ファストファッションやフリマアプリの浸透、価値観の変化により、転換期を迎えたとされるのがアパレル業界です。売上低迷を乗り越えて、変化著しい消費者のニーズに対応していくには、どのような販売戦略が有効なのでしょうか。
今回は、現在のアパレル業界の現状と、今後の売上向上や顧客獲得の挽回のために有効な販売戦略について、さまざまな集客促進の方法とともに紹介します。
目次
アパレル業界の現状
消費者ニーズの変化の対応や、業界全体のあり方の見直しなど、アパレル業界は今大きな転換期を迎えているといえます。消費低迷など社会的な状況以外に、業界では実際にどのようなことが起きているのでしょうか。
アパレル業界は低迷している?
日本百貨店協会の「全国百貨店売上高概況」によると、全国百貨店の衣料品の売上高は、2023年9月の対前年増減が9.6%、10月の対前年増減が4.4%となっており、さらに10月時点で20ヵ月連続のプラスとなっています。2021年頃は社会情勢などの影響から低迷が続いていた状況でしたが、外出機会の変動などにより需要が回復するなどの動きを見せています。
(2023年11月時点)
個性や価値観の多様化により販売戦略は転換期になっている
アパレル業界の販売戦略は、多様化する価値観にも影響を受けて変遷しています。
ひと昔前であれば、アパレル業界の販売員はファッションリーダーとしての役割も大きく、衣服に関するセンスや能力の高い人材が企画から販売までを行うことで成功をおさめていました。
しかし、社会全体で個性や多様性が見直されるようになった現代では、アパレル業界においても顧客一人一人が求めるニーズが多様化しています。店員のセンスや能力も大切な要素ではありますが、それぞれの顧客にあわせて販売戦略を立ていくデータ分析能力がより重要となっています。
また、社会情勢や人々のライフスタイルの変化に伴ってインターネット販売の需要も高まり、実店舗だけでなくECサイトを中心とした販売方法なども、今後ますます増えていくことが考えられます。
販売戦略を立てるにはターゲットの明確化が大切
多様性を重んじ、消費者自らが選択するという主体性がより重視されるようになった現代では、アパレル業界においても顧客のニーズが多様化しています。顧客を購入へと繋げるためには、商品の幅を広げて誰かに選んでもらうことを待つのではなく、ターゲットを絞って特定の需要に対する独自性を高めることが重要です。そうすることで、強みとする商品についてのみマーケティング資源を集中でき、利益を少しでも最大化させることに注力する余裕が生まれます。
ターゲットを明確化するには、特徴をさらに細分化したペルソナ設定が効果的です。ペルソナとは年齢や性別、職業だけにとどまらず、実際に存在する人物であるかのような、家族構成や年収、週末の過ごし方、価値観、抱えている悩みなどの細かい設定を行います。設定するには、想像上だけでリストアップするのではなく、実際に顧客にアンケートやインタビューを行い、それらの結果に基づいて実在する人物に近い設定を行うとよいでしょう。
以下の記事では、想定するターゲットをより具体化して考える「ペルソナ」について解説しています。
アパレル業界で効果的な販売戦略7選
現代では販売促進におけるインターネットの活用は必要不可欠なものとなっています。中でもSNSは、若者を中心として幅広い年齢層のユーザーが日々利用しているため、販促活動を行ううえでも重要なメディアです。
それでは、アパレル業界の販促や情報発信においてインターネットやSNSを活用する場合、どのような方法が考えられるでしょうか。現代のライフスタイルにマッチした販売戦略のアイデアを紹介していきます。
アパレル業界の販売戦略1:Instagramを活用した情報発信
男女問わず幅広い年齢層に支持されるSNSのInstagramは、画像や動画を使ってさまざまな発信ができるため、個人だけでなく多くの企業が情報発信メディアの1つとして活用しています。
画像を使ってひと目でインパクトのある発信ができることから、アパレル業界で活用する場合もコーディネイトの見本や新商品の宣伝ができ、ユーザー側にとってもファッション雑誌の代わりとして活用できる利点もあります。
HPや自社ECサイトなどを持っている企業の場合は、リンクをプロフィールや投稿に置くことで、商品ページなどへの流入口を作る目的でも活用されています。
企業としてではなく従業員として情報を発信する
Instagramを実際に情報発信手段として活用する場合には、来店に促すためにもユーザーに親近感を持ってもらうことが大切です。そのため、企業アカウントで発信するのではなく、従業員のアカウントを作成して従業員の言葉で投稿すると好感を抱きやすくなるでしょう。
さらに掲載する画像についても、モデルを使ったプロ仕様の画像ではなく、従業員が実際に商品を着用してコーディネイトの紹介をすることで、ユーザー側も試着のようなイメージが湧きやすくなります。また、実際に店舗にいる従業員であれば、来店時の会話のきっかけになり、「あの店員さんのいるお店」という来店の動機付けにつながります。
インフルエンサーとコラボする
SNSで発信力のあるインフルエンサーとのコラボも、反響を得られる発信方法の一つです。ターゲット層に支持されているインフルエンサーにブランドや商品を紹介してもらうことで、顧客の購買意欲が高まります。さらにそれまでそのブランドを知らなかったというユーザーがその発信を見たことで、ブランドのファンになるという可能性も期待できるでしょう。
ただし、有名なインフルエンサーであれば誰でもよい訳ではありません。ユーザーは既に目が肥えているため、その言葉が真実であるか虚構のものであるかは容易に感じ取ります。実際に自社ブランドのコンセプトに共感してくれるインフルエンサーの言葉だからこそ、ユーザーに対して想いが伝わるといえるでしょう。
インスタライブやリール機能を利用する
より臨場感のある発信を行いたい場合には、リアルタイムで動画を配信できる「インスタライブ」や、15~90秒の短い動画を発信できる「リール機能」を活用するのがおすすめです。
インスタライブは、Instagram上で生配信を行うことができる機能で、視聴しているユーザーからの質問にもその場で答えることができます。商品の紹介をする目的などはもちろん、ユーザーとの距離感が縮められるようなライブ配信を行えば、ブランディング戦略や消費者ニーズの把握にも活かせます。
一方のリールは動画を配信できる機能で、話題になれば数千万回再生されることもあります。ユーザーの趣味趣向にあわせたジャンルの動画が連続的に表示されたり、おすすめ投稿に表示されたりするので、新規顧客の獲得にも繋げられます。インスタグラム上で、音楽やエフェクトを付けるなどの編集もできるので、専用のソフトなどを必要とせずに販促用の動画が作成できます。
アパレル業界の販売戦略2:YouTubeを活用する
YouTubeとアパレルには直接関連性がないという印象を持っている方もいるかもしれませんが、購買促進やイメージ向上のために活用する企業も多く存在します。画像や文字を用いた他のSNSの発信だけでは表現できないような、動画ならではの立体感のある情報発信ができるのがYouTubeの長所です。
他のメディアなどで画像で紹介した商品について、コーディネート術や視聴者にだけのとっておき情報を伝えることで、購買意欲を促す効果も期待できます。実際に衣服を人が着用して動いている姿を見られると、服の質感や着用感をより具体的に消費者にイメージしてもらうこともできるでしょう。
また、2021年からは「YouTube ショート」と呼ばれる機能も追加されています。これは、特にスマートフォンでの視聴に向いた短い時間の「ショート動画」を投稿できる機能で、ユーザーへのおすすめなどに表示されます。1つのショート動画を再生すると、連続的に他の関連動画などを見ることができる仕組みになっているため、新規顧客となり得るユーザーに見つけてもらえる可能性があります。短時間の動画なので、視聴のハードルも長時間の動画に比べて低く、服の紹介にも向いています。
SNSを多く利用するユーザーであればYouTubeをSNSにリンクして拡散する場合もあるので、連動することを見込んで作成することでさらに反響を得られるでしょう。
アパレル業界の販売戦略3:メールマガジンやLINE公式アカウントを活用する
メールマガジンやLINE公式アカウントを作成して、特定のユーザーに情報発信することも来店促進に効果的です。メールマガジンは即効性は見込めなくても、情報を配信し続けることで顧客の記憶に残り、来店につながる期待も持てます。また、LINE公式アカウントではクーポン配布やチャットでのやりとりもできるため、LINE登録することのメリットや特別感をユーザーに与え、継続的な顧客獲得に有効です。
アパレル業界の販売戦略4:販促カレンダーなどを活用して市場を把握する
販促カレンダーとは、販促活動に関わるような情報をまとめて記載したカレンダーのことです。多くの場合、1年間の祝日や行事、各種イベント、気候の特徴、社会人のボーナス月やライフスタイル、学生の長期休みなどが書かれています。アパレル業界であれば、それらの情報をもとに衣替えのタイミングや購入の需要を把握して、商品販売方法やタイミングを考える目的などに活用できます。
たとえば、10月~11月ごろには気温の変化による衣替え需要が高まり、続いて12月にはクリスマス、1月には新春初売りなどでアパレル業界全体で大きな販売機会となるイベントがあります。一方の2月では、それまでの需要が落ち着き閑散期になるとされています。こうした1年間での需要の変化にうまく対応するためにも、販促カレンダーの活用は重要です。
販促カレンダーについては、こちらの記事で作り方を解説しています。記事内では、マネケルで作成した販促カレンダーも無料でダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。
アパレル業界の販売戦略5:オムニチャネルを実施する
オムニチャネルとは、「omni(全体の、全ての)」「channel(経路)」を合わせた販売用語で、実店舗やECサイト、SNSなどあらゆる販売経路を用いて、顧客との接点を持つ仕組みのことです。実店舗で在庫切れだった場合でも、ECサイトや他の店舗を案内することで、顧客がその商品を買いそびれることがないような流れを作ります。
さまざまな販売手法があれば、多様化する消費者のニーズに即時対応でき、人手不足による顧客離れを防ぐこともできます。
オムニチャネルについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
アパレル業界の販売戦略6:ブランドの独自の強みをアピールする
冒頭にもお伝えしたように、自分で選択する主体性や多様性が重視される現代において、万人受けする商品や曖昧なコンセプトでは、顧客の支持を得ることが難しくなっています。顧客を流行に迎合させるのではなく、顧客が「自店の商品だから選ぶ」と支持を得られるような価値を持つことが必要です。
自店の商品のデザインや機能性など個々の強みを具体化し、さらに店舗やブランドについてはコンセプトや目標、活動内容などを明確にしてアピールすることで、顧客と想いを共有でき、長期的な顧客獲得につながります。
アパレル業界におけるブランディングの方法については、こちらをご覧ください。
アパレル業界の販売戦略7:商品と体験を一緒に売る
さまざまな分野において、近頃は「体験」ということが大きな価値とされ、購入だけでなく制作や学びなどの体験を交えたコンセプトショップが注目されています。自店に広いスペースがあれば、ファッションだけでなく音楽、書籍、食などさまざまな体験ができるコンセプトショップを期間限定で展開するなど、商品と体験を同時に提供する方法も考え方の一つでしょう。
実店舗を持たない場合でも、近年はレンタルスペースが各所に展開されているので、今後購買活動が活発になるタイミングのために、顧客との交流を持つ場を用意しておくことも効果的です。
まとめ
今回は、不況といわれるアパレル業界の現状と、売上低迷を打破する販売戦略について紹介しました。
社会情勢による消費低迷に加え、自分で選択することが見直されている現代において、来店することを待つだけでは現在の売上減少を乗り越えることができません。自店の強みやターゲットを見直して細分化し、SNSやYouTubeなどのメディアを活用しながら、前向きに発信し続けることが重要です。
インターネットをこれまで活用してこなかった店舗にとっては、SNSなどのメディアをフルに使いこなすことは容易ではないかもしれません。それでも使い続けることによってユーザーとの接点となり、拡散という現象によって新たな顧客獲得にもつながります。
新たなことに踏み出すのは躊躇しますが、一歩進むことで道は確実に拓けます。ぜひ、新たな販売戦略をこの機会に検討してはいかがでしょうか。
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