カフェは日常生活において身近な存在であることから「開業しやすそう」「経営できそう」という印象を持つ方もいるかもしれません。実際に、カフェは比較的に開業しやすいとされていますが、一方で経営に失敗するケースも少なくありません。
今回は、なぜ失敗しやすいといわれるのかという理由と、カフェを経営するにあたって得られる収入やコスト、どのような失敗例があるのかを踏まえて、カフェ経営を成功させるポイントを紹介します。
目次
カフェ経営は決して簡単ではない
カフェを経営する難しさは、メニューの提供やお店作りなどの実際の業務だけで判断できるものではありません。カフェの需要や飲食店経営の実情など、業界を取り巻く現在の状況がカフェ経営にも大きく影響するためです。まずは、どのような点から「カフェ経営が難しい」と言えるのかを紹介します。
カフェの需要は増えているが店舗数が減っている
政府統計ポータルサイトの「衛生行政報告例 / 令和2年度衛生行政報告例 統計表 年度報」によると、全国で2016(平成28)年のカフェ施設数209,604に対し、2020(令和2)年は174,598、新規数は2016(平成28)年の20,227に対し、2020(令和2)年は9,423と、いずれも減少傾向をみせています。
一方で、カフェの市場規模は2016(平成28)年の1.13兆円に対し、2019(令和元)年までは1.18兆円と上昇傾向にあったため、カフェの市場規模は増えていたものの、施設数は年々減少傾向を見せていることがわかります。このことから、明確に顧客から好まれるカフェでないと、経営を継続するのが難しいともみてとれます。
参考:Microsoft Word – 機2_取注_令和2年度_衛生行政報告例_概況(案)
参考:一般社団法人日本フードサービス協会
飲食店の約半数が2年もたない
店舗の売却先検索サービスの「居抜き情報.COM(運営:株式会社シンクロ・フード)」が、2015年から2018年の間で閉店した飲食店について調査した結果によると、オープン1〜2年が33.3%、オープン1年未満が16.4%と、あわせて約半数の飲食店が2年ももたずに閉店していることがわかります。さらに3〜5年になると20.7%であるため、およそ7割の店舗は5年以内で閉店しており、カフェのみならず飲食店経営を継続することがいかに難しいかがわかります。
参考:【閉店店舗のデータから分析】閉店しやすい飲食店の傾向とは 居抜き情報.COM
だからこそニーズやコンセプトが重要
カフェでは、コーヒーを一杯飲みながらゆっくり過ごしたいという人や、趣味や仕事などの作業をしながら軽食が取れる場所として使いたいという人などの利用も多いでしょう。その場合、飲食店において売上を構成する重要な要素とされる客単価や回転率は、カフェ以外の飲食店と比較すると低くなりがちです。
さらに、カフェには競合店が多く、大手のカフェチェーン店の影響力も強くあります。利用する目的によっては、通常のカフェ以外にもコンビニや漫画喫茶、ファーストフード店やショッピングモールのフードコートまでもが競合になる可能性もあり、顧客にとっては多くの選択肢がある状態と言えます。
そのため、個人で経営するカフェにおいて競合に対抗するためには、そのカフェならではの明確なコンセプトの設計や、大手カフェチェーンとは明らかな差別化を図る必要があるのです。
知っておきたいカフェ経営の収入やコスト
実際にカフェを経営する場合、どの程度の収入が見込め、どの程度のコストがかかるのでしょうか。ここでは平均的なカフェ経営での年収とコストについて紹介します。
カフェ経営で得られる平均的な年収
カフェ経営において得られる年収は、平均で200万円〜500万円とされています。ただし、これはあくまで平均であり、黒字での数字であるため、赤字経営の場合はこれほどの収入は見込めないと考えられるでしょう。また、社会情勢によっては一日にほとんど集客を見込めないケースや、1カ月に10万円程度の月収しかないというケースもあります。
カフェ経営にかかるコスト
カフェ経営においてかかるコストは、基本的には開業資金とランニングコストの2点があげられます。
カフェの開業資金は、規模や出店地域などさまざまな条件によって大きく変動しますが、1例として500万円〜1200万円程度が目安になるようです。また、ランニングコストについては、10坪程度の店舗を想定した場合、下表が目安となります。下記のように毎月かかるコストを売上から差し引いた数字が実際の収益ということになります。
家賃 | 20万円前後~(地域による) |
水道光熱費 | 2万円~(地域や季節により変動) |
電子決済など各種手数料 | 2万円~ |
広告宣伝費 | 3万円~(内容により大きく変動) |
備品・消耗品 | 1万円~ |
材料費 | 目安として売上の30%程度 |
人件費 | 30万円~(自分を30万円とした場合) |
この他にも、連絡先として固定電話を設置するのか自身のスマートフォンを使うのか、SNSだけで済ませるのかなどによって、通信費などを計算に含める必要もあるかもしれません。
参考:カフェ・喫茶店の開業資金はいくら?3タイプの開店資金が一目で分かる一覧表 | 開業・就職 カフェ・パン・パティシエの専門スクール・学校 リライブフードアカデミー
参考:カフェを開業・経営する手順!開業に必要な資金や成功の重要なポイントを解説|フランチャイズ比較ネット
参考:【小さなカフェ開業】毎月のランニングコストはいくら?|AFRO BLOG | アフロの焙煎屋のコーヒー焙煎・コーヒー豆・カフェ開業情報
参考:カフェの経営資金はどれくらいが妥当?ランニングコストとストックしておくべき資金|代理店、フランチャイズ募集の【事業のミカタ】
カフェ経営の魅力
カフェ経営は失敗しやすいといわれるものの、開業のしやすさやカフェ経営ならではの魅力があるのも事実です。カフェ経営の魅力について解説します。
開業しやすい
カフェは、後の項目で紹介する講習を受けることで得られる資格が必要な以外には、高度なスキルがなくても開業できるというのが大きな魅力のひとつです。また、自宅兼店舗や小規模店舗の場合には、開業資金が比較的少額で済むことも考えられるため、開業へのハードルがさらに低くなるとも考えられます。
自由に経営できる
自身がカフェのオーナーとなり開業する場合、コンセプトや経営方針、内装やメニューなど、あらゆることを自分の理想をもとに進められるという自由度の高さも、カフェ経営の魅力のひとつです。すべてを一度に完成させるのではなく、少しずつ課題をクリアしていくことで達成感ややりがいも感じられるでしょう。
近年ではカフェの形態もさまざまで、独自のコンセプトやスタイルを持ったカフェも多く存在します。物品の販売やセミナーなどのイベントスペースの提供といった、カフェだけではない要素を加えるなど、異なるサービスの運営も考えられ、自由度が高いと言えるでしょう。
人脈が広がりやすい
カフェに限らず、経営者同士のつながりによってさまざまな出会いがあります。また、カフェの運営においても、顧客との交流や、競合店、地域のつながりなど、さまざまな人脈が広がっていきやすいのがカフェ経営の特徴ともいえるでしょう。
作業や憩いの場として利用客の行きつけのカフェになることができれば、顧客と交流するきっかけが増えることも考えられますし、地域や商店街でのイベントなどに参加すれば、さまざまな出会いに繋がり、経営のヒントやアイデアを得られる可能性もあるでしょう。
カフェ経営に必要な資格や届け出
カフェ経営を行うにあたって、特化したスキルや免許取得の必要性は高くないものの、必ず提出しなければならない届出や資格がいくつかあります。
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
- 店によって必要な各種届け出
食品衛生責任者
カフェに限らず、飲食店を経営するにあたって「食品衛生責任者」の資格が必要です。食品衛生責任者とは、店舗の衛生管理の責任者のことで、最低1人設置する必要があり、保健所へ店舗の営業許可申請を行う際にも必要になります。
食品衛生責任者の資格は、各都道府県の食品衛生協会が実施する講習を受講することで取得でき、受講料は1万円程度です。
参考:食品衛生責任者の取得方法を解説!飲食店開業に向けた重要な資格! | テンポスフードメディア
防火管理者
防火管理者とは、店舗の防火管理を行う責任者として飲食店を開業する際に必要な資格です。店舗の規模によっては取得は不要になります。また、資格には甲種と乙種の2種類があり、こちらも店舗の規模によって取得すべきものが変わります。受講料は甲種講習は8,000円、乙種講習は7,000円です。詳しくは日本防火・防災協会のホームページで確認してみてください。
参考:防火管理講習|講習について|防火・防災管理講習|一般財団法人 日本防火・防災協会
店によって必要な各種届け出
ほかにも下記のような届出や申請が必要な場合があります。自身のカフェの運営に必要かどうか確認してみるとよいでしょう。
<開業するにあたって必要な届け出>
- 開業等届出書
- 飲食店営業許可申請
<飲食に関して必要な許可申請や届出>
- 菓子製造業許可申請
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届出
- コーヒー豆の製造・加工業の届出
<消防関係で必要な申請>
- 防火管理者選任届出書
- 防火対象物の工事等計画の届出
- 防火対象物使用開始届
- 消防用設備設置届
- 消防計画(消防計画/消防計画作成届出書)
<従業員を雇用する場合に必要な届出>
- 青色事業専従者給与に関する届出書(家族を従業員にする場合)
- 給与支払事務所等の開設の届出書
カフェ経営を成功させるポイント
一度カフェ経営を決心したのであれば、継続的な成功につなげたいというのはオーナー誰もが思うことでしょう。ここでは、カフェ経営を成功させるにどのようなポイントに注目したらよいかを紹介します。
- カフェのコンセプトを明確にする
- リピーターを獲得する
- 収支の管理をしっかり行う
カフェのコンセプトを明確にする
カフェの経営を決めるにあたり、どのようなカフェを展開していきたいのかというコンセプトを明確にすることは大変重要です。コンセプトを決めておかないと、内装や外装などの見た目から、メニュー、ターゲットなどカフェに関するすべての要素にブレが生じ、集客に結びつかない可能性もあります。
コンセプトをはっきりと決めておくことで、新たなメニュー作りや店舗の改装が必要になっても方向性にブレが生じなくなります。それによって顧客にも戸惑いやイメージの違いを感じさせず、客離れを防ぐことにも繋がるでしょう。
コンセプトはそのカフェの存在理由そのものにもなり得るため、競合他社との差別化においてもおおいに役立ちます。
リピーターを獲得する
カフェでリピーターを獲得することは、売上向上に大変重要です。先に触れたコンセプトの明確化は、ここで説明するリピーター獲得にも大きな関係があります。
初めて来店した顧客が自店のコンセプトに基づいたメニューや内外装、雰囲気などを気に入って「また来てみたい」と思うことで初めて、リピーターにつながる可能性がみえてきます。リピーターは、口コミで評判を広げてくれるなどの大事な役割となる顧客となるため、再来店してくれた顧客を逃さないような工夫も考えていきましょう。
収支の管理をしっかり行う
カフェや飲食店経営に限らず、店舗経営では収支の管理をしっかりと行うことは重要な業務です。現時点の売上や日頃かかるコストを明確に把握しておくことで、現実にあった収支計画をたてることができます。万が一、収支計画が無謀な数字であったり、売上に問題が発生したりした場合でも、売上とコストを把握しておくことで、数字に関する問題点が視認しやすくなります。
カフェ経営でよくある失敗
冒頭で伝えたように、カフェ経営は失敗しやすいという声があがるということは、実際にカフェ経営では失敗は起きるものだと考えておいたほうが、今後の運営上でもリスクに対して目が届きやすくなるでしょう。最後に、実際に見られるカフェ経営での失敗を紹介します。
スキルさえあれば自然とお客さまが集まってくると思っている
カフェ経営の考え方として多く見られるのが、「自分はコーヒー選びもスイーツ作りも得意だから、それで充分お客さまは集まってくるだろう」という思い込みです。販売するものに自信があったとしても、店舗の存在を知られなければお客さまは集まってくることはありません。集客のためのチラシ配布やSNSの活用、クーポンや特典サービスなど、さまざまな施策が必要であることを学び、実践していかなければ、どんなに売れる要素を持った店舗であっても集客は難しいでしょう。
立地や物件がコンセプトやターゲットと食い違っている
カフェの運営を決めた際に、コンセプトやターゲットの設定が必要だと先に説明しましたが、コンセプト設定の際には、出店したい立地や物件もあわせて考えていかなければなりません。立地や物件がマッチしていない場合、例えば、のんびり静かに過ごせる隠れ家的なカフェを目指しているにもかかわらず、夜が中心となるような繁華街に出店したのでは、静かに過ごしたい顧客も離れていってしまいます。
一度物件を決めてしまえば、そこに出店せざるを得なくなります。カフェに適した立地とはどのような場所か充分に検討したうえで進めていきましょう。
客単価や回転率が低い
居心地のよいカフェを目指して、静かな立地で出店したものの、評判はよいのに客単価と回転率が上がらないということはよく生じるケースです。コーヒー一杯で何時間も滞在されたのでは、売上も回転率も見込めないため、コーヒーと相性のよいサイドメニューやセットメニューの種類を充実させて客単価アップへの対策が重要になります。
まとめ
今回は失敗しやすいと考えられているカフェ経営を成功させるポイントや、はじめるにあたって必要な資格などについて紹介しました。
出店して約半数が2年持たずに閉店するとされるカフェですが、コンセプトを明確にすることや、収支の把握、リピーターの獲得といった基本的なことを徹底することで、成功へと向かうことができます。反対に、カフェ経営が失敗するというのは、収支を把握していなかったり、おいしいコーヒーとスイーツさえ作れれば集客できると思い込んで他の対策を怠っていたり、客単価対策を注視していなかったりと、こちらも基本的なことが欠けていることが主な理由です。
経営者同士の人脈をうまく利用してさまざまな情報交換をすることで、それまで知らなかった施策もみえてくることもあります。カフェ経営は失敗しやすいという言葉に惑わされず、自身の理想とするカフェを成功に導く対策をいまから始めてみてはいかがでしょうか。
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