企業や店舗の運営を続けていくためには、売上を伸ばすことが大切です。
しかし、「さまざまな手法を試したけれど、思い通りに売上が上がらない」と悩む企業は多いでしょう。売上を上げるためには、売上がどのような要素から成り立っているのかを理解し、どの指標の改善が必要なのかを考える必要があります。
そこで今回は、売上を構成する3つの要素を説明するとともに、売上を上げる具体的な方法を紹介します。また、実際に売上アップに成功した企業の事例も紹介します。
売上を構成する3つの要素を知っておこう
「売上を上げる」ということは、何かしらの施策や要因によって文字通り得られる売上が上がることを意味します。つまり、今よりさらに良い経営状態を作りだすことを目的として、商品やサービスを顧客により多く提供することになります。
企業が売上を上げるためには、まず売上がどのような要素で成り立っているのか知っておく必要があります。売上の構成要素は以下の計算式の通りです。
- 売上=集客数×成約率×客単価
このように、「集客数」「成約率」「客単価」という3つの要素が掛け合わせになって売上になるため、どれか1つ以上が増加すれば売上も上がるということになります。よって、集客でより多くの顧客を集めることだけでなく、商品の購入や契約をする確率(成約率)を高めることや、顧客1人あたりの売上である客単価を上げることも、売上を左右する重要な要素となるのです。
売上を上げるための5原則
売上を上げるためには、まず以下の5原則を把握しておきましょう。
- 新規顧客の獲得
- 既存顧客の囲い込み
- リピート率の向上
- 売上単価を高める
- 商品単価を上げる
それぞれどのような観点で売上に影響するのかを解説していきます。
1.新規顧客の獲得
まず重要なのが新規顧客の獲得です。先に説明した売上の式を見ても分かる通り、「集客」は売上に影響を与える要素です。新しい顧客を獲得できれば、集客数が上がることになるので、同じ客単価や同じ成約率であれば掛け合わせで売上も上がることになります。
2.既存顧客の囲い込み
続いて重要なのが既存顧客(リピーター)の囲い込みです。リピーターを獲得する仕組みができていなければ、新規顧客を集めても一過性のものになってしまいます。そうなれば常に新規顧客を獲得し続ける必要があり、それだけ認知や興味関心を得るためのコストや労力がかかります。新規顧客がリピーターやファンになる仕組みが構築できれば、新規顧客をたくさん集客するような施策も打ちやすくなります。
3.リピート率の向上
既存顧客がどれだけリピート利用や購入をしてくれるかも、売上に大きくかかわります。たとえば、一人当たりの月の利用頻度が2回から4回になるだけでも、その顧客からの売上は倍になります。さらに、何度も継続利用してくれている顧客であれば、何かしらの魅力を感じてくれている可能性があるため、友人や知人への紹介や、SNSなどの投稿によって、新たな顧客を呼び込んでくれることも期待できます。
4.売上単価を高める
売上単価とは、先の式における「客単価」であり、顧客1人当たりの売上のことを指します。この客単価が増加するだけでも、式の掛け合わせで売上は上がります。顧客が選んでいる商品やサービスに対して、追加で別のメニューや一緒に使える商品を提案したり、より上位のサービスを紹介したりするなどの工夫をして、客単価の増加を狙いましょう。
5.商品単価を上げる
客単価を上げる方法の1つとして、商品やサービス自体の単価を見直し、値上げすることも1つの手段です。価格は一度設定したら常に同じでよいものではなく、定期的に適切な価格であるかどうかを見直しましょう。商品の販売状況はもちろん、流通や競合の状況、世間の流行、時期など、価格はあらゆる要素に影響を受けます。その時々で適切な価格設定ができていなければ、どれだけ集客をして売上を作っても、思ったように売上が伸びない可能性もあります。ただし、値上げは顧客にとってマイナスなイメージを与える可能性があるため、理由を明確にしたり時期を見極めたりする必要はあります。
売上を上げるには?具体的な8つのアイデアを紹介
売上の構成要素や5原則が理解できたら、具体的に売上を上げる施策を考えていきましょう。ここでは、売上を上げるアイデアとして8つを紹介します。
- 新規顧客を効率的に開拓する
- 消費者の行動にあわせたマーケティング戦略を実施
- 顧客のリピート率を高める
- 紹介による来店を促す
- 客単価を上げる
- 商品単価を見直す
- 独自の長所をアピールする
- 顧客の意見を積極的に取り入れる
新規顧客を効率的に開拓する
開業してからの期間が短い企業・店舗であるほど、新規顧客を開拓する重要性は高いといえます。利用したことがない消費者を集めるのは簡単ではありませんが、近年は新規顧客を効率的に集められるツールが手軽に利用できるようになっています。
具体的には、WEB広告やブログ、SNSや予約サイトといったツールが挙げられます。SNSのように無料で情報拡散できるツールを利用すれば、広告宣伝費が限られている店舗でもうまく新規顧客を集めるきっかけになります。
また、飲食店や美容院のような店舗ビジネスの場合、一定の費用はかかりますが、多くの人々が利用する予約サイトに店舗の情報を掲載すれば、来店や購入の意向を持った顧客をうまく集められるでしょう。
消費者の行動にあわせたマーケティング戦略を実施
近年は、モノや情報があふれかえっているため、多様化する消費者ニーズにうまく応えられなければ簡単に商品やサービスを売れなくなってきています。既存のマーケティング手法では十分な効果を得られないケースも考えられることから、新たなマーケティング戦略を考える必要性が高まっています。
購買行動の変化として、検索エンジンやSNSで情報を集めたり、他者の口コミを調査したりすることで購入を判断する人が出てきているのが特徴的です。そのような消費者の動向にうまく対応して売上を上げるためには、店舗の情報を検索エンジンに最適化させたり、SNSをうまく活用して口コミマーケティングをおこなったりするといった対策が重要になります。
顧客のリピート率を高める
どれだけ新規顧客を集めたとしても、継続的に自社商品やサービスを利用してもらえなければ売上を安定させることはできません。利用が一度きりにならないようにしたり、他社に顧客が移らないようにしたりするためにも、いかに顧客のリピート率を高めるかは重要です。
具体的な方法として、次回利用時に使えるクーポンの配布や、セールの案内をメールマガジンで送ることなどが挙げられます。
店舗ビジネスの場合は、利用時に次回の予約をしてもらうように勧めたり、ポイントカードを発行したりするのも定番の手法です。
手法によって得られる効果が変わるため、複数の施策を試して最も効果を感じられるものに力を入れるとよいでしょう。
紹介による来店を促す
店舗ビジネスの場合、既存顧客からの紹介による集客も重要です。
友人の紹介で来店する人は、紹介者から情報をある程度入手しているため、購入や申し込みにつなげやすいのが特徴です。
しかし、紹介してもらえる人数を増やしたり、紹介によって足を運んでもらったりするのは簡単ではありません。知人に紹介したくなるような商品やサービスの開発、提供を心がけるのはもちろんですが、紹介者や紹介によって来店した顧客に特典を付与するといったキャンペーンも実施すると、紹介客を集めて売上アップにつなげやすくなるでしょう。
客単価を上げる
売上を上げるためには、集客数や成約率の向上を意識してしまいがちです。
しかし、顧客1人あたりの購入金額である「客単価」を上げることで、集客数や成約率が下がったとしても売上を維持しやすくなります。
客単価を上げる具体的な方法として、顧客が購入する商品と関連する商品を提案する「クロスセル」という手法や、顧客のニーズを満たすグレードの高い商品・サービスを提案する「アップセル」といった手法が挙げられます。
クロスセルの代表例としては、通販サイトなどでよく見る「このような商品もおすすめです」というレコメンド機能があります。
また、アップセルの例としては、美容室で通常のカットコースを注文しようとした顧客に対して、トリートメント付きのハイグレードなコースをおすすめするなどの施策が挙げられます。
これらをうまく活用することで客単価を上げられれば、店舗全体の売上アップにつなげやすくなるでしょう。
商品単価を見直す
商品やサービスが手に入れやすい価格になっているかは、消費者にとって購入を判断する重要な要素です。そのため、他社との兼ね合いも考えながら顧客にお得感を与えられる価格設定になっているか、こまめに見直すことが大切です。
ただし、価格を安くすれば売上が上がるとは限らないので注意が必要です。もちろん、価格を安く設定すれば商品やサービスが多く売れるでしょう。しかし、たくさん売れても結果的に店舗全体の売上が下がってしまっては意味がありません。将来的に価格を上げたときに顧客が離れてしまう可能性もあるので、中長期的な視野で価格設定をすることが大切です。
独自の長所をアピールする
たとえば、仕事帰りに立ち寄るのに便利な立地や、質の高い素材にこだわって製造しているなど、他社にはない独自性をうまくアピールできれば、より多くの顧客を呼び込んで売上につなげられるでしょう。
ただし、アピールする長所が顧客にとってメリットを感じられるものでなければ意味がありません。自社の持つ長所をどのような形でアピールするかという点も、よく考えておきましょう。
顧客の意見を積極的に取り入れる
先ほども述べたように、近年は顧客の口コミを参考にして商品・サービスの利用を考える人が増えています。そのため、経営に顧客の意見を反映させるのがとても大切です。
顧客の意見を取り入れるためには、アンケートやヒアリング、口コミなどを参考にするのがおすすめです。顧客満足度の高い商品やサービスを提供できれば、売上が増えるだけでなく、よい口コミがさらに拡散していくことも期待できます。
また、「アンケートに答えると〇〇プレゼント」などのキャンペーンをおこなうのもよいでしょう。特典を設けることで顧客からの意見を集めやすくなるので、幅広いデータをもとに適切な改善策を考えることができます。
売上を上げることに成功した企業の事例を紹介
ここまでは、売上を上げるための具体的なアイデアを紹介しました。売上を上げるための手法はたくさんありますが、実際に売上アップに成功した店舗はどのような施策を実施しているのでしょうか。
以下では、売上を上げることに成功した店舗の事例を紹介します。
買い忘れ防止メールの送付による売上アップ事例
最初は、食材・日用品の宅配サービスを提供している企業の事例を紹介します。こちらの企業は、顧客の買い忘れを防止するための自動メール配信システムを導入することで売上を上げています。
以前は、「来週必要になる商品を注文し忘れてしまった」といった問い合わせが多く、本来出せていたはずの売上が出せないという課題を抱えていました。しかし、顧客データベースの中から来週分の注文ができていない人に対して、自動的に注文忘れがないか確認メールを配信することで、買い忘れによる機会損失を防止できるようになったのです。
また、買い忘れの確認だけでなく、顧客満足度の調査など目的ごとに自動メール配信する仕組みを設けているのも特徴です。システムの導入によって、売上アップだけでなくさまざまな業務を効率化させることにも成功したよい事例だといえます。
ホームページの改修による売上アップ事例
次に、ワイナリーや牧場の運営など、幅広い事業を手がける企業の事例を紹介します。この企業は、ホームページをつくり変えたことで売上を月平均で3割上げることに成功しています。
以前は、ホームページ経由でのワイン販売数が伸びないことを課題としていました。しかし、TOPページを動きのあるものにしたり、季節ごとにインパクトのあるバナーを設置したりするなど、来訪者を飽きさせない工夫をすることで、売上アップに成功しています。また、ワイナリー内の施設紹介の動画を入れ、独自の魅力をアピールしたことで、集客力を高めることにも成功しています。
少人数利用がしやすい店舗運営に切り替え売上アップした事例
最後に、最近築地で評判を集めている居酒屋の事例を紹介します。この居酒屋は、2020年の新型コロナウイルスの流行にともなうニーズの変化に合わせて店舗運営方法を切り替え、売上をアップさせました。
もともと、外国人観光客や近隣企業の大口宴会、接待が売上の多くを占めていましたが、外国人旅行者の減少や大人数での宴会の自粛によって運営方法の切り替えを余儀なくされました。
しかし、今後増えるであろう少人数の顧客に対応できるよう、フロアに仕切りカーテンを設けたり、「ソーシャルディスタンスコース」のように分かりやすい商品名でコース料理を個別盛りで提供したりすることで、顧客のニーズに応えるとともに売上アップに成功しています。
まとめ
ここでは、売上の構成要素や売上を上げるための具体的なアイデア、売上アップに成功した店舗の事例について説明しました。
どの手法を採用するかは、店舗の業種や抱えている課題によって異なります。ここで説明した内容を参考にして、うまく売上を上げられる施策を実践しましょう。
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