企業においてデータ活用の必要性が注目されている中で、「統計解析」という言葉を多く目にします。統計解析という言葉だけを見ると専門的すぎて深入りしたくない印象もありますが、企業においてデータ活用が本格化する前に知っておきたい用語の一つです。

今回は、統計解析について詳しく説明しながら、主な活用例やお役立ちツールを紹介します。

統計解析とは?

企業の経営戦略を学ぶ際に「ビッグデータ」という言葉に出会ったことはないでしょうか。データというと、数値や文字情報など、パソコンで管理する類の情報をイメージしますが、ビッグデータとは、これまでのデータベースの管理だけでは処理できないような膨大なデータの集合を指します。身近でわかりやすい例を挙げれば、個人の位置情報やリアルタイム情報もビッグデータのごく一部です。

統計解析とは、そのような膨大な量のデータを分析して、データの特徴やパターンなどさまざまな視点から仮説を立てたり検証したりする方法です。統計学をもとにしており、さまざまな産業や調査研究で用いられています。

統計解析の活用方法

膨大なデータをあらゆる視点で分析する統計解析は、さまざまな分野に活用することができます。

例えば、ユーザーの購買履歴や行動履歴といったデータをもとにして商品開発を行ったり、ユーザーをグループ分けすることでターゲットを絞った戦略方法を立てたりすることも可能です。

機械学習との違い

データ分析の手法として、統計解析の他に「機械学習」が挙げられます。機械学習とは、これまで集めた膨大なデータの中からコンピューターが何らかのパターンや特徴を見つけ出して(学習して)、その学習をモデルとして新たなデータの予測をコンビューターが自律的に行うというテクノロジーです。プログラミングにおける「もしAならTrue、BならFalse」というif文をイメージすると機械学習の流れがわかりやすいかもしれません。

機械学習は、コンピューター自身が膨大な量の複雑なデータからパターンや特徴を学習するというのが特徴です。一方で統計解析の場合は、もともとコンピューターが登場する以前からの統計学の理論に基づいて行われるため、必要な数式がシンプルであり、人間が解釈しやすいという特徴があります。

統計解析の種類は大きく分けて2つ

統計解析には主に「記述統計」と「推測統計」の2種類に分けられます。それぞれの特徴について説明していきます。

記述統計

記述統計とは、収集したデータから傾向や特徴などを明らかにし、グラフや表などを用いて表現するものです。

例えば、あるグループの身体測定を行った場合、測定結果の数値だけでは何も評価はできませんが、そこから平均値を出したり、他のグループとの比較を行ったりして、それらをグラフや表で表せば、データがわかりやすくなります。

記述統計とは、目の前にあるデータから平均や傾向などの特徴をわかりやすくするというものなので、データがなければこの手法を用いることはできません。

推測統計

記述統計は、既に存在する「あるグループ」のデータからわかりやすく表現するというものです。そのため、世界中の人々の全てのデータを把握するというのはほぼ不可能です。そこで登場するのが推測統計です。

推測統計とは、推測を行いたい対象全員(母集団)から無作為に抽出した「あるグループ」という限られた人数を標本(サンプル)として、「日本人の平均身長は何センチだろう」などと予測をするものです。最低限必要な標本のデータを取得して、そこから推測していきます。

統計解析の主な方法

統計解析の主な方法として「回帰分析」「主成分分析」「クラスタリング」の3つがあります。次にそれぞれの特徴を説明します。

回帰分析

回帰分析とは、結果と要因のそれぞれの数値の関係性を調べて予測を立てるという手法で、統計解析でも代表的な手法の一つです。求めたい結果の数値のことを「目的変数」、結果の要因とする数値のことを「説明変数」として一次方程式に当てはめて求めます。

身近な例を挙げると、ある店舗で活用しているSNSの更新回数と売上高を月別で表にした数字から、更新が多い月は商品の売上が上がり、更新が少なかった月は商品の売上が下がるということが読み取れた、という「結果」と「要因」による分析が回帰分析です。

回帰分析を取り入れることで、「家族の人数に伴う購入量」「顧客と見込み客の人数の差による売上高の違い」といった予測分析が可能になります。

主成分分析

統計解析を行う際、データの量が膨大だと分ける要素の数も多くなり、分析が複雑になってしまいます。そこで、少しでもデータがわかりやすくなるようにあらかじめデータをある程度要約することで、データの概要や大まかな特徴が把握できるようにすることが主成分分析です。

主成分分析は、大まかなデータの特徴を把握するためのものなので、商品・サービスの売上高や購入量などの具体的な要因を探るような活用には不向きといえるでしょう。

クラスタリング

クラスタリングとは、データ同士の類似度に基づいて、それらのデータをグループ分けしていく方法です。

例えば、複数の顧客を特定の情報をもとにグループ分けをして、ある一つのグループの中の複数人が同じ商品・サービスを購入した場合、そのグループ内の他の顧客にも同じ商品についての訴求を行う、という流れがクラスタリングです。

統計解析に役立つおすすめツール

統計解析に役立つおすすめツール
  • Microsoft Excel
  • R
  • JASP
  • HAD
  • SAS University Edition

統計解析は、ビッグデータを扱う企業にいるのであれば必須になりつつあるスキルではありますが、容易に身につくものではないため、ツールを活用することがおすすめです。

最後に、統計解析に役立つおすすめツールを紹介していきます。

Microsoft Excel

Microsoft Excelは多くの企業で活用しているアプリケーションです。Excelには統計解析用の拡張機能があるので、関数やプログラミング知識が浅い場合でも統計分析を行うことができます。また、Excelにまつわる解説サイトや書籍も多く、調べながら統計解析を進めたい人にはおすすめです。

ただし、大容量のデータ分析の場合はExcelでは処理しきれないことがあるため、基本的には少量のデータを分析するのに適しているといえます。

Microsoft Excel公式サイトはこちら>(2021年9月時点)

R

統計解析において非常に有名なフリーソフトといわれるのが、「統計分析フリーソフト R」です。Rは、統計解析に特化したプログラミング言語である「R言語」を使用します。回帰分析や主成分分析をはじめ、基本的な計算から、Excelでは処理できないような難しい分析も可能です。

Rについては、解説した書籍が多く発売されているので、調べながら進めたい方にもおすすめです。

統計分析フリーソフト「R」公式サイトはこちら>(2021年9月時点)

JASP

「JASP」もフリーで利用できる統計解析ソフトで、アムステルダム大学心理学部が開発を進めています。Mac、Linux、Windowsと複数のOSに対応しており、使いやすさを優先させたグラフィカルユーザーインターフェイスを採用しているため、ボタン操作だけで簡単に使用できます。

ソフトそのものは英語表記ではあるものの、日本語による解説サイトや書籍も豊富に登場しているため、初心者でも始めやすいソフトといえるでしょう。

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HAD

「HAD」は、Excel上で動作するフリーの統計解析ソフトです。関西学院大学社会学部で社会心理学研究を行う教授が開発したもので、心理学分野の統計解析とは相性がよいといえます。

使い方やFAQなどが日本語でわかりやすく書かれたウェブサイトでは、習得用のサンプルデータも用意してあります。

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SAS University Edition

高性能で高速の解析ができると有名な統計解析ソフト「SAS」には、これまでは学術用に利用できる「SAS University Edition」がありましたが、2021年4月30日でダウンロードが終了し、8月2日にサービス終了となりました。

それに代わり、クラウド方式で無償で利用できる「SAS OnDemand for Academics」が登場しました。クラウド方式のためパソコンへのインストールが不要で、OSに依存せずに利用することができます。

ただし、「SAS OnDemand for Academics」もアカデミック版ということから、個人使用と学術使用にのみ利用でき、利用には登録が必要となります。

SAS OnDemand for Academics | SAS公式サイトはこちら>(2021年9月時点)

まとめ

今回は、統計解析について、活用方法やおすすめソフトもあわせて紹介しました。

ビッグデータを用いたデータ活用の必要性が注目されている今、統計解析のスキルを高めておくことは業務上において今後大きなメリットがあります。

統計解析には主に、収集したデータから平均や傾向などの特徴をわかりやすくする記述統計と、最低限必要な標本のデータを取得して広く推測していく推測統計の2つがあります。また、統計分析の方法には膨大なデータを要約してわかりやすく主成分分析や、要因と結果の関係性から推測を図る回帰分析など、さまざまな分析方法があります。

どの方法が目的に向いているかわかりにくい場合には、初心者でも使えるようなツールや解説書籍やウェブサイトも多数登場しているので、少しずつ調べながらスキルアップを目指してみてはいかがでしょうか。

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