意識に対しては、同じような消費者の体験談や口コミ情報を掲載したり、「満足いただけない場合は全額返金保証します」といったアフターフォローを加えたりすることで、信頼感や安心感を与え、購入に対するハードルを下げることが必要となります。

ハロー効果

「ハロー効果」とは、「ハロー(halo)」が後光を意味するように、商品そのものよりもその商品の背後にある権威性や特別感に注目させて購入を促す効果のことをいいます。

ハロー効果では、「レビューサイトで多くの人が高い評価をつけているのだから良い商品にちがいない」「著名人が推奨しているのだから信頼のおける商品にちがいない」という消費者の思い込みから購入に結びつけます。社会現象にもなった「ステルスマーケティング」は、著名人など影響力のある人に推奨文を依頼していることを隠してレビューを投稿させたというものです。このことからわかるように、商品やサービス側と評価する側の関係性を明らかにしないと消費者からの信用を一気に失うことにつながります。

また、レビューサイトにおいて、お店を検索してレビューが低ければそのお店に行こうとは思わなくなるのもハロー効果であり、印象という要素は常に大切したいものです。

この章で紹介した「ステルスマーケティング」については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

https://www.i-nobori.com/media/1719

ウィンザー効果

企業などの組織で、上司から直接褒められてうれしいと感じた経験がある方も多いのではないでしょうか。直接伝えられることも嬉しいですが、同僚などから「先日の会議で上司があなたのことを褒めていたよ」という話を聞く方がうれしいだけでなく信憑性があるように感じます。そのように、直接ではなく第三者から情報が伝わる方が信頼感や信憑性が増すという心理効果が「ウインザー効果」です。

ネットショッピングサイトでその商品の良さをアピールされるよりも、レビューサイトで評判が高く、SNS上でその商品について書いている人が多いなど、第三者からの言葉の方が注目が集まります。同様に、「お客様の声」「モニターレビュー」などと称して実際に商品を利用した顧客の声を自社のサイトに掲載するといった手法もウィンザー効果を応用したものといえます。

まとめ

今回は、心理学を用いた広告効果の高め方について具体例と合わせて紹介しました。消費者にとっての普段のなにげない行動は、消費者の購入意欲や行動心理として傾向を分けることができるため、心理学を用いて細かく分析していくことで、より高い広告効果が得られます。

一方で、それぞれの効果の応用の仕方が適切でなければ消費者は一気に離れていくという面も持ち合わせているため、自社の商品に合う効果であるか検証が必要です。広告の効果が得られる心理学的効果をこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。

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