従業員一人ひとりの勤務実態を把握したり、従業員からの各種申請を処理したりする勤怠管理は煩雑さが伴いがちです。特に従業員数が多い企業やパートや正社員など勤務形態が異なる従業員が混在する場合には、手書きの申請書や紙製のタイムカードなど従来のアナログ的な方法では漏れが発生してしまう可能性もあります。

そのような勤怠管理業務の煩雑さを解消するには「勤怠管理システム」の導入が効果を発揮します。今回は、勤怠管理システムを導入するメリットとデメリット、選び方を紹介します。

勤怠管理システムの仕組みと機能


勤怠管理システムとは、従業員の出退勤の時刻を記録したり、残業や休日出勤・休暇などの申請やシフトを管理したりする管理システムを指します。例えばシフト制にしている企業であれば、従業員一人ひとりの勤務時間帯を把握し、シフトの組み合わせを調整するマネジメント業務を勤怠管理システムを用いてオンライン上で一括管理をすることが可能になります。

また、2019年に行われた労働基準法の改正によって、客観的に労働時間を正しく把握できることが義務付けられました。法改正には残業時間を含めた労働時間の把握や有給取得の義務化も含まれています。この結果、従業員の勤怠状況を把握することのできる勤怠管理システムを導入する企業が増えています。

下記では勤怠管理システムの機能について3つ紹介します。

参考:働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編) (2024年10月時点)

さまざまな打刻機能

さまざまな業態の企業が存在する現代では、従業員の勤務形態もいろいろなスタイルが考えられます。出退勤時間の異なるシフト制以外にも、直行直帰のように常に外勤で働く従業員もいることでしょう。

従業員全員が同じ時間・同じ場所に出向くのであれば、指紋認証やICカード認証による打刻機能が向いています。また、外勤の従業員向けにはスマートフォンやタブレットで出退勤を入力できるような打刻機能がある勤怠管理システムもあります。

さらに、紙製のタイムカードに出退勤を印字するだけという従来のシステムの場合、遅刻をごまかすために手書きで出勤時刻を記入したり、終業時刻にタイムカードを打刻してから残業を始めたりという不正も可能になっていました。それらを防ぐためにもオンライン上で一括管理できる勤怠管理システムは有効といえます。

シフトの作成や休暇申請・承認

アルバイトの従業員数が多く、早番・日勤・遅番など勤務時間の種類が複数ある場合などには、従業員一人ひとりの希望シフトをまとめて、全ての希望に沿うように調整するのは非常に手間がかかります。

勤怠管理システムであれば、従業員からのシフト希望日時を入力するだけで勤務スケジュールを作成してくれる機能を活用できます。また、年次有給休暇や残業申請などの各種申請についての管理だけでなく、申請し忘れを防ぐ通知機能もあるため、毎月時間をかけて進めていたシフト調整や申請処理をスムーズに終わらせることにもつながるでしょう。

データの自動集計機能

勤怠管理システムを活用することで、給与計算との連動が可能です。従業員一人ひとりの出退勤、残業時間や休日出勤などの記録を参照して給与計算を一括で行うことができます。

さらに、過去の残業時間の記録をもとに、どの月に誰が何時間残業したかという統計を取ることで、どのような業務に負荷がかかっているかを把握することも可能です。

勤怠管理システムの導入によるメリット

勤怠管理システムの導入によるメリット

ここまで勤怠管理システムの主な機能を説明しましたが、勤怠管理システムを導入することで企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に解説していきます。

法令を順守することができる

勤怠管理システムを導入することで、残業を含めた労働時間や有給の取得状況が把握できるため、気づいたら労働基準法を違反してしまっていたということを未然に防ぎやすくなります。加えて法改正が行われた場合でもシステムをアップデートすることで対応が可能です。

また、アラート機能がある勤怠管理システムもあるため、必要に応じてアラートを出すことで、残業をできる限りしないという意識づけにも期待ができます。

リアルタイムで労働時間の確認ができる

勤怠管理システムをクラウド上で活用することにより、パソコンだけではなくスマートフォンやタブレットなどによるインターネット環境があれば、勤怠に関する情報をリアルタイムで知ることができます。

管理者側・従業員側双方が閲覧でき、さらに複数の地域に営業所などがある企業でも全拠点の情報を一括で把握できます。そのため、なかなか足を運ぶことのできない地域の従業員に対しても、残業時間が偏っていないか、増加していないかなどの細やかなケアにつなげることができるでしょう。

従業員による不正打刻を防げる

先にも説明した通り、一般的に利用されてきた紙製のタイムカードでは後から手書きで修正したり、本人以外の従業員が打刻したりするような不正打刻が可能でした。

勤怠管理システムでは、顔認証や指紋認証などの生体認証システムを採用することにより、本人以外の打刻を防ぐことができます。また、不正打刻ではなく純粋に打刻を押し忘れてしまったという場合にはアラートで打刻漏れを知らせたり、外勤の場合にはGPS機能により打刻時間と現在地をあわせて記録したりと、さまざまな事象に関する対応が可能です。

ほかのシステムに連携がしやすい

オンラインで管理する勤怠管理システムは、従業員の勤怠に関するあらゆる情報をデータとしてサーバー上に蓄積しています。さらにそれらの情報を値としてテキストデータ化するCSV形式に変換することが可能です。そのため、CSVファイルを認識できる給与管理システムに流用すれば、勤怠管理から給与計算までの一連の業務をオンラインで一本化することができるのです。

勤怠管理における業務時間の削減が期待できる

勤怠管理システムの導入により、タイムカードで勤怠管理を行っていた時と比較して、勤怠の集計や有休取得の日数などの集計を自動で行うことができるため、空いた時間を他の重要業務に充てることも可能です。また、正社員やパートタイム、フレックスタイム制や夜間勤務などで勤務形態が異なる場合でも、個別に情報を設定することで労働時間の集計を簡単に行うことができます。

加えて、給与計算に関しても給与計算ソフトと勤怠管理システムを連携することで効率化につながります。

勤怠管理システムの導入によるデメリット

勤怠管理システムの導入によるデメリット

従業員の勤怠に関することが一括で管理できる勤怠管理システムですが、導入することによるデメリットも存在します。導入によるデメリットを3つ説明していきます。

勤怠管理システムの導入に費用がかかる

これまで煩雑化していたマネジメント業務が一括で管理できる勤怠管理システムは、仕組みが複雑であればあるほど、導入には費用がかかることも理解しておく必要があります。

月額数百円程度で利用可能な製品もありますが、サーバー構築や保守費用なども含めて数百万円かかってしまう場合もあります。さらに機能を多く揃えようとしたり、企業ごとの就業形態に合わせようとしたりするとカスタマイズが必要になり、コストはさらにアップします。

しかし、一見多額な費用がかかりそうに思えますが、これまで煩雑な業務をこなしてきた人件費やタイムカード用の備品費用などの削減にもつながるため、無駄なコストではないとも考えられます。

就業規則に対応していないこともある

例えば、雇用形態が正社員、パートタイムなど複数ある場合や勤務地が複数ある場合で就業規則に対応していないこともあり、一部の対応を従来のように人員を使っての作業になることも考慮が必要です。そのため、勤怠管理システムを選ぶ際には就業規則や複数ある就業形態に1つのシステムで対応できるものであるかを確認すると良いでしょう。

また、勤怠の管理者と従業員、双方が使いやすいシステムなのかも導入前にあわせて確認することが重要です。

勤怠管理システムの社内普及に時間がかかる

勤怠管理システムは、導入したその日から全てがスムーズに利用できるとは限りません。なぜなら、新たな生体認証システムに慣れるまでに時間がかかってしまう可能性があるためです。特に従業員数が多ければ多いほど、マニュアルを配布したとしても浸透までに時間がかかってしまうかもしれません。加えて、システムの説明会を実施したとしても操作を間違えてしまう人が発生して、個別で対応を行う必要が出てくるでしょう。

そのため、従来の勤怠システムを稼働させながら試験的に併用してみたり、一部の部署から順に稼働してみたりなど少しずつ展開していくことがポイントです。

勤怠管理システムを導入する際の選び方

勤怠管理システムの導入を決定したら、次はどのシステムがふさわしいか見極める必要があります。勤怠管理システムを導入する際の選び方を紹介します。

クラウド型かオンプレミス型か

オンライン上で活用する勤怠管理システムには「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。それぞれ説明していきます。

クラウド型とは、インターネット上にある勤怠管理システムサービスを利用する形態です。サービス事業者側がシステムの管理を行うため、自社側でアップデートや保守管理をする必要がなく、パソコンやモバイルでのインターネット環境があれば利用することができます。また、雇用に関する法改正などがなされて機能の変更が必要な場合でも自社側で修正を行う必要がないため、対応が間に合わないなどの漏れの発生も防ぐことができます。

オンプレミス型は、自社で用意したサーバーに、用意した勤怠管理システムのソフトウエアをインストールして、自社で保守・管理を行う形態を指します。サーバー構築やコンピューターの保守などの手間はかかりますが、社内や専用ネットワーク内だけでの運用ができるため、機密情報の管理を行いたい企業にはふさわしいといえます。

自社で管理しているほかのシステムに合うかどうか

勤怠管理システムを導入する場合には、自社で使用している給与計算ソフトや労務管理システムと連携することができるかを事前に確認するようにしましょう。連携することができない場合、勤怠管理を行ううえで不便となる可能性があります。一方で連携することができる場合でも、勤怠管理の担当者が操作や管理がしやすいかも確認するうえで重要なポイントの1つです。

また、企業によっては、従業員の勤務形態や有給休暇などの付与について細かなルールを設定している場合があります。そのため、勤怠管理システムのカスタマイズでそれらのルールに対応できるかどうかを比較してみましょう。

従業員が使いやすいかどうか

数多くの従業員を抱える場合や、多機能すぎる勤怠管理システムを導入した場合、全ての従業員がスムーズに使用できるかどうかは非常に重要です。また、多機能なシステムでも実際には使わない機能が多い場合もあるでしょう。

シンプルな機能だけの勤怠管理システムであれば従業員一人ひとりへのレクチャーの時間を削減することができ、教える側の従業員も機能を熟知するための労力や時間を抑えることができます。

まとめ

今回は、勤怠管理システム導入のメリットとデメリット、導入する際の選び方について紹介しました。

働き方が多様になり、さまざまな就業形態の従業員を抱える企業において、時間に追われての手作業での勤怠管理では、どこかで漏れが生じてしまう場合があります。

出退勤管理だけでなく、残業や休日出勤、シフト管理まで一括で行ってくれる勤怠管理システムがあれば、これまでマネジメントに充てていた時間を大幅に削減でき、スムーズな勤怠管理の実現が期待できるでしょう。

企業の就業規則や就業形態によって勤怠管理システムの向き不向きがありますので、さまざまな勤怠管理システムを比較しながら、導入へと進めてみてはいかがでしょうか。

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