顧客を管理する業務において登場する概念に「CRM」というものがあります。顧客の価値観の多様化によって国内市場の変化も生じている現在において、実際の業務の場面でCRMがどのような役割を果たすのか、わからない部分も多いのではないでしょうか。今回は、CRMという用語の意味や特徴、CRMに関するシステムについて紹介します。
目次
CRMとは
CRMとは、「Customer Relationship Management」のことで日本語では「顧客関係管理」と呼びます。文字通り、企業と顧客との関係性をマネージメントするという意味で、顧客情報や各種履歴を集約し、顧客それぞれに適切な対応を行い、良好な関係性を保つことをあらわします。
CRMの目的
CRMの目的とは、企業が顧客と良好な関係性を築くことで企業の利益を最大化させることにあります。顧客を把握したうえで最適なサービスを提供することで、より多くの優良顧客を獲得して売上向上につなげていきます。
CRMが重要とされてきた背景
CRMを重要視するようになった背景には、多様化する価値観によって国内市場に変化が生じたことと、多様化した変化によって顧客が競合他社に流れやすくなったという状況が考えられます。
高度成長期やバブル期などは、高品質で低価格な商品であれば、新規顧客獲得の際にも、または一度競合他社に流れた顧客を取り戻す際にも容易に獲得できていましたが、さまざまな商品が流通することで選択肢が増え、顧客のものを見る目も厳しくなってきました。そのため既存顧客が競合他社に流れやすくなり、既存顧客を維持することが難しくなり、CRMが重要とされるようになったのです。
SFAやMAとの違い
企業の顧客管理やマーケティングに関する言葉に「SFA」「MA」という言葉があります。SFAとは、営業の案件化から受注に至るまでを可視化し、業務支援するためのツールのことを指し、MAはマーケティング業務を自動化するためのツールのことを指します。
簡単にいえば、CRMは顧客関係管理の概念やそれに関するシステムを指し、SFAは営業支援に特化したシステム、MAはマーケティング業務に関するシステムと考えるとよいでしょう。
CRMの機能
CRMを実現するためのシステムにはどのような機能があるのか、ここでは主に4つにわけて紹介します。
- 顧客情報の管理
- 顧客情報の分析
- 問い合わせの管理
- プロモーション管理
顧客情報の管理
CRMに関するシステムには、顧客のプロフィールや商品・サービスの購買履歴を一元管理できる機能があります。また、顧客にある属性を付与させることで、属性ごとにグループ化して管理することも可能です。
顧客情報の分析
取得した顧客情報は、さまざまな観点からグラフ化・分析することができます。それらの結果をもとにPDCA(業務改善)を繰り返すことで顧客管理の精度をより高めていくことができます。また、システムのなかには、蓄積されたさまざまな顧客データから見込み顧客だけを抽出する「顧客抽出機能」が備わっているものもあります。
問い合わせの管理
顧客からの問い合わせやクレームの内容を保存・蓄積し、情報管理をします。回答漏れや二重回答を防ぎ、重複している問い合わせをFAQとしてまとめておくことも可能です。
プロモーション管理
CRMのシステムのなかには、既存顧客への新たなプロモーションや、商品・サービス購入後のアフターフォローをする機能もあります。顧客に対してメールで情報発信する機能を用いれば、メールマガジンの配信によってクリック率や開封率などの効果測定もできます。
CRMを導入するメリット・デメリット
CRMのシステムを導入するにあたって、どのようなメリット・デメリットがあるのかを説明していきます。
メリット
CRMのシステムを導入するメリットには、部門ごとに分散している顧客情報の一元化によって部門間の連携を強化できること、成果や情報を可視化によって情報分析や経営戦略に役立てること、より細かな顧客情報を集約して一元化できることによりさらに的確に顧客のニーズにあった対応ができることがあげられます。部門間で情報共有できることで、情報の行き違いや重複を防ぐことができます。
デメリット
CRMのシステムを導入するには導入時だけでなく今後維持していくためのコストもかかることになります。また、新たなシステムを使うことによって生じる業務フローの再構築や社員教育という手間も生じることになるでしょう。社員教育のなかには、重要な顧客情報の管理方法や情報漏洩を防ぐための徹底的なセキュリティー対策の周知も含まれます。新たなシステムを導入する場合、社員間で操作の得意・不得意の差が出ないようにわかりやすい説明が必要になります。
CRMツールを選ぶポイント
CRMに関するシステムを選ぶ場合、どのような点に注意すればよいのか、ここでは3つのポイントについて紹介します。
- 必要な機能がそろっていること
- 他のツールと連携や拡張性があること
- サポート体制やセキュリティ対策が整っていること
必要な機能がそろっていること
CRMのシステムは、顧客との関係性が生じる間、長期間にわたって使用することになります。自社の顧客関係管理においてどのような業務があるのか、システムを導入することでどのような問題を解決したいのかという課題を整理しておきましょう。安価で購入できるものではないため、不要な機能がないか、重要な機能は備わっているか、いくつかのシステムを比較しながら最適なシステムを選択しましょう。
また、導入によって課題解決できるメリットと、システム導入によるコストのどちらが上回るかによって、システム導入が不要な場合もあるので慎重に検討することがおすすめです。
他のツールと連携や拡張性があること
CRMのシステムを導入する際に注意しなければならないのは、自社にある既存システムと連携できるか、または連携したことで不具合が生じないかということです。既存システムとの連携ができなければ、新たな業務フローが増えることになり非効率やコスト増になる可能性もあります。既存システムをアップデートもしくは機能拡張することで連携がとれるかどうか確認してみましょう。
サポート体制やセキュリティ対策が整っていること
新たなシステムを導入する際には、これまでの業務フローや操作性と異なることもあり、疑問や不具合などが発生することが考えられます。また、個人間でもシステムの扱いの慣れには差があることからも、すぐに問い合わせに対応できる窓口やサポート体制が整っているかを確認しましょう。
また、CRMは重要な顧客情報を取り扱うことから、業務に直接携わる従業員だけでなく社内全体として、個人情報保護の高い意識づけを徹底する必要があります。
CRMを活用するためのコツ
CRMを自社に取り入れるには、どのような準備が必要なのでしょうか。最後にCRMを活用するためのコツを紹介します。
- 明確な目標を定める
- 戦略を組み立てる
- PDCAを行う
明確な目標を定める
CRMのシステムを導入して、顧客管理を一元化することで、どのような結果を達成させたいのかという明確な目標設定をしましょう。CRMのシステムにより集約できた顧客の購買情報にもとづいて、商品・サービスの購入金額や購入頻度などを細かく算出し、目標達成までのプロセスを具体化させます。「年間売上を30%アップさせる」など数字で目標をあらわすとイメージしやすくなり、従業員の意欲を促すことも期待できます。
戦略を組み立てる
明確な目標を定めたら、実現に向けての戦略をたてていきましょう。これまで蓄積してきた顧客データをCRMに集約させることでさまざまな切り口での分析や数値化ができます。それらの分析結果をもとに今後の改善点を洗い出し、具体的な戦略を組み立てていきましょう。
PDCAを行う
PDCAとは「Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)」のサイクルを繰り返し、業務を継続的に改善していく手法です。先に組み立てた戦略を実行してうまく進められているか、進んでいない場合にはどのような改善が必要かを継続的かつ客観的に分析・検証していきましょう。
先の「年間売上を30%アップさせる」といった数値化した目標が達成できなかった場合には、原因を特定して新たな施策を考えていきましょう。世の中の情勢やトレンドの変化に対応しながら、その都度PDCAを繰り返し、継続していくことが重要です。
まとめ
今回は、顧客管理の概念であるCRMについての紹介と、CRMに関するシステムの導入の注意点について紹介しました。
顧客の価値観の多様化によって国内市場は常に変化が生じ、新規顧客獲得や既存顧客の維持が難しくなっている今こそ、顧客関係管理が重要とされています。以前は社内の部署ごとに散らばっていた顧客管理を、CRMのシステムを導入して顧客情報を一元化することで、顧客に関する情報をより細かく集約することができ、顧客一人一人に対して適切な対応を図ることができます。
CRMのシステムは、自社で取り扱っている顧客情報や解決したい課題によって、必要な機能は異なります。何を解決したいのか、どのような目標をたてるべきなのか、自社の問題点を細かく分析して戦略を立て、継続的な改善を繰り返し、適切な顧客関係管理を実現させてみてはいかがでしょうか。
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