昔からの夢を達成するために飲食店を開業したものの、失敗して閉店に追い込まれた・借金だけが残ってしまったという事例も少なくありません。失敗してしまう飲食店経営の要素には、どんなものがあるのでしょうか。今回は失敗しないための経営方法や、廃業に追い込まれないための予防策も知っておきましょう。

飲食店の経営に失敗する主な原因

飲食店の経営に失敗する主な原因
  • 綿密な事業計画や資金計画を立てない
  • 事業計画通りに進められない
  • 経営戦略の見直しをしない
  • 売上の管理ができない

飲食業界では、新規開業した飲食店のうちの60%以上が開業後わずか2年以内に潰れると言われており、リスクの高い業界とされています。その一方で、売上を順調に伸ばし、長年親しまれ続けているお店や毎日行列の絶えないお店も存在します。これらの飲食店の違いはどこにあるのでしょうか。まずは飲食店の経営で、失敗してしまう人の原因や理由を探っていきましょう。

綿密な事業計画や資金計画を立てない

飲食店は最低限の営業許可や資格さえあれば誰でも始められるということから、あまり深く考えずに開業してしまうケースもあります。開店前の準備や経営計画、また資金調達などの資金計画の甘さが、2年目以降の継続を難しくしている要因の一つと言ってもよいでしょう。

飲食店で成功するためには、開業する前に事業計画や経営戦略を綿密に立てて、起こりうる課題に徹底的に対処できるようにしておく必要があります。しっかりとした事業計画ができていなければ、開業後一定期間が経った後、経営に関わるリスクと直面することになってしまうでしょう。

また、資金についても考えることが重要です。お店の知名度が上がり客足が増えるようになるまでには一定の時間がかかると考えられるため、開店に必要な資金の他、収入が安定するまでお店を維持できる十分な資金を準備することも大切です。

事業計画通りに進められない

前段でも説明した通り、開店前に明確な店のコンセプトや顧客ターゲットを明確にしたり、利益を毎月どのくらい取っていくか等の事業計画や経営戦略を立てたりすることはもちろん重要です。ですが本当に重要なことは、開店後にその事業計画や戦略を実行し利益を上げていくことです。

当初立てた計画通りに進まないことももちろんでてくるでしょう。その時に、人によっては解決をしようとせず逃げてしまったり、目の前に課題があること自体に気づかない場合もあります。

また、事業計画を立てる際に「経営が悪化した場合の撤退規準」を決めておかなければなりません。景気がよくなることなど外的要因に期待して中途半端に営業を続けてしまうと、閉店・経営撤退するタイミングがつかめず、資金難のリスクが高まる原因にもなってしまいます。

経営戦略の見直しをしない

飲食店経営が上手くいかないときに戦略を見直さないことも失敗の要因となります。

たとえば、飲食店経営を経験している人がアドバイスをしてくれているのに、まったく聞く耳を持たなかったり、市場やターゲットとしている顧客のニーズの変化に気づかなかったりということがあげられます。また、従業員やアルバイトを雇ったものの、人を育てるのが苦手など、経営者の人間性や性質も成功する・しないの要因に結びつきます。

常に新しい知識を取り入れようと自分のアンテナを張り巡らせ、他の店舗の成功事例や失敗事例を学ぼうとする姿勢を身に着けることが大切です。

売上の管理ができない

経営を成功させるためには売上の管理も大切です。売上の管理とは具体的に、店舗の売上と経費を把握しコントロールすることです。

売上だけに集中して、コストを気にせずに経営を続けた場合、一時的には人気が出て繁盛するかもしれません。しかしコストを無視した結果、原価や人件費がかさみ赤字に転落し、最終的に閉店に追い込まれてしまったという事例も少なくありません。とても繁盛していたのに、次に見たときは閉店していたというお店の中には、このような経営が原因で廃業したお店もあるのかもしれません。

飲食店開業を失敗させないためにしておきたいこと

飲食店開業を失敗させないためにしておきたいこと
  • 立地と地域住民に合う店づくりを考える
  • 初期費用を可能な限りおさえる
  • 開業前の宣伝を怠らない
  • 信頼できる人や成功者に相談する
  • PDCAサイクルを回す

長く愛される飲食店を経営していくために、どんなことを準備しておけばよいのでしょうか。開業前に準備しておいたほうが良いことや、身に付けておきたい知識についてご説明します。

立地と地域住民に合う店づくりを考える

まずは、店を開店するエリアと、その周辺に住む人たちのニーズにズレのない業態や営業方法を考えることです。たとえば、いわゆる「下町エリア」と呼ばれる地域に、高級料理店をオープンしても繁盛させることは難しいでしょう。その逆も同じです。

オープンしたいお店のイメージや料理のジャンルが決まったところで、そのジャンルのお店がよく出店しているエリアなどを調べます。また、出したい店のターゲット顧客層を明確にし、そのターゲットとなる人たちはどんなエリアによく出向くのかを考えてみることも大切です。

立地の良い場所に出せば必ず成功するというわけでもありません。立地条件の良い場所は賃料が高いことも多く、利益を圧迫してしまう可能性があります。そのため、お店を出す場所を決める際は、そのエリアのニーズや出店する店舗の広さを適切に見極めることが大切です。

初期費用を可能な限りおさえる

飲食店経営をはじめる際は、なるべく初期費用を抑えることも重要です。金融機関などから融資を受ける場合は、初期費用を抑えることで借り入れ額を減らすことができるため、資金繰りが悪化するリスクを減らすことができます。平均的な立地と大きさの飲食店を開業する場合の相場は、1,000万前後といわれています。しかし、規模の小さい店舗を選び、設備などを最小限にすることで費用を300万~500万円程度に抑えることができます。

開業前の宣伝を怠らない

オープン直後からお客様を呼ぶには、開業前の宣伝が重要です。知名度の高い全国チェーン店などでなければ、宣伝をせずに集客をするのは難しいでしょう。競合店と差別化するためにアピールポイントを明確にし、その部分を強調した宣伝方法を考えましょう。

まずは、店舗の前に看板を置く、自店のホームページの作成やグルメサイトへの掲載、SNSによる宣伝、チラシ配りや周辺企業へのあいさつなど、最低限できる宣伝活動から始めましょう。とくに、X(旧Twitter)やInstagramなど無料で利用できるSNSは、広告費をかけずに宣伝できるためぜひ活用しましょう。

信頼できる人や成功者に相談する

飲食店の経営には、「この方法で経営をすれば必ず成功する」という絶対的な方程式は存在しません。だからこそ、開店前の準備や店舗の運営時のコストの見直しなど基本的なことの積み重ねが非常に重要です。

人件費を削減することで利益を出せるようになった店舗もあれば、食材にコストをかけるようにしたことで人気が出始める店もあります。さまざまな業態や経営方法の事例を知識として取り入れ、経営者としての見分を広げるためにも、経営について相談できる人を何人か見つけておくとよいでしょう。相談相手がいない状態で何年も経営をしていくと、常に自分の知識だけで判断することになり、誤った方向へ向かっていたとしても誰も指摘してくれません。

定期的に、店舗経営者の集まりに参加したり、税理士やコンサルタントなど、経営の事例をたくさん知っているプロに相談することも検討してみると良いでしょう。

PDCAサイクルを回す

もう一つのノウハウは、どのビジネスでも重要なことですがPDCAサイクルを常に回して改善を行っていくということです。

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのステップを常に繰り返すことによって、店舗の運営方法や経営を継続的に改善していく手法です。4つのうち、1つでもステップが欠けてしまうと成果が出にくくなってしまいます。

PDCAサイクルの例を紹介します。月間3%の売上アップの計画を立てて実行した結果、1%だけ売上が増加したとします。次に、なぜ3%と計画を立てたのに1%しか売上が上がらなかったのかを分析し、計画を見直します。そして次の月に、新たな目標を掲げ、達成に向けて計画を実行するという流れです。

最初に計画した方法が上手くいかなかった場合、改善のための打ち手を考えなければ、同じ結果に終わる可能性が高いです。

売上やコストの実績、顧客情報を管理・分析して毎月サイクルを回していきましょう。また、改善策を考えるヒントとして、顧客にアンケートを実施するのも有効です。アンケートをしてもなかなか回答が集まらないときは、「回答すると一品プレゼント」などの特典を用意することも検討してみましょう。

まとめ

多額の初期費用がかかるうえに、業界全体として利益率も高くないことから、飲食店の経営を長期的に継続させることは非常に難しいです。

しかし、今回ご紹介したように、まずは開業前にしっかりと計画を立てることや、コストの調整、飲食店経営者としての知識を着実に身に付けて店舗を運営していけば、問題や課題が目の前にあらわれた時も落ち着いて対処できます。

また、日々PDCAサイクルを回しながら事業計画の軌道修正を行っていくことで、オープン後の客足が落ち着き始めた後も、リピーターを確保し安定して店を続けていくことができます。今後飲食店経営を考えている方は、ぜひ今回の内容を参考にして準備を進めてみてください。

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