美容室の開業を目指す場合、準備や手続き、必要な資格など、事前に確認しておかなければならない点が多くあります。十分な準備ができていないまま開業してしまうと、その後の店舗経営が立ち行かなくなる可能性もあるでしょう。
そこで本記事では、美容室開業の具体的な準備の仕方から、各種手続きや全体の流れについて詳しく解説していきます。
目次
美容室の開業は準備が重要
美容室で経験を積み、独立して自身のお店を持ちたいと思う方も多いのではないでしょうか。新しく開業するとなった場合、これまで得た経験やスキルが活かせる部分もあれば、新たに準備や知識が必要になる部分もあるかもしれません。
例えば、美容師免許は持っていたとしても、店舗開業においては場合によって追加で必要になる資格や手続きがあります。その他にも、資金の調達方法や物件選び、店舗の工事から採用活動といった、さまざまなステップを踏むことになります。
まずは、美容室を開業する上で何が必要になるのか、どのようなことに気をつけなければならないのかを知り、1つ1つ確実に準備していくことが大切です。
美容室の開業の条件によって必要な資格
条件によって異なるものの、美容室を開業するのに必要となる主な資格は次の2つです。
- 美容師免許
- 管理美容師免許
美容師免許のみでも開業はできますが、自身のお店を広く展開したいと考える場合は管理美容師免許も必要になるでしょう。ここでは、それぞれの詳しい内容について解説します。
美容師免許
美容室を開業する際に必ず必要となる資格が「美容師免許」です。
美容師免許は国家資格の1つであり、取得には厚生労働省指定の美容師養成施設で学科を習得し、実技と学科試験に合格する必要があります。美容師の免許を保有していなければ美容師として働けず、もちろん開業もできません。
また、保健所からの営業許可を得る時だけでなく、融資の審査を受ける場合にも美容師免許の提出を求められます。ただし、美容師免許の保有者を雇用し、自身は裏方に回る形で開業する場合はこの限りではありません。
管理美容師免許
美容師を複数人雇用して他店舗展開する場合、美容師免許だけでなく管理美容師の免許も必要です。管理美容師免許を取得するには次の2つの条件があります。
- 美容師免許取得後3年の実務経験があること
- 各都道府県で実施している管理美容師講習会の受講を完了していること
自分自身が美容師免許しか持っていない場合でも、従業員の誰かが管理美容師免許を持っていれば営業は可能です。ただし、管理美容師免許を保有する従業員が辞めてしまった場合は営業ができなくなる点には注意しましょう。
参考:管理美容師・管理理容師になるには|東京の美容専門学校なら国際文化理容美容専門学校
開業にかかる費用について考えておこう
美容室の開業にかかる費用は大きく次の2種類に分かれます。
- 設備、工事にかかる資金
- 運用にかかる資金
お店のコンセプトにあった内装や外装の工事や、美容室運営に必要な備品の準備など、何かと資金が必要になります。ここでは、費用ごとの詳しい内容について解説します。
設備・工事にかかる資金
設備・工事資金とは、主に美容室の開業前に必要な資金です。
店舗となる物件の契約時に支払う物件取得費用や美容室の内装・外装費用などが該当します。また、設備資金としてセット椅子やシャンプー台をはじめ、スツールやワゴンといった美容器具などの購入費用もかかるでしょう。
そのため、設備や工事に必要な資金は事前にできる限り把握し、どのように用意するのかを決めておく必要があります。
運用にかかる資金
開業後には家賃や水道・光熱費、消耗品の購入など、さまざまなコストが発生します。
他にも、テナントにかかる火災保険やサロンにかける店舗賠償保険が必要です。さらに、ハサミやドライヤーといった備品、販促物を準備する費用もかかります。
固定費や経費に関してはある程度の予測が可能です。運用にかかる資金は可能な限り事前に洗い出し、シミュレーションしておくとよいでしょう。
美容室の開業までの主な流れ
美容室の開業に必要な資金を理解したところで、ここからは開業までの主な流れについて解説します。開業までには次の4ステップを踏むことになります。
- 事業計画・コンセプトを立てる
- 物件・内装業者選び
- 店舗内装の工事
- スタッフの採用
ここでは、ステップごとの詳しい内容についてみていきましょう。
事業計画・コンセプトを立てる
まず、お店の考え方や方向性を決定づける美容室のコンセプトを決定します。コンセプトとは全体を貫く基本的な考え方を意味し、コンセプトが不明確なままに開業してしまうと他の美容室との差別化が図りづらくなります。
その結果として、獲得したい顧客に適切なサービスが届けられず、不要なトラブルにもつながりかねません。企業理念と企業目標を軸にして、自社にあったコンセプトを立案しましょう。
コンセプトが明確になったら事業内容や企業の戦略・収益見込みなどを説明するための事業計画書を作成します。事業計画書を作成することで、物件にかける予算や内装工事費、設備費など必要な部分に予算を振り分けやすくなります。
さらに、ターゲットになる顧客も明確になるため、効率的なマーケティング施策の立案にもつながるでしょう。
物件・内装業者選び
コンセプトやターゲットとなる顧客が見えてきたら、コンセプトと顧客に合致する立地の物件を探しましょう。
物件情報はネット上でもリサーチができます。しかし、微妙なニュアンスの違いなどを防ぐためにも、実際に自身の目でも確認することをおすすめします。「広さや家賃が条件に合っているか」や「電気・水道などの設備の仕様が美容室の営業に差し支えないか」といった点は、ネット上の物件情報だけでは確認できないケースも多いためです。
また、「ターゲットとなる顧客が集まる場所はあるか」や「駅からどれくらい離れているか」なども自分の目で確認しておきましょう。
店舗内装の工事
物件を契約した後に内装工事がスタートします。納期については業者の方とコミュニケーションを密に取りながら進めましょう。また、購入予定の備品や納品日も打ち合わせておくとよいでしょう。
さらに、電気やガス、水道などの使用についてもオープンまでに申し込みが必要です。工事の工程表を出してもらい、工事業者に確認しながら施工を進めましょう。
スタッフの採用
開業準備中にスタッフの採用も並行して進めましょう。人材確保の方法としては「雑誌などの紙媒体やウェブ媒体への求人掲載」や「人材派遣会社の利用」などが挙げられます。
ただし、有料の求人広告に掲載する場合はそれなりに費用がかかる点には注意が必要です。あまりにも早くから求人を始めてしまうと、その分費用の負担も大きくなってしまいます。
一方で、求人活動が遅すぎてスタッフが集まらなければオープン時に店が回らなくなってしまう可能性もあるため、求人募集は工事が開始するタイミングを見計らって始めると良いでしょう。
【提出先別】各種手続きや書類
美容室を開業する際は、さまざまな場所に書類を提出しなければなりません。主な提出先として、次の4つが挙げられます。
- 保健所での手続き
- 税務署での手続き
- 日本政策金融公庫での手続き
- その他
漏れなく手続きを進めるためにも、ここではそれぞれの内容について解説します。
保健所での手続き
美容室の営業許可を受けるためには、開設届を保健所に提出しなければなりません。保健所に出す開設届とは、施設の名称や開設者の名前、管理美容師番号などを明記した用紙です。
また、開設届を提出すると同時に施設平面図や付近の見取り図、従業員の名簿や健康診断書が必要になり、許可の条件を満たしているかをチェックされます。
もし、内装工事や設備工事が必要な場合は工事前に保健所へ図面を持参し、相談しながら取り組めばスムーズに進められるでしょう。
参考:美容室の開業には資格が必要?美容師免許だけではダメ? | QANAETE【美容室の開業サポート】
税務署での手続き
開業届を税務署に提出して、事業主としての手続きを済ませておきましょう。事業主の手続きが完了すると事業所得者として登録され、確定申告の際に青色申告制度が利用できるようになります。
また、開業届は事業開始から1〜2ヶ月以内と提出しなければなりません。税務署に直接持参するか郵送で提出できます。詳しくは、国税庁のホームページを参照してみてください。
参考:No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|国税庁
日本政策金融公庫での手続き
日本政策金融公庫とは外務省所管の特殊会社であり、国の政策金融機関です。経営実績がない創業時の融資を行ってくれます。
ただし、創業時に融資を受ける際には事業計画書が必須です。ひな形が決まっているため、事前に用意して融資に臨みましょう。
また、新創業融資制度では担保と保証人が原則不要とされています。詳しい概要は、日本政策金融公庫の公式ホームページから確認してみてください。
参考:日本政策金融公庫
その他
その他の手続きとして、消防署の「消防検査」を受ける必要もあります。内装や外装の工事は消防署の定める基準を満たすように、工事業者や管轄の消防署に確認してもらいます。
また、従業員を雇用する場合は労働基準監督署に労働保険(労災保険と雇用保険)の加入が必要です。さらに、ハローワークには「雇用保険適用事業所設置届」という書類の提出が義務付けられています。
雇用する人数などの条件によって提出する書類が変わるため、あらかじめ確認しておきましょう。
参考:美容室の開業に必要なものとは?手順や手続き、必要資金について解説 – PayPay
まとめ
美容室の開業までには事業計画やコンセプトの立案、物件探し、スタッフ採用など多くの時間と労力がかかります。さらに、開業前に済ませておかなければならない手続きも多くあります。
そのため、美容師として働いているうちから管理美容師免許の取得や開業にかかる費用の勉強などは始めておきましょう。自身で開業するための準備を進めつつ美容師としてのスキルを磨き、スムーズに開業できる状態を作りましょう。
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