実店舗を運用していく中で、来店した顧客にいかに商品を買ってもらえるかが大きな課題になります。たくさんの客足を得たとしても、顧客が商品を買わずに退店してしまっては売上につながりません。
そこで、顧客から選ばれ、商品を買ってもらえる店舗づくりをするためには「店頭販促」に力を入れることが重要になります。競合店なども意識しながら、自分の店舗にあった販促を行うことで、より愛される店舗を目指すことができるでしょう。
この記事では、店頭販促とは何かという基礎的な知識から、具体的なツールや手法をご紹介します。
店頭販促とは?
そもそも店頭販促とは、実店舗に来店した顧客に対して、売り場で直接商品の魅力を伝えることで購買意欲を高め、実際に購買行動へ移させることやそのためのさまざまな取り組みのことを指します。店舗で実際に商品を見てもらう中で行う施策であることから、「インストアプロモーション」とも呼ばれています。
店頭販促のゴールは、「店頭で商品を購買してもらうこと(購買率をあげること)」になります。このゴールを達成するためには、1つの手法ではなく、さまざまな角度からのアプローチが必要となってきます。
なお、販促と意味を混同されがちな言葉として「広告」がありますが、広告は、多くの人に認知してもらうことが主な目的であり、購入の前段階である来店や認知のきっけかを作る施策になることが多いです。
店頭販促をする目的について
店頭販促を行う際は、その目的を明確にして、より効果を得られる方法を考えることが大切です。店頭販促で目的となるのは主に以下の4つです。
- 集客力を高める
- 購買率をアップさせる
- 客単価をアップさせる
- リピート率を高める
どれか1つを達成するだけでなく、この4つすべてをバランスよく改善していくことが重要です。ここからは、店頭販促のそれぞれ目的について詳しく説明します。
店頭販促の目的1:集客力を高める
顧客に商品を買ってもらったり店舗を利用してもらったりするためには、店舗の存在や取り扱っている商品を認知してもらい、来店のきっかけや商品を見る機会を作る必要があります。そのため、店舗や商品・サービスのアピールを通して購入前のの段階である集客力を高めることも、店頭販促の目的の1つになります。
店頭販促の目的2:購買率をアップさせる
店頭販促の大きな目的は「購買率をアップさせること」です。来店した顧客が実際に商品を見て手に取る間に、商品の魅力やこの店舗で購入するメリットを伝え、「買いたい」という購買意欲を高めることが重要です。
お店を訪れる人の中には、特に購入したいものがなくて立ち寄った人や、買いたいものはあっても特定の商品に絞っていない人なども含まれます。お店の外から店内まで、さまざまなツールや施策を通して「その商品をここで購入する理由」を作りましょう。
店頭販促の目的3:客単価をアップさせる
顧客一人ひとりの客単価をアップさせることも、店頭販促の目的のひとつです。客単価とは、顧客1人あたりの売上を平均したものをいい、客単価をアップさせることで店舗の売上を効率的に改善できるようになります。
たとえば、店内のレイアウトや陳列方法、ポップなど商品の見せ方を工夫して居心地がよく買い物がしやすい空間を提供し、滞在時間を増やすことなどがあげられます。店内を見て回る導線や時間を増やせば、それだけ多くの商品を見てもらえる可能性が増え、他の商品もまとめて買ってもらえたり、「ついで買い」を促せたりします。
店頭販促の目的4:リピート率を高める
販促には、リピート率を高めるという目的もあります。どの店舗も1度来てもらうだけでは、長期的な売上維持にはつながりません。大切なことは、その店舗のファンになって何度も行きたいと思ってもらうこと、つまり「ファン化」をおこなうことです。
顧客に満足してもらうような接客を心がけることはもちろん、1度店舗に来てもらった顧客に対して会員カードやポイントカードを発行して特典を付与するなど、次回もその店舗を利用するメリットを感じてもらえるようにしましょう。
また、店舗のブランディングも重要です。たくさんの競合の店舗がある中で、「〇〇といえば、この店!」と印象づけられるような店舗のブランドを作りましょう。ブランド力を高めることで他店との差別化を図り、顧客から「またこの店舗で買いたい!」と思ってもらえるでしょう。
店頭販促のツールについて
実際に店頭販促に活用できるツールには主に以下のようなものがあります。
- 旗や看板を使う
- 売り場にPOPを設置する
- デジタルサイネージ
- 店頭イベントを開催する
- ノベルティを配布
- 什器や飾り付けで売り場を装飾
それぞれの特徴を知っておくことで、販促ツールを使い分けることや組み合わせることが可能となり、より効果的な使い方ができるようになるでしょう。それでは、ここから具体例を交えて、店頭販促ツールの詳細を説明していきます。
店頭販促ツール1:旗や看板を使う
旗や看板は、お店の前を通る人に店舗の存在を伝えたり、どのような商品やサービスを提供しているお店なのかを知ってもらったりするために効果的なツールです。具体的には、のぼり旗やA型看板などがあります。
通常では、店舗の中に入らないと見ることのできない商品やメニュー、サービス、キャンペーンなどを遠くからでも視認性のよい看板に記載することで、魅力をアピールしながら集客につなげることができます。
また、のぼり旗のようにデザインを取り替えやすいツールの場合は柔軟に掲載内容を変えられるため、季節や時期に合わせておすすめを紹介したり、限定商品や限定メニューを特定の期間だけアピールしたりするすることもできます。
店頭販促ツール2:売り場にPOPを設置する
POPとは、店内で商品の陳列棚やレジ横、卓上などに設置するアイテムのことです。商品を説明するものから、プライスカードや新商品に付ける「New」と書かれたもの、割引をアピールするものなど、種類や形は多岐にわたります。親しみやすさを演出するため手書きのPOPを使用している店舗もよく見受けられます。
これらのPOPは、商品の近くや顧客の目に触れるところに置くことで注目を集め、その商品の魅力を補足する役割を果たします。商品単体では伝わらない細かな詳細や、割引や特典などその店舗だからこそ受けられる恩恵をアピールすることで、購買を喚起します。
店頭販促ツール3:デジタルサイネージ
デジタルサイネージとは、ディスプレイやタブレット、プロジェクターなどに映像や画像を表示してプロモーションを行う、電子看板のことを指します。商品のPR動画やCM、使用方法を説明した紹介動画などを表示することで顧客の目を引き、情報量のある内容も見せることができます。電子機器を使うため、使用方法や設置場所にはある程度制約があるものの、動きのある映像や音声で商品の魅力を伝えられることや、表示する内容を自由に変えやすいことがメリットです。
店頭販促ツール4:店頭イベントを開催する
店頭イベントは、携帯ショップや大型ショッピングモールなどでよく使われている方法です。イベントの中身は、抽選会やおみくじなどエンターテイメント性をもたせつつ、景品つきで顧客にメリットを感じてもらえるようにすれば、効率的に集客できるだけでなく、その場で売上につなげることもできるでしょう。
リピーター向けにイベントを開催する場合は、「〇〇ポイント貯めたらイベントに参加できます」のように、一定のポイントが貯まった顧客が参加できる仕組みを作り、ポイントを貯めるための購買促進との相互作用を狙うと、再来店を促しやすくなるでしょう。日時などの詳細が決まっている場合は、チラシや広告を活用したり、旗や装飾をおこなって事前告知をすることで、イベントの集客がしやすくなります。
店頭販促ツール5:ノベルティを配布
商品を購入することでもらえるノベルティや特典があると、顧客の購入のきっかけを作りやすくなります。「この店舗だけでもらえるものである」という特別感が、購買率のアップだけでなく、店舗イメージのアップにもつなげられます。
ただし、ノベルティの条件設定などには注意が必要です。条件となる金額が高かったり必要な購入点数が多かったりすると、ハードルを感じて購入をあきらめてしまう顧客もいるかもしれません。取り扱う商材に対して条件が適正か、配布するノベルティは顧客が欲しいと思えるものになっているかなど、バランスを考えて設定しましょう。
店頭販促ツール6:什器や飾り付けで売り場を装飾
什器や飾り付けをしっかり用意して、商品だけでなく売り場そのものを魅力的にすることも大切です。
什器とは、商品を陳列するためのラックや棚、ショーケース、ワゴン、マネキンなど店舗において日常的に使用されるアイテムのことです。什器の形や色、デザインなども売り場の印象に大きくかかわるため、商品や店舗のイメージにあったものを使うことが大切です。
また、それらと合わせて売り場を飾り付けするためのアイテムも用意しましょう。商品にあわせた装飾やオブジェを置くことはもちろん、ハロウィンやクリスマスなどのイベントや季節にあわせた装飾も大切です。
店頭販促を成功させるポイント
店頭販促を成功させるためには、先に紹介したツールを活用するだけでなく店舗でさまざまな取り組みを行うことが重要になります。主に以下のようなポイントがあります。
- 顧客が入りやすい外観にする
- 顧客が購入しやすい動線を作る
- 商品陳列やレイアウトを意識する
- 商品やサービスを体験してもらう
それぞれ詳しく解説します。
店頭販促のポイント1:顧客が入りやすい外観にする
まずは、顧客に足を踏み入れてもらいやすい店舗の外観にすることが大切です。「店舗自体は気になるけど、中に入る勇気がないから行くのをやめた」と思われてしまうと、いくら集客を頑張っても購買につなげることはできないでしょう。
店舗の外観をガラス張りにして店舗の中の様子が分かるようにしたり、入り口付近におすすめ商品を置けば、店舗を利用してもらいやすくなるでしょう。また、店舗が2階以上にあり顧客から店舗の中が見えづらくなっている場合は、看板や旗などを利用して、店舗が営業していることをアピールするのが効果的です。どのような店舗なのかがイメージできるような写真などを載せてイメージを伝えるのもよいかもしれません。
なお、店舗の外装は業種や取り扱っている商品、コンセプトなどによって適したものが異なります。以下の記事では、それぞれ飲食店と本屋における外観・外装のコツを紹介しています。
店頭販促のポイント2:顧客が購入しやすい動線を作る
店内での販促において重要なのが、顧客の導線を意識することです。導線とは、顧客が店内をどのように移動して見て回るかという動きのことを指します。入口から始まり商品の棚やレジの位置など、店内のあらゆる要素を考慮して顧客の動きを予測できれば、その導線に沿って商品を配置したり、目立つところに売り込みたい商品を置いたりすることができます。
店頭販促のポイント3:商品陳列やレイアウトを意識する
顧客の中には、初めから購入したいものが決まっている顧客と、特に購入物が決まっているわけではないけれど店舗内の品物を見てみたい顧客がいます。どちらにも共通しているのが、店舗内の商品がカテゴリーごとに分かれて見やすくレイアウトされ、ストレスなく快適に買い物をしてもらえるかが重要ということです。
目的としている商品が見つかりにくく、従業員に聞かないとどこに置いてあるか分からないようなレイアウトになっている場合、顧客に手間をかけてしまうため、店舗に対してよい印象を持ってもらえないでしょう。何を販売しているのか一目でわかるように店頭POPをうまく活用することで、商品を見つけてもらいやすくしたり、商品のよさをアピールしたりもできるので、積極的に活用しましょう。
売上につながるお店のレイアウトや売り場作りについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
店頭販促のポイント4:商品やサービスを体験してもらう
POP広告だけではよさが伝わりにくい食品や化粧品は、実際に試食やテスターを設置して無料で商品のよさを体験できるコーナーをつくるとよいでしょう。
家電など少し単価が高い商品ほど購買するかどうか悩みやすいです。しかし、その場で従業員が実演したり、顧客自身がサービスを体験できるようにすることで、実際に商品を購入した後のイメージを持ってもらいやすくなり、購買率を高められると期待できます。
店頭販促で客単価をあげる手法
客単価を上げられれば、新規顧客を集める店頭販促に大きなコストを割かなくても、効率的に売上をアップさせることが可能です。客単価を上げる販促手法は、大きく分けて以下の2つに分かれます。
- クロスセル
- アップセル
これらの手法を知っておくことで、スムーズに客単価を上げられるようになるでしょう。ここからは、客単価を上げる店頭販促の手法について詳しく説明します。
クロスセル
クロスセルとは、「他の商品などを併せて購入してもらうこと」を意味します。例えば「ハンバーガーにはポテト」、「レジ近くに手軽に買える商品を置く」といった施策が考えられます。顧客が購入したい商品の近くに関連商品を陳列したり、POP広告を使って関連商品も一緒におすすめすることでセット購入を促し、客単価のアップが期待できます。
ただし、顧客にとってメリットを感じられる商品をおすすめしなければ、顧客に「なんでも売りつけてくる店舗」というマイナスな印象を与えてしまいかねません。実際にクロスセルをおこなう際は、どの商品がセットで購入されやすいのかを事前によくリサーチしたうえで実施しましょう。
アップセル
アップセルとは、「購入を検討している商品よりも価格が高い別の商品を購入してもらうこと」を指します。アップセルのためには、商品名と価格をただ提示するだけでなく、価格分の付加価値が分かるようにパッケージを変更したり、得られるメリットをスタッフから説明することで顧客に納得してもらうことが重要。POP広告を利用して、顧客からの商品に対する口コミなどを掲載すると、付加価値に対する説得力を増すことができるでしょう。
アップセルとクロスセルについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
まとめ
ここでは、店頭販促の概要や目的、店頭販促ツールの具体例、購買率を高める店頭販促の方法について説明しました。
効果的な店頭販促をおこなうためには、ツールの違いや利用タイミングなどを正しく理解し、顧客のニーズにあわせた販促を実施することが大切です。また、1度実施して満足するのではなく、顧客の反応を見て、販促内容を修正していくことが店舗を人気店へ成長させるための秘訣となります。
ここで説明した内容を参考にして、効果的な店頭販促を実践して顧客から支持される店舗づくりができるようにしておきましょう。