近年使われているビジネス用語のひとつに「DX」という言葉があります。デジタル技術によって企業がさまざまな業務フローの改善や変革を起こすということから、飲食業界においても重要な考え方です。

今回は、飲食店がDXを導入することでどのようなメリットがあるのか、また導入できるシステムにはどのようなものがあるのかについて、実際の企業の導入事例もあわせて詳しく紹介します。

DXとは?

「DX」とはデジタルトランスフォーメーションの略であり、直訳すると「デジタル変革」となります。Xとは、英語で「trans-」という語に対してXという略字を用いることが多いため、DXという表記になっています。

言葉の意味としては、企業がAIやビッグデータといったデジタル技術を利用して業務フローを改善したり、過去の遺産となってしまうような古い社内の風土を排除し、新たなビジネスモデルに変革したりすることを指します。デジタル技術を使って、業務の効率化だけにとどまらない、企業やサービス利用者など人々の生活をよりよいものに変化させようという動きを指します。

飲食店へDXを導入する目的

新たなビジネスモデルの確立や業務フローの改善に用いるようなDXを飲食店に導入することには、下記のような目的が考えられます。

デジタル技術の導入により利便性をアップさせる

DXとは新たなビジネスモデルに変革することということを先に説明したように、飲食店におけるDXの活用目的のひとつには、業務のデジタル化による作業効率の向上があげられます。

たとえば、接客・会計・予約・顧客情報管理といった、これまで手作業だった業務を一気にデジタル化して利便性を図るということです。それにより業務の効率化が図れるだけでなく、業務過多で煩雑だった従業員の日常業務の軽減にもつながり、従業員が他の業務に取り組むきっかけを作れたり、負担を軽減することで離職率をおさえるなどといったメリットも期待できます。

顧客満足度を向上させる

DXは人々の生活をよりよいものに変化させるものだということも先に説明しましたが、それを飲食店にあてはめた場合には「顧客満足度の向上」ということが目的となります。

現代では食事やサービスを受けるまでの待ち時間を可能な限り少なくしたり、購入までの流れをできるだけ楽に非接触のまま終えられるようにしたりすることが求められることも多くなっています。そこにDXの例として、注文をモバイルオーダー制するなどデジタルツールによって購入をできるだけ簡潔に非接触のまま終えられるようにすれば、待ち時間や衛生面を気にする顧客の満足度向上につながることが期待できるでしょう。

飲食店へのDX導入で得られる4つのメリット

これまでの説明でDXの目的は業務の効率化などが主であることが認識できたものの、実際に飲食店に導入する場合、どのようなメリットが得られるか把握しておく必要があります。ここでは、飲食店のDX導入で得られるメリットを4点紹介します。

飲食店へのDX導入で得られる4つのメリット
  • 業務省略による人手不足解消
  • 非接触でのサービス提供が可能
  • 顧客データの活用
  • コミュニケーションの機会が増える

業務省略による人手不足解消

これまでスタッフが行ってきた接客や会計などの店内作業を、デジタル化して業務を簡略化させることで、人材不足の解消に大きく貢献できます。

例として、接客業務であればオーダーとテーブルでの決済をスマートフォンやタブレットに切り替えてフロア業務一切を簡潔化することが挙げられます。他にも、会計業務であればPOSレジアプリを導入することで、アプリ上で会計業務やレジ締めなども行うことができ、いずれの業務も削減することが可能です。

非接触でのサービス提供が可能

近年のさまざまな生活スタイルの見直しにより、スタッフなどの人と人との接触を避けたいと思う人や、飲食店に入店してからさまざまな場面での衛生面が気になるという人も増えています。これまで対面で行ってきたオーダー作業や会計作業などのサービス、多くの人が触れるメニューなどもデジタル化・非接触化することで、必要最低限の接触だけで済ませたいという顧客ニーズに応えることも可能になります。

顧客データの活用

顧客データの集計や活用もDX化によって効率的に行えます。顧客の来店時間や滞在時間、オーダー内容や客単価などあらゆる顧客の情報を、感覚的に把握したり紙などの非効率な形式で管理したりすることには限界があります。

DX化し、デジタルデータとして蓄積していくことができれば、管理をするというだけでなく今後の施策や戦略を練る際に活用することもできるでしょう。特に、顧客に合わせた細かい情報も備考としてデータ化しておけば、一斉発信していた情報や一律提供しているサービスを、個別の顧客に合わせた内容にすることもできるでしょう。

コミュニケーションの機会が増える

飲食店において考えられるコミュニケーションの機会とは、スタッフ同士のコミュニケーションか、来店した顧客とのコミュニケーションに分けられます。DXを導入した場合には、スタッフ同士がオンライン上で情報交換をし、リアルタイムで必要事項の申し送りができたり、その日の報告を共有したりすることが可能になります。

また、顧客とのコミュニケーションを考える場合には、SNSの活用などでリアルタイムで顧客の要望や感想などをやりとりすることも可能になります。

飲食店のDX化には何を導入すればよいか?

実際に飲食店をDX化するには、何が必要で何を導入すればよいのかを紹介していきます。

飲食店のDX化のために導入できるもの
  • キャッシュレス決済
  • POSレジ
  • web予約システム
  • テイクアウトやデリバリーサービス

キャッシュレス決済

キャッシュレス決済とは、文字通り現金を使わずに決済を行うことを指します。長く利用されているクレジットカードの決済をはじめ、QRコード決済、電子マネーを用いた決済など、さまざまなキャッシュレス決済手段が浸透している現代だからこそ、自店でもキャッシュレス決済を導入することは顧客の利便性向上にも繋がります。

現金を持ち歩かない人や、特定の決済サービスを好んで利用する人にとっては、自身が利用したい決済手段に対応しているかどうかが店舗利用の判断基準になることもあるため、来客数や売上にも影響する要素といえるでしょう。

POSレジ

POSレジとは「Point Of Sales」の略語です。商品に貼付されているバーコードを読み取ることで、その商品について、「何を、いつ、いくらで、何個販売できたか」という販売情報を一括して集めることができるシステムです。バーコードを読み込むことから手打ちのレジのような打ち間違いがなく、スピーディーに精算まで行えます。

店舗にとっては、入力した買い物情報を曜日や時間、商品別などの項目ごとに収集・分析できるため、在庫切れや余剰在庫を防ぐことにもつながり、適切な販売タイミングでの発注など、管理や店舗運営において活用できる場面も多いでしょう。

飲食店がPOSレジを導入する際の選ぶポイントや機能はこちらの記事で詳しく解説しています。

自分の飲食店に合うPOSレジを選ぶポイントとは?必要な機能も紹介

web予約システム

DX導入前に行う予約や注文システムとしては、電話やメール、FAXなどが挙げられますが、電話を受けたり、いつ届くかわからないFAXやメールをさばいたりなどで、スタッフが抱えている本業務を中断して対応するケースもあるでしょう。また顧客が予約できる時間帯やスタッフが確認できるタイミングが限定的なことなど、顧客・スタッフいずれにも非効率的な点があります。

これらに対するDX導入の例として、web予約システムを導入することでいつでも予約の受付をできるようにすれば、時間帯やタイミングが合わないことによる予約や注文の機会損失を防ぎ、対応に手間や時間を取られていたスタッフの業務効率化にもつながるでしょう。

テイクアウトやデリバリーサービス

近年テイクアウトやデリバリーサービスの活用が多く見られるようになり、事業のひとつとして取り入れる飲食店も増えてきています。既存の飲食店がテイクアウトやデリバリーサービスを取り入れるとなると、これまでの店舗内での業務だけでなく、テイクアウト向けの提供方法が増えるため、これまでのスタッフの業務がより複雑化してしまうことが懸念されます。

テイクアウトやデリバリーサービス業務を少しでも簡略化できるように、モバイルオーダーや注文専門のwebサイトを活用することで、これまでの業務がより複雑化することを避けられます。モバイルオーダーシステムには、内部の厨房業務を効率化させながら、顧客が閲覧するシステム上では人気商品やおすすめ商品を提示することで注文単価をアップさせるというような、顧客とのつながりの維持もできるものもあります。

飲食店のDX化の成功事例をご紹介

最後に、飲食店におけるDX化をいち早く察知して導入し成功へとつながった企業の事例を二つ紹介します。

株式会社 すき家

株式会社すき家の場合、販売拠点拡大を図るにあたって、情報収集や店舗統合など自社内の効率化を行いつつ、顧客自身の利便性向上に取り組むためにDXを推進しています。最も効率化を活かされている部分としては、システム開発環境の整備と拡充があげられているようです。

顧客自身の利便性向上のためのDXとしては、POSシステム、券売機、セルフサービスなどの注文システム、キャッシングレジ、キャッシュレス決済などがあります。DX化にすることで、もともとデジタルに精通していないスタッフがいても接客やオーダー管理も他のスタッフと同様に円滑化が可能になります。

参考:すき家のDX | すき家の取り組み | すき家

株式会社 すかいらーくホールディングス

株式会社すかいらーくホールディングスでは、事業活動の変革だけでなく、2025年の戦略ビジョンを見据えてDX導入を取り入れています。具体的には、「デリバリー事業における配達員へのアプリ導入化」「セルフオーダーやキャッシュレス決済の導入での顧客の利便性向上」「web会議をはじめ、チャットでのコミュニケーション円滑化」など、接客時の効率化をはじめ、スタッフ同士の交流にも力をいれています。

参考:すかいらーくグループにおけるDX推進 | 企業情報 | すかいらーくグループ

まとめ

今回は、飲食店がDXを導入するにあたってのメリットについて紹介しました。

DXは、業務上のさまざまな要素をデジタル化することで効率化をはかり、スタッフの業務過多を軽減したり、顧客満足度の向上をしたりすることが目的となっています。また、DXを飲食店に導入するメリットとしては、非接触業務の本格化や、非接触ながらもスムーズに注文できる仕組みができることなどがあげられます。

具体的に導入できるものとして、今回紹介したようにPOSレジの導入やweb予約システムの導入、デリバリーやテイクアウト業務で通常業務が煩雑にならないためのシステムの構築といったことが考えられます。一度に全部変化させるのではなく、スタッフの技量や様子をうかがいつつ、自店に適切で効率的なシステムは何かを検討しながらDX化を進めてみてはいかがでしょうか。

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