今後の高齢化を鑑みても、葬儀に関連するビジネスの需要は高まることが予想されます。しかし、需要が高い分、新規参入してくる企業も増加傾向にあり、市場内の競争は激しさを増しているでしょう。

そこで当記事では、葬儀社が新規顧客を獲得するために取るべき集客方法やコツを、「広告」を軸として解説します。また、あわせて広告作成時の注意点も紹介しますので、ポイントを押さえて理解を深めていきましょう。

葬儀社の広告作りは顧客ニーズを満たすことから

葬儀社が打ち出す広告作りで重要なのは「顧客ニーズを満たす」ことです。そのためにも、まずはお客様のニーズを理解しなければなりません。

昨今、「終活」「生前準備」といったキーワードを目にする機会も増えてきました。それはすなわち、葬儀社のターゲットとなり得る顧客のニーズが高まっている証ともいえます。ここでは、葬儀の規模や葬儀価格などを通じて、葬儀社の現在についてみていきましょう。

葬儀の規模

葬儀の規模は、その形式によってさまざまで、主には密葬や火葬、家族葬、一般葬、などに分かれます。それぞれに規模が異なり、その分かかる費用も変化します。

中でも、最も規模の大きい一般葬を選ぶ方は減り、家族などの近親者のみで行う「家族葬」を選ぶ方が年々増えています、その背景には、葬儀に対して個人らしさを重視して「お別れの場」として捉える方が増えていることが挙げられるでしょう。

今後も家族葬の需要は大きくなることが予測され、顧客ニーズに満たすには、一般葬だけではなく、家族葬に関する広告にも注力する必要があります。

葬儀の規模の変化に合わせ、新たな葬儀メニューの考案や高齢者向けのイベントなどを検討しましょう。

参考:家族葬とは?選ばれている理由や費用、参列基準や香典マナーについて

葬儀価格の明確化

葬儀に対して「業者に高い葬式を勧められそう」「あとから追加料金を請求されそう」といったネガティブなイメージを持つ方もいるでしょう。これはいずれも葬儀の「適正価格」がわかりづらいことが影響しています。

そのようなイメージを払拭するためにも、業界大手の葬儀仲介会社などは「定額」「低料金」といった葬儀プランを打ち出しており、顧客ニーズの1つである「葬儀価格の明確化」に取り組んでいるのです。

葬儀社が今後打ち出す広告では、適正価格を明記して、お客様の信頼を得られるかどうかが重要といえるでしょう。

葬儀のオリジナリティ

葬儀のオリジナリティを打ち出した広告も、新規顧客の獲得につながりやすいです。

従来のような葬儀の形式ではなく、「シンプルかつ自分らしい葬儀をしたい」というニーズが増えており、葬儀社は葬儀の施行だけではなく、お客様の最後を演出する「プロデュース観点」での提案を求めらます。

最近では、葬儀や埋葬方法が多様化し、生前葬や樹木葬はもちろんのこと、オンライン葬儀まで行われています。

  • 生前葬…送られる立場の人が生きているうちに、自身で開くお葬式
  • 樹木葬…遺骨の埋葬場所に墓石を建てず、樹木や花を墓標とするお墓
  • オンライン葬儀…パソコン、スマホなどを通じて遠隔地から参列するお葬式

葬儀社の広告(集客)方法

葬儀社の広告(集客)方法
  • ネットを利用した広告
  • ポスティング・チラシ広告
  • 終活セミナーや事前相談会などのイベント広告

葬儀社が取り組める広告(集客)方法には、多くの種類が存在します。ただし、いずれも特徴や注意点があり、それらを理解せずに広告を打っても、望む結果は得にくいです。

自社の戦略を明確にし、適切な方法を選んで効果的な集客を目指しましょう。

ネットを利用した広告

スマホやタブレットなどが普及した現在、情報収集の方法はネットが主流です。それは葬儀についても同様で、「地域名+葬儀」といったキーワードを用いて検索するお客様は多いでしょう。

そのため、葬儀社の集客に関しても、ネットを通じた広告の重要性が高まっていています。中には無料で利用できる媒体もあり、コストをかけることなくネットで集客することも可能です。

また、ネット上では同業他社との価格やサービスなどを比較されるケースが多く、よりそれらをわかりやすく伝えられるような工夫が必要となるでしょう。そこで、ネットを利用した広告について、種類ごとの特徴を解説します。

ウェブサイト

葬儀社の広告(集客)方法として、ウェブサイトの充実は重要です。葬儀社についてネット検索するお客様は、葬儀に関する何らかの情報を求めています。

「葬儀費用」「アクセス」「施設情報」「種類」などは、いずれも葬儀社を決める際の基準となる情報であり、ウェブサイトであればすべて明記が可能です。問い合わせにつながるような自社の特徴を紹介し、集客につなげていきましょう。

Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)・Googleマップ

Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)は企業や店舗の住所、営業時間、電話番号、写真などををGoogle検索やGoogleマップに表示できるツールです。利用も無料なので、葬儀社の集客ツールの1つとして、取り入れておきましょう。

Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)の利用で、Google検索やGoogleマップのユーザーに対して、自社をアピールでき、知名度や集客力のアップを期待できます。また、Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)への対策に力を入れているかどうかは企業や店舗によってもばらつきがあり、頻繁な更新や管理によって他社との差別化を図れる可能性は十分にあるでしょう。

ブログ

ブログも葬儀社の集客ツールとして活用できます。ブログとは日記に似た記事を誰でも簡単に書けるようにしたサービスであり、ホームページよりも安価かつ気軽に取り組める点が特徴です。

葬儀のプロとして、葬儀のお役立ち情報や悩みの解決法などを記事化して、発信します。ブログの継続的な更新によって、自社のブログが「葬儀」「香典」「お返し」といったキーワードで検索された際に上位に表示されるようになります。

そして、ブログを見たお客様を自社のホームページに誘導し、問い合わせや事前相談などのアクションにつなげることで、見込み客を獲得するのです。

まずはニーズのありそうな記事を追加し、ブログ内容の充実を図りましょう。

SNS

SNSは(Social Networking Service)の略で、登録した利用者同士が交流できる会員制のサービスを指します。SNS広告はお客様の住む地域や性別、年齢など訴求したい相手を絞れます。主なSNSは次のとおりです。

  • Instagram…画像投稿がメイン。葬儀場のイメージ写真や祭壇の写真を投稿している葬儀業者もある。
  • X(旧Twitter)…140文字以内の文字や写真を投稿できる。リツイートによる拡散力の強さが特徴。

SNSはその種類ごとに利用するメインユーザーの属性が異なり、ユーザーのプロフィール情報などから、一般的には訴求しづらい潜在層にアプローチが可能です。アカウント作成も簡単かつ無料なので、ぜひ活用してみてください。

リスティング広告

リスティング広告とは、検索結果に連動して表示される広告で、「Google広告」と「Yahoo!広告」の2つが代表的です。検索連動型広告やPPCとも呼ばれ、広告のクリック数によって費用が生じます。

葬儀社がリスティング広告を出稿する場合は、「葬儀+地域名」などのキーワードで広告を出すのが有効です。ただし、このような見込み客の獲得に直接つながるキーワードは、資金力のある大手の葬儀会社がすでに独占している可能性が高いでしょう。

大手が独占するキーワードで広告を出稿するとなると、多額の広告費用を要します。よって地域名を分解し「町名」「区名」「駅名」といったように、検索範囲を狭めると、大手が狙わないキーワードを見つけられるかもしれません。

リスティング広告は自社でも運用可能ですが、知識が豊富な広告代理店に任せるほうが効果が出やすいケースもあります。予算を考慮しながら、リスティング広告で素早く集客していきましょう。

ポスティング・チラシ広告

折り込みチラシやポスティングも費用対効果の高い集客方法の1つです。チラシは折込チラシを含む全体を指し、ポスティングはチラシを直接ポストに投函することを意味します。

ポスティングは訴求したい地域に確実に情報を発信でき、より多くの層に直接アプローチできます。また、チラシでは「葬儀の料金体系」「新しい葬儀サービスの紹介」など、お客様にとって役立つ内容を掲載すれば信頼度が高まり、明朗な企業であることをアピールできるでしょう。

ただし、さまざまなエリアに手当たり次第チラシを配布しても、大きな効果が得られない可能性もあるため、注意が必要です。

終活セミナーや事前相談会などのイベント広告

人生の最期に向けて準備をするための「終活」に関するセミナーや相談会を開くのもおすすめの集客方法です。これらを通じて実際に顧客がどんな悩みを持っているのかをリサーチすることもできます。

また、セミナーやイベントを通じて、自分に万が一のことがあった際に備え、事前に家族や周囲の方に伝えたいことを書き留めておく「エンディングノート」や「お墓の賢い選び方」など、終活にまつわる顧客の悩みを解決し、それに見合ったサービスを提供するきっかけにもなるでしょう。

葬儀社の広告作成時の注意点

葬儀社が作成する広告について、いくつかの注意点があります。内容次第では、「景品表示法」の表示規制に違反するケースもあるのです。

「気づかないうちに違反していた」といった事態にならないよう、記載内容については十分に気をつけましょう。

顧客に誤解を与えるような表現はしない

顧客に誤解を与えるような「表記」や「表現」は、景品表示法の違反行為として措置命令の対象になります。景品表示法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号」です。

商品やサービスの品質や内容、価格などを偽って表示することを規制し、過大な景品類の提供を防止するために最高額を制限するなど、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境をつくるための法律です。

葬儀において措置命令の対象になるケースとして、次の2つの例があります。

※【ケース1.】

葬儀の広告で「葬儀費用は一律◯◯円」といった表現をしばしば見かけます。この表現を見た多くのお客様は、「葬儀にかかるすべての金額が◯◯円」と認識するでしょう。

しかし、ここでの「葬儀費用」は、葬儀会社のみに対して支払う費用を指している場合が多く、その他の事業者や寺院に支払う費用は含めていないケースがあるのです。

※【ケース2.】

葬儀費用に関する比較広告として「他社よりも◯◯万円の差が生じる可能性も!」といった表現も危険です。自社と他社の費用を比較し、あたかも自社のほうが割安であるように表示しながらも、実際は比較基準が異なるといったケースがあります。

いずれのケースでも、事実と異なる場合は、景品表示法の違反となる可能性があります。もし疑いがある場合、消費者庁によって関係資料の収集や事業者への事情聴取などの調査が行われ、違反と認められた場合は、措置命令として次の措置を講じます。

  • 違反したことを一般消費者に周知徹底すること
  • 再発防止策を講ずること
  • その違反行為を将来繰り返さないことなど

また不服がある場合は、審査請求や取消訴訟も可能ですが、確定後にその命令に従わないと「業者の代表者等は2年以下の懲役又は300万円以下の罰金」または「当該事業者は3億円以下の罰金」が科せられます。

参考:景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか? | 消費者庁

追加料金が発生する場合は明確に表示する

「追加料金不要」「追加料金一切不要」といった表現が事実とは異なるとして、大手葬儀代行業社が消費者庁より、措置命令を受けたケースもあります。もし、プラン料金以外に費用が発生する可能性がある場合は、同じ広告の紙面内もしくは、同じウェブページ内に必ず表示が必要です。

ウェブページの場合、「Q&A」などの別ページに、例外的に追加料金が発生する旨を記載していたとしても、消費者は「追加料金一切不要」という認識を解消できないと判断される可能性もあるので、注意しましょう。

まとめ

葬儀社が効果的な広告を打つには、「顧客ニーズを満たしているか」を常に意識しななければなりません。つまり「家族葬〇〇円」といった価格に関する訴求だけでは不十分であるといえます。

今回ご紹介した葬儀社の広告(集客)方法などを活用し、お客様の困っていることを解決できるような、適切な集客が求められるでしょう。広告によって目指す結果と目的を明確にして、より多くの新規顧客にアプローチをしてみてください。

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