衣料品店やファストフード、ファミリーレストランなどで見受けられる、商品をセットにして販売する方法を「バンドル販売」と呼びます。バンドル販売は、まとめ買いやセット買いといった見た目の利点だけでなく、消費者側にも店舗側にもそれぞれメリットが得られる効率的な販売方法です。今回は、バンドル販売についてのメリット・デメリットや効果的な戦略について解説します。
目次
バンドル販売とは?
「バンドル(bundle)」が束、包み、一括販売するという意味があることから、「バンドル販売」とは何点かの関連商品をセットで販売することを指します。同じ商品を束ねることでいえば、「ハンドタオル5枚セット」や「靴下3足セット」などがあげられ、異なる商品の組み合わせではファストフード店でのハンバーガーにポテトとドリンクがセットになった「バーガーセット」などがあげられます。
バンドル販売は単品購入時の合計金額よりも安く提供されることや、個々の商品を顧客自らの手で選択する手間を減らせるため、消費者に対してお得で便利という印象を与えることが期待できます。この消費者心理をうまく利用して売上につなげることを「バンドル効果」と呼ばれています。
バンドル販売のメリット
複数の商品を組み合わせて販売するバンドル販売には、店舗にとってもメリットがあります。ここではバンドル販売におけるメリットを3点紹介します。
- 顧客の単価アップを期待できる
- 在庫を効率的に減らせる
- 売り場の活性化をはかれる
顧客の単価アップを期待できる
ファミリーレストランなどでのバンドル販売の一例として、メイン料理とセットでライスかパン、ドリンクバー、サラダバーなどを組み合わせられるメニューがあります。この場合、単価が高いものの利益率の低いメイン料理と、単価が低いものの利益率の高いドリンクバーやライス・パンなどを組み合わせることで、単品販売よりも客単価アップや利益向上を期待することができます。
在庫を効率的に減らせる
バンドル販売では販売個数の増加を期待できるため、利益率の高いものと低いものの組み合わせだけではなく、「売れ筋商品+売れ行きがよくない在庫商品」という組み合わせでも効果を見込めます。売れ行きが悪く在庫となっている商品を人気商品と組み合わせて販売することで、在庫数の軽減と在庫管理の業務負担の軽減にもつながります。
売り場の活性化をはかれる
バンドル販売を企画する際に、組み合わせ方にテーマを与えたり、消費者に対して提案を行ったりすることで、商品そのものだけでなく売り場全体の活性化にもつながります。例えば寝具・家具の量販店では、「新生活応援セット」「冬のあったかリビング」などのテーマに沿ったバンドル販売を行うのであれば、目に留まりやすいスペースにテーブルやラグ、じゅうたんやこたつなどを配置してみます。
消費者が実生活をイメージしやすいようなレイアウトにすることで、消費者も購買意欲が高まり、売り場自体も活性化につながるでしょう。その際は、ディスプレイが一辺倒にならないように従業員からアイデアを募ることで、売り場の単調化も防げます。
バンドル販売のデメリット
利益向上や在庫減少のメリットがあるバンドル販売ですが、一方でデメリットも存在します。どのようなデメリットがあるのか、大きく3つを紹介します。
- 人材・プロモーションなどの手間暇がかかる
- 作業スペースやシステム導入が必要な場合がある
- 売上に伸び悩む可能性もある
人材・プロモーションなどの手間暇がかかる
バンドル販売では、どのような商品を組み合わせてどのようなテーマ性を持って実施するかを企画していくため、人材やプロモーションなど手間がかかります。セット販売をする際の組み合わせ作業はもちろん、それに合わせたパッケージ箱を用意したり、顧客に効果的にアピールできるような適切なプロモーション方法を考えたりと、通常業務以外に発生する作業があるため、より人材も必要になります。
もし、それらの労力のための人材を確保できない場合には、可能な範囲でできる作業やプロモーションを行うようにしましょう。消費者にお得感が伝わるように、バンドル販売と単品販売での価格差を提示するだけでも、商材やターゲット次第では顧客の購買促進につながることが期待できます。
作業スペースやシステム導入が必要な場合がある
バンドル販売のために組み合わせ作業やパッケージ作業を行う際には、販売数が多いほど作業スペースが必要になります。また、セット販売することによるPOSレジでの同時会計や割引といった会計処理の設定も必要です。
POSレジの設定の際は、バンドル割引対応のPOSレジやシステムの導入を行うことで会計の効率化が見込めますが、バンドル販売のために新たなシステムを導入するにはさらにコストがかかることも考慮する必要があるでしょう。
売上に伸び悩む可能性もある
バンドル販売を行う際には、在庫商品の解消や客単価の向上などといった「店舗側の視点」があまりに露呈してしまうと、消費者側にそれを察知されてしまい、思ったような売上にはつながらない可能性があります。「この商品がセットであったらより家事が楽になる」「この組み合わせリビングで過ごしたくなる」などのような消費者のニーズに合致していることを前提に、さらに付加価値が感じられるような組み合わせにすることで、消費者の購買意欲につながることが見込めます。
販売を行ううえで大切なポイント
バンドル販売を成功させるためには、いくつかの注意点があります。ここではバンドル販売を行ううえでの大切なポイントについて3つ解説します。
セットにする商品の付加価値を考える
バンドル販売をする商品は、付加価値を考えて選ぶようにしましょう。商材やターゲットにもよりますが、いくつかの商品をなんとなく組み合わせてただ値段を下げるだけでは、消費者に価値を感じてもらえずに購買意欲を高められない可能性もあります。場合によっては「過剰在庫の商品を売り捌こうとしているのでは?」と勘ぐってしまう人もいるかもしれません。
単品ではなくあえてセットで販売していることに対して、顧客が価値を感じられるかどうか考え、バンドル販売だからこそ生まれる価値があるかを吟味してみましょう。
消費者のニーズや来店目的などを想像しながら、お得感や満足度を高めることを意識することが大切です。
ユーザー目線の組み合わせにする
「ターゲットに対してどのような付加価値が適しているのか」が浮かばない場合には、ユーザー目線で組み合わせを考えてみることが大切です。
一例として思い浮かびやすいのは、これから就職活動を行う学生向けに就活スーツを一式販売するというものです。就職活動に専念したい学生にとっては、限られた時間でどれだけ効率よく準備ができるかなど、タイムパフォーマンスも重要になります。就活スーツ一式を一度にまとめて購入できるバンドル販売は、このような学生のニーズに合致しています。時間をかけて選ぶ手間を減らし、必要なアイテムをお店側が予め揃えて提供することで、セットになっていることへの価値が高まっているのです。
また、ワイシャツやネクタイ、革靴、バッグ、ベルトなど、ユーザーがスーツと一緒に購入する必要がありそうな商品も予め組み合わせて特別価格で販売すれば、ニーズにあった学生には寄り価値を感じてもらえる可能性があります。
店舗側は、それらの組み合わせの中に在庫の多いアイテムを取り入れるなどして、しっかりと顧客のニーズに寄り添って満足度をあげつつも、在庫解消に繋げていくことができるのです。
利益率にも焦点を当てる
バンドル販売では、利益率の高いものと低いものを組み合わせて販売することで、利益率向上にもつながります。例えば、ファミリーレストランの場合には、利益率の低い肉料理などのメイン料理に、利益率の高いライス・パンやドリンクバーなどを組み合わせることで、顧客1人当たりが注文する料理全体における利益率アップを狙います。バンドル販売は在庫削減も目的ではありますが、利益率にも焦点をあてて考えていくことも重要なポイントです。
飲食店の利益率について詳しくは、以下の記事もあわせてお読みください。
バンドル販売の戦略
バンドル販売を成功させるには、商品をただ組み合わせるだけでなく、より効果をあげるための戦略をとることが重要です。最後にバンドル販売の戦略について3つのポイントを紹介します。
- ニッチな市場を利用する戦略
- 真ん中を選ばせるサンドイッチ戦略
- その他の戦略を組み合わせる
ニッチな市場を利用する戦略
マーケティング用語でいう「ニッチ」とは、「隙間」を意味しており、競合他社が見逃すような特定の市場や事業領域を狙うことを指します。大手企業や特定の分野の圧倒的シェアを持つ企業との差別化を図るのではなく、そもそも同じ市場や領域で競争をしないという戦略になります。
競合他社のいない、もしくは少ないニッチ市場ではより独占的に事業を進められるため、競合の多い市場に比べて、資金が少なくても利益率向上や認知度アップ、新規獲得を目指せます。ただし、ニッチ市場はその特性から規模自体が小さいことも多いため、市場そのものが成長せずに利益回収できる範囲にも限界があったり、逆に市場が成長してしまうと競合他社は次々に参入したりしてくることも考えられます。
現在の市場の状況だけでなく、成長の見込みや将来的な市場を予測しながら、自社にとって適切なニッチ市場を見つけることが大切です。
真ん中を選ばせるサンドイッチ戦略
「極端の回避性」という心理を利用した戦略が「サンドイッチ戦略」です。「極端の回避性」とは、価格が異なる複数の商品が並んでいる場合に、平均的と思われる真ん中の商品を選びやすいという心理です。選んでもらいたい商品を真ん中に置くという戦略から「サンドイッチ」と呼ばれています。
例えば寿司店で「松1万円、竹6,000円、梅3,000円」という寿司膳があった場合、極端の回避性が働くと「松は高くて手が出せないが、一番安いものは選びたくない」という心理になり、間を取った「竹」が選ばれやすくなるという仕組みです。顧客の購買行動には、人間の心理や感情の動きが大きく影響しているので、それらをうまく利用することで、利益率の高い商品を狙って選ばせるなどの手法が取れるようになります。
その他の戦略を組み合わせる
その他の戦略としてあげられるのが「コスト・リーダーシップ戦略」です。この戦略では、競合他社よりも商品・サービスを安く提供したり、安売りするのではなく原価を下げて商品価格を安くしたりすることで、競合他社より優位性を保持します。
原価を下げるというのは、商品や素材自体の原価を下げること以外にも、大量生産や生産工程の効率化、直接仕入れによる費用の削減や、人件費や固定費など生産に関わるその他の費用を削減することも考えられます。ただしこの方法は、競合他社が値下げにあわせてきた場合、価格競争になってしまうため、市場全体が苦しむ結果になってしまう恐れもあり、慎重に進める必要があります。
また、バンドル販売の組み合わせとして、「フロントエンド商品」「バックエンド商品」の組み合わせがあります。フロントエンド商品とは、お試し価格や体験版などの集客のための商品であり、バックエンド商品とは、フロントエンド商品で関心を持った消費者に本当に購入してもらいたい「本命」商品を指します。
パソコン関連でいえば、一部の機能だけを低価格でお試しできるウイルス対策ソフトがフロントエンド商品で、すべての機能を備えた完全版の商品がバックエンド商品です。フロントエンド商品だけが売れてしまい、バックエンド商品だけが在庫になってしまう場合には、内容などを考慮して両方をセットでバンドル販売することで、在庫解消につながることが見込めます。
コストリーダーシップ戦略について詳しくは、以下の記事もあわせてお読みください。
まとめ
今回は、複数の商品を組み合わせて販売するバンドル販売について解説しました。バンドル販売は単品購入時の合計金額よりも安く提供されるため、消費者にお得感や便利さなどの付加価値を与えることが期待できます。それにより購買意欲を高めることができれば、店舗側にとっても客単価アップや在庫解消を狙えます。自社の商材やサービスの付加価値が何であるかをユーザー目線で考えながら、効率的なバンドル販売を進めてみてはいかがでしょうか。
記事のURLとタイトルをコピーする