「テイクアウト専門店」とは、テイクアウト(持ち帰り)注文に特化した飲食店のことを指します。店内での飲食スペースや多くのスタッフを必要としないことからも、小さい店舗で経営することが可能です。そのため、比較的初期費用を抑えて開業することができるでしょう。

今回は、テイクアウト専門店を経営するにあたってのメリットとデメリットを、費用面も踏まえて解説していきます。

テイクアウト専門店を開業することのメリット

テイクアウト専門店を開業するにあたって、どのようなメリットが存在するのでしょうか。大きく4つのポイントを紹介していきます。

テイクアウト専門店のメリット
  • 小さい店舗でも開業できる
  • 少人数経営で人件費を抑えられる
  • お客様の人数に制限がない
  • 移動式なら店舗の立地に左右されにくい

テイクアウト専門店のメリット1:小さい店舗でも開業できる

テイクアウト専門店の場合は客席を必要としないため、キッチンスペースと陳列・販売のスペース、さらにレジカウンターがあれば運営することが可能です。10坪以下の広さの店舗であっても問題なく開業できるでしょう。

10坪以下の小規模物件を探す場合、賃料の相場は地域や物件のある階数によって異なるものの、一般的な飲食店の開業と比較すれば、物件取得費も家賃も抑えられる傾向にあります。

テイクアウト専門店のメリット2:少人数経営で人件費を抑えられる

テイクアウト専門店は、客席対応のスタッフや、場合によっては洗い物などをする人員も揃える必要がなく、調理と販売の人数が確保できれば充分に対応することができるため、人件費を大幅に抑えることが期待できます。メニューの品数が限られていれば少人数でまかなうこともでき、カットできた人件費を食材調達や内装にまわすことも可能です。

テイクアウト専門店のメリット3:お客様の人数に制限がない

客席のある飲食店であれば、客席数がお客様の定員となりますが、テイクアウト専門店であれば食材の在庫がある限り、営業時間中は客席などの制限がなく継続的にお客様を迎えることができます。

また、テイクアウト専門店はお客様が店内で食事をする時間がない分、滞在時間が短いため回転率が高く、多くのお客様の来店も期待できます。

テイクアウト専門店のメリット4:移動式なら店舗の立地に左右されにくい

小規模の店舗も持たずに、キッチンスペースを備えた移動式販売のキッチンカーでテイクアウト専門店を開業するスタイルもあります。キッチンカーで開業するメリットには、物件探しの手間を省け、月々の家賃を払う必要がないということがあげられます。

さらに、平日はオフィス街、休日は繁華街などと、人の流れにあわせて販売する地域を変えることができるのも大きなメリットといえるでしょう。

移動販売車については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

移動販売店の基本知識を解説|起業に必要なものやメリットも紹介

販促物でテイクアウト専門店であることをアピール

移動式販売のキッチンカーでテイクアウト専門店を行う場合は様々なメリットがあげられますが、立地に左右されにくい分、何の店舗なのかお客様にアピールする必要があります。

キッチンカーでテイクアウトをアピールする場合、持ち運びと設置がしやすいタペストリーや幕、旗などで大きく目立たせるのがおすすめです。オリジナルのデザインを作成することもできるため、「テイクアウトができる」ということを伝える以外にも、おすすめ商品を載せたり、メニューの代わりとして使ったりすることもできます。

テイクアウト専門店を開業することのデメリット

費用面でも手軽さでも非常にメリットの多いテイクアウト専門店の開業ですが、一方でデメリットも存在します。テイクアウト専門店を開業することのデメリットを大きく3つ紹介します。

テイクアウト専門店のデメリット
  • テイクアウト用としてメニューが限られている
  • 商品の単価が低くなりやすい
  • 容器などの備品代がかかる

テイクアウト専門店のデメリット1:テイクアウト用としてメニューが限られている

テイクアウトということは、お客様はできたてを食べる場合もあれば、持ち帰り先で食べる場合もあります。そのため、料理が冷めた状態や再加熱した状態でも、できたてと同じように風味が落ちにくい商品を選び、提供することが重要です。加えて、商品に応じて、お客様が食べやすい容器で提供するようにしましょう。

また、お客様がどう食べてよいかわからないもの、スープ系の商品であればこぼれやすいものなどもテイクアウトには不向きといえます。

テイクアウト専門店のデメリット2:商品の単価が低くなりやすい

以前はテイクアウト専門店やキッチンカーなどは物珍しい印象がありましたが、最近は競合が増えていることから、商品ごとの料金の相場が決まりつつあり、お客様側から見ても平均的な価格帯がわかりやすくなってきています。

さらにテイクアウトの場合は、客席でのサービスなどを受けない分、客席のある店舗と同じような価格帯の設定では、お客様も購入を避ける傾向があります。地域や食材の種類などによって価格は異なりますが、お弁当のテイクアウトを考えるのであれば500円から高くても800円程度が上限と考えられるでしょう。

テイクアウト専門店のデメリット3:容器などの備品代がかかる

テイクアウト専門店の場合、容器代やフォーク・箸などの備品代がかかります。商品一点に対してかかる容器代は24円〜104円と容器の質によって差がありますが、商品の販売数によってはコスト面を大きく考慮する必要があります。

料理の見栄えを考えるあまりに、見た目がおしゃれな容器を考えたくなりますが、おしゃれであればあるほど容器代は高くなる可能性があることを考えなくてはなりません。

テイクアウト専門店の開業準備をする流れ

いよいよテイクアウト専門店の開業を決心したら、次は開業準備です。よりスムーズに開業を進めるにはどのような準備が必要でしょうか。ここではテイクアウト専門店の開業準備の流れを説明します。

テイクアウト専門店を開業するために必要な資金は何かを把握する

小規模のテイクアウト専門店であっても、開業するには最低限の資金が必要です。店舗の規模によっても異なりますが、物件を借りる場合であれば契約時に必要となる保証金などの物件取得費や、家賃などを含めておよそ100万円、さらに内装工事の費用に100万円かかるなど、総額で500万円ほどの資金は必要となるでしょう。

一方、家賃のかからないキッチンカーや自宅での開業であれば、資金を抑えることが期待できます。

飲食店経営に必要な費用はいくら?計算方法と費用削減のポイントを解説

テイクアウト専門店の開業資金を調達する

資金を調達する際はさまざまな方法が考えられますが、調達方法が手軽であったり身近であったりするほど、金利が高くつくなどのデメリットもあるため慎重に考えなくてはなりません。

調達先としては「銀行」「信用金庫」「公的融資」「補助金・助成金」などが考えられます。いずれにおいても、申し込む際には審査があり、詳細な創業計画書(事業計画書)の提出などによって適正な事業計画がなされているかといった確認が必要になります。

開業資金は多額になることもあるため、資金事業計画や返済計画をしっかり立てておきましょう。下記の参考サイトを確認しながら充分検討してみてください。

参考:新創業融資制度|日本政策金融公庫
参考:よく見られている補助金・給付金 | 経済産業省 中小企業庁
参考:各種助成金・奨励金等の制度

テイクアウト専門店を経営する店舗物件を探す

テイクアウト専門店の競合が増えている近年においては、店舗物件の吟味も非常に重要です。どのような商品をどのようなターゲット層に販売するかによって、商圏とする地域の人口や年齢層、人の流れる時間帯など、自店にマッチした店舗物件の条件を吟味しましょう。

また、テイクアウト専門店が増加傾向にある今は、同商圏内の競合となる店舗がどのような品揃えをしているかなどの店舗情報の確認も必要です。

テイクアウト専門店を経営するために営業許可を取る

テイクアウト専門店においても、客席のある飲食店同様に「飲食店営業許可証」の取得が必要になります。さらに飲食店営業許可証を取得するには、栄養士、調理師、食品衛生管理者などの資格を有するという条件があります。そのなかでも一番取得しやすいのは、講習を受けることで得られる「食品衛生責任者」の取得でしょう。加えて、営業許可が下りるには一定基準の厨房設備も必要となります。

飲食店の営業許可を取得するには出店する地域を管轄している保健所への申請が必要となり、販売する商品内容によって必要となる資格なども異なります。管轄する保健所へ問い合わせてみるとよいでしょう。

テイクアウト専門店の集客のために宣伝をする

新たにテイクアウト専門店を開業するには、集客のための宣伝が必要になります。今では多くの飲食店が情報発信に活用しているSNSなら、店舗情報や取扱い商品の紹介をスピーディーかつ広範囲に発信することができます。また、近隣のお客様への来店促進には割引クーポンをつけたチラシ配布なども認知度アップに効果的です。

SNSやチラシの活用方法についてはこちらもご参考ください。

集客にSNSを活用する!SNSごとの特徴と運用のコツを解説

飲食店オーナー必見!チラシの効果を高めるためのコツを解説

デリバリーアプリを活用するのもおすすめ

ここまではテイクアウト専門店の開業までの流れを紹介してきましたが、お客様が直接来店して商品をテイクアウトする以外に、デリバリーサービスのアプリを利用して商品を購入するお客様も増加しています。そのため、開業にあわせてデリバリーサービスへ登録しておくことで、テイクアウト以外の顧客獲得が考えられます。

最後に、人気のデリバリーサービスについて2社を紹介します。

UberEats(ウーバーイーツ)

ウーバーイーツとは、特定のスタッフが配達を代行するのではなく、レストランパートナーである店舗と、注文が入った時点で最寄りで待機している配達パートナーの配達員とをマッチングさせて、注文された商品を顧客へ配達するというデリバリーサービスです。

レストランパートナーとして登録しておくことで、テイクアウト専門店であっても出前のような配達を希望する顧客へ商品を提供することができます。ウーバーイーツのレストランパートナーでは初期費用5万円のほか、売上手数料などが必要になりますが、テイクアウト以外の販路として検討するのもよいでしょう。

参考:Uber Eats のパートナーになる | Uber Eats

出前館

出前館は2022年8月時点で、アクティブユーザー数が873万人を誇るデリバリーサービスの中でも特に人気の高いサービスです。配達サービスを行わない店舗に対して配達代行機能を提供する「シェアリングデリバリーサービス(R)」を全国展開したことで配達可能エリアが全国に広がり、2023年1月時点では、加盟店舗数が100,000店を突破しました。

出前館に出店するには初期費用が2万円、他に注文金額に応じて変動する手数料としてサービス利用料、決済手数料などがあります。他に受注用のタブレットの準備が必要です。CMなどの宣伝で一般的な認知度も高まっていることから、需要の見込める販路のひとつでしょう。

参考:『出前館』、「モバイル市場年鑑2023」の2022年市場別ランキング「飲食カテゴリー」においての日本国内アプリダウンロード数が1位にランクイン! | ニュース | 株式会社出前館

まとめ

今回は、テイクアウト専門店を経営するメリットとデメリット、開業に必要な費用などについて紹介しました。

テイクアウト専門店は、客席のある飲食店とは異なり、小規模な店舗やキッチンカー、自宅などで開業が可能なため、家賃や人件費が抑えられ、一日の客数に上限がないというメリットがあります。一方で、テイクアウト用として冷めても美味しく食べられる商品であることや持ち帰りに伴う衛生面のリスクを考える必要があるだけでなく、低単価であるため客席のある飲食店よりも売上が下がることも考慮しなくてはなりません。

また、小規模の店舗であってもテイクアウト専門店の開業までのハードルはいくつかあります。客席のある飲食店同様に飲食店営業許可証の取得や開業資金の調達、店舗物件の吟味や宣伝なども重要です。特に資金調達が必要な場合は、できる限り慎重に考えていくことが必要でしょう。

テイクアウト専門店の需要が高まっている今こそ、デリバリーサービスへの登録も併用しつつ開業を検討してみてはいかがでしょうか。

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