個人事業主が使用する屋号は、自身の事業の名前として使うものである以上、大切に慎重に決めたいものです。取引相手にも読みやすくて印象に残りやすく、検索エンジンでも上位に表示されやすい屋号にするには、決め方のポイントを抑えることが重要です。他にも、使ってはならない文言など注意すべき点などもあります。
今回は、屋号の決め方について、抑えておくべきポイントや注意点について解説します。
目次
屋号とは?
「屋号」とは、言葉を聞いたことはあっても実際どのようなものを指すのか、また、具体的な利用方法などがわからないこともあります。まずは、屋号とはどのようなことに使うものなのかを紹介していきます。
個人事業主やフリーランスが事業で使用する名前
「屋号」とは、個人事業主がビジネス上で使用する「個人事業の名前」のことを指し、店舗名や事務所名がそれにあたります。屋号に関しては法的義務はありません。そのため、開業時に屋号がなくても問題はなく、希望すれば途中から屋号をつけることや屋号名を変えることも可能です。
屋号は何に使うもの?
先に説明したように、屋号はなくても問題ありません。ただし、以下のような公的機関での手続きなどに使用されています。
- 税務署へ提出する開業届
- 確定申告
- 見積書、請求書、領収証などの取引
- 事業用の銀行口座の開設
- 名刺やチラシ、看板などの作成
個人事業を始める際、屋号を使って契約書や見積書を作成したり、自身のビジネスの周知を図ったりすることができます。屋号とは会社でいう会社名のようなものなので、個人の名前よりも信頼性が高まる場合があります。また、屋号で事業用の銀行口座を開設することで確定申告時などの経理業務もより効率的になります。
屋号を決めるタイミングはいつ?
個人事業を開始するにあたって、屋号を決めるタイミングは、税務署に開業届を提出するときや、確定申告を行うときが主なタイミングです。ただし前述のとおり、開業届を提出する際に屋号を決めておく必要はなく、開業届には空欄のままでも問題ありません。
抑えておきたい屋号の決め方・ポイント6選
個人事業を始めたときや、すでに開始している事業に屋号をつけたいという場合、どのようなことに注意をして屋号を決めたらよいのでしょうか。ここでは、屋号の決め方について6つのポイントを紹介します。
- 覚えやすい
- 読みやすい・言いやすい・書きやすい
- 事業内容を連想しやすい
- ネットで検索しやすい
- 独自ドメインが取得できる
- ストーリー性がある
1: 覚えやすい
例えば、似た商品やサービスが複数あったとして、自分が覚える際や誰かにそれらを教える際やには、名前が短いものやインパクトのあるものの方が覚えやすく伝えやすいでしょう。そのため、屋号はインパクトや語呂を意識しつつ、覚えやすく印象に残りやすいものにするのがおすすめです。屋号には文字の長さに制限はないものの、あまりに長いだけでは覚えてもらいにくくなります。
2:読みやすい・言いやすい・書きやすい
屋号とは、仕事の取引相手など外部とのやりとりで使用されることが多いため、相手が読みやすく、言いやすい屋号であることも大切です。屋号に難しい言葉を使用したことで、ひと目で見て読み方がわからなかったり、発音しにくかったりすると、相手に間違えて覚えられてしまう可能性もあります。
また、読むときだけではなく、相手がパソコンやスマートフォンで屋号を入力しようとする際になかなか変換されなかったり、屋号が長すぎて打ち込みにくかったりすることも避けたほうが賢明です。
3:事業内容を連想しやすい
屋号をつける際は、屋号を見ただけで相手の事業内容を想像しやすいものであることもポイントです。例えばデザイン事務所を立ち上げる場合、デザインに関連しないような単語を屋号に用いるよりも「○田○雄デザイン事務所」としたほうが、デザイン事務所であることを一目で理解できます。
屋号を見てどのような事業であるかが理解できれば、デザインを頼みたいという顧客から直接依頼がくることも考えられます。他にも下記のような名称もわかりやすいでしょう。
- カフェ○○
- ○○ベーカリー
- ○○ヘアデザイン
- フォトスタジオ○○
また、地名を屋号に用いるのも相手にとってどのような活動範囲なのか伝わりやすくなります。
4:ネットで検索しやすい
顧客がお店や業者を検索する際、GoogleやYahoo!といった検索エンジンを用いることがあります。その場合、屋号がどこにでもあるような名称や、大手企業や既存のサービスと似たようなものだと検索した際に上位に表示されにくくなってしまいます。検索エンジンで上位表示しやすくするには、オリジナリティのある名称を用いたり、地域性を表すために地名を屋号に含めたりするなどの工夫をしてみましょう。
また、ネットショップの運営をする場合には特に、インターネットで検索されることを踏まえて屋号を決めることもポイントです。
5:独自ドメインが取得できる
立ち上げようとしているビジネスでホームページを設置しようとするのであれば、自身の屋号を用いた「独自ドメイン」を取得できるかどうかを確認しておきましょう。「ドメイン」とは、インターネットにおける住所のようなもので、「https://www.○○○.ne.jp」というURLの場合であれば、「○○○.ne.jp」の部分をドメインといい、○○○の部分に自身の屋号を用いたものが独自ドメインです。
自身の屋号を用いたドメインがすでに使われている場合は、同じものを使用することができないため、ありがちな屋号にせず、さらにローマ字読みでドメインに用いることができるような屋号を考えましょう。ドメインはメールアドレスにも使用できるため、屋号とドメインを同じものにできれば取引相手にも覚えてもらいやすくなります。
6:ストーリー性がある
ありがちな屋号ではなく、オリジナリティのある印象的な屋号にすることで、取引相手から屋号の意味をたずねられる可能性もあります。自身がその屋号をつけた由来やエピソードなど、深いストーリーがあるならそれを相手に伝えてみましょう。相手の印象に残り、覚えてもらいやすくなる見込みもあります。
話のきっかけになることでコミュニケーションがとりやすくなるなどのメリットもあるでしょう。
屋号を決める際の注意点
個人事業の屋号を決める場合、使用してはいけない文言や記号など、注意しなくてはならないことがあります。最後に、屋号を決める際の注意点として3つを紹介します。
- 会社だと誤解させてはいけない
- 他の会社や商品と被らないようにする
- 法人化を意識している場合は記号の使用に注意
会社だと誤解させてはいけない
「会社」「法人」といった文言は、法律的に登記する会社や団体のみ使用できる文言であり、個人事業主が会社であると誤解をうけるような名称をつけることは法律で禁止されています。ほかにも、銀行や証券会社ではないにもかかわらず、名称に「銀行」「証券」という特定機関の名称をつけることも禁じられています。
法律違反となることですので、小規模の個人事業主だから気づかれないだろう、などと安易に屋号につけないように注意しましょう。
他の会社や商品と被らないようにする
自身の屋号と他の個人事業主の屋号が被ること自体は、先に説明したような「検索されにくい」「同じドメインをつけられない」といった部分をのぞき問題はありません。ただし、「ホンダ」「NTT」などのすでに商標登録がなされている名称は、自身の苗字やイニシャルを用いたいとしても屋号に使用することはできません。商標登録されている名称を無断で使用すると、商標権侵害にあたる可能性があるため注意が必要です。
商標登録されている名称かどうかを調べるには、独立行政法人INPITが運営する「特許情報プラットフォーム」で検索してみましょう。また、商標登録されていない名称であっても、他の企業のサービスや法人名と誤解されやすいような、混同されやすい屋号をつけることはトラブルの原因にもつながるため避けるようにしましょう。
参考:特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP]
法人化を意識している場合は記号の使用に注意
屋号には、漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット(ローマ字)、アラビヤ数字、記号を使用することが可能です。一方、会社設立時などに法人として識別するために使用する「商号」には記号を用いることはできません。
そのため、屋号をつける際は比較的自由度が高いと考えられるものの、今後法人化を目指すことを考えている個人事業主の場合には、屋号にも記号を使用することは避けたほうがよいでしょう。ただし、字句を区切るための符号として使用するのであれば、下記の符号は使用することができます。
- 「&(アンパサンド)」
- 「’ (アポストロフィー)」
- 「,(コンマ)」
- 「‐(ハイフン)」
- 「.(ピリオド)」
- 「・(中点)」
まとめ
今回は、個人事業主がビジネス上で使用する屋号について、決め方やつける際の注意点について解説しました。
屋号は持たなくても問題ありませんが、取引相手への書類の提出時や確定申告、銀行口座の開設などさまざまな使い道があります。屋号は読みやすく、検索されやすい名称であることがポイントではありますが、商標登録されている企業名と被ってはならないなどの注意点もあります。
個人事業の名前である大切な屋号ですから、さまざまな点に留意しながらオリジナリティのある屋号を考えてみてはいかがでしょうか。
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