商品・サービスの紹介や面談の約束を得るために、家庭や取引先に電話をかけるテレアポ営業は、インターネットが一般化した現在も営業手法の一つとして取り入れられています。
しかし、顔もわからない相手に電話をかけるのは緊張するものであり、最後まで話を聞いてもらえない場合もあることから、テレアポ営業を苦手とする人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、テレアポが少しでも成功に近づけるように、事前準備や話し方などのコツを紹介します。
テレアポ営業をする前に知っておきたい大切な心構え
テレアポを行う前に知っておくべき心構えとして、「断られることや成功率が低いことを前提に電話をすること」と「慣れていくことで成功率もあがること」の2点があります。
テレアポは顧客側にとっては突然電話がかかってくるので、商品やサービスの購入や利用のタイミングとずれていたり、そもそも求めていない情報を紹介されたりといった状況になる場合が多くあります。また、そもそも電話が嫌いな人や、忙しくて長電話ができない人などもいるでしょう。
1回ごとのテレアポを全て成功させようと気負いすると、うまく行かなかった時に落ち込んでしまう原因にもなりかねません。「断られることも当然ある」というくらいに気楽に構えて、実際に成約につながった成果だけでなく、その過程で得られる経験にも目を向けてみましょう。
また、テレアポは数をこなして慣れていくほど、自分の営業スキルも身についていき成功確率もあがる可能性があります。テレアポ営業を中長期的に捉え、将来的な成功につながると考えてこなしていくことも大切です。
テレアポ営業の基本的な流れ
テレアポによる営業電話の基本的な流れは以下の通りです。
- テレアポの事前準備をする
- 電話をかける
- 挨拶や自己紹介をして要件を伝える
- 本題に入る
- クロージング
- 結果を記録
具体的な内容や流れは、扱う商材や電話の相手によっても変わりますが、一般的にはこのような手順になります。事前にリストや時間帯の選定とスクリプトの用意などの準備をして、電話をかけたらまず先に自己紹介や電話した理由を簡潔に伝えましょう。そのうえで本題に入り、次につながるようにクロージングができたら完了です。あとは必要に応じて結果や記載しておくべき情報を記録しましょう。
【事前準備編】テレアポのコツ
- トークスクリプトと呼ばれる台本を作る
- 切り返しトークを考えておく
- 電話をかける時間帯・タイミングを考える
- 電話先の情報を集めてリストを作る
テレアポの流れで説明したように、まずは事前準備を行う必要があります。テレアポを行う際の緊張を少しでもやわらげ、成功率をあげるには事前に対策をとることが効果的です。苦手な事柄を一つ一つ解決していくことで、心に余裕が生まれます。ここでは事前準備のコツを紹介します。
トークスクリプトと呼ばれる台本を作る
テレアポがかかってきた時、話の内容が頭に入らずに聞き流したくなる場合もあれば、つい会話が弾んでしまったという場合もあります。会話が弾むテレアポには、相手とスムーズに会話ができるような台本が存在することも多いです。
その台本の役割と言えるのがトークスクリプトです。トークスクリプトがあることで、話しているうちに話のつじつまがあわなくなることも防げます。テレアポを必要とする企業では基本形となるトークスクリプトを用意しているところが多いようです。
テレアポでの基本的な会話の流れは以下の順番になります。
- 挨拶と自己紹介
- 相手の興味を引くつかみの言葉
- 相手の反応に対する返し
- 相手への質問
- 日時の約束
営業側が主導権を持って会話を進めることができれば流れはスムーズになりますが、会話中に最も大切なのは、最終判断は相手に任せるという意思表示をはっきりすることです。そうすることで相手も「強引に会話を進められているのではない」ということがわかり、相手に不信感を持たせることなく会話が進んでいくでしょう。
トークスクリプトは、何度か試してみてからその成約率によって、定期的に内容を更新していくと、より洗練されたトークスクリプトに仕上がります。
切り返しトークを考えておく
切り返しトークとは、相手の言葉に切り返して返答する会話方法や手段を指します。先にも説明したように、テレアポではサービスや商品を紹介しても断られる場面が多くあります。心構えとして「仕方がない」と割り切ることは大切ですが、あらかじめ「どのように断られたらどう返すべきか」という切り返しの手段をたくさん用意しておくことも大切です。
電話の相手によって、本当に断りたいと思っている人もいれば、迷いや情報不足から断ろうとしている人もいます。断る理由や相手の言葉にあわせてうまく切り返しができれば、見込みのある顧客を見極めてつなぎとめることも期待できます。
また、切り返しトークをたくさん用意しておけば、相手の言葉に戸惑ってしまい返答に詰まるようなケースも避けやすくなります。
電話をかける時間帯・タイミングを考える
テレアポ営業がうまくいかない理由の一つに、電話をかける時間帯を間違えているということがあります。特に企業に対してテレアポ営業をかける場合は、時間帯を間違えると二度と対応してもらえなくなることもあるので注意が必要です。
日常生活でも習慣があるように、企業においても「一日の中で多忙な時間帯」「一週間の中で多忙な曜日」というのが大抵決まっています。たとえば、多くの企業では始業直後や終業前の1時間は忙しくなりやすいでしょう。他にも、お昼時は離席していてそもそも電話がつながらない可能性もあります。業種によって定休日があったり多忙な時間帯も異なったりするため、相手の業種や状況をよく見極めることが重要です。
また、「担当者が不在」と言われた場合は、断りの常套句である場合もありますが、本当に担当者が不在という場合もあります。連日何度も電話をかけ直すとしつこいと思われるので、少なくとも一週間程度おいてから再度電話をかけるとよいでしょう。
電話先の情報を集めてリストを作る
電話をかけるリストについて、ただ電話番号や相手の名前、企業名だけをもとにテレアポをするのではなく、予め電話先の情報も調べておくのがおすすめです。たとえば、相手企業の事業内容や活動地域、社員数や会社の規模、競合相手などが該当します。
これらの情報を事前に収集しておくことで、相手の状況や規模感、課題になり得るであろう要素にあわせた提案がしやすくなります。相手のビジネスモデルと自社の商材がどのようにマッチングするのかを具体的に説明することで、解像度の高い提案につなげられるでしょう。
【話し方編】テレアポのコツ
テレアポは相手の顔が見えないからといっても、おざなりな姿勢や態度はしっかり声に伝わるものです。目の前に相手がいるイメージを持ちながらしっかりとした話し方で会話を進めるとよいでしょう。ここでは、テレアポにおける話し方のコツを紹介します。
挨拶や名乗りはしっかりと丁寧に
テレアポ営業や対面での営業では、初対面での挨拶や名乗りは第一印象を大きく左右します。明瞭な声での挨拶は、誰にとっても気持ちのよい印象を与えやすいです。相手に不信感を与えることのないよう、しっかりと丁寧な挨拶を心がけましょう。
相手が目の前にいるイメージで話す
表情が見えないテレアポ営業の場合、相手に不信感を与えるかどうかはすべて声にかかっています。どんなに丁寧な言葉選びをしていても、話をしている姿勢や表情がおざなりであれば、自分が思う以上に声に現れるものです。
相手が見えない場面だからこそ、声のトーンで感情を表現したり、口角を上げて表情が伝わるような話し方をしたりするなど、普段以上の相手への配慮を意識するとよいでしょう。
ただし、不自然に明るすぎる声や喋り方をするとかえって営業らしさが出てしまい、相手に不信感や悪印象を与えてしまうことにもなりかねません。声の明るさは意識しつつも、落ち着きのあるトーンで丁寧に話すことを心がけましょう。
相手の話し方に合わせつつビジネスであることを忘れない
会話の波に乗るには、普段の自分のままの話し方ではなく、相手の話し方にあわせて変化させることが大切です。相手の話すスピードや声のトーン、大きさなどをあわせることで、会話もスムーズに流れるようになります。
早口で端的に話す相手にはこちらもスピーディーに話し、ゆっくりした口調の相手にはこちらもゆっくりと丁寧に話すなど、相手の話の波長に身を委ねるイメージで進めてみましょう。
一方で、テレアポがビジネスであるという意識を忘れないことも重要です。相手の波長にあわせつつも、馴れ馴れしい態度や口調になりすぎたり、相手の反応を見ずに一方的に話をしてしまったりということが起きないように、「お客様になる可能性のある相手」であることを考えてコミュニケーションを取りましょう。
質問に対する返答はなるべく即答する
電話中には相手から質問を投げかけられる機会も多く発生します。この時、できるだけ即答で相手の聞きたいことに対して正確な回答ができるようにしましょう。返答に詰まったり動揺したりしてしまうと、相手に不信感を与える原因となります。
質問をされるということは少なからず興味を持ってもらえている状況なので、うまく対応できないことでチャンスを逃さないようにしましょう。先にも紹介したように、事前にトークスクリプトや切り返しトークを用意しておくのがおすすめです。
【クロージング編】テレアポのコツ
テレアポ営業は、商品・サービスの購入や面会時間の確保などの目的に向けて話をまとめていきます。その流れをよりスムーズに進められるように、クロージングに向けた会話のコツを紹介します。
相手が断る理由を無くしていく
知らない相手からの電話は誰でも警戒するのは当然であり、早く終わらせようとして電話を切る方法をさまざま考えるものです。営業側も成約をまとめることがテレアポの目的のため、できるだけ長く会話を続けたくなりますが、「絶対電話を切らせない」「断らせない」といった強引な姿勢ではかえって不快な印象を与えてしまいます。相手が断る理由やタイミングをこちらから与えない言葉の選び方がポイントです。
例えば、「今、お電話大丈夫ですか」と尋ねてしまうと、相手に「大丈夫ではないです」と断る理由を与えてしまうことになります。「お忙しいところ失礼します」と自ら先手を打つことで、断るタイミングがなくなります。強引ではなく、相手が気づかないうちに断る理由を最初から無くしていくとスムーズです。
商材や情報の説明は簡潔にする
テレアポ営業は視覚情報がないために、たくさんの言葉で多くの情報を一気に盛り込んでしまいがちですが、長くてくどい話の多くは相手の耳には届きません。また、電話をかけた時間はこちら側の都合によるもので、もしかしたら相手は手が離せない場合もあるでしょう。
相手に好印象を与えるためにも説明は簡潔にし、何を伝えたいのかを言葉を選んでできるだけ短い時間の会話で済むように心がけましょう。
相手にとってのメリットを伝える
商品・サービスのセールスでは、その商品・サービスのよさや素晴らしさといった主観的な表現だけを並べたのでは、相手にとってのメリットまでは伝わりません。相手の状況に合わせた情報を踏まえながら、「選択することがメリットにつながる」とわかるように、その商品・サービスの必要性や利点を伝えましょう。
セールス感を出さない言葉を使う
一般的に「テレアポ=押し売り」という印象を抱いている人は少なくありません。できる限りセールス感や押し売りといったイメージが薄まるような言葉選びが重要です。「ご案内」や「販売」といった押し売り感満載の単語ではなく、「ご確認」「ご提案」と言い換えるだけでも、相手の不信感は薄まります。「ちょっとだけなら話を聞いてみてもいいかな」と思ってもらえる言葉選びが大切です。
また、特別感を演出することも大切です。「むやみやたらにテレアポをしているわけではない」ということが分かるように、特定の条件や相手に対してのみ提案しているということを伝えれば、相手に「優遇されている」「貴重な機会である」と思ってもらえる可能性があります。
シャドーイングを行う
「シャドーイング」とは、相手の言葉を復唱することです。会話の合間に相槌をするだけでなく復唱をすることで、相手は自分の話をちゃんと聞いてくれているとわかり、距離感を縮めることができます。さらに、相手の言葉を復唱することで、個人情報などの必要な事柄を再確認することができ、聞き逃しを防ぐ役割もあります。
シャドーイングを行うにはもちろん相手の話を理解することが必要なので、会話の中では8割は相手の話を聞くつもりで進めるとよいでしょう。
まとめ
今回は、テレアポ営業を成功させるための話し方や事前準備などのコツを紹介しました。
初めてテレアポ営業を行う際は特に緊張しますが、必要な言葉を事前にまとめてトークスクリプトを作成することで、話しているうちに文章がまとまらなくなったり、要件を聞き逃したりするのを防ぐことができます。
また、テレアポ営業で一番頭に入れておきたいのは、相手への配慮です。電話を受け取る側も知らない人の電話には不信感を抱いてしまうものです。顔が見えないからといって、だらしない姿勢で話したり、片手間で何かをしながら話したりしたのでは、自分では気づかなくても相手には伝わってしまいます。
テレアポは相手の忙しい時間帯を避け、相手の状況や話し方に合わせてできる限り説明はシンプルに行いましょう。成約に至らなかったり、途中で電話を切られたりするのは残念なことではありますが、そこは地道に進めながら、丁寧で洗練された会話を身につけるように心がけましょう。
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