企業の現状分析やマーケティングへの活用、事業の拡大など、さまざまな目的で活用される「顧客分析」。正しく分析すれば成果の出やすい事業運営につなげられるため、顧客分析をおこなう企業は多いでしょう。
しかし、顧客分析をした経験が少ない企業の担当者の場合、「どのように分析を進めればよいか分からない」と悩んでしまうかもしれません。そこで今回は、顧客分析の概要を説明したうえで、顧客分析の基本的な方法や分析に役立つフレームワークをご紹介します。
目次
そもそも顧客分析とは?
そもそも顧客分析とは、企業が提供する商品やサービスを利用した顧客がどのような経路で購入に結びついたのか、その顧客が継続的に購入しているのかといった動向を分析することをいいます。
たとえ商品やサービスが売れたとしても、「なぜ売れたのか」「なぜ売上が伸び悩んでいるのか」という理由が把握できなければ、戦略的に事業を展開することができません。
顧客分析によって、どのようにすれば効率的に売上を伸ばせるか理解していれば、計画的に成果を出せるようになるでしょう。
顧客分析をおこなう目的を知っておこう
顧客分析は、次の3つの目的を持っておこなわれるのが一般的です。
現状を把握するため
商品やサービスの種類によって、売れる商品と売れにくい商品があります。その要因を把握することで、企業の強みを活かして効率的に売上を伸ばせると期待できます。
また、現状を的確に把握できれば、余計な手間や費用といったコストを抑えることにもつながります。売上を伸ばしてコストを抑えられれば、結果的に企業に残る利益を増やせるので、企業の成長につなげられるでしょう。
マーケティング施策を評価するため
顧客分析は、マーケティング施策を考えるためだけに実施するのではありません。
たとえば、「DMを送付したターゲットの反応率が適切であったか」「メルマガ登録者に特典を設けたことで登録者数が増えたか」「紹介者割引キャンペーンの実施で新規顧客が増えたか」といった、施策の評価をするためにも顧客分析がおこなわれます。
分析の結果、ターゲットの再設定が必要かどうか、また、実施したキャンペーンを定期的に開催すべきかどうかを検証すれば、より精度の高いマーケティングができるようになるでしょう。
事業成果をさらに拡大するため
これまで紹介した、「現状把握」や「マーケティング施策の評価」は、一度だけ行えばよいわけではありません。PDCAサイクルを回しながら、こまめに事業の運営方針を改善させることが大切です。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を繰り返すことをいいます。
この流れに基づいて「現状把握」や「マーケティング施策の評価」を繰り返せば、より効率的に人や予算といったリソースを活用できます。
顧客分析の基本的な方法とは?
顧客分析の目的を理解したら、次に顧客分析の基本的な方法を身につけましょう。顧客分析の流れは、次の4つに分けられます。
注力すべき顧客を明確にする
顧客分析では、まず注力すべき顧客を明確にするのが基本となっています。企業によっては顧客を多く抱えていることから、経営リソースをすべての顧客に割くことは難しいでしょう。販売実績のデータから、最も注力すべき優良顧客(企業の利益に大きな影響力を持つ顧客)がどのような特徴を持っているのかを特定することで、的確にターゲットを設定できるようになります。
また、ターゲットをより具体的にイメージできるよう、「ペルソナ」を意識することも大切です。ペルソナとは、ターゲットとする顧客を、1人の人物像のレベルまで落とし込んだものを指します。ペルソナを設定することで、販売に注力する顧客をさらに明確に絞り込めるため、マーケティング施策を具体的に考えやすくなるでしょう。
市場規模や将来性を分析する
注力すべき顧客を設定したら、次は市場規模や将来性の分析に移ります。事業を展開する市場や社会情勢によっては分析が難しくなるかもしれませんが、なるべく正確なデータに基づいて網羅的に分析をおこなうことで、具体的にどれくらいの売上が見込めるのか、将来的に事業を継続させられるのかを予測しやすくなります。
ただし、市場や時代の変化によっては、現在設定しているターゲットやペルソナの将来性が低いと判断される場合もあります。その場合は、ターゲットを再設定して分析を進めなければなりません。変化の激しい時代に対応するためにも、年に1回など、定期的に市場や将来性を分析する機会を設けましょう。
顧客のニーズを把握する
市場規模・将来性の予測ができたら、それを参考にしながらターゲットが持つニーズを明らかにしていきます。
顧客のニーズを把握する方法として、アンケート調査やヒアリングなどが挙げられます。また、顧客と密接に関わっている営業担当者と情報共有したり、カスタマーセンターに入った問い合わせ履歴を分析したりするのもよいでしょう。
顧客が抱えている悩みや課題を明確にできれば、多様化する顧客ニーズに対応しやすくなります。顧客満足度向上につながるサービスを提供するためにも、幅広いデータを集めて分析できるようにしておきましょう。
購入に至るまでのプロセスを明確にする
顧客のニーズを把握する以外に、顧客がどのようなプロセスで購入に至ったのか明確にすることも大切です。購入に至るプロセスには、企業が提供する商品やサービスを知ったきっかけや、オンラインと実店舗どちらを利用して購入したのか、比較した商品の種類や決済方法など、さまざまな情報が含まれています。
また、顧客の行動だけでなく、認知や来店・アクセス、購入の流れにおける心情の変化や、購入すると判断した理由など、ターゲットの内面的な部分に焦点を当てることも重要です。どのポイントで顧客の心がどう動くかを知ることで、より売上につながる施策を考えやすくなるでしょう。
顧客分析に役立つフレームワークを紹介
ここまでは、顧客分析の基本的な方法について説明しました。基本的な流れに沿って分析を進めれば、ある程度精度の高い結果を得ることは可能です。
しかし、顧客分析の経験が浅い人の場合、思ったように分析が進まなくなるかもしれません。限られた時間や予算の中で的確な分析をおこなうためには、フレームワークを活用するのがおすすめです。顧客分析に役立つフレームワークとして、次の3つが挙げられます。
RFM分析
RFM分析は、企業が優先的にアプローチすべき顧客を明確にするために効果的なフレームワークです。このフレームワークには、次の3つの項目が含まれています。
- Recency:最新の購買日
- Frequency:購買する頻度
- Monetary:購買金額の累計
RFM分析では、この3つの軸で顧客を分類し、企業への貢献度が高い優良顧客に対して優先的にアプローチします。RFM分析は3次元のフレームワークになるのでイメージがしにくいかもしれません。以下の図を参考にしてください。
優良顧客以外にも、企業の売上に与えるインパクトが大きいと考えられるグループを視覚化できるので、重点的にアプローチしたい対象を明確にしたいときに用いると良いでしょう。これによって、チラシ配布やDMの送付先を限定すれば、費用対効果の高いマーケティングができるようになるでしょう。
デシル分析
デシル分析は、すべての顧客を10等分することで企業によって有益な情報を抽出するフレームワークです。エクセルの操作ができれば簡単に分析を進められるのが特徴で、複雑なツールの使用方法を覚える必要がないのがメリットです。
デシル分析は、すべての顧客を購入金額の多い順番に並べるところから始めます。それを10等分して、各グループの購入金額の合計額を算出します。そして、すべての顧客の購入金額のうち、各グループの購入金額の合計額がどれくらいの割合になるかを計算し、最後に、上位グループから順に累積で購入比率を算出します(累積購入金額比率)。
累積購入金額比率が分かると、上位何%の顧客が売上の何割を占めているか把握することが可能です。それによって、アプローチする対象を絞ったり価格設定を変更したりするといった対策を考えられるようになります。
ただし、デシル分析はすべての顧客がデータに含まれるため、何年も前に高額商品を購入した顧客がデータに入ってくる可能性があり、注意が必要です。分析対象とする顧客をどのように設定するかによって、得られる結果が変わってくることも知っておきましょう。
CTB分析
CTB分析は、顧客の購買予測を高い精度で分析できるといわれているフレームワークです。このフレームワークには、次の3つの指標が含まれています。
- Category:カテゴリ
- Taste:テイスト
- Brand:ブランド
カテゴリでは、食品や生活雑貨、メンズやレディースといった大分類や、キッチン用品やアウター、インテリアや文房具といった中分類、フライパンやダウンジャケット、ボールペンのようにさらに詳しく分けた小分類を用いて顧客を分類します。
テイストでは、カラーや素材、模様やサイズなどで分類します。そしてブランドでは、ファッションブランドのほかに、キャラクターやキッチンメーカーなどで顧客をグループ分けします。
これらのグループごとに、よく購入されている商品やまとめ買いの傾向などを把握できれば、売り場の陳列方法を変えるなどの対策を講じて売上を伸ばしやすくなります。顧客の動向から売れ筋を予測できれば、戦略的に売上を出せるようになるでしょう。
まとめ
ここでは、顧客分析の概要を説明するとともに、顧客分析の基本的な手法や役立つフレームワークを紹介しました。
顧客分析を活かして企業を成長させるためには、フレームワークの分析だけで満足しないことです。分析結果をどのように活かせば企業の成長につながるかを考えながら、顧客分析に取り組めるようにしておきましょう。
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