働き方が多様化するなかで、個人でなにか経営しようとする考え方も稀ではなくなりました。特に、塾業界は少子化が問題になっている現代でも市場が拡大しています。今回は個人塾の経営を考えている人に向けて開業前に押さえておくべきポイントや開業手順、経営のメリット・デメリットについて解説します。

個人塾を開業する前に押さえておきたいポイント

まずは、個人塾を開業する前に知っておくべき情報を4つのポイントにまとめて紹介します。将来的に開業しようか悩んでいる、業界のことをあまりわかっていないという方はぜひ参考にしてみてください。

個人塾を開業する前に押さえておきたいポイント
  • 個人塾の経営は決して簡単ではない
  • 個人塾の強みを活かすことが大切
  • 個人塾を経営するメリット
  • 個人塾を経営するデメリット

個人塾の経営は決して簡単ではない

前提として、個人塾は開業しやすくても経営が難しいものと考えておきましょう。少子化により塾を利用する可能性のある子供の数自体が減っている中でも、塾業界の新規参入は続いており、競争は激化しているといえます。

特に、個人塾のような小規模経営の場合、生徒が集まりくい現状から集団指導が難しいという課題も出てきています。その結果、個別指導に特化した個人塾の競合も多く、ほかの塾との差別化ができず廃業するケースもあります。時代にあわせてニーズを捉えた教育理念の設定や、開業立地や導入するシステムなどを考慮しながら自塾にあった綿密な戦略を立てることが大切です。

参考:塾経営はなぜ厳しい?生き残りと成長する為のスキルと集客法 | BITCAMPUS

個人塾の強みを活かすことが大切

個人塾の経営を続けるためには、利用者から見た個人塾のメリット(価値)をしっかりと打ち出していくことが重要です。例えば、個人塾では通う生徒が少ないからこそ、生徒個人の個性にあわせた柔軟かつ質の高い丁寧な指導が実現できるでしょう。

生徒ごとに合わせたカリキュラム設定や塾講師や卒業生の実績、ハイレベルな学習内容など、自塾の強みを活かすことで、その塾ならではの魅力がアピールできます。他の学習塾には真似できないことができるというメリットを伝えられれば、大手の塾とも戦えます。

個人塾を経営するメリット

塾は、学生を対象にしている性質上、学校が終わって以降の夕方から夜にかけての業務となることが多いのが特徴です。個人塾を開業するうえで経営側のメリットとしては、以下のようなものがあります。

  • 副業としてやりやすい
  • 工夫によっては少ない資金で開業できる
  • 小規模なので人件費もかかりにくい
  • 資格などが不要で開業しやすい
  • 比較的講師の拘束時間が短い

個人塾を経営するデメリット

個人塾の経営には大変な面もあります。考えられるデメリットは下記の通りです。

  • ある程度の初期投資が必要
  • 競争が激しいため廃業するリスクが高い
  • 集客がしっかりできないと大きな利益をあげられない
  • 優秀な講師を確保するのが大変

個人塾を開業するための手順

個人塾を実際に開業するためには必要な準備があります。以下では、手順ごとにポイントをまとめました。

個人塾を開業するための手順
  • コンセプトを考える
  • 開業資金の準備
  • 事業計画を立てる
  • 物件選び
  • 内装の工事や備品の調達
  • 個人塾の開業に資格は必要ない

コンセプトを考える

個人塾を開業する前に、まず自塾のコンセプトを考えておきましょう。コンセプトを明確にすることで、塾の方向性やターゲットとなる顧客層が明確になり、差別化しやすくなります。

例えば、学生の志望校や求めている学習内容、保護者の所得など、ターゲットの設定を細かく定め、顧客ニーズに合致したコンセプトを考えることが大切です。

開業資金の準備

当然のことながら、個人塾を始めるには開業資金が必要です。自己資金だけでは難しい場合は、しっかりとした創業計画書を用意して銀行などの公的機関からの融資を利用できる場合もあります。政府系の日本政策金融公庫も候補となるでしょう。

以下のように、貯金などある程度の自己資金が求められるケースもあるので、各要項をしっかり熟読しましょう。ほかにも、地方自治体からの融資や助成金の活用などの方法があります。

「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方」
引用:新創業融資制度|日本政策金融公庫

参考:日本政策金融公庫

個人塾開業の初期費用

個人塾の開業には物件取得費、内装工事費、設備費、教材費、広告宣伝費などの初期費用がかかります。総額の目安としては200〜500万円程度と言われており、規模によってさまざまなので自塾に必要なものを算出しておきましょう。また、フランチャイズに加盟する場合、別途で100〜300万円がかかる可能性もあります。

参考:塾の開業資金はいくらかかる?必要な費用と節約のコツを解説します! | 学習塾フランチャイズの株式会社ヒーローズホールディングス
参考:塾の開業資金の目安は?開業資金の工面方法や資金節約のコツを紹介 | 入退くんコラム

開業後の運転資金

開業して終わりではなく、開業直後の経営が安定するまでは赤字になることも想定されます。賃貸料、水道光熱費、教材費、広告宣伝費、生活費、人件費といったある程度の運転資金を用意しておきましょう。

フランチャイズの場合は、ブランド名などの効果から集客が比較的しやすいと思われる一方で、売上からロイヤリティが発生するなど別途資金が必要になる場合があるため、事前によく確認しておきましょう。

事業計画を立てる

まずは、いつまでに何人の生徒数を育て合格率はどのくらいにするかなど、長い目で見た個人塾としての目標を立てます。事業計画では、目標を実現するための具体的な行動計画にまで落とし込むことが大切です。

また、具体的なコンセプトや毎月の必要経費などから月謝を設定し、利用者(保護者)視点についても十分に考慮しておきましょう。

物件選び

塾の物件は、基本的に目に付きやすい場所がおすすめです。例えば、学校と自宅の導線上にあるなど、ターゲットとなる学生やその保護者の生活スタイルや通学などの視点で立地の良し悪しを求める考え方もあります。また、小規模の個人塾であれば、自宅やマンション・アパートの一室を利用して開業することも可能です。

開業したい地域の特性をしっかりと調査したうえで、コンセプトに合致した物件を選びましょう。

内装の工事や備品の調達

選んだ物件によっては、内装工事が必要になる場合があります。工事を行う場合は、内装の色や室内の明るさ、家具の配置など、自塾に適したレイアウトを設計しましょう。特に教室の位置は、人の流れが少なく比較的静かな入り口から遠い場所にすることがおすすめです。

また、教材や、机、椅子、黒板やホワイトボードなど授業に必要な備品だけでなく、電話やパソコン、コピー機など、経営上必要な備品も忘れずに調達しましょう。

個人塾の開業に資格は必要ない

塾講師のなかには、教員免許や過去の塾講師経験があるという人もいますが、個人塾を開業するうえでは必要な資格はありません。

しかし、税務署に「開業届」の提出は必要です。ほかにも、各都道府県の役所に提出する「事業開始申告書」や、法人として従業員を雇う場合は「給料支払事務所の開設届出書」が必要な場合もあるため、どのような手続きが必要になるか確認しましょう。

個人塾開業後の生き残り戦略

個人塾の経営は、講師が優秀であればうまくいくとは限りません。塾の良し悪しを決めるのは、実際に通うことになる生徒とその保護者です。

そのため、消費者ニーズをしっかりと汲み取ったうえで、効果的な集客をすることが大切です。SNSなどによって個人の意見の重要性が増している現代だからこそ、口コミ・レビューなどの「消費者の評価」もうまく活用していきましょう。

また、低価格競争が進む個人塾の経営においては、サービスの質も重要です。効率化できるところは効率化を図って経費が削減できれば、収益や使える時間も増え、相対的にサービス向上に力をいれやすくなるでしょう。

学習塾のフランチャイズのメリット・デメリット

経営のノウハウや集客に自信がなく、フランチャイズの利用を検討しているという方は、フランチャイズの良い面・悪い面をしっかり把握しましょう。以下では、フランチャイズの学習塾のメリット・デメリットをまとめているので、自塾はどちらがよいかの判断に活用してください。

学習塾のフランチャイズに加盟するメリット

学習塾のフランチャイズは、集客面や経営面で心強いのがポイントです。加盟すると、以下のようなメリットがあります。

  • 大きな知名度とブランド力が利用できる
  • 塾経営の豊富なノウハウやアドバイスが得られる
  • 生徒や講師を集めやすい
  • 宣伝活動をしてもらえるケースがある
  • 教材が用意されている場合がある

学習塾のフランチャイズに加盟するデメリット

フランチャイズは前述のようなメリットがある一方で、金銭面がかかり自由度が低いという特徴もあります。その他、デメリットとしては以下のようなものが考えられますが、金銭的に余裕があり、あまり教える内容を一から考えたくないという方にとっては、むしろメリットと捉えられるポイントもあります。

  • 加盟料やロイヤリティなどの金銭的な負担がかかる
  • 経営(授業料、出店場所など)や教える内容などの自由度が低い
  • 近所に同じフランチャイズの塾がある・できる可能性がある
  • 契約期間があり自由に解約できない

まとめ

個人塾は新規参入が増加している一方で、少子化による生徒数の減少などさまざまな問題から競争も激しく、経営を続けていくのは簡単なことではありません。

比較的開業がしやすいとはいえ、必要な届け出や資金の調達、コンセプト決めや経営計画など、念入りな準備を行う必要があります。フランチャイズ加入という選択肢もあるため、自分が理想とする塾の形を実現するのに必要なものは何かを考えましょう

また、開業後に生き残っていくためにも、他の塾との差別化を狙い、自塾ならではの強みを見つけて魅力をしっかりと打ち出していくことが大切です。

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