これから塾を開業する方にとって、初期費用は重要なポイントの1つです。しかし、初期費用は開業の形式や規模、地域などによって大きく異なるため、分からないことが多く不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、塾を開業するための初期費用を「個人」と「フランチャイズ」に分けて紹介します。また、塾の開業後に必要な運営費用や必要な手続き、フランチャイズの候補先などについても解説します。

開業するための初期費用

塾を開業するには、さまざまな初期費用を支払う必要があります。しかし、どのような形式で開業するかで費用は大きく異なります。

ここでは「個人」「フランチャイズ」の2つの形式で見た場合にかかる初期費用の詳細と目安を詳しく解説します。

個人で開業する場合

まずは、個人で塾を開業する際にかかる初期費用を各項目ごとに解説します。

項目 詳細 費用の目安
物件取得費 保証金や礼金、仲介手数料など 100万円前後
内装工事費 指導方法にあわせた学習スペースなど 100万円前後
設備費 机やイス、ホワイトボード、パソコン、タブレット、コピー機、本棚、入退室の管理システムなど 200万円前後
教材費 対象となる塾生にあわせた教科書や問題集など 20~30万円前後
広告宣伝費 ホームページやチラシ、ポスティング費用など 50万円前後

個人で塾を開業する際の初期費用の総額として、500万円程度が必要になる可能性があります。ただし、各費用は立地や規模、対象となる生徒の層によって大きく変化します。

特に「個別指導」と「集団指導」のどちらを選ぶかによって準備すべきスペースや設備が異なるため注意が必要です。また、自宅の1室で塾を始める場合は物件取得費を大きく抑えられます。

参考:塾の開業資金の目安は?開業資金の工面方法や資金節約のコツを紹介 | 入退くんコラム

フランチャイズで開業するための初期費用

フランチャイズとは本部となる親企業と個人や法人が契約を結び、店舗などを経営するビジネスのことです。加盟側は、看板やブランド名など使う権利やノウハウを得る対価として、ロイヤリティと呼ばれる報酬を支払います。

ここでは、フランチャイズで塾を開業する際にかかる初期費用を各項目ごとに解説します。

項目 詳細 費用の目安
物件取得費 保証金や礼金、仲介手数料など 100万円前後
内装工事費 指導方法にあわせた学習スペースなど 100万円前後
設備費 机やイス、ホワイトボード、パソコン、タブレット、コピー機、本棚、入退室の管理システムなど 200万円前後
教材費 本部から仕入れるテキストや模試など 20万前後
広告宣伝費 ホームページやチラシ、ポスティング費用など 50万円前後
加盟金 フランチャイズへの加盟時に支払う費用 200万前後
保証金 加盟の際に本部に預ける一時金 50万円前後
研修費 開業前にオーナーに対して実施される研修費用 50万円前後

フランチャイズで塾を開業する際の初期費用として、約700万円ほどが必要になる可能性があります。個人で開業する場合とは異なり、本部に対する加盟金や保証金、研修費などを要します。

ただし、いずれの金額も加盟するフランチャイズによって大きく異なります。大手の方が金額を高く設定している傾向にあるものの、独自のプロモーションで集客をバックアップしてくれるケースも少なくありません。

加盟金の金額だけで判断することなく、バックアップ体制や経営の安定性などを総合的に判断して加盟先を決定しましょう。

参考:個別指導塾フランチャイズの開業・運営に必要な資金とは

塾開業後の運営費用

個人とフランチャイズのいずれかで開業したのちは、運営に関する費用がかかってきます。よって、開業資金とは別に運営費用も用意したうえで開業をしなければなりません。そこで、塾開業後にかかる1月分の運営費用の詳細と目安を詳しく解説します。

項目 詳細 費用の目安
家賃 物件の賃借料 45万円前後
水道光熱費 電気や水道、ガスなど 6万円前後
人件費 講師や事務員の給与など 90万円前後
教材費 テキストや模試の仕入れなど 30万円前後
広告宣伝費 講師や生徒の募集にかかる広告費など 30万円前後

塾の開業後にかかる運営費用は、1月あたり200万前後です。ただし、いずれの項目も塾の規模や生徒数、地域などによって大きく変化します。

塾の運営費用として大きなウエイトを占めるのが「家賃」と「人件費」です。経営の安定化を図るためにも「家賃」と「人件費」は少しでも抑える必要があります。

具体的には、家賃を売上の「5~15%程度」、人件費は「20~30%程度」に抑えれるように工夫をしてみてください。

また、フランチャイズで塾を開業する場合は前述の運営費用以外にも、ロイヤリティの支払いが生じます。一般的には、売上の「10~15%程度」で設定されているケースが多いでしょう。

しかし、本部によって割合はさまざまです。あらかじめ確認したうえで運営費用の一部として考慮することをおすすめします。

参考:塾を開業するのに必要な準備・費用とは

借り入れの方法

塾の開業には個人、フランチャイズのいずれの場合も500万円以上がかかる可能性があり、自己資金だけでは足りないケースも考えられます。その場合は、外部からの資金調達が必要です。資金調達の方法として、次の3つがあります。

  • 銀行からの融資
  • 日本政策金融公庫
  • 自治体による補助金・助成金

いずれにも特徴や条件があるため、自身がマッチするかを確認しましょう。

銀行からの融資

地方銀行や信用銀行は借り入れの候補であるものの、融資に対する審査は厳しい傾向にあります。

まずは、ビジネスの継続性や収益性、担保の有無や価値を証明するための事業計画書を作成し、一度銀行などに相談してみましょう。

日本政策金融公庫

事業の実績や担保、保証金がない場合は、日本政策金融公庫も選択肢の1つです。日本政策金融公庫は、地域の活性化や経済成長に取り組む方を支援する政策金融機関です。よって、開業に関する資金に対しても、さまざまな制度があります。

数ある融資制度の中でも「新創業融資制度」を利用すると、融資限度は「3,000万円」かつ、無担保無保証人で融資を受けられます。ただし、開業にかかる資金総額の「10分の1以上」を自己資金で用意する必要があるなど、いくつか条件があり注意が必要です。

新創業融資制度に関する詳しい内容は、日本政策金融公庫の公式ページで確認してみてください。

参考:新創業融資制度|日本政策金融公庫

自治体による補助金・助成金

自治体の助成金や補助金も開業時の借り入れ方法の1つです。銀行に比べて受給のハードルは低いものの、支給されるまでに時間がかかるケースも多いため注意しましょう。

塾の開業時に活用できる制度して「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」があります。それぞれの詳しい内容は、次の公式ページより確認してみてください。

参考:地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)|厚生労働省

また、開業する地方自治体による制度融資もあります。こちらも詳しい内容はお住まいの各自治体に直接確認してみましょう。

開業するために必要な手続き

開業するために必要な手続き
  • 開業届
  • 事業開始申請書

塾を開業するには資金調達だけでなく、開業に関する手続きも漏れなく行う必要があります。開業時に必要となる主な手続きは「開業届」と「事業開始申請書」の提出です。それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

開業届

まずは、塾を開業してから1か月以内に「開業届」を1部作成し、税務署に提出します。開業届の手続きには身分証と印鑑が必要です。

その際、青色申告を行う予定の方は「青色申告承認申請書」もあわせて提出しましょう。青色申告承認申請書とは、所得税の計算において税制優遇を受けるための書類です。

開業に必須の書類ではないものの、節税効果が高い青色申告を行うためにも提出することをおすすめします。ただし、青色申告には毎日の取引を会計帳簿に記帳するなどの手間も生じるため、どの方法で確定申告するかは事前に決めておきましょう。

事業開始申請書

もう1つの必要な手続きとして「事業開始申請書」の提出があります。事業開始申請書とは、都道府県税事務所に事業の開始を知らせるための書類です。

こちらも、事業の開始日から1月以内に最寄りの役所に提出しなければなりません。事業開始申請書は、役所のホームページなどからダウンロードできます。

また、法人として講師や事務員などを雇う場合は、税務署に対して「給料支払事務所の開設届出書」も提出しなければなりません。

フランチャイズで探す

前述の通り、フランチャイズで開業する際の初期費用は、各本部が設定する価格によって大きく異なります。費用や特徴の違いを把握するためにも、大手フランチャイズ先である「個別指導塾トライプラス」と「個別指導塾Wam(ワム)」について紹介します。加盟先選びの参考にしてみてください。

個別指導塾トライプラス

株式会社TRGネットワークが運営する「個別指導塾トライプラス」は、家庭教師のトライから生まれたトライグループの1つです。個別指導塾トライプラスの特徴に「トライブランドの力」と「開校時の広告宣伝費を最大100万円バックアップ」が挙げられます。

アルプスの少女ハイジを採用したトライのテレビCMは、「CM総研2021年12月 BRAND OF THE YEAR 2021」にて「消費者を動かしたCM展開」に選出されました。このトライブランドが活かされるのが「プロモーション効果」です。

チラシ配布などの集客活動にトライブランドが相乗効果を与えることで、塾の経営の肝となる「生徒集め」や「講師集め」が円滑に進むことが期待できます。

また、開校時の広告宣伝費を最大100万円まで本部が負担し、経営をサポートしてくれます。さらに、トライグループが持つ出店ノウハウの提供や物件選定、融資に関するサポートも受けられ、開業時の課題を全面的にバックアップしてくれるでしょう。

参考:個別指導塾トライプラスで独立・開業・起業 | フランチャイズの窓口(FC募集)
参考:CMギャラリー|家庭教師のトライ

個別指導塾Wam(ワム)

株式会社エイチ・エム・グループが運営する「個別指導塾Wam(ワム)」は、完全個別カリキュラムで生徒の勉強をマンツーマンでサポートする塾です。個別指導塾Wamの特徴に「本部負担での集客サポート」と「独自学習システムの提供」があります。

個別指導塾Wamでは、体験生徒につながる新規の問い合わせが30名を超えるまで、本部の費用負担で集客活動をサポートしてくれます。認知度が低い開業当初をバックアップしてもらえるため、安定した経営基盤を早期に構築できるでしょう。

また「オンライン授業」「AI学習システム」といった他にはない独自学習システムを利用できます。塾に通うことが難しい生徒を取り込めたり、AIによる学習カリキュラムの最適化を図れたりと独自の経営戦略を描きやすい点が大きな魅力です。

参考:個別指導Wam(ワム)のフランチャイズ(FC)加盟で独立、開業、起業 | フランチャイズWEBリポート

まとめ

塾の開業やその後の運営には、大きな資金が必要です。よって、計画的に資金を工面しなければなりません。

今回ご紹介した開業するための初期費用と自己資金を比べて、まずは現状を把握してみましょう。もし、開業資金や運営資金が不足する場合は、銀行や日本政策金融公庫などの情報を自ら調べて、借り入れも選択肢の1つとして検討しましょう。

開業するために必要な手続きもあるため、慌てることのないよう計画的な開業スケジュールを組むことをおすすめします。

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