一日の営業時間内に来店客数を増やし、売上アップにつなげるには、来店客の回転率の理解も重要です。回転率という単語は知っていて、回転率を高めようとしているのに、売上アップにつながらないという場合には、もしかしたら、回転率と自店の業態の関連性についてあやまった認識があるのかもしれません。
今回は、回転率を上げる方法として、回転率と売上との関係性や注意点について詳しく解説していきます。
目次
回転率とは?
回転率とは、来店客が一日の営業時間内において何回入れ替わったかを示す指標です。ここでは回転率の計算方法や売上との関係について紹介します。
なお、今回の記事で紹介する回転率は、商品管理についての「在庫回転率」ではなく、飲食店における「客席回転率」についてを指しています。在庫回転率について知りたい方は、下記の記事をご参考ください。
回転率の計算式
回転率を求める計算式は以下の通りです。
「回転率=一日の来店客数÷店舗の客席数」
必ずしも、一日と決められているわけではありませんが、一日ごとの回転率をわかりやすく把握するために、この式が一般的となっています。たとえば、20席ある飲食店において、一日の来店客数が80名だった場合、「80名÷20席=4回転」という計算になります。
回転率と売上の関係
回転率が高いということは、客数が多いということから売上も上がります。回転率がわかれば、想定できる売上を計算することもできます。計算式は以下の通りです。
「売上=店舗の客席数×回転率×客単価」
この式から判断できることは、回転率が低ければ来店客数が少ないことになるため売上が下がり、もし客単価が高い場合には回転率が低くても売上が上がることになります。しかし、客単価の高さと回転率の高さを同時に上げることは容易ではなく、客単価が低ければ低いほど、回転率の高さが大事になってきます。そのため、よりよいサービスの提供とともに、より効率的な運営の工夫が重要となるのです。
回転率を上げる方法や工夫
飲食店での売上向上のために必要な回転率は、価格の安さだけで簡単に上がるものではありません。ここでは、回転率を上げる方法や工夫について紹介します。
- 提供までの流れを見直す
- 接客の流れを見直す
- 片付け(バッシング)のやり方を見直す
- メニューを見直す
- 椅子の高さや硬さを見直す
- 客席数やテーブルのサイズを見直す
- 照明の明るさを見直す
- 動線やレイアウトを見直す
提供までの流れを見直す
飲食店における回転率を上げるには、来店客が料理を待つ時間を削減すること、つまり、料理提供時間の短縮が重要となります。調理工程をルーティン化し、ドリンクについても作り方を見直すことで、料理の提供時間を短くすることができます。また、調理道具や材料が取りやすいように動線や配置を見直すこともスピードアップにつながります。
接客の流れを見直す
来店時や着席時など、来店客が待っている時間を利用して、接客の流れを見直すこともポイントです。入店待ちで来店客が並んでいる時間に事前にオーダーを取っておくだけで、着席してからの料理提供スピードを短縮することができます。
また、食券機や端末を使ったセルフオーダーシステムなどのツールの活用や、キャッシュレス決済を導入することも効率化につながり、回転率アップを期待できます。
片付け(バッシング)のやり方を見直す
「バッシング」とは、フロアスタッフが空いたテーブルの食器を下げてテーブルセットを整える業務のことを指します。バッシングのスピードが早いということは来店客を待たせる時間の短縮につながり、結果的に回転率が向上します。バッシングの方法を見直す際には、座席を立つのを急かされていると来店客に感じさせないように、追加の注文のタイミングなどの際に先に片付けられるものを下げておくのもよいでしょう。
メニューを見直す
メニューは来店客が見やすいものであることが重要です。メニューの数が多すぎたり、パッとみてわかりにくいものであったりすると、来店客が注文を決めるのに時間がかかり、結果的に回転数の低下につながります。メニューが少なすぎても再来店のたびに注文するものがなくなってしまい、店離れにもつながってしまいますが、たとえばランチタイムなどの混雑時に限ってはランチメニューを3種類のみの提供にしたり、作り置きが可能ですぐに提供できるメニューにしたりするなど、提供までの流れが限定的で時間短縮しやすい方法にするとよいでしょう。
また、混雑時のメニューはお釣りが出ないようなワンコインやキリのよい金額のランチなどにすると会計時の混雑を避けることができます。
椅子の高さや硬さを見直す
ラーメン店など回転率の高い店舗の場合、カウンターの椅子は立っている状態に近いような高い椅子である場合が多く見られます。それは、食べ終えた来店客がすぐに席から立ち上がりやすいような工夫をしているためであり、短時間でササっと食べ終えたい来店客にとっても素早く席を立てるため、お互いにとって理にかなった工夫になっています。
もし椅子の高さが低く、柔らかい素材のものであれば、落ち着いてくつろげてしまうため滞在時間が長くなり、回転率の低下につながります。そのため、もしも自店の提供するメニューやコンセプトがササっと早く食べ終えたい客層にあったものであれば、椅子の高さや素材の硬さにも配慮することもひとつのポイントとなります。
客席数やテーブルのサイズを見直す
メニュー単価の低い店舗の場合、売上をアップさせるには客数が必要になるため、客席の数は多くなります。反対に、メニュー単価の高い店舗では、回転数を上げることよりも来店客一人ひとりががゆっくり滞在できるように、客席数をあえて少なくしている店舗が多く見られます。ただしそれは、店舗のコンセプトやメニュー単価の高さを踏まえたことであり、厨房の対応能力を上回る客席数になってしまうと、料理提供が遅くなり、来店客を待たせてしまうこととなるため、結果的には回転率の低下にもつながってしまいます。
また、テーブルのサイズについても、飲食店には必ず4人掛けのテーブルが必要なのではなく、必要に応じて席を離したりつなげたりすることが可能な、グループの人数にあわせられるような小さなテーブルでも対応できます。自店の規模やコンセプトに応じた席数やテーブルであるか見直しをしてみるのもよいでしょう。
照明の明るさを見直す
店内の照明は、業種によって適切な色や明るさがあるとされています。たとえば客単価が低い飲食店の場合、蛍光灯の色を昼白色にして全体的に白っぽくて明るい店内にすると、回転率が高まることが期待できるといわれています。
また、店内全体の色も同様で、暖色系の色は興奮作用や食欲を増進させる効果が見込めるとされており、時間経過を早く感じさせることができることから、回転率を高めるのに有効とされています。もちろん、食事をする場であるので、来店客が食事をする際に不自由なく過ごせるような明るさや色使いであることを意識する必要があります。
動線やレイアウトを見直す
「動線」とは、来店客がスムーズに店内を移動することができるレイアウトのことを指しています。来店客の来店時や退店時、トイレなどに席を立った際に、料理を運ぶ従業員とぶつかることなく自然に移動ができるような動線やレイアウトであることが重要です。もちろん従業員の動線についても回転率には非常にかかわっており、注文から料理提供までが短時間ですむような動線の確保もポイントとなります。
回転率を上げるポイントや注意点
これまで説明してきたような回転率を上げる方法を用いる際に、注意しなければかえって逆効果になるような点がいくつかあります。最後に、飲食店での回転率を上げるポイントや注意点について紹介します。
- 業態やコンセプトによって適切な回転率は変化する
- ただ回転率だけを上げればよいと考えるのは危険
業態やコンセプトによって適切な回転率は変化する
先にも紹介しましたが、料亭や高級レストランのようにもともと客単価の高い店舗では、来店客にゆったりとした時間と空間を楽しんでもらうことが目的の場合も多く、回転率が低かったとしても問題ありません。一方で、小規模のラーメン店など、もともと客単価の低い飲食店の場合は、回転率を高くすることでできるだけ多くの食数を出さなくてはなりません。
つまり、回転率の高低というのは、飲食店それぞれの業態やコンセプトによって変化するもののため、自店の業態やコンセプト、ターゲット層が明確であれば、回転率にどこまでこだわる必要があるのかを判断することができます。
たとえば、同じラーメン店であっても、仕事の合間や仕事帰りに立ち寄る会社員をターゲットとするのであれば、ゆったりできるようなテーブル席の存在は回転率を高める妨げになるものの、休日のファミリー層などをターゲットとするのであれば、そのゆったりとしたテーブル席は必要となります。椅子の高さや材質の柔らかさを含め、どのような席がふさわしいか、自店にあわせて検討するとよいでしょう。
ただ回転率だけを上げればよいと考えるのは危険
回転率を上げることだけにとらわれ、滞在時間の短縮ばかりこだわってしまうと、かえって客単価を下げてしまう恐れがあります。自店の業態にもよりますが、ゆっくりと飲食を楽しむために訪れた客に対して、メニュー選びや食事を急かされたのでは印象が悪くなり、顧客満足度の低下につながります。
売上アップ=回転率アップとは考えずに、自店のコンセプトや業態、ターゲット層を把握したうえで、来店客の回転率と厨房の稼働率、客単価の最適なバランスは何かを見極めていきましょう。そうすることで顧客満足度が高まり、売上アップに重要な存在であるリピーター獲得にもつながります。
まとめ
今回は、飲食店における回転率の上げ方と、売上との関係性について紹介しました。回転率とは、一日の営業のなかで来店客が何回入れ替わったかをあらわすものであり、売上にもつながるものです。しかし、自店の業態やコンセプトによって、回転率にばかりこだわっては逆効果な場合もあります。自店の状況を把握し、適切な回転率を見極めて売上アップにつなげてみてはいかがでしょうか。
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