店舗の売上拡大に効果を期待できるのが「店舗マーケティング」です。適切に施策を実行することで、売上向上以外にも新規顧客やリピーター獲得など顧客増加にもつながります。今回は、店舗マーケティングについての具体的な内容と、効果的な施策の実行方法などについて紹介します。
目次
店舗マーケティングとは?
店舗マーケティングとは、店舗の売上を最大化させるために行われる一連のマーケティング活動のことを指します。ここでは、具体的にどのようなことが店舗マーケティングとされるのかを紹介します。
店舗マーケティングの目的は「売上」
店舗マーケティングというと、販売促進活動のことだととらえる方もいるかもしれません。しかし、店舗マーケティングの目的は店舗の売上を最大化させることであり、そのためにはどのようなターゲットにどのような販売経路を用いて、商品という価値を提供するかという細かな設定が必要です。
つまり、販売促進するための施策や活動だけでなく、それら施策を行ううえで必要な調査や集客、効果測定といった一連の活動のことを店舗マーケティングと呼びます。
店舗の売上を構成する3つの要素
店舗マーケティングの目的である「店舗の売上」とは、「来店客数」「購買率」「平均客単価」という3つの要素を掛け合わせた「売上=来店客数×購買率×平均客単価」という式で構成されています。
- 来店客数
=店舗に訪れた客数。飲食店などのように来店と購買がセットになりやすい業態以外では、来店した人が何も買わずに退店することもありえるため、必ずしも購買客数とは一致しない。
- 購買率
=来店客数のうち、実際に商品・サービスを購入した人数の割合。購買率は「購買客数÷来店客数」で求められる。
- 平均客単価
=一度の来店、注文でひとりの客が購入する金額。平均客単価は「店舗売上高÷購入客数」で求められる。
最初のステップは店舗の現状把握
店舗マーケティングの具体的な施策を行う際、最初のステップとなるのは自店舗の現状を明確に把握することです。上記で紹介した3つの要素「来店客数」「購買率」「平均客単価」を数値として割り出すことだけで、まずは何に対して施策を行えばよいのかが見えてきます。
また、それぞれの指標を構成している要素を分解して考えることも大切です。例えば「来店客数」の場合、大きく新規顧客とリピーターに分けられます。新店舗であればまずは新規獲得が必要になるでしょうし、それ以外では新規獲得はもちろんリピーター獲得への施策が肝になります。
現状を把握し対策すべき数字や指標が見えてきたら、構成要素に着目して具体的な施策案に繋げていきましょう。
店舗マーケティングを行ううえでのマーケティング施策
店舗マーケティングとは、売上を最大化するための一連のマーケティング活動であると先に説明しました。事前に行える施策として何があげられるのか、また、どのような分析が必要なのかについて紹介します。
エリアマーケティングを土台にして店舗マーケティングを考える
自店舗の売上向上を目指すにあたり、店舗マーケティングの土台として取り入れたいのがエリアマーケティングです。エリアマーケティングとは、自店舗のある商圏での競合の状況や地域性、交通網などを具体的に分析して売上に結びつける手法であり、店舗マーケティングをさまざまな視点で考える際の土台となります。
実店舗を運営する以上、店舗を取り巻く環境は来客数などに大きく影響します。より適切な施策を行えるように、実際に店舗の周辺の状況や利用客の動向をイメージして、メリットやデメリットになるであろう要素を確認しておきましょう。
自店舗の商圏を分析する
上記で紹介したエリアマーケティングを活用しながら商圏の分析を図ることによって、自店舗周辺の特徴や地域性、ニーズについて知ることができます。地域住民の構成などもあわせて調査・分析することで、自店舗のターゲット層と合致する住民がどの程度いるのかを把握でき、売上向上の施策としての判断材料になります。
商圏分析について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
商圏分析で重要になる要素
商圏分析を行う際に重要となる要素として、下記のような事柄があげられます。
- 環境・顧客の分析
- 住民の消費行動や生活実態
- 商圏の競合の把握
- 地域全体としての習慣や風習
- 消費者が来店する際の障害となる商圏バリアの把握
店舗マーケティングに役立つその他のマーケティング手法
店舗マーケティングに役立つ手法として、エリアマーケティング以外にも下記のような手法があります。
- ターゲットマーケティング=顧客を分類して、ターゲットを絞ることで見込み客を把握することができる手法
- リレーションシップマーケティング=顧客との関係性を高め、優良顧客となってもらい売上獲得を図る手法
- デジタルマーケティング=商品PRや消費者行動データなどの分析・活用をデジタルツールを用いて行う手法
これらを自店舗の特性にあわせて活用することで、より具体的でより適切なアプローチ方法を構築することができます。
来店客数を増やす施策の具体例
店舗の売上を構成する3つの要素のうちのひとつ「来店客数」を増やすにはどのような施策が考えられるか、具体例をあげて紹介します。
- ブログ・ホームページ・SNSの運営
- 広告の出稿
- メルマガやアプリなどへの登録誘導
- クーポンの配布
ブログ・ホームページ・SNSの運営
自店舗のブログやホームページを運営したり、SNSを活用したりすることは、コンテンツマーケティングとも呼ばれ、インターネットを利用した集客方法のひとつにあげられます。自店舗独自の特典や最新キャンペーン情報などを発信して顧客にいち早くお得な情報を届けることができます。
自店舗のブログやホームページの作成や運営は、外注せずに自店舗内で運営していけば初期費用もランニングコストも比較的安価におさえることが可能です。特にSNSは無料で気軽に始められるサービスも多いため、ホームページ制作のハードルが高いという方は、まずはSNSのアカウント作成から初めてみるのがよいでしょう。
広告の出稿
紙媒体やWEB媒体に広告を出稿したり、折り込みチラシの配布やポスティングを行ったりする方法も来店客数を増やす施策としてあげられます。商圏内の住民だけに絞って広告展開をすることで、設定したターゲットに適切に情報を届けることが可能です。また、媒体によってターゲット層が異なることから、自店舗のターゲット層にみあった媒体を選択すれば、より具体的で限定的な情報発信が可能になります。
チラシの効果を高める対策は、次のページでも詳しく紹介していますのであわせてお読みください。
メルマガやアプリなどへの登録誘導
メルマガや自店舗のアプリへの会員登録を既存顧客へ促すことで、リピーター獲得につなげられます。なかでも店舗と顧客をつなげるサービスであるLINE公式アカウントなどは、無料で利用できるサービスもあるため比較的導入しやすく、試しに使ってみたいという店舗にはおすすめでしょう。
クーポンの配布
クーポンの配布は、新規顧客だけでなく既存顧客に対しても次回来店を促し、リピーター獲得を期待できる施策のひとつです。メルマガやアプリなどを使ったクーポン配布の方法もあり、メルマガやアプリへの会員登録特典として配布するなど、他の施策との組み合わせがしやすい方法といえます。
購買率を上げる施策の具体例
次に、店舗の売上を構成する3つの要素のうちの「購買率」向上のための具体例を紹介します。
- 商品の配置や導線の見直し
- 商品ラインナップや価格の見直し
商品の配置や導線の見直し
顧客が入店した際に、店内をひと通り回ってもらえるような商品配置や、什器などが邪魔にならず快適に店内を利用できる導線になるように見直すことで、購買率向上を期待することができます。
商品棚の陳列方法についても、売れ筋の商品を顧客の目に留まりやすいように陳列したり、手に取りやすいように並べ替えたりするような工夫を施すことで、購買意欲を高める見込みがあります。
商品ラインナップや価格の見直し
商品ラインナップとは品揃えの種類のことを指し、種類が少ない場合には、顧客が必要とする商品が見当たらず機会損失につながる恐れがあります。反対に、取り扱い商品の種類が多すぎる場合、店舗の特徴や売りとするものが不明瞭になり、かえって顧客離れを招いてしまうことも考えられるでしょう。
商品ラインナップを充実させるとともに、自店舗の売りが何であるかが明確になるような商品選びをすることで、購買率向上だけでなく、自店舗を好みとするリピーター獲得の期待も高まります。また、価格の見直しとして、商品の特徴に見あう価格設定を行いながらも、顧客が納得して購入できるようにしましょう。見せ方による違いも意識して、例えば2000円程度で販売できる商品をあえて1,980円にするなど、端数をつけてお得感を与えるような工夫を加えるとよいでしょう。
客単価を上げる施策の具体例
店舗の売上を構成する3つの要素の最後の「客単価」について、向上のための具体例を紹介します。
- アップセルとクロスセルを増やす
- 「松竹梅の法則」の活用
アップセルとクロスセルを増やす
「アップセル」「クロスセル」とはそれぞれ販売手法のことを指します。アップセルとは、顧客がある商品・サービスを購入しようとする際に、それよりも上位のモデルや高価格帯の商品・サービスを提案する手法です。例えば顧客が型落ちの冷蔵庫の購入を検討している場合に、最新機能がついた新発売の冷蔵庫を提案することで客単価の向上を図ります。
また、クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品・サービスがあった場合に、それに関連する商品もあわせてセット販売を提案するという手法です。アップセル、クロスセルいずれについても、商品の品揃え状況だけでなく、何より顧客のニーズを把握し、信頼関係を構築できているかどうかが重要です。
「松竹梅の法則」の活用
人間に共通する考え方の癖として、”極端”を避けるという「極端回避性」とよばれるものがあります。この考え方の癖を利用した「松竹梅の法則」とは、松・竹・梅の3段階がある商品・サービスをラインナップし、意図的に竹クラスの商品・サービスを選ばせようとする手法です。
これは、熱すぎず冷たすぎず、ちょうどよい温度のものを選ぶという「ゴルディロックスの原理」とも呼ばれています。また、選択肢として、高い商品と安い商品の2択では安い商品を選んでしまい、4択以上になると人は選びきれなくなり、選ぶこともやめてしまう傾向があるともされています。
店舗マーケティングを成功させるうえでのポイントや注意点
店舗マーケティングの概念を把握し、成功に導くためにはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。最後に、店舗マーケティングを成功させるためのポイントについて紹介します。
必要な調査をしっかり行う
これまで紹介した、自店舗の現状把握や商圏分析といった店舗マーケティングに関する調査をしっかり行うことが重要です。調査で得られたデータによって、新たに明確になった問題点や想定していなかった視点でのアプローチの手段が出てくる場合もあります。事前調査が具体的であればあるほど、その後の施策や問題解決のおおいなヒントとなるでしょう。
仮説を立ててから施策を実行する
自店舗の現状把握や商圏分析の調査によって明らかになった問題点については、内容によっては原因がすぐに判明しないことも考えられます。その際は、まず仮説を立ててからその仮説に対する施策を実行してみることがおすすめです。
例えば、集客が伸びない場合に「自店舗の広告掲載が足りないから」「ターゲット設定が異なっているから」といった仮説を立てて、それぞれの対策を行ってみましょう。そこで立てた仮説と対策でその問題が解決できなければ、新たな仮説を立ててみて改めて別の方向から問題解決に向けた施策を繰り返していくことで、適切な解決方法が見えてきます。
必ず効果を測定する
これまで実施してみた施策に効果が出たのかどうかを把握するために、効果測定は必ず行いましょう。施策を実行する際に、効果が明確にできるような数値目標をあらかじめ設定しておき、施策の実行後に結果を数値やデータとして集めておきます。効果を明確にできるような数値があれば、効果の判断やその後の対策もスムーズになります。
まとめ
今回は、店舗マーケティングについての具体的な内容と、成功させるための施策のポイントについて紹介しました。
店舗マーケティングの目的は店舗の売上を最大化させることにあります。商品・サービスの販売促進だけではなく、その前後に必要な商圏調査や分析などすべての流れが店舗マーケティングであり、施策がより具体的であればあるほど、高い効果を見込めます。そのため、自店舗の現状把握や事前の調査を手抜きせずしっかりと行うこと、施策を実行したあとの効果測定を数値をもとに明確に行うことなどを徹底しましょう。
店舗マーケティングを成功させることで、売上に関わる来店客数、購買率、客単価の向上が期待できます。売上向上につながる店舗マーケティングを、いまから取り入れてみてはいかがでしょうか。
記事のURLとタイトルをコピーする