集客は売上アップに欠かせませんが、消費者が何を考えているのかを理解して実施しなければ、期待する成果を得ることは難しいでしょう。
この記事では集客を成功させるために知っておくべき消費者の購買行動の変化と、購買行動を踏まえた集客戦略を立てる方法を紹介します。
マーケティングは顧客中心に考える時代に
インターネットが普及する前、消費者が買い物をするときは、CMや新聞、ラジオなど企業から流される情報が頼りでした。しかし、インターネットの普及により、消費者の間で情報交換ができるようになったことで、状況は一変しました。
現代は、従来のように商品を作れば売れる時代ではありません。企業からの一方的な広告では効果が薄まり、顧客が商品やサービスを本当に良いと納得しなければ購入しなくなっています。マーケティングは商品中心から顧客中心に変化しており、求められる集客方法も変化しています。
このような時代において、集客施策を考えるときに押さえておくべきポイントは何なのでしょうか。消費者の購買行動がどう変化したのか、という視点から、解説していきます。
顧客の購買行動が変化した今、集客の役目とは?
インターネットやSNSの普及によって消費者のモノを購入するプロセスは大きく変化しました。以前の購買プロセスを「AIDMA」と呼ばれていましたが、現代では「AISAS」と呼ばれるものに変化しています。
AIDMAとは、次の5つの単語の頭文字を取ったものです。
Attention | Interest | Desire | Memory | Action |
認知 | 関心 | 欲求 | 記憶 | 行動 |
AIDMAでは、購入までのプロセスを「商品の存在を知る」→「関心を持つ」→「欲しいと思う」→「記憶する」→「購入する」という5つのステップで表しています。
一方、AISASは以下の5つの頭文字を取ったものです。
Attention | Interest | Search | Action | Share |
認知 | 関心 | 検索 | 行動 | 共有・共感 |
2つ目の「関心を持つ」までは同じですが、その後が「検索する」→「購入する」→「その体験を他の人に共有する」という流れに変化しているのです。
また、他の消費者は共有された口コミやレビューなどを検索段階で参考にするため、「共有・共感」と「検索」がループするようになりました。
つまり、インターネットの普及により、ユーザーの購入体験が消費者間で共有され、他人の購入するかどうかの意思決定に影響を与える時代となったのです。
顧客は知らないと買わない
2つのプロセスを見比べると分かりますが、AISASの時代もAIDMAの時代も、商品やサービスの存在を認識してもらえないと売上を上げることは出来ません。認知してもらうためには「集客」を行い、ホームページや実店舗に人を集める必要があります。時代が変わっても、ビジネスにおいて集客を行う重要性は変わらないと言えるでしょう。
集客の決め手は口コミ
ただし、これまでと同じ集客の方法でよいかと言えば、そうではありません。購入するときの決め手になるのは実際のユーザーの口コミです。自分と同じようなユーザーがその商品を手にしてどういう感想を持ったのか、消費者は細かくチェックします。
また、口コミの数や内容を良く見せようと、良い口コミばかりサクラに書かせるステマ(ステルスマーケティング)という手法も横行しています。しかし、もしステマをしていることが発覚した場合、ブランドや商品への信頼が失墜することになります。絶対にやらないようにしましょう。
共感と共有が必要
顧客体験の最後はSHARE(共感・共有)です。ただ購入させるだけではなく、消費者自身が、他の人にも広めたいと思ってもらえるようなユーザー体験を設計することが重要です。その結果、SNSなどの口コミで多くの消費者の認知を獲得できます。
思わず写真に撮りたくなるような、見た目にインパクトのある料理を提供する飲食店が最近増えていますが、それもSHAREを意識したマーケティング施策の代表例でしょう。
集客の戦略を立てる際の流れ
ここからは顧客の購買行動に基づいた集客戦略を立てる方法を紹介します。
1.ターゲットを明確にする
ターゲットとなる顧客像を明確にしたら、ペルソナ像を設定します。
ターゲットとは、年齢や性別などの顧客属性を大まかに決めたものに対し、ペルソナ像は、より具体的な「個人」のレベルまで人物像を設定したものです。
例えばターゲットを『都心に住む20代の女性』とします。
ペルソナを「鈴木花子さん、東京に住む25歳独身で営業サポートの会社員、年収350万円…」などと、その人の名前や、年齢、家族構成や居住地など細かく設定をします。
職業や収入など環境も細かく設定することで、その人の生活スタイルが具現化できるため、どのタイミングでどのようなメッセージをどこで配信するかを最適化することができます。
しかし、ペルソナは思い込みで作ると失敗しやすいので、現在の商品・サービスのヘビーユーザーをもとに作る方が良いでしょう。お得意さまにインタビューを実施すれば、より現実味のあるペルソナ像を作ることが出来ます。
2.達成したい目標(売上・注文件数など)を設定する
次に、集客によって達成したい目標(売上や販売件数など)を設定します。
目標設定をする際には、「SMART」な目標になっているかどうかを意識しましょう。SMARTは以下の頭文字をとったものです。
- Specific(具体的に)
- Measurable(測定可能な)
- Achievable(達成可能な)
- Related(経営目標に関連した)
- Time-bound(時間制約がある)
例えば、「前月の売上金額が90万円だったので、来月度の売上金額を100万円と設定する」という目標であれば、SMARTな目標と言えるでしょう。
3.目標から集客目標を逆算
次に、1つ前に立てた目標を達成するために、集客で何人を集めなければならないのかを逆算しましょう。そのために、目標数値の要素を分解する必要があります。売上は以下のように分解することができます。
- 売上=顧客数×購買回数×客単価(1人当たりの一度の平均購買金額)
例えば売上金額を100万円に設定した場合、客単価が5000円であれば、顧客数は200人を目指す必要があるでしょう。
- 集客数=顧客数÷購入率
次に、顧客数を達成するために必要な集客数を求めます。集客数は顧客数を購入率で割って求めます。購入率とは、「100人集めたらそのうち何人が購入してくれるか」を表す数値です。購入率は、過去の実績から概算で設定することが多いです。
仮に購入率が10%の場合、2000人が集客数の目標となります。
4.ターゲット顧客に合う集客手法を選択し、施策を実施
集客目標が決定したら、集客するターゲット顧客を決定します。
ターゲットとする顧客によって、普段目にする媒体(テレビ・SNS・新聞・チラシなど)は異なります。宣伝広告費のコストと集客目標のバランスを見ながら、最も効率よく集客できそうな手法を選択し、施策を実施します。
5.集客目標に対する実績確認
集客を上げるために施策を実施した後には、当初設定した目標値対して実際に出すことの出来た実績を比較することが肝心です。
例えば、メールで顧客にキャンペーン開催の旨を連絡したとすると「チラシがプレゼント交換券」といったクーポンを付ければ何人チラシを持参し来店したか、施策後に集計可能です。
旗や看板などを設置した場合、それらを見て入店したか判断することが難しいため、設置期間と設置していない期間(通常時)との比較で来店者数を比較します。
一方、インターネット系のリスティング広告やSNS広告を施策の場合、計測は比較的容易に計測することが可能です。
広告出稿によってリーチできた人数やランディングページ・ホームページに来訪した人数を計測ができます。オンラインでの購入数まで調べることでコンバージョン率(購入率)の計測も可能です。
ネット広告を活用し自社サイトへの集客を目的にする場合は、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールをサイトにセットアップします。施策効果によるアクセス数の変動を計測できるよう準備しておきましょう。
解析ツールは成果を振り返りやすいだけでなく、離脱率や直帰率なども分か解析できます。ツールによってはどこで離脱してしまったのかも分かり、次の施策の改善策の手がかりになります。
6.PDCAサイクルを回して目標達成を目指す
PDCAサイクルとは、以下の単語の頭文字を取ったマネージメント手法のことです。
Plan | Do | Check | Action |
計画 | 実行 | 評価 | 改善アクション |
様々なマネージメントによく使われるPDCAサイクルですが、集客にも応用することができます。集客の場合はPをゴール設定、Dを集客施策の実施、Cをゴールと実績の成果振り返り、Aを成果から導かれた改善アクションとして考えることができます。顧客を集める為に設定したこのPDCAサイクルを利用することで一つの施策を終えた後に、効果的に次回の施策に生かすことが出来ます。
つまりPDCAサイクルとは施策を終えるごとにPの計画から次の改善アクションまでを意味する循環型のマネージメント手法です。PDCAサイクルを回すことで集客効率が低いところを見直し、修正することで徐々に集客効率を上げることができます。
集客の成果をより高めるために知っておきたいポイント
ここでは、集客の成果をより高めるために知っておきたいポイントを紹介します。
オンライン集客とオフライン集客を組み合わせる
インターネットの普及とともに、インターネットを活用したオンラインでの集客方法も発展してきました。しかしオンライン集客とオフライン集客、どちらが良いというものではありません。どちらか一方だけでなく、オンラインとオフライン両方の集客方法をを組み合わせることで、相互補完することができます。
オンラインでの集客
オンラインでの集客は、ネット広告、SNSやブログでの情報発信、公式サイトやECサイトなどの施策が挙げられます。幅広く情報発信することで多くの人に認知してもらえるのが特徴です。
オンライン集客を行うなら、興味を持った人がインターネットで検索した時にすぐに情報が手に入るようランディングページを用意しておくと良いでしょう。
ランディングページとは、広告や検索ページを経由してユーザーが最初にアクセス(=ランディング)するページのことです。
ランディングページは1ページでも良いので、消費者が知りたいと思われる情報をわかりやすく盛り込んでおくと良いでしょう。
オフラインでの集客
オフラインでの集客方法には名刺やチラシ、DMなどがあります。紙などの実体を通して、強いメッセージを与えられるのが強みです。また、チラシなどのオフライン集客で興味を持たせ、インターネットで検索させるというような手法もあります。
オフラインとオンラインをうまく組み合わせて、集客のプランを計画しましょう。
集客手法ごとに購入率(成約率)をシミュレートする
顧客の購入率は集客手法によっても異なります。施策を実施する前に、集客手法ごとに購入率をシミュレーションしてみましょう。
チラシとブログで同時に集客するケースを例に挙げると、
「チラシによって100人に店舗来訪してもらい、30人に商品購入してもらおう」
「ブログ記事を閲覧した500人のうち、3人に商品購入してもらおう」
といったように、手法ごとに成約率をシミュレーションします。
初めは手探りで構いません。施策実施後に振り返ることで、その数字が次回の施策時にそのまま活用できます。また、あまりに成約率が低かった場合は、別の集客手法を試すなどの判断も必要です。
顧客動線上のユーザーストレスを排除
せっかく店舗やWEBサイトに集客できても、来訪した消費者が帰ってしまっては成功したとはいえません。オンライン集客の場合、特に重要になるのが、顧客動線上のユーザーストレスを排除することです。動線とは、WEBサイト上で消費者が動く経路を指します。
例えば、リスティング広告やSNSで発信されたコンテンツを見て訪問したランディングページに知りたい情報がない、購入方法が分かりづらいなどはユーザーのストレスになります。
ユーザーはストレスを感じると決済途中であっても離脱してしまいます。
ユーザー動線を意識してページ設計を行い、ユーザーの意図する行動がスムーズに行えるよう、購買の阻害要因を排除していくことが重要です。
まとめ
この記事では、インターネットの発達による顧客行動の変化と、集客の戦略を立てるための6ステップについて解説しました。売上を上げるためには集客を効率的に実施する必要があります。正しい集客戦略に基づいた集客方法を身に付けて、集客力を高めていきましょう。