顧客に自店を選んでもらうための対策のひとつが競合店調査です。目的を明確にしたうえでの競合店調査は、自店と競合店との違いや自店の優位性を客観的な視点から把握できるため、顧客満足度や集客が向上する店舗作りにつながります。

今回は、競合店調査について、その目的や必要な調査項目などを紹介していきます。

競合店調査の目的とは?

競合店の調査の目的は、自店と競合店との違いを客観的にみることで自店が競合店より優れている部分や劣っている部分、コンセプトの違いなどを明確にすることです。それにより長所をさらに伸ばし課題を解決していくことが可能になります。

特に、自店の内部を調査しただけでは見えてこない課題や問題点が競合との比較によって見えてくることもあります。また、顧客はさまざまな店舗を比較して自分にあった店舗を選択するため、競合店調査を実施することで、顧客に自店を選んでもらうための新たな対策をたてることもできます。

競合店調査の手順

実際に競合店調査を行う際は、事前に段取りを決めておくことでよりスムーズに進めることができます。ここでは競合店調査の手順について紹介します。

競合店調査の手順
  1. 調査の目的を明確にする
  2. 調査対象・項目を決める
  3. 調査を実施する
  4. 調査結果をまとめ分析する

調査の目的を明確にする

先に説明したように、競合店調査の目的は自店と競合店の違いを客観視することで長所や課題を把握することにあります。よって、競合店調査によって得られた結果を何に活用するのかということも決めておく必要があります。

例えば、自店の商品・サービスの改良や新商品の導入、またはマーケティング戦略や自店のウェブサイトの改善のためといったような活用先の具体化です。調査結果の活用先をはっきりさせることにより、調査項目自体もさらに具体的に決めることができます。

調査対象・項目を決める

調査目的を明確にしたら、次に調査対象となる競合店や競合の商品・サービスを定めていきます。ここで注意したいのは、競合となる相手を同じ業界や業態だけに限定せずに決めておくことです。調査対象として考える際には、「顧客のニーズや時間を誰と奪いあっているのか」という広い観点で考えましょう。

また、調査項目を決める際には、自店の長所・短所を把握し、そのうえで調査目的を達成させるための仮説をたて、その仮説に沿って調査項目を決めていきます。仮説決めについては、のちほど「競合店調査で意識したいポイント」の項目で詳しく説明します。

調査を実施する

調査の目的や調査対象が具体化したら、いよいよ競合店調査の実施です。実際に競合店に出向いて、店舗のレイアウトや商品棚の確認、どのような商品が売れ筋であるかなどを細かくチェックしていきましょう。

実店舗での調査は、事前調査では見えてこなかった競合店の特徴がみえてくることもあります。また、調査目的が実店舗のサービス改善を図ることであれば、競合店の接客を受けてみたり、自店のウェブサイトの改善が目的であれば、競合店のウェブサイトのコンテンツを調べてみたりするなど、調査項目や目的にあわせて手段を変えてみるとよいでしょう。

調査結果をまとめ分析する

競合店調査を実施したあとは、そこで得られた調査結果をまとめて分析していきましょう。分析を行うことは今後の戦略をたてる際の参考になります。

また、調査項目を決める際にたてた仮説が正しいかどうかも検証していきます。仮説が外れた場合でもなぜ外れたかという分析を行い、仮説が立証できるまで新たな仮説をたてて再検証を繰り返していきましょう。

競合店調査のチェック項目

競合店調査を行う際のチェック項目として、どのようなことをあげていけばよいのでしょうか。ここでは、競合店調査を行う際に、基本としておさえておきたいチェック項目を紹介します。

競合店調査のチェック項目
  • 基本情報
  • 立地・外観
  • 広告宣伝・販促
  • 店内レイアウト
  • 商品・価格
  • 接客サービス

基本情報

まず必要となるのは、競合店の基本情報です。具体的には下記のような項目があげられます。

  • 店名(企業名)
  • 住所
  • 店舗規模や収容人数
  • 営業時間と定休日
  • 従業員数
  • 主な客層

また、例えば競合店がスーパーマーケットであれば、「生鮮食品の品揃えが多い店」「取り扱い商品の数が多い」などのように、その店舗の特徴やイメージも調査項目として加えておくとよいでしょう。

立地・外観

次に競合店の立地や外観に関する項目です。具体的には下記のような項目があげられます。

  • アクセス手段やアクセスのしやすさ
  • テナント数やテナントの種類
  • 周辺の公共施設の有無
  • 看板やのぼり旗の有無
  • 駐車場や駐輪場の有無

また、店舗の印象をチェックする項目として、「ひと目で何のお店か把握できるか」「外観からどのような印象を受けるか」といった視覚的な観点も加えておくとより具体的になります。外観などを撮影する必要がある場合は、あらかじめ従業員に断っておくことを忘れないようにしましょう。

広告宣伝・販促

広告宣伝や販促に関する項目としては下記のような事柄があげられます。

  • チラシ、ポスター、POPの有無
  • キャンペーンや店内イベントの実施の有無
  • 会員カードやポイントカードの有無
  • 店内放送の有無
  • 売り場内での情報発信の有無

競合店がどのようにして顧客を呼び集めるのか、具体的な販促方法についてチェックしていきましょう。

店内レイアウト

店内レイアウトとは、売り場のレイアウトや内装に関する項目です。

  • 外観との一貫性やコンセプトとの統一感
  • 清潔感
  • 売り場全体の広さと部門ごとの広さ
  • 棚割
  • カゴやカートの台数
  • 客と従業員の導線
  • 通路の広さ
  • レジの台数およびセルフレジの有無

競合店が提供したいイメージなどについては、時間帯ごとの来店客層によっても異なる場合も考えられるため、複数の時間帯にわけて訪れてみてもよいでしょう。

商品・価格

顧客にとって、商品の品揃えや価格は、商品の購入だけでなく今後利用するお店選びのポイントとなることも考えられるため、競合店調査のなかでも重要な項目となります。

  • 売り場ごとの商品の品揃え
  • 主力商品
  • 季節商品
  • 地域ならではの商品
  • 商品価格帯
  • 商品陳列の衛生管理
  • 客単価

商品の品揃えについては、カテゴリーごとの売場の規模を比較することで、部門として重点をおいているカテゴリーを判断することができます。

接客サービス

最後は、店舗内での接客やサービスについての項目です。接客についてどのような取り組みを行っているか、どの程度積極的に行っているかという観点からみてみることで、競合店の戦略がより判断しやすくなります。具体的な項目は下記の通りです。

  • 身だしなみ
  • 挨拶
  • 笑顔
  • 声のトーン
  • 声がけの程度や言葉づかい
  • 接客時の説明のわかりやすさ
  • 接客における主な取り組み
  • 店員の人数
  • 館内BGM
  • サービス施設
  • バリアフリーの有無
  • トイレなどの清潔感

競合店調査で意識したいポイント

実際に競合店調査を行う場合にどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。競合店調査時に意識したいポイントを紹介します。

競合店調査で意識したいポイント
  • 調査前に仮説を立てる
  • 定期的に調査して変化を見る

調査前に仮説を立てる

まずは調査前に競合店と比較して仮説を立てていきます。例えば、「自店は競合店と比較するとAについて訴求が不足しているため、自店の売場をリニューアルすることで、Aの強みを引き出し差別化することができる」というような仮説です。仮説を立てたら、どのような調査項目を用意すればよいかを検討していきます。調査終了後は、その調査結果をもとに、仮説が正しいかを検証していきます。

定期的に調査して変化を見る

競合店調査は、競合店の動向を知るだけでなく、自店の課題や長所を明らかにする効果も見込めます。競合店と自店とを比較して改善や工夫をすることは、店舗全体としての活性化に大きな役割を果たします。定期的に調査を行って、競合店の変化を注視することが重要です。

競合店調査に活用できるフレームワーク

意思決定や問題解決の枠組みとなるフレームワークは、競合店調査にも活用することができます。最後に、競合店調査に活用できるフレームワークを紹介します。

競合店調査に活用できるフレームワーク
  • ファイブフォース分析
  • 3C分析
  • 4C分析
  • SWOT分析
  • バリューチェーン分析

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、自社が置かれている環境要因を「競合他社・新規参入・代替商品・売り手の力・買い手の力」という5つの脅威や力として分類して分析を行う方法です。

個々の環境要因を分析していくことで、市場の収益構造や競合の優位性、自店の収益性などを把握することができます。自店の強みと弱み、将来性を明確にしたい場合に活用されるフレームワークです。

ファイブフォース分析については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

ファイブフォース分析に含まれる要素とは?具体例を交えて紹介

3C分析

3C分析は、顧客との良好な関係構築を目的とするフレームワークです。3Cとは、「顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Compan)」という意味で、それら3つの視点から分析を行います。

外部要因である顧客と競合、内部要因である自社の関係性を把握することで、競合店と顧客ニーズを分析し、自店が必要とする訴求ポイントが明らかにできます。

3C分析については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

3C分析のやり方とは?企業の強み・弱みをふまえた戦略を立てよう

4C分析

4C分析とは、「Customer value(顧客価値)、Customer Cost(顧客コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーションのとりやすさ)」の4つを使って分析を行う方法で、自店の商品・サービスや施策が顧客に対して価値を与えられているかを顧客視点で分析していきます。

これにより「なぜ自店が選ばれているのか」「なぜ競合店よりも自店が魅力があるのか」などを客観的に分析することが可能です。

SWOT分析

SWOT分析とは、「Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)」の頭文字をとっており、3C分析などで得られた外部環境の結果にともない、自店の強み・弱みを分析し、戦略を考えていくというゴールに向けて行っていくフレームワークです。

SWOT分析については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

SWOT分析のやり方とは?効果的な分析で事業を成功に導こう

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、自店と競合店の事業を工程ごとに分析していき、どの工程でどのような付加価値や課題がひそんでいるかを明らかにしていくというフレームワークです。

この分析により、相対的にあまり付加価値のない工程については資源投入を控えて、付加価値が高い工程については集中的に資源投入を行うように再構築を行うことで、効率的な資源配分を可能にしていきます。この分析は中長期的な事業戦略として有効的です。

バリューチェーン分析については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

マイケル・ポーター氏が提唱したバリューチェーン分析の手法を解説!

まとめ

競合店調査は、競合店の動向を知るだけでなく、競合店との違いを客観的にみることで自店がより優れている部分や課題を探し出し、改善やさらなる成長などに繋げていくことが目的になります。調査の目的、調査対象、調査項目を明確にして、それぞれにあった調査方法を実施してみましょう。

フレームワークなども活用しながら調査結果の分析を細かく行い、調査と分析を定期的に繰り返すことが大切です。競合店調査によって、長所や強みがいきる店舗づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。

記事のURLとタイトルをコピーする