自社サイトを通じた販売促進活動によって、商品・サービスの購入や集客向上に結びつけるための業務のひとつに「Webマーケティング」というものがあります。インターネットを通じた商品・サービスの利用が一般的となっている現代において、Webマーケティングとはどのような活動を行い、どの程度重要な役割を担っているのでしょうか。今回は、Webマーケティングについての紹介と、Webマーケターに必要なスキルなどについて解説していきます。
目次
Webマーケティングとは?
Webマーケティングとは、Web媒体を中心にマーケティング活動を行うことを指します。集客や販売促進が目的であり、商品・サービスの購入につなげるための活動を行います。
Webマーケティングが重要な理由
インターネットの利便性が大きく向上したことで、顧客が知りたい情報にアクセスしやすくなり、日常生活のなかで多く活用されるようになりました。総務省の調査によると、2022年時点でのデジタル広告市場規模は3.1兆円となり、前年2021年と比較して13.7%増加しています。市場規模の拡大に伴い、インターネット市場において効果的なビジネス展開を図るための活動がWebマーケティングです。
(出典:「令和5年版 情報通信白書」(総務省)) (2024年6月15日に利用)
Webマーケティングとデジタルマーケティングの違い
Webマーケティングと似た言葉として「デジタルマーケティング」というものがあります。Webマーケティングとは、Webを中心としたマーケティングの方法であるのに対し、デジタルマーケティングとは、Webに限らずさまざまなデジタル技術を用いて行うマーケティング方法を指すため、目的とする市場はWebには限りません。そのことから、Webマーケティングとはデジタルマーケティングの方法のなかのひとつと考えられます。
Webマーケティング担当者の平均年収や労働状況
厚生労働省職業情報提供サイトの就業者統計データによると、Webマーケティングに関わる仕事の就業者数や、労働状況は以下の通りです。
就業者数 | 3,737,860人 |
平均労働時間 | 164時間 |
平均年収 | 645.5万円 |
平均年齢 | 41.8歳 |
上記の数値はあくまで平均であるため、業界や職種、企業の規模によって年収や年齢にはばらつきがあるだけでなく、本人のスキルによっても年収は異なります。就職先として検討する場合、Webマーケティングの仕事は未経験でも就くことができ、本人のスキルアップ次第で年収を大きく伸ばすことも可能です。
(出典:Webマーケティング(ネット広告・販売促進) – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)) (2024年6月15日に利用)
Webマーケティング担当者の仕事内容
企業や団体におけるWebマーケティングの仕事とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。ここでは、Webマーケティング担当者の仕事内容として、主に3つを解説します。
- 自社のWebマーケティングを担当する場合
- クライアントワークなど他社をサポートする場合
- Webディレクターとの違い
自社のWebマーケティングを担当する場合
自社内でのWebマーケティング担当者は、主に自社サイトやWebサービスの集客率や、売上の向上を目的とした運用管理を行います。具体的には、企画立案を自身で行うほかにも企業の意思決定にも影響するような役割を担うことになります。難しい業務のようですが、企画立案を外部委託するよりも効率的にでき、プロジェクトを担当することになればチームの運営や予算の調整も自身で行うことになるため、Webマーケターとしての幅広いスキルを身につけることができるでしょう。
クライアントワークなど他社をサポートする場合
クライアントからWebマーケティングの仕事を委託される場合は、クライアントごとのニーズにあわせたマーケティングを行うため、Webマーケティングに対する知識や提案力が必要です。また、業界や商品・サービスもクライアントごとに異なることから、Webマーケティングのスキルに加え、コミュニケーションスキルも身につきます。ただし、特定のクライアント先での支援となる場合には、幅広い業務に触れる機会は少なくなります。
Webディレクターとの違い
WebマーケターのほかにWebに関する担当者として、「Webディレクター」という立場があります。担当業務の主な違いは下記の表のとおりです。
Webマーケター | Webディレクター |
・メインはWeb上でのマーケティング業務 ・市場調査・分析、プロモーション活動など多岐に渡る |
・メインはWeb制作のプロジェクトを取りまとめる ・クライアントとのコミュニケーションやスケジュール管理、コンテンツ作成などを行う |
具体的な流れとしては、WebマーケターがWeb広告の出稿を担当し、WebディレクターはWeb広告そのものを制作する部門のまとめ役を担当します。ただし、企業の規模によっては、WebマーケターとWebディレクターをひとりで担当するという場合もあります。
Webマーケティング担当者が取り組む具体的な施策
Webマーケターは具体的にどのような施策に取り組んでいるのか、ここでは主に4つの施策を解説します。
- 集客施策
- 回遊率・コンバージョン率を向上させる施策
- アクセス解析と改善施策の実施
- SNSの運用
集客施策
集客を目的としたWebマーケティング施策は、Web広告とSEO対策が主なものです。SEOとは検索エンジン最適化のことで、検索エンジンで検索した結果に自社サイトが上位に表示されるように施策するものです。
また、Web広告も集客には重要な施策です。限られた予算のなかで、どの媒体のどのような広告を用いるのか、自社のターゲット設定とWebユーザーとを照らし合わせながら、適切なアプローチを行います。
主な広告手法には以下のようなものがあります。
広告の種類 | 特徴 |
リスティング広告 | ・検索連動型の広告 ・GoogleやYahooなどの検索エンジンでユーザーが検索したキーワードをもとに表示される広告 |
アフィリエイト広告 | ・成果報酬型の広告 ・個人ブログやサイトに広告リンクを設置してもらい、広告をクリックして注文や資料請求などのコンバージョンをした際に費用が発生する広告 |
ディスプレイ広告 | ・バナー広告とも呼ばれている ・Webサイトやアプリの広告枠に表示される広告 ・テキストと画像で商品やサービスをアピールし、ユーザーの興味をひく |
SNS広告 | Instagram、Facebook、X(旧Twitter)などのSNS内で配信する広告 |
「広告の種類」について詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。
回遊率・コンバージョン率を向上させる施策
「回遊率」とは、自社サイトにアクセスしたユーザーが一度のアクセスでどの程度のページを閲覧したかを示すもので、「コンバージョン率」とは自社サイトに訪れたユーザーが結果的に商品・サービスの購入や問い合わせといった最終的な成果にまで至った率を指します。この2つを向上させるには、検索エンジンやWeb広告を経由して訪れたユーザーが最初に訪れるランディングページや、資料請求や購入といった成果に結びつけるためのフォームからの離脱を減らすための施策が必要となります。
アクセス解析と改善施策の実施
先に紹介した回遊率とコンバージョン率を高めるために必要な分析がアクセス解析です。検索エンジンで訪れたユーザーがどのような検索キーワードで自社サイトにたどり着いたか、またはそのユーザーはどのような情報に興味を示しているのかといったことをアクセス解析のツールを用いて分析し、必要に応じて自社サイトの改善を図ります。アクセス解析は、自社サイトの見直しのためだけではなく、自社商品・サービスの改善や開発にもつながっているため、Webマーケターの重要な業務といえます。
「Web解析ツール」について詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。
SNSの運用
LINEやInstagram、Facebook、X(旧Twitter)などのSNSを活用しての情報発信もWebマーケティングの仕事のひとつです。SNSはサービスによってユーザー層やしくみも異なっているため、それぞれの特徴を把握することが重要です。自社の商品・サービスにあわせてどのSNSを活用していくかを分析することも重要なWebマーケティングといえます。
Webマーケティングに求められるスキル・知識
Webマーケティングの仕事につくにあたり、どのようなスキルや知識が必要なのでしょうか。ここでは主に4つの点について解説していきます。
- データを論理的に分析する力
- デジタルスキルやITスキル
- 柔軟に対応できるコミュニケーション能力
- マーケティングに関する知識
データを論理的に分析する力
Webマーケティングは文字通りWeb上のマーケットを分析する仕事のため、数値やデータを分析するスキルが重要です。ターゲットの選定や企画立案、アクセス解析や結果の分析といった論理的な思考が欠かせない能力となります。
デジタルスキルやITスキル
Webマーケティングを行ううえで、デジタルやITスキルは必要です。具体的にはHTMLやCSSの知識、顧客獲得単価を表すCPA、クリック率を表すCTRの知識があるとよいでしょう。サイトへのアクセスを解析するツールを導入している会社もあるため、ツールを使いこなせるITスキルがあれば、即戦力の人材としても期待ができます。
柔軟に対応できるコミュニケーション能力
WebマーケティングはWeb上の施策の業務とはいえ、WebディレクターやWebデザイナー、Web営業といった各部署との連携が重要です。そのため、傾聴力や柔軟性といったコミュニケーション能力や市場の変化に対応できる力も必要となります。加えてWebは日々進化するもののため、進化の都度対応できる柔軟性も必要といえるでしょう。
マーケティングに関する知識
Web上に限らず、マーケティングには、4つのPというのが基本としてあり、「Product(製品戦略)」、「Promotion(宣伝広告コミュニケーション)」、「Price(価格)」、「Place(流通)」を基本として、「3C分析(市場・競合・自社)」を行います。それらのマーケティングに関する知識を前もって理解しておくことで、より詳細なWebマーケティングの展開が可能となります。
「マーケティング戦略に役立つフレームワーク」について詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。
未経験でもWebマーケティング担当者になる方法
Webマーケティングについて、スキルや知識に乏しく未経験であるものの、ぜひ挑戦してみたいという場合、どのような手順を踏めばよいでしょうか。最後に、未経験でもWebマーケターになる方法について3つ解説します。
- 部署異動や転職をする
- Webマーケティングに必要な知識・資格を取得する
- ブログやSNSを運用し、実績を積む
部署異動や転職をする
自社にWebマーケティング部門がある場合は、異動申請や業務の兼任を依頼してみるのもひとつの方法です。しかし、異動や兼任が簡単にできるとは限らないため、少しでもWebに関わる部署への異動を試み、そこからキャリアアップを進めていきましょう。また、転職の場合には未経験OKの求人があったとしても、なんらかのスキルやアピールが必要となることが多いため、地道にスキルや実績を積む努力も必要です。
Webマーケティングに必要な知識・資格を取得する
Webマーケティングが未経験である場合でも、どの程度の意欲があり、どの程度の基本的な知識を身につけているかというのは転職や転部を希望するには重要なポイントといえます。独学でもWebマーケティグの勉強をしたり、資格検定を受けたりすることはとても大きな強みとなるでしょう。独学をするにはWeb上のオンライン講座以外にも書籍やセミナーなどの方法があります。資格試験については、取得することでどの程度の知識を持っているかという指標になるため、ぜひチャレンジしてみるとよいでしょう。主な実務検定は下記の表のとおりです。
資格名 | 主催 | 内容 |
マーケティング・ビジネス実務検定 | 国際実務マーケティング協会 | マーケティング実務知識や時事情報・実務事例が習得できる |
ネットマーケティング検定 | サーティファイWeb利用・技術認定委員会 | Webマーケティングの特性やWebサイトの構成・リサーチなど網羅的に知識を習得できる |
ウェブ解析士 | 一般社団法人ウェブ解析士協会 | Web解析に必要なマーケティング能力や知識の向上を目指す |
参考:マーケティング・ビジネス実務検定(R)|どこでも通用するマーケティングのスキルを磨く
(2024年6月時点)
参考:ネットマーケティング検定 | 資格検定のサーティファイ (2024年6月時点)
参考:デジタルマーケティングで事業を開拓する 一般社団法人ウェブ解析士協会 (2024年6月時点)
ブログやSNSを運用し、実績を積む
Webマーケティングの担当となるからには、Web上でのマーケティング手段についての知識を身につける必要があります。そのため、まずはブログやSNSを個人的に運用して、アフィリエイト広告での収入を得てみるとよいでしょう。アフィリエイト広告は成果報酬型の広告であり、収入を得るにはブログやSNSの集客やクリック率などの対策や分析が必要となるため、それらをある程度身につけておくことでWebマーケティングの仕事にも活かせるだけでなく、転職活動などでのアピールポイントにもつながります。動画や書籍などで理解を深めておくことがおすすめです。
まとめ
今回はWebマーケティングの仕事についての内容や、担当になるための手順について解説しました。自社サイトやサービスの集客向上を目的とした運用管理が主であり、企業の意思決定にも影響する重要な役割です。Webやマーケティングの知識だけでなくコミュニケーション能力の高さも必要となるため、少しずつスキルアップを進めながら、自社サイト運用の要となるようなWebマーケターを目指してみてはいかがでしょうか。
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