企業の現状分析やマーケティングへの活用、事業の拡大など、さまざまな目的で活用される「顧客分析」。正しく分析すれば成果の出やすい事業運営につなげられるため、顧客分析をおこなう企業は多いでしょう。
しかし、顧客分析をした経験が少ない企業の担当者の場合、「どのように分析を進めればよいか分からない」と悩んでしまうかもしれません。そこで今回は、顧客分析の概要を説明したうえで、顧客分析の基本的な方法や分析に役立つフレームワークをご紹介します。
顧客分析とは
顧客分析とは、企業が提供する商品やサービスを利用した顧客がどのような経路で購入に結びついたのか、その顧客が継続的に購入しているのかといった動向を分析することをいいます。
たとえ商品やサービスが売れたとしても、「なぜ売れたのか」「なぜ売上が伸び悩んでいるのか」という理由が把握できなければ、戦略的に事業を展開することができません。
顧客分析によって、顧客のニーズや効率的に売上を伸ばせる方法を理解していれば、計画的に成果を出せるようになるでしょう。
顧客分析に必要な項目
まずは顧客分析をする際に必要な項目について紹介します。
- 顧客の属性(年齢、性別、居住地、年収など)
- 顧客の趣味や嗜好(属性に含まれない、余暇に楽しみにしていることや価値観の傾向)
- 顧客の課題やニーズ(顧客が解決したい課題と顧客が求めている商品やサービス)
- 顧客の購買履歴、取引履歴(いつどのくらいの売上があったのか、どんな商品を購入したかなど)
- 顧客満足度データ(顧客が自社の商品やサービスにどのくらい満足しているかを集計したデータ)
- 過去のマーケティング施策(いつ、だれに向けた施策だったのかなど)
- 購買や意思決定のプロセス(どのタイミングで商品やサービスの購入・利用をしたいと思うようになるか)
上記の項目は、顧客が持っている課題やニーズを解決するために自社でどんな商品やサービスを提供するのが適切か判断する、顧客分析に役立てられます。
顧客分析をおこなう目的について
顧客分析は、次の3つの目的を持っておこなわれるのが一般的です。
- 現状を把握するため
- マーケティング施策を評価するため
- 事業成果をさらに拡大するため
顧客分析の目的1:現状を把握するため
商品やサービスの種類によって、売れる商品と売れにくい商品があります。その要因を把握することで、企業の強みを活かして効率的に売上を伸ばせると期待できます。
また、現状を的確に把握できれば、余計な手間や費用といったコストを抑えることにもつながります。売上を伸ばしてコストを抑えられれば、結果的に企業に残る利益を増やせるので、企業の成長につなげられるでしょう。
顧客分析の目的2:マーケティング施策を評価するため
顧客分析は、マーケティング施策を考えるためだけに実施するのではありません。たとえば、「DMを送付したターゲットの反応率が適切であったか」「メルマガ登録者に特典を設けたことで登録者数が増えたか」「紹介者割引キャンペーンの実施で新規顧客が増えたか」といった、施策の評価をするためにも顧客分析がおこなわれます。
分析の結果、ターゲットの再設定が必要かどうかや実施したキャンペーンを定期的に開催すべきかどうかを検証すれば、より精度の高いマーケティングができるようになるでしょう。
顧客分析の目的3:事業成果をさらに拡大するため
これまで紹介した、「現状把握」や「マーケティング施策の評価」は、一度だけ行えばよいわけではありません。PDCAサイクルを回しながら、こまめに事業の運営方針を改善させることが大切です。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を繰り返すことをいいます。
この流れに基づいて「現状把握」や「マーケティング施策の評価」を繰り返せば、より効率的に人や予算といったリソースを活用できます。
顧客分析の手順について
ここまでは顧客分析の目的に解説しました。ここからは顧客分析の手順について4つに分けて解説します。
- ゴールと目的を決めて顧客を絞る
- 顧客のデータを集めて整理をする
- 分析方法を選び顧客分析を行う
- 顧客分析の結果を可視化する
顧客分析の手順1:ゴールと目的を決めて顧客を絞る
まずはゴールと目的を決めて、商品やサービスをどの顧客に提供するかを絞っていきます。例えば商品やサービスのリピート率が低い場合、顧客分析の目的設定は「リピート率を増加させるために顧客ニーズを理解する」になります。リピート率が低い原因としては、再注文のやり方が分かりづらいや購入後にメルマガやDMなどのフォローがなく顧客に自社のことを思い出してもらえないなど、さまざまな要因が考えられます。
顧客分析の目的設定ができたら次にゴール設定を行います。ゴール設定は具体的な数値を用いて「リピート率○○%以上を達成」などがよいでしょう。ゴールを設定しておくことで、どんな施策をいつ実施すれば達成できるかを明確にしやすくなります。
顧客分析の手順2:顧客のデータを集めて整理をする
顧客分析のゴールと目的が決まったら次に顧客データを集めて整理を行っていきます。顧客データの分析には下記のようなデータを集めるとよいでしょう。
- 顧客データ(氏名、年齢、居住地、電話番号など)
- 行動データ(検索したキーワード、いつの時間帯にサイトに訪れることが多いかなど)
- 購買データ(購入履歴、今までに購入した商品の合計金額など)
- WEBサイトのアクセスデータ
- 名刺管理データ
- 調査会社が提供する調査・統計データ
上記のデータを整理して活用することで自社の商品やサービスを購入・利用する顧客の傾向を掴むことに役立てられるでしょう。
顧客分析の手順3:分析方法を選び顧客分析を行う
顧客データを整理できたら、分析方法を選んで顧客分析を行います。顧客分析のフレームワークには、顧客の購買履歴をもとに優良顧客を見つけ出すための「RFM分析」や顧客やユーザーの行動データを時系列で追いながら、傾向やパターンの変化を読み取る分析手法の「行動トレンド分析」などさまざまな種類があります。
分析方法については次の大見出しで詳しく解説します。
顧客分析の手順4:顧客分析の結果を可視化する
顧客分析が完了したら、結果を可視化できるようにしましょう。可視化することで数値やテキストだけではわかりづらかった、傾向や対策するべき優先度をグラフやチャートによってわかりやすくなります。
可視化する際のデータ数が少ない場合は、Excleでまとめるとよいでしょう。少量のデータでもすぐにグラフ化できる点や円グラフ、棒グラフなど基本的なグラフが豊富にという利点があります。
一方で可視化する際のデータ数が場合は、BIツールやCRMツールの使用がおすすめです。BIツールでは、大量データの集計・グラフ化・ダッシュボード作成を行うことができ、大量データの集計・可視化が可能です。
CRMツールの場合、購買履歴、問い合わせ内容、メルマガの開封などを顧客ごとの行動を一元管理することができます。
顧客分析で使えるフレームワーク
ここまでは顧客分析の手順について解説していきました。ここでは顧客分析で使えるフレームワークを5つ紹介します。
- セグメンテーション分析
- RFM分析
- デシル分析
- CTB分析
- 行動トレンド分析
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析は、顧客を年齢や性別ごと、購入頻度や購買タイミングごと、住んでいる場所ごとの属性に分けて、顧客の共有点を見つけ出すフレームワークです。顧客の共有点を見つけ出すことで、自社の顧客ニーズに対してどんなアプローチをかけるのが適しているかを判断しやすくなります。
例えば東京都の20代男性のサービスの利用が多い場合、取得したデータをもとに「東京都に住んでいる20代男性」をターゲットとした施策を行うことができます。
RFM分析
RFM分析は、顧客の購買行動をもとに企業が優先的にアプローチするべき優良顧客を明確にするフレームワークです。このフレームワークには、次の3つの項目が含まれています。
- Recency:最新の購買日
- Frequency:購買する頻度
- Monetary:購買金額の累計
RFM分析では、この3つの軸で顧客を分類し、企業への貢献度が高い優良顧客に対して優先的にアプローチします。RFM分析は3次元のフレームワークになるのでイメージがしにくいかもしれません。以下の図を参考にしてください。

優良顧客以外にも、企業の売上に与えるインパクトが大きいと考えられるグループを視覚化できるので、重点的にアプローチしたい対象を明確にしたいときに用いると良いでしょう。これによって、チラシ配布やDMの送付先を限定すれば、費用対効果の高いマーケティングができるようになるでしょう。
デシル分析
デシル分析は、すべての顧客を10等分することで企業にとって有益な情報を抽出するフレームワークです。エクセルの操作ができれば簡単に分析を進められるのが特徴で、複雑なツールの使用方法を覚える必要がないのがメリットです。
デシル分析は、すべての顧客を購入金額の多い順番に並べるところから始めます。それを10等分して、各グループの購入金額の合計額を算出します。そして、すべての顧客の購入金額のうち、各グループの購入金額の合計額がどれくらいの割合になるかを計算し、最後に、上位グループから順に累積で購入比率を算出します(累積購入金額比率)。

累積購入金額比率が分かると、上位何%の顧客が売上の何割を占めているか把握することが可能です。それによって、アプローチする対象を絞ったり価格設定を変更したりするといった対策を考えられるようになります。
ただし、デシル分析はすべての顧客がデータに含まれるため、何年も前に高額商品を購入した顧客がデータに入ってくる可能性があり、注意が必要です。分析対象とする顧客をどのように設定するかによって、得られる結果が変わってくることも知っておきましょう。
CTB分析
CTB分析は、顧客の購買予測を高い精度で分析できるといわれているフレームワークです。このフレームワークには、次の3つの指標が含まれています。
- Category:カテゴリ
- Taste:テイスト
- Brand:ブランド
カテゴリでは、食品や生活雑貨、メンズやレディースといった大分類や、キッチン用品やアウター、インテリアや文房具といった中分類、フライパンやダウンジャケット、ボールペンのようにさらに詳しく分けた小分類を用いて顧客を分類します。
テイストでは、カラーや素材、模様やサイズなどで分類します。そしてブランドでは、ファッションブランドのほかに、キャラクターやキッチンメーカーなどで顧客をグループ分けします。

これらのグループごとに、よく購入されている商品やまとめ買いの傾向などを把握できれば、売り場の陳列方法を変えるなどの対策を講じて売上を伸ばしやすくなります。顧客の動向から売れ筋を予測できれば、戦略的に売上を出せるようになるでしょう。
行動トレンド分析
行動トレンド分析は、特定の時期に購買行動を行う顧客に注目して分析を行うフレームワークです。「いつの時期に購入量が変化するか」「いつの時間帯に購入量が変化するか」「数年にわたってニーズはどのように変化しているか」などが分析の対象になります。どのタイミングで購入量が増加・減少しているかを把握することで、適切なタイミングで顧客にアプローチがしやすくなります。
まとめ
今回は、顧客分析の概要を説明するとともに、顧客分析の基本的な手法や役立つフレームワークを紹介しました。
顧客分析を活かして企業を成長させるためには、フレームワークの分析だけで満足しないことです。分析結果をどのように活かせば企業の成長につながるかを考えながら、顧客分析に取り組めるようにしておきましょう。
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