飲食店をはじめとした店舗経営において、品質、接客、清潔感というのは非常に重要な軸であり、店舗のレベル向上への指標となります。それらを指標としてまとめた言葉がQSCです。
QSCの向上を心がけることではたして店舗にどのような影響をもたらすのでしょうか。今回はQSCについて、どのような手順で進めていけばよいのか、方法や具体例などを詳しく紹介します。
QSCとは?
「QSC」とは、「Quality(クオリティ)」「Service(サービス)」「Cleanliness(クレンリネス)」それぞれの頭文字を取った言葉です。さまざまな業種の店舗経営において、品質、接客、清潔感というのは非常に重要な軸であり、店舗のレベル向上への指標となります。これらのうちどれかひとつが質が高ければよいというものではなく、3ついずれの軸も高いことが必要です。
このQSCとは、ハンバーガーチェーンの「マクドナルド」創立者であるレイ・A・クロックが提唱しました。この指標をもとにマクドナルド社では詳細なマニュアルを作成し、世界どの国においても同じ価値を提供することで世界的な事業拡大につながっています。
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Q:Quality(クオリティ)とは
「QSC」のQuality(クオリティ)は、サービスの品質を指します。ここでのクオリティは、飲食店で提供する料理や飲み物のおいしさだけでなく、提供スピードや盛り付け方などもサービスの品質に該当します。
例えば、テーブルごとで提供する料理の見た目や量が異なっていないか、以前来店した時と比べて味が落ちていないかなど、提供するサービスの品質を一定レベルで保つことが求められます。サービスの品質を維持したり、向上したりするために定期的にチェックや研修を行うなどするとよいでしょう。
S:Service(サービス)とは
「QSC」のService(サービス)は、従業員の顧客に対する接客の質を指します。具体的には、言葉遣いや態度、入店・退店する時に挨拶があるか、料理の提供に配慮があるか、予約時の電話対応がスムーズかなどが該当します。
提供する料理が安くて美味しい場合でも、従業員の接客態度が悪いと顧客の満足度が低下してしまい、リピートにつながらない可能性も考えられます。また、料理の提供がスムーズかも接客の質には重要な要素の1つです。例えば、複数人で来店した顧客に対しては、料理の提供スピードが同じくらいになるようにして料理を楽しんでもらえるようにします。
入店から退店までの各段階の接客の質を向上させ、顧客が自分たちのことを気遣ってくれていると感じてもらえるようになるとリピートにもつながるでしょう。
C:Cleanliness(クレンリネス)とは
「QSC」のCleanliness(クレンリネス)は、店内や従業員の清潔さを指します。清潔に保つ必要のある箇所の具体例としては、客席の机や床をはじめ、トイレや調理スペース、従業員の服装など、多岐にわたります。
例えば提供している料理がおいしいと感じてもらえている場合でも、従業員の服装が乱れていて清潔感がないと判断されてしまっては、そのほかの調理場で衛生管理がきちんとされていないのではないかと不信感をいだかせてしまう可能性があります。そのため、1つの箇所だけでなく、すべての箇所が清潔に保たれているかをお客様視点で確認するとよいでしょう。
QSCの流れと向上のために必要なポイント
自店のQSCを向上させるためには、具体的に何に着目していったらよいのでしょうか。QSCを考える流れとしては、下記の4つの流れで考えるとよいでしょう。1つずつ内容を解説していきます。
- 顧客アンケートを実施しお客様の声を聞く
- アンケート内容を参考に改善案を考える
- 従業員満足度(ES)を向上させる
- QSCを確認するためのチェックシートを活用する
顧客アンケートを実施しお客様の声を聞く
自店のQSCに対して、顧客満足度を把握するためにアンケートを実施してお客様の声に耳を傾けます。アンケートに決まった形式はないため、アンケートを実施する目的に応じて項目を変更するとよいでしょう。アンケートは0~5段階で満足度合いを測ったり、自由記述欄を設けて感想などを集めたりします。
下記は、顧客アンケートに記載する項目の例です。
▼顧客アンケートに記載する項目例
- 当店を知ったきっかけは?
- 従業員の接客はどうだったか?
- 料理の提供スピードはどうだったか?
- 店内は清潔に保たれていたか?
- 総合的に満足度はどうか?
また、QSC向上に向けて少しでもアンケートの回収率を高めるために、質問項目を絞ってアンケートを実施したり、アンケートに回答してくれた方にはサービス券を配布したりするなどの工夫が必要です。
アンケート内容を参考に改善案を考える
集めた顧客アンケートの内容をもとに、自店のQSCの改善案やより伸ばしていけそうな点を考えていきます。性別や年齢などの要素を組み合わせて集計することで回答の傾向や改善策もみえてくるでしょう。
アンケートから分かった改善点については、具体的にどのような対応をすれば改善できそうかの案を考えたり、マニュアルを作成したりするなど、提供するサービスの質を一定に保てるように工夫します。自店のよさを伸ばしていけそうな点に関しては、具体的な方法を実施することで、顧客満足度向上に期待ができます。
従業員満足度(ES)を向上させる
店舗全体でQSCの向上を目指そうとするなら、従業員の協力が必要不可欠です。そこで重要となるのが、従業員満足度です。従業員満足度とは「ES(Employee Satisfaction)」とも呼ばれ、QSC向上において欠かせない要素となります。
従業員がモチベーションを高く保つために、表彰制度や従業員の評価制度、または福利厚生の充実や職場環境の改善などを行うことで、帰属意識が高まることにも期待ができます。加えて従業員が感じる待遇の満足度が上がれば、就業時のパフォーマンス向上に期待ができるでしょう。
QSCを確認するためのチェックシートを活用する
アンケート結果から、自店で改善するべきQSCの内容を確認するためにチェックシートを活用して、漏れがないように対応するとよいでしょう。チェックシートを導入することで、誰が見ても対応するべき内容が分かるようになります。
下記では、クオリティ、サービス、クレンリネスのそれぞれのチェック項目を紹介します。
Q:Quality(クオリティ)のチェック項目
クオリティとは、サービスに関する品質を指します。クオリティのチェック項目としては下記のものが挙げられます。
- 品質や鮮度は基準内で保たれているか
- 料理は同じ手順、温度、速度で提供できているか
- 調味料の使用や量は決められた基準になっているか
- 料理の見た目や盛り付けは基準通りか
- 食材の廃棄量は基準内か
S:Service(サービス)のチェック項目
サービスとは、接客時の内容の質を指します。サービスのチェック項目としては下記のものが挙げられます。
- 来店時から着席までの案内がルール通りに行っているか
- 笑顔で接客できているか
- 必要なコミュニケーションが取れているか
- クレーム時、混雑時などの対応に問題がないか
- 注文時のオペレーションが守られているか
C:Cleanliness(クレンリネス)のチェック項目
クレンリネスとは、店内の清掃の質や清潔感を指します。クレンリネスのチェック項目としては下記のものが挙げられます。
- 客席に汚れがないか
- 従業員の服装は清潔に保たれているか
- 客席や調理場に置いている備品が整理されているか
- 駐車場に汚れはないか
- 内外装で劣化している場所はないか
QSC以外にプラスで加えられる大切な要素
飲食店をはじめとする店舗経営において、品質、接客、清潔感のQSCというのは非常に重要な軸であるとお伝えしてきましたが、QSC以外にも重要とされるものに「H:Hospitality(ホスピタリティー)」「V:Value(バリュー)」「A:Atmosphere(アトモスフィア)」という指標があります。それぞれの考え方について紹介していきます。
- H:Hospitality(ホスピタリティー)
- V:Value(バリュー)
- A:Atmosphere(アトモスフィア)
H:Hospitality(ホスピタリティー)
QSCに「H(ホスピタリティー)」を加えた「QSC+H」が重要視されてきています。ホスピタリティーとは日本語でわかりやすくいえば「おもてなし」を指し、店舗を訪れた顧客が心地よく最後まで滞在していただけるように心を尽くすことなどが該当します。さらには接客以上に顧客が喜ぶことを行うなど、ユーザーの求めるサービスを提供する以上の体験や価値を与えられるかが大切です。
V:Value(バリュー)
バリューとは、日本語では「価値」を指しますが、顧客満足に影響するすべての要素がバリューと考えられています。先にも紹介したマクドナルド社では、QSCにVを加えたQSC+Vが全世界の同社の企業理念となっています。
具体的には、顧客の来店動機につながるような期間限定メニューの提供や、SNSのフォロワー限定プレゼントや来店スタンプの実施、または顧客が長く滞在できるようにコンセントなどの使用許可といったものがあげられます。自店独自の付加価値の提供によって、リピーター獲得や新規顧客獲得といったことにもつながっています。
参考:マクドナルド公式サイト | マクドナルド公式(2024年11月時点)
A:Atmosphere(アトモスフィア)
アトモスフィアとは日本語で雰囲気という意味であり、ここでは店内の空気感や雰囲気といったものを指します。QSCにAをプラスした「QSC+A」と呼ばれることが多いです。店舗の内外装、BGM、スタッフの制服や佇まい、料理の提供方法などから顧客が居心地のよさを感じることができれば、「あのお店は雰囲気がいいよね」「また来ようね」ということになり、顧客満足度の向上にもつながります。
まとめ
今回は、経営者がおさえるべきQSCについて、チェック方法や具体例について紹介しました。
「QSC」とは、「Quality(クオリティ)」「Service(サービス)」「Cleanliness(クレンリネス)」それぞれの頭文字を取った言葉であり、それらを店舗全体で徹底することにより、顧客満足度の向上にもつながります。QSCの向上を目指すには、従業員満足度(ES)の向上も欠かせません。また、QSCのみならず「Hospitality(ホスピタリティ)」「Value(バリュー)」「Atmosphere(アトモスフィア)」などの指標もあわせて見ていくことが大切です。
店舗全体でQSC向上に取り組み、顧客が「また来たい」と思うような店舗づくりを目指してみてはいかがでしょうか。
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