在庫管理をするにあたって、商品の過剰在庫や大量廃棄、欠品などは大きな損失につながります。中でも発注のタイミングをあらわす「発注点」の管理は非常に大切な要素です。
今回は、発注・在庫管理に大切な発注点について、その意味や適切に運用するポイントを詳しく紹介していきます。
目次
発注点の意味とは
発注点とは、発注をかけるポイント、すなわち発注に適したタイミングのことを指します。例えば、「毎月15日になったら商品の発注を行う」「在庫数が10を下回ったら発注をかける」といった基準を設けることで、効率的で円滑な在庫管理が進められるようにする発注方法のことです。
発注方式の種類
発注方式には主に「定期発注方式」と「定量発注方式」の2種類があります。具体的にどのような違いがあるのかを説明します。
定期発注方式
定期発注方式とは、前もって設定した期間ごとに発注を行う方式のことです。月初や月の半ば、月末などの固定したタイミングで発注業務を行います。定期発注方式の場合は、期日は決められているものの、発注量は決められていないことから、在庫数がどの程度あり、どの程度の発注が必要かを吟味しなければ過剰在庫や欠品を招くことも考えられるため注意が必要です。
一方で、定期発注方式では発注する期日が決まっているため、在庫が減るたびに発注をしなければならないなどの業務の煩雑さがなく効率的に業務を行うことができます。
定量発注方式
定量発注方式は、在庫の数が一定数を下回ったタイミングで発注業務を行う方式を指します。一定数を下回るタイミングのことを「発注点」というため、発注点方式と呼ぶこともあります。定量発注方式では、定量を決めてあるため、常に適切な在庫を確保でき、過剰在庫や欠品を防止する効果が期待できます。しかし、発注時期が不定期となるために支払い時期も不定期となり、商品の需要が多い時期をしっかりと把握しておかなければ、一定数を下回ってから発注したのでは間に合わないということも考えられるため注意が必要です。
適切な発注点を求めるには?
適切な発注点を算出するには、いくつかの要素を把握しておかなければなりません。ここでは、発注点を適切に求めるためのポイントを紹介します。
計算式
発注点を算出するための一般的な計算式は下記の通りです。
- 発注点=1日の平均出荷量×調達期間+安全在庫
例えば、1日の平均出荷量が50個の商品で、発注から納品までに5日間かかり、安全在庫が10個という場合、「50×5+10=260個」ということになり、在庫の数が260個を下回ったタイミングで発注する必要があるということになります。
必要な要素
ここでは、上記の計算式に出てきた語句がそれぞれ何を示すのか、具体的に説明していきます。
1日の平均出荷量
「1日の平均出荷量」とは1日あたりの販売数や使用数のことです。この数値を把握しておくことで、在庫が充分ある状態で効率的に発注することができます。ただし、商品の出荷速度が早いものについては、余裕を見るためにも平均値ではなく最大値や中央値を用いたほうが適切な場合もあるので、自社の商品の状況にあわせて検討するとよいでしょう。
調達期間/発注リードタイム
「調達期間」とは発注から納品までの期間を指し、「リードタイム」とはその意味の他にも発注点に達した時点から納品までを指す場合もあります。こちらも自社の商品に合わせた設定が必要となります。
調達期間の把握が必要な理由は、調達期間の間の在庫を確保しなければ欠品が起こる可能性もあることと、出荷量の変動などにも問題なく対応できるようにするためです。
安全在庫数
「安全在庫」とはこの程度の数量があれば欠品は免れるだろうという数量のことです。1日の出荷量が調達期間中に上回ってしまった場合でも欠品を免れることができるため、特に商品の需要や出荷速度に変動が見られる商品については、この数字の把握が重要となります。
発注において大切なポイント
発注点の意味を理解して実際に発注業務を行う際に、何が重要になるのでしょうか。最後に、発注において大切なポイントを紹介します。
- 在庫管理を徹底する
- リードタイムを短縮する
- 需要を予測しておく
- 日次棚卸を行う
- 季節変動を考慮しておく
在庫管理を徹底する
発注業務を効率よく適切に行うには、在庫数を把握する在庫管理が何より重要です。在庫管理の担当者が複数名いた場合にそれぞれ異なる在庫管理の方法を行っていたのでは、在庫数に差異が生じ、適切な発注点を算出できなくなってしまいます。
そのため、在庫管理についてマニュアル化し、担当者によって差異や漏れが生じないよう、統一した業務を行えるようにするとよいでしょう。
在庫管理については、こちらの記事もあわせてお読みください。
リードタイムを短縮する
在庫管理では、保管するスペースのコストも考慮する必要があります。つまり、リードタイムが長くなればなるほど、在庫を保管する期間も長くなり、保管スペースの賃料などのコストもかかってしまいます。リードタイムの短縮を図ることで、保管スペースのコスト削減にもつながるのです。
需要を予測しておく
季節商品だけでなく、社会情勢などによっても商品の需要は大きく変動することがあります。そのため、時期に合わせた適切な発注を行えるように、過去の発注履歴データや社会情勢などを確認してどのような動きがあったかを把握しておきましょう。過去のデータをある程度把握しておくことで、今後の需要の予測がしやすくなります。
日次棚卸を行う
毎月徹底して棚卸しを行っているにもかかわらず、毎回必ず実在庫とデータの数量が異なっているという場合があります。広い倉庫の大量な在庫を一日がかりで数えるとなると、担当者によって数え方が異なっているために実在庫の数が合わないということも起こります。在庫数を正確に把握するためには、時間も体力も消耗するような月イチの棚卸しではなく、日次棚卸を行って適切な数値の割り出しに切り替えるとよいでしょう。
季節変動を考慮しておく
先に需要の予測の必要性としても紹介しましたが、商品そのものが持つ季節性に限らず、時期によって消費者の需要は大きく変動します。過去の季節ごとのデータを割り出し、月別や季節別での商品の売り上げを把握しておくことで、安全在庫の確保や欠品の防止につなげることが可能です。
まとめ
今回は、在庫管理の運用に重要な発注点の意味や計算方法などについて紹介しました。
在庫管理とは、倉庫に残っている在庫の数を数えるだけでなく、1日の平均出荷量や商品の発注から納品までのリードタイム、必要な在庫数といった数値の把握が重要です。それらの数値から割り出した発注点のタイミングで発注をかけることで、不必要な欠品や過剰在庫を免れることができます。
在庫管理業務の運用は、担当者数が多ければ多いほど、差異を防ぐためにもマニュアル化することもポイントです。また、発注点の把握だけでなく、季節や社会情勢などによる需要の変動がないかを過去のデータを遡って把握しておきましょう。徹底して発注点の把握につとめ、効率的で適切な在庫管理業務を目指してみましょう。
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