コインランドリー経営は、常駐する必要がないことから気軽に始められそうな印象を持っている方もいるかもしれませんが、費用などの課題や、立地や天候などさまざまな要素に影響を受けることから、運営は簡単ではありません。準備や設備管理をしっかりと行わないと利用客離れにもつながってしまうため、開業時だけでなくその後の取り組みも大切です。

今回はコインランドリー経営についての特徴と、どのような点からコインランドリー経営が難しいとされているのか、開業を目指すにはどのようなことを注意すればよいのかを詳しく説明していきます。

コインランドリー経営の特徴

コインランドリー経営とは、どのような収入源が中心で、どのような経営形態で成りたっているのでしょうか。ここでは、コインランドリー経営の主な特徴について説明していきます。

乾燥機の利用売上が中心の事業

コインランドリー経営は、コインランドリーのために用意した建物に設備を導入し、その後はコインランドリーを利用する客の支払いで収入を得るという流れです。最低限コインランドリーの設備が整うことが条件なので土地としては比較的狭くても導入することが見込め、営業中は管理者が常駐する必要がないことから他の店舗型ビジネスに比べて手間もかからないことが特徴です。

コインランドリーの場合、中型洗濯機や布団も洗える大型洗濯機のほか、乾燥機もよく設置されます。「雨天でも洗濯物を乾かしたいが自宅に乾燥機がない」という利用客のニーズがあるため、雨の日には乾燥機の利用率があがることが期待できます。そのため、洗濯機だけでなく乾燥機を設置することが売上アップにも繋がるのです。

コインランドリーの経営形態は主に3種類

コインランドリーの経営形態は主に3種類にわかれます。ひとつは自ら土地建物を用意し、自分の力で経営を行う方法、もうひとつはフランチャイズ加盟店として運営する方法、さらにコインランドリー事業者に自分の土地を貸し出し、土地の賃料を収入源とする方法です。

フランチャイズ加盟の場合、最初から知名度があり、立地の調査や経営計画などはフランチャイズの本部に任せることもできるため、ゼロから自分で事業を開始するよりは負担が軽くなりますが、加盟料やロイヤリティの支払いが必要となり、経営の自由度も比較的低いことはデメリットともいえるでしょう。

自らの土地を貸し出す場合は、店の売上状況に左右されないため、店舗がある間は安定した賃貸料を得ることができます。

コインランドリー経営では立地が重要

コインランドリー経営では、成功する要因のひとつに立地条件があげられるとされています。具体的には、利用客がアクセスしやすく視認しやすい場所や駐車スペースの有無、スーパーマーケットなどの集客力の高い商業施設の近隣であることなどがポイントとなります。

洗濯物は多かれ少なかれ荷物になるため、持ち込みや持ち帰りがしやすいことが店舗を選ぶうえでの条件になり得ます。家に近いことや、日常生活で利用する道中に店舗があること、車で持ち運ぶ際に駐車がしやすいことなど、店舗の立地条件が周辺地域の人々にとって利便性があるかどうかが重要です。

コインランドリー経営が難しいとされる理由

土地と建物が揃えば、比較的低いハードルで開業できるように思われることもあるコインランドリー経営ですが、スムーズな開業や安定した経営に繋げるには多くの課題が存在します。どのような点からコインランドリーの経営が難しいとされるのか、理由を5つ紹介します。

コインランドリー経営が難しいとされる理由
  • コインランドリーは土地選びが難しい
  • コインランドリーは初期費用が高め
  • 完全無人化は難しい
  • 天候の影響が大きい
  • コインランドリーは差別化が難しくライバルが多い

コインランドリーは土地選びが難しい

コインランドリーの経営には立地条件が重要ということを先に説明したように、開業する場所によって収益に大きく影響が出ることから、場所選びは慎重に考える必要があります。

立地がよければ利用客がリピーターとなり、安定的な売上に繋がることを期待できますが、少しでも来店の障害となり得る要素があると、一定の見込み客の利用を妨げてしまう可能性があります。

一見条件の良い土地のように思えても、実際に周辺を歩いて確かめてみなければ気づけない問題などもあるため、できる限り詳しく土地について調べましょう。開業後、雨の日に利用が見込まれることからも、実際に雨の日に土地周辺の状況を観察してみるのもよいでしょう。

コインランドリーは初期費用が高め

コインランドリーは、土地建物の状態や規模、経営形態などによって初期費用には幅がありますが、数千万円ほど必要になる場合があります。自身で経営する場合などで高価な設備の導入を検討するのであれば多額な費用が必要となるでしょう。

コインランドリーには常駐の手間がないことは確かですが、開業当初から認知され利用客や固定客がつくまでは大きな収益が期待できず、黒字化までには時間がかかる場合があります。収益があまりに見込めないと、開業時に初期費用として融資を受けている場合、返済も難しくなることも考えられます。

参考:コインランドリー開業で失敗しない! 経営の費用はいくらかかる?「イエウール土地活用」

完全無人化は難しい

基本的に設置された設備を利用客が自分で利用するコインランドリーでは、スタッフが常駐する必要はありません。しかしながら、完全な無人化は実現が難しいでしょう。なぜなら、店内の清掃はもちろん、洗濯機などの設備の突然の故障やメンテナンス、盗難などのなんらかのトラブル対応といった突発的な事柄にも対応しなければならないためです。

スタッフの対応が遅いことや、設備がずっと故障中となっている状態、また店内が不潔で洗濯物を置きたくないというような状態では、せっかく獲得した利用客やリピーターが離れていってしまいます。基本的には接客の必要はないにしても、利用客が気持ちよく利用できる環境を整えることが求められます。

天候の影響が大きい

これまでも解説してきた通り、コインランドリーの売上は天候に左右されやすいという特徴があります。雨で乾燥機の需要が高い時には局所的に比較的高い売上が期待できる一方、晴れの日が続くと常時利用しているリピーターからの売上が主となるなど、収益に波があります。

1年間を通しても、梅雨など雨の多い時期もあれば晴れの日が続きやすい時期あるため、月ごとの売上にも差があるでしょう。また、都道府県で比較した場合、雨の少ない地域なども存在するため、「天候に左右される」ということは都道府県や地域も関連する要素であると言えます。

コインランドリーは差別化が難しくライバルが多い

コインランドリー経営が難しいとされる理由には、差別化が難しく競合が多いということもあげられます。洗濯機や乾燥機といった設備は、求められている目的に対して設備ごとの性能差がそれほど大きくないため、「目的が達成できればよい」という視点で考えた場合、競合店との差は立地や利用のしやすさなどに現れることになります。

また、開業するために必要な資格もないため、競合が参入しやすい面もあります。すでに競合が多い地域に開業する場合には利用客獲得が容易ではありませんし、逆に自分が開業したあとに近くにできた新しい競合店に顧客を取られる恐れもあります。

一方で、先に説明したように対応が遅かったり、長く故障中となっていたりするだけでも利用客が離れていってしまう要素になるため、顧客の目的である洗濯や乾燥以外のサービスレベルをあげることで差別化に繋げられる可能性はあります。

コインランドリー経営を成功させるためのポイント

デメリットも少なくないコインランドリー経営ですが、それでも開業して成功を目指したいという場合、どのような点に注意して進めていけばよいのでしょうか。ここでは、コインランドリー経営を成功させるためのポイントについて紹介します。

コインランドリー経営を成功させるためのポイント
  • 立地を見極める
  • コインランドリー利用者のターゲットを設定する
  • コインランドリーの事業計画書を作成する
  • コインランドリーの設備に投資しすぎない
  • 機械の清掃やメンテナンスを怠らない

立地を見極める

何度も言及している通り、コインランドリーは立地条件がとても重要です。駐車スペースの有無や駐車のしやすさ、近隣に集客力の高い商業施設があるかといったような、利用者がアクセスしやすい場所であることがポイントとなります。土地勘がなく自分で立地を見極めるのが難しい場合には、コインランドリーの専門業者などに近隣の市場調査を依頼してみるのもよいでしょう。

コインランドリー利用者のターゲットを設定する

開業しようとしているコインランドリーにはどのような利用者を見込めるか、立地条件なども絡めてターゲット設定してみましょう。ターゲットを設定することにより、どのようなコインランドリーが好まれ、どのような集客方法がふさわしいかといったことが明確になります。

ターゲットを設定する際は、利用客になるであろう人の年齢や性別、職業、生活スタイルなどの具体的な人物像を思い浮かべてみましょう。どのようなきっかけで店舗を認知し、利用するようになるのか、ターゲットの需要にあわせた店舗経営ができるように考えることが大切です。

コインランドリーの事業計画書を作成する

事業計画書とは、資金調達で融資を受ける際などに必要となる書類で、事業内容や事業戦略、収益の見込みなどを書き込みます。

開業当初は収益が見込めずに仮に赤字だったとしても、今後返済が可能であるという前提で収支見込みを立てます。コインランドリー経営は季節や天候に収益を左右されることから、できるだけ安定した経営にするためにも事業計画書はしっかりと作成しておくことがおすすめです。

事業計画書の書き方については、下記の記事もあわせてご覧ください。

飲食店向け事業計画書の書き方|テンプレートや書くべきことを紹介

コインランドリーの設備に投資しすぎない

洗濯機や乾燥機には大きな性能差はないとしても、どの機械を導入するかは慎重に考えたいものです。とはいえ、高額で多くの性能をそなえた高級設備を取り入れる必要はなく、必要な台数を必要なバランスで配置し、初期費用をできるだけ抑えられるようなコストパフォーマンスの高い設備を選択しましょう。

どのような設備が必要かの判断は、先ほどのターゲット設定も影響します。ターゲット層の需要にあった機能は何かを考え、必要なものと不要なものを見極めましょう。

機械の清掃やメンテナンスを怠らない

店内の不潔感や設備のメンテナンスの不備がる場合や、緊急連絡先が書かれているにもかかわらず連絡がすぐに取れないなど、管理が行き届いていないことが利用客に取って明確だと顧客離れに繋がってしまいます。定期的な清掃やメンテナンスを心がけ、緊急時には素早く誠心誠意対応できるような体制を整えておきましょう。

また、洗濯が終わったものがいつまでも洗濯機のなかに放置されて占領されていたりするなど、他の利用客のマナーの悪さなどが顧客離れを招くケースもあります。店舗側に直接的な責任はないにしても、迷惑客や問題のある行動に対処しているかどうかも重要です。

コインランドリー開業までの流れ

コインランドリーの開業を決意したら、どのような順序で進めていったらよいのでしょうか。最後にコインランドリー開業までの主な流れを紹介します。

コインランドリー開業までの流れ
  1. 経営形態を決める
  2. 立地調査を行い土地を選ぶ
  3. コインランドリー経営に必要な資金調達
  4. コインランドリーの開店準備

経営形態を決める

コインランドリー経営には、冒頭で説明した通り、自身での開業、フランチャイズ加盟、土地を事業者に貸して賃貸料で収益を得る、という3つの形態があります。自身の方針にはどの形態がふさわしいのかを吟味してみましょう。

また、経営形態を決める際に店舗のコンセプトやターゲット層の設定もあわせて行うことで、方針がより具体化できます。

立地調査を行い土地を選ぶ

立地条件が重要となるコインランドリー経営では、商圏調査や立地調査は欠かせません。希望する土地が見つかったら、実際に現地を訪れてみて、周辺の住宅状況や道路状況、競合店調査などを入念に行いましょう。

機会があるのであれば、先にも述べたように雨の日にも視察してみるなど、さまざまな環境下や移動パターンなどを想定して見てみることも大切です。

コインランドリー経営に必要な資金調達

初期費用から開業後の資金など、どの程度の資金調達が必要になるのかを明確にしましょう。自己資金だけでは難しい場合は融資や補助金の利用も視野に入れ、審査に必要となる事業計画書も用意しましょう。

開業後に軌道に乗るまでに時間がかかる可能性があることや、ある程度売上が見込めるようになって以降も天候などにより安定しない要素が多いことなどから、収益計画は保守的に行いましょう。

コインランドリーの開店準備

土地や事業計画が明確になったら、いよいよコインランドリーの開店準備です。主な事柄としては、内装外装工事、設備調達、スタッフの確保、開店の宣伝、書類手続きなどがあげられます。

コインランドリーの開業に必要な資格はありませんが、管轄する保健所に「コインオペレーションクリーニング営業施設開設届」という書類を提出する必要があります。地域によって必要な提出書類や設備基準などが異なる場合があるため、事前に保健所に確認しておきましょう。

いよいよ開店となったら、機器の不具合など想定外のトラブルが発生することも考えられます。即時に丁寧に対応することで、利用客からも好印象を得られ、リピーター獲得にもつながります。早期の安定経営を目指すためにも、よりよい対応を心がけましょう。

まとめ

今回はコインランドリー経営について、主な特徴や経営の手順、経営が難しいとされる理由などについて紹介しました。

コインランドリーの経営は、季節や天候に左右されやすいことや、競合との差別化が難しいなどの課題が多くありますが、好条件の立地を見極め対応や管理などのサービスレベルを高めることで顧客の獲得が期待できます。

今回ご紹介したポイントに注意しながら、順を追ってコインランドリーの開業や経営を目指してみてください。

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