SNSやインターネットで顧客自らが情報を収集する時代となった昨今においても、店舗の情報を直接顧客に伝える接点としてメールマガジン(以下、メルマガ)は有効なツールの一つです。ただし、適切な活用法を理解しないまま配信しても、売上アップや顧客獲得を見込めるような充分な効果は得ることは難しいでしょう。そこで今回は、店舗の情報発信のために効果的なメルマガの配信方法と作成するためのポイントを紹介します。
目次
メルマガの配信方法
メルマガとは文字通り、電子メールで情報発信を行うことですが、実際にどのような手段が考えられるのでしょうか。一般的に利用されているメルマガの配信方法を見ていきましょう。
通常のメール機能で配信する
メールの送受信に普段使用している電子メールソフトには、Microsoft社の「Outlook」やGoogleサービスの「Gmail」、Mac標準アプリの「メール」などが挙げられます。それらの普段使用している電子メールソフトを用いてメルマガを配信することが可能です。
メール送信時にはTO送信かBCC送信で行いますが、TO送信は送信先の宛先欄に送信した全てのメールアドレスが表示されてしまうため、個人を特定できないようにメルマガ送信をするためにはBCC送信が適しています。BCC送信では、メールを送信した相手の宛先欄には、相手本人以外の他の送信先のメールアドレスは表示されません。
ただし、一度に大量のBCC送信を行うとメールサーバーによって迷惑メールであると判断される恐れや、手動でBCC送信を行う場合に、誤って全員のメールアドレスが表示されてしまうCC送信をしてしまうなど人為的なミスが生じる恐れもあります。最適なメルマガ配信手段として選ぶには難しいかもしれません。
Microsoft ExcelとOutlookで送る
Microsoft Excelの拡張機能であるプログラミング言語の「VBA」と、Outlookを連携させてメルマガ配信することもできます。Excelファイルで、顧客のメールアドレスと氏名を記載した一覧を作成し、メールアドレスをCSV形式に保存してOutlookにインポートすることで、メールの宛先に挿入することができます。さらにVBAを用いることで、個別に本文を挿入できたりHTMLメールで送信したりすることも可能となります。
VBAというプログラミング言語についての知識さえあれば、無料でメルマガ配信ができるというのは大きな利点ではあります。一方で、プログラミングについての知識がない場合はイチから学習することになるため、使いこなすまでにはかなりの時間と手間を要することを考えると、あまり効率的な方法とはいえません。
GoogleスプレッドシートとGmailで送る
Googleのフリーメールサービスである「Gmail」と「Googleスプレッドシート」を用いてメルマガ配信を行う方法です。Googleスプレッドシートは、クラウド上で使用できるサービスの一つで、Excelと同じように表計算やグラフ作成などを行うことができます。
先に説明したMicrosoft ExcelとOutlookの連携と同様に、Googleスプレッドシートでは「Google Apps Script」というプログラミング言語を用いる必要があるため、少なくともプログラミングに関する予備知識は必要となります。
また、GmailとGoogleスプレッドシートを利用するためにはGoogleアカウントの取得が必要です。無料版のGoogleアカウントで使用している場合は1日あたり100通、ビジネス向けのGoogle Workspaceサービスに登録している場合でも2000通、試用アカウントなら500通までという送信制限があるので、読者数が多い場合は複数回に分けて送信する必要があります。
メルマガ配信システムを使って送る
読者数が多い場合やプログラミング言語がわからない場合、または高度な機能を簡単に使いたいという場合には、メルマガ専用の配信システムを利用するのがおすすめです。
メルマガ配信システムには、自らがサーバーやシステムの運用をする「オンプレミス型」と、クラウド上のサービスである「クラウド型」の2種類があります。次に説明していきます。
オンプレミス型
オンプレミス(on-premise)とは、企業などの組織が所有するハードウェアとソフトウェアを使ってサービスの運用をする方法のことです。
初期コストとしてサーバー導入費やソフトウェアの購入費がかかり、ランニングコストとしては、電気代と人件費が必要となります。サーバーやソフトウェア、セキュリティなどのシステム構築をすでに持っている組織であれば、メルマガ運用としてオンプレミス型を選択するのはそれほどハードルが高いものではないでしょう。
クラウド型
クラウド型とはメール配信サービス業者のサーバーを使ってクラウド上でメルマガ配信を運用する方法です。無料で利用できるサービスもあり、プログラミングなどの知識がなくてもアカウント登録するだけで気軽に導入できるということと、オンプレミス型と比較すると大幅に費用を抑えられるというメリットがあります。
しかし、カスタマイズなどの自由がきかないことや、他社のサーバー上にデータを保存するためセキュリティ上のリスクに対する備えは頭に入れておく必要はあるでしょう。
効果的なメルマガを作成するポイント
実際にメルマガ配信をするにあたって、多くの反響を得られ、読者にもメリットがあるような効果的なメルマガを作成するためのポイントを紹介します。
- メール形式を決める
- ターゲットを絞って設定する
- 配信する時間と頻度を見極める
- 有益な情報を伝える
メール形式を決める
メール形式には、プレーンなテキストだけ表示される「テキストメール」と、画像や装飾を加えた「HTMLメール」の2種類があり、配信するメルマガの内容によって使い分けると便利です。テキストメールとHTMLメールにはどのような違いがあるのでしょうか。
テキストメール
テキストメールとは文字通り、色や文字サイズなどの装飾が一切使われていない文章でのメールのことを指します。
画像の配置もなく、装飾もない分、見た目の訴求としてはインパクトに欠ける一面はありますが、作成側としてはHTMLの知識の必要がなく、受信先のメールソフト環境によって表示されないという問題もありません。コラムなどの読み物を中心としたメルマガを配信したい場合には、適したメール形式といえます。
HTMLメール
HTMLという、ウェブサイトを構成するための言語を用いたメール形式です。画像表示が可能で、文字の大きさや色、フォントなども自由に決められます。
ビジュアルのインパクトがあり、商品や店舗の紹介など画像を用いた訴求をしたい場合には適した方法といえるでしょう。さらにメルマガ配信サービスを利用する場合には、開封数測定などの分析機能も備えていることが多くさらに便利です。ただし、一通あたりの容量が大きくなるため、受信先の環境によっては正しく表示できない可能性もあり、内容によってはHTMLの深い知識が必要になる場合もあります。
ターゲットを絞って設定する
メルマガ配信をする際は、具体的なターゲットの選定が必要です。配信する対象として、年齢や職業、地域など具体的にターゲットを絞ることで、メルマガの内容自体も目的やターゲットにあった内容に限定して作成することができます。
「どこに住んでいる誰に、どのようなリアクションを求めるか」という一連のストーリーを明確にすることをイメージするとターゲットを設定しやすいでしょう。
配信する時間と頻度を見極める
メルマガが配信される時間帯や配信頻度は、そのメルマガを今後も読み続けるかどうかを左右する要素の一つといえます。
企業など組織向けに配信するメルマガを一日の中の忙しい時間帯に配信していたのでは、読む時間を確保することが難しくなります。また個人向けであれば、あまりに不規則に配信されるのではメールの受信箱の隅に自社のメルマガが埋もれてしまうことも考えられるでしょう。一般的には企業などの組織向けには週に1〜2回、個人向けであれば毎日定期的なタイミングでの配信がよいといわれています。
もちろん毎日の配信は難しいという場合でも配信は続けることが大切であり、配信頻度についても効果測定を行いながらターゲットに合わせて検討していくのがよいでしょう。
有益な情報を伝える
店舗が配信するメルマガは、有益な情報を提供することで顧客との接点を保つということが最大の目的です。読者が望んでいないような商品の紹介や宣伝をひたすら並べているだけでは、読者にとってメルマガを読むメリットはありません。
ターゲットに合わせて吟味されたメルマガを「今回のメルマガは勉強になった!よい情報を得た!」と読者が思える構成でこそ、有益な情報が載ったメルマガであるといえます。そのためには配信する情報源が最新であり正しい知識であることを吟味した上で、宣伝と情報発信のバランスがとれたメルマガの作成を心がけるとよいでしょう。
メルマガを配信するために特定電子メール法を理解しておこう
メルマガ配信においては、一方的に広告メールを送りつける迷惑メールが横行したことから「特定メール電子法」という法律が制定されています。
メルマガ配信を同意した者以外への送信を禁止する「オプトイン規制」や、メルマガ送信を拒否したものへの送信を禁止する「オプトアウト規制」、さらに送信側の住所や氏名、連絡先など一定の内容の表示義務なども定められており、それらを守っていない場合に対する罰則も強化されています。オプトイン規制については、ウェブサイトの資料請求などのフォームに「メルマガ配信を希望する、希望しない」のチェック欄を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
特定電子メール法は、読者である受信者が安心してメルマガを読めるための法律です。顧客との有効な関係性を保つためにも特定電子メール法の理解を深めておきましょう。
参考:特定電子メール法 | 迷惑メール対策 | 迷惑メール相談センター
まとめ
今回は、店舗の情報発信源として効果的なメルマガの配信方法と作成時のポイントを紹介しました。読者側の立場としては簡単な作業に思えるメルマガ配信ですが、専門的な知識の必要性や、メルマガ配信に対する法律も存在することなど、深掘りしないと気づかない事柄が多く存在します。
顧客である読者に店舗の声を直接届ける手段である以上、読者が安心して利用することができ、多くのメリットを得られるような効果的なメルマガ配信を、この機会に実現していきましょう。
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