集客へつなげるために有効な販促のひとつにポスティングがあります。一方で最近ではポストなどに「チラシお断り」という張り紙があることも増え、「ポスティングという行為が違法にならないか」と判断に迷った経験がある方もいるのではないでしょうか。
果たしてポスティングという行為は違法なのでしょうか。また、違法にならないようにするにはどのようにしたらいいのか、詳しく説明していきます。
ポスティングは違法?
ポスティングとはどういうことを指すかと言うと「家々や事業所などのポストにチラシなどを投函すること」です。何かを投函するという行為が違法なのか、それともポスティングするチラシなどの内容が違法にあたるのか、そもそも何も違法性はないのか、具体的に説明していきます。
ポスティング自体は違法ではない
家々や事業所などにポストが設置されているということ自体が、「投函物を入れる行為を承認している」ということを表していると、最初に理解しておかなければなりません。
そして、ポスティングという行為そのものが違法かどうかという点についてですが、チラシなどをポストに投函する行為を禁止している法律自体が存在していません。したがって、ポスティングという行為自体に違法性はないということになります。
ポスティングの仕方によっては違法になる可能性がある
先に説明した通り、ポスティングという行為自体を禁止する法律は存在していません。しかし、ポスティングを行った際の状況次第では罪に問われる可能性もあります。
どのような状況が違法となるのか事前に把握しておく必要はあるでしょう。次の項目でポスティングで違法になる可能性のあるケースを説明します。
ポスティングで違法になる可能性のあるケース
ここでは実際にどのようなポスティングを行うと違法になる可能性があるのか、具体的なケースを紹介していきます。自店で検討しているポスティングに該当しないかチェックしてみてください。
敷地内に勝手に入りポスティングした
戸建て住宅では特に、ポストが公道に面した場所ではなく玄関先などに設置されていることが見受けられます。
その場合に無断でポスティング行為をしたり、敷地に立ち入ったりすると、刑法第130条の住居侵入罪に問われる可能性があります。
刑法第130条 住居侵入等
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
引用:刑法 | e-Gov法令検索
この場合、戸建ての場合は門の中や庭、集合住宅であればエントランスはもちろん駐車場に立ち入ったことも、敷地内に勝手に侵入したということになります。
「チラシ禁止」を無視してポスティングした
戸建て住宅の玄関ポストやマンションの集合ポストなどに「チラシ配布禁止」などと張り紙がされているのを見たことがないでしょうか。そのように禁止事項を明確にしているにもかかわらず、無断で立ち入ってポスティングを行った場合は、先に記述した住居侵入罪以外にも軽犯罪法が適用される可能性もあります。
軽犯罪法第1条第32項
入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者
引用:軽犯罪法 | e-Gov法令検索
そもそも、ポスティング禁止と明確にされているにもかかわらず、ポスティングを行うこと自体が迷惑行為となり、自店へのクレームへと発展することも考えられるでしょう。
ピンクチラシをポスティングした
公序良俗に反する、性風俗店関連などのいわゆるピンクチラシは、風俗営業法第28条第5項2に違反するだけでなく、各自治体でもピンクチラシに関する条例で厳しく規制しています。
また、ピンクチラシについてはポスティングだけでなく街頭で配布することも禁止されています。
満杯のポストに無理やり投函した
一枚でも多くポスティングすることにこだわるあまり、すでにほかのチラシや郵便物などで満杯になっているポストに無理やり投函してしまうと、軽犯罪法第1条第33項にあたる可能性があります。
三十三 みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者
引用:軽犯罪法 | e-Gov法令検索
また、ポストが満杯だからといって玄関ドアにチラシを挟んだ場合も、そのチラシが風に飛ばされて周辺や路上に落ちてしまえば迷惑行為となります。チラシが散らばって道が汚れたこと自体は軽犯罪法に該当しなかったとしても、地域や集合住宅などでのポスティングを禁止されてしまうこともあるでしょう。
違法にならないポスティングをするポイント
- チラシ配布禁止の表示を確認
- 集合住宅では管理人の許可を得る
- ニーズに合わせポスティングする
- ポスティングする時間帯に注意する
チラシの内容がどれほど健全で違法でないものであっても、やり方によってポスティングの行為が違法につながる可能性があります。違法にならないポスティングを行うにはどのようにすればよいのでしょうか。具体的な対策を説明してきます。
チラシ配布禁止の表示を確認
すでに「ポスティング禁止」という張り紙ではっきりと意思表示をしている場所にポスティングを行った場合、違法にならなくても自店にクレームが入る可能性も考えられます。特に「罰金○○円」「警察に通報します」といった記載が張り紙にある場合はクレームにつながる可能性が非常に高いです。
また、集合住宅や地域などの広範囲でポスティング禁止とされているところにポスティングをしても、チラシの反響自体が期待通りに得られないこともあります。費用対効果という観点では、禁止地域にはポスティングをしないという選択のほうが賢明でしょう。
集合住宅では管理人の許可を得る
集合住宅で管理人室がある場合など、管理人に直接会える機会があれば、事前に管理人の許可を得てからポスティングを行うことが大切です。次回のポスティングの際にも理解を示してくれるだけでなく、万が一「ポスティング禁止」の記載があった場合でも、チラシの内容に問題がないと見なされれば承諾を得られる可能性もあります。
ニーズに合わせポスティングする
例えば比較的高齢者が多い住宅地で、明らかにニーズに沿わないような若者向けの商品・サービスのチラシを配布しても、反響はあまり期待できないことは明らかです。また、世帯数の多さだけでエリアを選んでも必ず効果が得られるものではありません。自店のチラシのターゲット層や配布するエリアを事前に明確にし、ニーズにマッチしたポスティングを行いましょう。
ポスティングする時間帯に注意する
ポスティングという行為に対して、何時から何時までに行うことという公の決まりごとはありません。しかし、普段見かけない人が真夜中にポスティングをしている姿は、住人からすれば怪しい人物にしか見えないでしょう。ひと目で怪しいと思われれば、自店にクレームが入るだけでなく、警察に通報される可能性も考えられます。
ポスティングチラシの反響が得られやすい時間帯には、住人がチラシを目にしやすい朝の7〜8時や18時〜19時といった、人の流れがある時間帯が挙げられます。その時間帯にポスティングを行うとしても住人に不審者と思われないように考慮しましょう。
ポスティング行為を違法と指摘された際の対処法
自店のポスティングを行ったあとで、そのポスティング行為が違法であると住人から指摘を受けた場合、適切な対処法としては下記のことが挙げられます。
- 迅速に謝罪の連絡を入れる
- 事情を説明しチラシを回収
- ポスティング禁止リストに追加し周知を徹底
具体的にはどのようなことか、順番に説明していきます。
1.迅速に謝罪の連絡を入れる
ポスティング行為に住人がクレームを入れるということは、住人にとって何かが不快に感じ、迷惑だったということです。まずは何より、不快な思いをさせたことに対してお詫びの連絡を入れましょう。その際は「クレーム・苦情」ではなく「貴重なご意見をいただいた」というお礼を忘れずに伝えます。
また、クレームを入れた相手の氏名、連絡先、住所を必ず聞くようにします。個人情報を聞かれるのを嫌がる相手もいるため、相手と話す際は丁寧な言葉を選び誠意が伝わる対応を心がけましょう。
2.事情を説明しチラシを回収
ポスティングについて事情説明を行う場合は、ポスティングを実際に行った担当者ではなく、管理者・責任者が出向いて行うことが重要です。集合住宅の住人から指摘を受けたのであれば、集合住宅の管理人にも立ち会ってもらうとよいでしょう。
事情説明を行ったあとで、指摘対象となったチラシは必ず回収します。住人にチラシを破棄する手間など余計な負担をかけないようにする心遣いが大切です。
3.ポスティング禁止リストに追加し周知を徹底
ポスティング行為に対して指摘を受けた住宅は、ポスティング禁止のリストを作成しておきましょう。ポスティング禁止という周知がなされていなかったために、別の配布スタッフがまたポスティングしてしまうと、大きなクレームに発展する恐れも考えられます。
一枚でも多くチラシを配布したいという気持ちもありますが、一度クレームを入れたということは、住人が本当に不快な思いをしたということですので、また嫌な思いをさせないような心遣いを意識しましょう。
まとめ
チラシのポスティングはターゲットを絞った販促として有効な手段ですが、一方でターゲットを選ばずに行うと不快な思いをさせてしまう可能性もあるということを考慮しなければなりません。
ポスティングという行為自体を禁止する法律は存在しないものの、ポスティングの方法次第では不法侵入や迷惑行為にあたるなど、法律や条例違反につながる可能性もあります。チラシのニーズやターゲットを明確にし、配布方法にも配慮しながら相手の迷惑にならないようなポスティングの段取りを行いましょう。
また、クレームに発展してしまった場合でも口先だけではなく、相手に不快な思いをさせてしまったことを誠意を持って謝罪をしましょう。さらに自店で再発防止の対策を従業員らと共有しながら、配布側と受け取り側がお互い有益になるポスティングを検討してみてはいかがでしょうか。
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