自社の商品・サービスの購入や利用を顧客に対してアプローチする方法として、販促活動はかかすことができません。なかでも近年は、リアルタイムで情報発信ができるSNSやアプリなどを中心としたデジタル販促に注目が集まっています。しかし、これまでチラシ配布などを中心に行ってきた店舗にとっては、デジタル販促そのものについてわからないということも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、デジタル販促についての具体的な紹介と活用するメリット、実際に活用している企業の事例などについて紹介します。
目次
デジタル販促とは?
デジタル販促とは、ホームページやSNSなどインターネットを媒体として宣伝を行うことを指します。
総務省の調査によると、情報通信機器の世帯保有率が2017年にはスマートフォンがパソコンを上回り、2021年の個人での端末別のインターネット利用率はスマートフォンが68.5%、パソコンが48.1%となっています。
こういった背景に加え、位置情報を利用した「ジオターゲティング広告」の登場など、デジタル販促が多様化するようになりました。アナログの施策では難しい宣伝方法や情報の発信が可能なため、企業や店舗などがさまざまな場面で活用しています。
アナログ販促との違いとデジタル販促の3つのメリット
ここでは、チラシやダイレクトメールなどの印刷物を使ったアナログ販促との違いとあわせて、デジタル販促の3つのメリットを紹介します。
- タイムリーな情報発信ができる
- 効果をデータで分析できる
- ターゲットを絞って効率的に販促できる
タイムリーな情報発信ができる
アナログ販促のなかでもダイレクトメールなどの印刷物を郵送で各家庭に配布するという場合、顧客の手元に届くには最低でも一日以上の時間は見込む必要があります。一方、デジタル販促では印刷や郵送という段階を踏む必要がないことから、SNSなどを活用してタイムリーな情報配信が可能です。
効果をデータで分析できる
アナログ販促での効果測定を行う場合、例えば店頭レジで顧客の分類を行おうとするとレジを担当したスタッフの主観での情報収集となるため、データの品質は公平ではない可能性もあります。一方、デジタル販促を行う場合には、Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを活用すれば、ユーザーの居住地域や年齢、性別をはじめ、ホームページへアクセスした時間帯などアナログ販促よりもより具体的でより正確なデータを取得することができます。
ターゲットを絞って効率的に販促できる
販促を行う場合に必要なターゲティングについても、デジタル販促であれば顧客の居住地や年齢、性別だけでなく、データ集積による来店履歴やホームページの閲覧履歴などさまざまな情報をもとに、細かなターゲティングを行うことができます。広告配信においても、顧客の興味・関心のありそうな分野に絞って掲載することで、購買へ結びつく高確率での効果も期待することができます。
デジタル販促の注意点
自社の販促に実際にデジタル販促を取り入れようとする場合、どのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。ここでは、デジタル販促における注意点を3つにまとめて紹介します。
デジタル販促を行ううえで知っておくべきこと
デジタル販促を行う際に覚えておきたいマーケティング用語に「OMO」と「O2O」という言葉があります。
OMOとは「Online Merges with Offline」を略した言葉で、直訳すると「オンラインをオフラインと結合させてひとつのものにする」という意味です。例えてあげるとすると、インターネット上の店舗と実店舗を分けずにひとつのものとしてマーケティングの戦略を練っていくということになります。
一方でO2Oとは「Online to Offline」の略語であり、例えば、オンラインでの顧客情報をもとにして、それらの顧客を実店舗へ誘導することです。自店のアプリやホームページを通じて、顧客が実店舗で利用できるクーポンを配布する、などがそれにあたります。双方は、O2Oが注目されたのちOMOに発展し、これらの手法が定着していったとされています。
Cookie利用によるデータ収集
Cookieとは、顧客がホームページやブログにアクセスしたり、アプリを利用したりした場合などに、使用デバイスやウェブブラウザに一時的に保存される情報を指します。アクセスした日時や回数、閲覧履歴などもそれにあたります。
デジタル販促においては過去にはCookieを利用した顧客データの収集が行われてきており、Cookieにより取得された情報は個人情報保護法の対象外でした。しかし2022年4月1日に施行された「改正個人情報保護法」により「個人関連情報」という新たな定義の中に位置づけられ 、第三者提供についての本人同意を得ることが義務づけられるようになりました。そのため、顧客にとってはCookie利用を拒否されることもあり、拒否する人が増えればデータ集計が難しくなるだけでなく、顧客へ情報が伝わらない可能性もあります。
これらのことから、Cookieを使わずにデータ収集を行える代替手段へ移行する必要が考えられています。
参考:令和2年改正個人情報保護法 特集 |個人情報保護委員会
アナログ販促も同時に行う
これまで紹介したことをふまえると、アナログ販促よりもデジタル販促のほうが効率的でメリットが多く、完全にデジタル販促に移行したほうがよいのでは、ととらえてしまいますが、実際にはアナログ販促とデジタル販促を併用したアプローチがより効果を期待できます。
例えば、デジタル販促で得られた新規顧客をリピーターにしたい場合には、実店舗に訪れてくれた顧客に対して、質のより高いアナログ販促によるアプローチを行い、自社の商品・サービスの魅力を伝えるという流れにします。来店時の接客が顧客にとって満足のいくものであった場合、口コミで高評価が伝わることも期待できます。
デジタル販促の3つの手段
デジタル販促を実践する場合に、主な手段としてどのようなものがあるのか、ここでは3つの方法をあげて紹介します。
- SNS
- 企業アプリ
- 公式メルマガ
SNS
年齢問わずさまざまなユーザーが活用するSNSは、LINE公式アカウントやX(旧Twitter)、Instagramなどの手段があり、タイムリーな情報配信に適しています。
LINE公式アカウントでは、ユーザーが企業の公式アカウントと友だち登録することで、クーポンの配布やスタンプカード機能などを利用して来店促進へつながるシステムがあります。X(旧Twitter)であれば日本語の140文字で端的なアプローチが可能です。また、画像や動画などのビジュアルでアプローチするInstagramにはInstagram広告という広告手段があり、広告の目的や予算、掲載期間などを選択することで、ターゲットとするユーザーに対して具体的な情報発信ができます。
企業アプリ
美容室や飲食店などで活用されている企業アプリは、新規顧客ではなく既存顧客への再来店を促すアプローチ方法として効果が期待できます。実店舗向けのポイントカード機能やクーポン発行機能はもちろん、ネットチラシ を作成して配信できるアプリもあり、店舗の特徴に沿ったアプリの選択が可能です。
公式メルマガ
SNSが多く利用されている現代であっても、SNSアカウントを持たない顧客も存在します。そのような顧客に対して情報発信できる手段が公式メルマガです。メルマガは顧客に対して直接配信されるため、媒体を活用したアプローチよりもダイレクトに伝わるという特徴があります。
また、定期的に配信を継続することが顧客との接触時間を長く保つことにつながり、配信内容によっては顧客からの評価が高まり、見込み客獲得に結びつくことも期待できます。
デジタル販促を活用した3つの事例
最後に、デジタル販促を活用して効果が得られている企業の事例を3つ紹介します。自店の状況と照らしあわせながら参考にしてみてはいかがでしょうか。
すかいらーく
「すかいらーくレストランツ」「ガスト」「バーミヤン」などを運営するすかいらーくグループでは、X(旧Twitter)、Instagram、Facebookの公式アカウントを持ち、さまざまな情報発信を行っています。また、全国約3,000店舗の情報を集約して更新するとなると、古い情報や間違った情報が表示されたままになることもあることから、Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)を活用して、店舗情報を整備したり、最新の情報発信を行ったりすることで、全店舗分の情報を扱う手間やコスト削減にも結びついています。
参考:ソーシャルメディア公式アカウント一覧|すかいらーくグループ
トイザらス
トイザらスでは、長く活用していた折り込みチラシから、ウェブチラシを利用した配布方法に変更しました。また、Google広告の「ローカルキャンペーン」と「ローカルカタログ広告」を活用しています。
ローカルキャンペーンとは、バナーや動画などの広告を設定することで、YouTubeやGoogleマップ、その他のウェブサイト上に広告を自動配信する仕組みで、タイミングやターゲットが自動的に設定されるために効率的な来店促進を可能としています。
また、ローカルカタログ広告とは、店舗商圏内に存在し、かつ、商品に興味・関心がありそうな顧客に対して商品情報や店舗情報を表示させるというもので、顧客から店舗までのルートも表示されるため、直接来店につながっています。
参考:店舗集客に特化したソリューションを活用して効率的に来店促進ー トイザらスの事例
パナソニック
パナソニックでは、家電全般の「パナソニック公式」、美容家電の「Panasonic Beauty」、そしてキッチン家電の「Panasonic Cooking」など、複数のInstagramアカウントを開設し、顧客とのコミュニケーション手段として運用しています。キッチン家電を使ったレシピを紹介したり、統一感のあるキッチン空間を見せたりすることで、顧客が真似したくなるような提案を行っています。
また、「オーブントースター ビストロ」という商品では、Instagramの情報を活用しながらリニューアルを図ったことで、前モデルよりも好調な売上を実現することができました。
参考:インスタ中心の施策で売上が前モデルの2倍に!パナソニック「オーブントースター ビストロ」の挑戦 (1/3):MarkeZine(マーケジン)
まとめ
今回はデジタル販促について、活用するメリットやアナログ販促との違い、注意点などについて紹介しました。
主にインターネットを活用するデジタル販促は、印刷物を郵送したり手渡ししたりするアナログ販促と比較して、タイムリーな情報配信ができます。さまざまな世代が利用するSNSをはじめ、店舗の特徴にあわせた企業アプリや公式メルマガなど、どのような顧客にアプローチしたいかによってさまざまな選択方法があります。
新規顧客獲得をデジタル販促で行い、来店時などダイレクトに顧客との接点を持てる際にはアナログ販促を活用するなど、シチュエーションによって複合的に使い分けながら、より効率的なデジタル販促をはじめてみてはいかがでしょうか。
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