Webマーケティングにおいて、Webサイトや広告の成果改善に役に立つとされているのが「ABテスト」です。ABテストという言葉を聞いたことがあっても、実際にどのようなことを行うのか、具体的なやり方はわからないという人も多いのではないでしょうか。今回は、ABテストのやり方やABテストを行うメリット・デメリットなどを説明します。
目次
ABテストとは
ABテストとは、Webサイトやバナー広告、広告に用いられているコピーや文章の最適化を図るために行われる、Webマーケティングの施策の一つです。文字通り、AとBの2つのパターンを用意し、どちらがより高い成果を得られるかを評価して改善を図ります。ここからは、ABテストの目的や種類などを詳しく説明していきます。
実施する目的
ABテストを実施する目的は、コンバージョン(CV)率とクリック率の向上にあります。コンバージョンとはWebサイト上で得られる成果のことを意味します。
その成果とは、企業のコーポレートサイトやキャンペーンサイト、ECサイトなどのようにWebサイトの特性によって定義の仕方は異なります。一般的には、ページの閲覧以外にも、商品の購入や資料請求、動画再生など、さまざまな事柄が成果として定義づけることができます。定義した成果へ利用者を誘導するために、複数のパターンのバナー広告などを用意して、どれが効果の高い広告であるかを検証していきます。
ABテストの種類
ABテストを実施するには、「逐次テスト」と「並行テスト」という2種類の方法で行うことができます。逐次テストとは、AパターンとBパターンという2つの比較対象を用意し、それぞれ別の期間を設けてテストを行う方法です。特別なシステムを用意する必要がなく手軽に行える一方で、異なる期間で行うため、季節や時期によって反響に変化がある対象の場合は正確な結果が得られないというデメリットがあります。
並行テストとは、対象とするユーザーをグループ分けし、一方はAパターン、もう一方はBパターンで同時期にテストを行うものです。同時期に行うため季節や時期による影響を受けずに行えるメリットはありますが、LPOツールと呼ばれる、検索結果や広告から訪れた際の最初に表示されるランディングページを訪問者のニーズに沿うように最適化するためのツールの実装や知識が必要となります。
ABテストの対象となるもの
ABテストを行うことで改善が見込める対象には、広告文やバナーなどいくつかの種類があります。それぞれどのような比較方法が考えられるのかご紹介します。
広告文
広告文とは、検索エンジンでの検索結果として表示されるリスティング広告に書かれてある広告文のことを指します。商品やキャンペーンなどのアピールポイントやメリットなどをどのように訴求するか、複数のパターンを用意してABテストを行うということが考えられます。
ランディングページ
検索結果や広告などの外部からたどり着いた最初のページがランディングページです。ユーザーが一番先に目につく画像や動画、キャッチコピーなどを複数パターンで用意して、どれがより良い成果があったかを検証することができます。
異なるパターンを用意するだけで同時期に行うことが可能なので、季節や時期の影響を受けずにより正確な成果を検証することが可能です。また、ランディングページのボタンや画像の配置などさまざまな要素を検証できるため、Webサイトそのもの以外にも、取り扱う商品やサービスなどにも成果を反映できる可能性もあります。
バナー
バナーは視覚で訴求する要素が多いため、画像や色味、バナーのサイズなどさまざまな観点から検証することができます。じっくりと読まれることを目的とした広告文とは異なり、バナーはユーザーの目にとまった一瞬の印象によってクリック率が左右されるので、ABテストで複数のパターンを検証するというのは有効な方法といえます。
バナーのABテストを行う場合は、複数の要素を変えたのでは何を変えたことで成果が異なったのか判断できなくなるため、「コピーだけ」「画像だけ」などと一つずつの要素を変えて検証を行いましょう。
メールマガジン
読者がメリットを得られることが目的であるメールマガジンにおいても、「開封率は高いのに、その後のクリック率にはつながらない」といった具体的な問題点を把握している場合にはABテストでの検証がおすすめです。
検証する内容としては、件名、本文、配信の時間帯、読者の割合などが拳げられます。また、メールマガジンの最終目的として商品やサービスの購入や会員獲得などがある場合には、コンバージョン率向上につながる本文の吟味なども検証するとよいでしょう。
実施期間の目安
ABテストの実施期間には明確な基準はありません。ただし、AとBのそれぞれのパターンに明確な差が現れるまでは実施する必要があります。目安としては、短くみて1週間から、長く様子をみて1カ月を目安として考えておくとよいでしょう。
ABテストのやり方・実施方法
ABテストの詳細がわかったところで、次にABテストの実際のやり方としてどのような段取りを組めばよいでしょうか。ABテストの具体的なやり方を説明します。
仮説を設定する
ABテストだけでなくさまざまな検証を行うにあたって、仮説を立てることが最初に必要となります。「ランディングページが縦に長すぎるからコンバージョン率が上がらない」「ランディングページの色使いを暖色系に変更すればコンバージョン率はアップする」というような、考えられる仮説を羅列してみましょう。最初に仮説を明確に立てておくことで、ABテストの結果を計画的に検証でき、効果的な活用につながります。
テストを実行する
先の項目で、ABテストを実施するには「逐次テスト」と「並行テスト」があるとお伝えしました。比較対象として複数のパターンを検証するには、同時期に同条件で行う並行テストであれば、正確な結果を得ることができるのでおすすめです。LPOツールの実装や知識が必要ですが、本記事の最後に紹介するように無料でABテストを行えるようなサービスも出ているので、自身のWebサイトの検証にあったサービスを探してみるとよいでしょう。
検証結果を元に分析・改善する
ABテストを実施して結果がわかったら、先に立てた仮説と合わせて検証と分析を行いましょう。ABテストは一度だけ行うのではなく、基準となるコンバージョン数を設定するなど目標を設定した上で繰り返しテストを実施することで、テストの精度が高まります。
また、同じ条件下でテストを繰り返すことで、得られた結果が正しいものであるのか明確な答えを得られます。その上で改善案を吟味していくことで、Webサイトにとってより具体的で的確な改善を図ることが可能となるでしょう。
ABテストのメリット・デメリット
Webサイトの成果改善を図るためにABテストを行うことには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
ABテストのメリット
商品の購入やサービスへの入会などをコンバージョンとして拳げている場合は、Webサイト以外の媒体での広告を打ち出すこともコンバージョン向上の手段として考えられます。しかし、広告媒体への出稿となるとさまざまなコストがかかります。
一方で、自らABテストを行うことで費用は抑えられ、ピンポイントで問題点を把握することができるので、狙いを定めた改善を行うことができます。必要な改善だけに集中できるというのは大きなメリットといえるでしょう。
ABテストのデメリット
デメリットとまではいえませんが、ABテストを実施してから検証結果が効果として現れるまでは時間が必要になります。また、自身のWebサイトを訪れるユーザー数が少ない場合には、明らかな結果を得るのは難しい場合もあるため、他の検証手段も取り入れながら仮説と検証を重ねていくとよいでしょう。
ABテストの効果計測に使えるツール
ABテストを行うには、手動で行う場合と自動のツールを用いる場合がありますが、正確なデータの取得や精度の高い分析のためには自動ツールを用いることが確実です。最後に、ABテストの効果計測におすすめのツールを紹介します。
Googleオプティマイズ
「Google オプティマイズ」とは、Googleが提供しているABテストのツールです。登録が簡単であり、ABテスト自体も画面遷移にしたがって進めることができるので、ABテストについて深い知識がなくても実施することが可能です。無料版と有料版がありますが、大きな違いは有料版の方がテスト数を多くできると言う点です。数多くのテストは必要ないという場合や初めてABテストを行う場合は無料版で充分活用できます。
また、Google オプティマイズを利用するには、Googleアカウントの取得やGoogleのアクセス解析ツールである「Googleアナリティクス」への登録が必要となります。Googleアナリティクスではアクセス数やデバイスの測定などを無料で詳しく分析できるので、自身のWebサイトをより詳しく分析し改善を図りたいという場合には、登録しておくことをおすすめします。
参考:Googleオプティマイズとは?サイト最適化のためのテスト方法(2021年7月時点での掲載内容を参照)
SiTest
「SiTest(サイテスト)」とは、日本企業である株式会社グラッドキューブが開発したWeb広告改善のためのサイト解析ツールです。複数の機能の中にABテスト機能も盛り込まれており、すべて日本語でわかりやすく書かれてあります。マウスやスクロールなどといったユーザーの動きを解析する機能と合わせて、テキストやボタンの色や位置といったテストを簡単でスピーディーな設定で行うことができます。
無料トライアルが可能で、SiTestについて事前に知っておきたいことがあれば無料で質問できるので、まずは気軽に利用してみるとよいでしょう。
参考:SiTest(2021年7月時点での掲載内容を参照)
Butterfly
「Butterfly(バタフライ)」は、同じく日本企業である株式会社GeeeNが提供しているABテストツールです。通常はページ単位で一つずつ行うABテストを各ページ同時に行うことができるので、効率よい検証ができます。
また、エンジニアやコーダーがいないとわからないようなHTMLやCSSについても、コードを書き換えなくてもマウスを使うだけでコンテンツの編集をすることができるので、専門知識を持っていなくても検証することが可能です。資料請求や問い合わせもできるので、購入前にじっくり検討してみるとよいでしょう。
参考:Butterfly(2021年7月時点での掲載内容を参照)
まとめ
今回は、Webサイトの改善に欠かせないABテストの方法やメリット・デメリットなどについて紹介しました。ABテストは、自身のWebサイト上の広告宣伝が現在どのような効果を得られているか、どのような改善策が必要かを知ることができます。
また、ABテストで地道に検証を繰り返すことで、より精度の高い改善策が見えてくるはずです。分析や評価というのはやや専門的な分野ではありますが、知識として身につけて、さらなる視野を広げてみてはいかがでしょうか。