「ネットスーパー」はスーパーマーケットで販売されている商品をインターネット上で注文でき、自宅に配送してくれるため、買いものになかなか出られない方や多忙な方にとって便利なサービスです。しかし、ネットスーパーがどのような仕組みであり、購入者側にとってどのようなメリットやデメリットがあるのかわからず、まだ利用したことがないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ネットスーパーについて、似たような言葉のECサイトとの違いや、ネットスーパーを利用する側にとってのメリット・デメリット、今後の展望などについて詳しく解説していきます。

ネットスーパーとは?

「ネットスーパー」とはどのような業態を指すのでしょうか。ネットスーパーとは、スーパーマーケットや実店舗を持たない業者が、インターネット上で注文を受け、それらの商品を注文者宅へ配達するシステムです。
実店舗があるネットスーパーでは、実店舗から直接商品を配送する場合と流通センターから配送する場合の2通りあります。イオンリテールが運営する「イオンネットスーパー」では実店舗から出荷され、西友と楽天グループの運営する「楽天マート(旧:楽天西友ネットスーパー)」では流通センターから出荷される形式をとっています。

取扱い商品は主に肉や魚、野菜やくだものといった生鮮食料品や、日用品、衣料品などがあります。基本的には即日配達してくれる店舗が多く、配送料がかかるものの一定以上の金額分を購入すれば配送料無料というサービスもあります。

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ネットスーパーとECサイトの違い

ネットスーパーと同様に、インターネット上で商品を購入できるオンラインショッピングサービスとして「ECサイト」があります。両者の違いは『生鮮食料品を取り扱うかどうか』というところにあります。さまざまな商品を取り扱うECサイトですが、商品が多岐にわたることと配送拠点が集約されていないことから、生鮮食料品の取り扱うサイトが比較的少なくなっています。

一方、生鮮食料品を取り扱うネットスーパーの場合、冷蔵・冷凍施設を備えた物流拠点があり、さらに近隣の店舗や配送センターから商品を発送できる仕組みができているのが強みでECサイトとの大きな違いといえるでしょう。

ネットスーパーとダークストアの違い

オンラインショッピングにおけるキーワードのひとつに「ダークストア」というものがあります。ダークストアとは、ECサイトを通じて注文される商品を揃えた配送拠点のことを指し、実店舗のように拠点内に商品を陳列しているものの、顧客が訪れて買いものをできるわけではないことが、実店舗を持つ場合のネットスーパーとの違いです。顧客へ開かれた店舗ではないことから「ダークストア」と呼ばれています。また、来店客がいないために注文商品のピックアップから配送までに時間を要しないこともネットスーパーとの違いのひとつともいえます。

利用者にとってのネットスーパーのメリット

利用者が実店舗で買いものをせずにネットスーパーを利用するにはどのようなメリットがあるでしょうか。ここでは、ネットスーパーを利用するメリットを3つ解説します。

利用者にとってのネットスーパーのメリット
  • 買いものに出かけずに済む
  • 重い商品・かさばる商品も家まで届けてくれる
  • 購入額が明確で買いすぎを防ぎやすい

買いものに出かけずに済む

仕事や子育て、介護などで買いものの時間をとれないという場合や、実店舗に足を運ぶのは体力的に難しいという場合には、自宅で買いものができるというのは大きなメリットです。自宅のストックを確認しながら、パソコンやスマートフォンで買いものができるため、「買いものから帰ってきて買いもの袋をあけてみたら、実はまだストックがあった」といった事態も避けられます。

重い商品・かさばる商品も家まで届けてくれる

車を持たないひとり暮らしの高齢者、身体に障害を持つ方などの場合、ひとりで運ぶには困難な大きな商品や重量のある商品を実店舗で購入するのは難しいでしょう。防災備蓄がうたわれている近年においても、まとめ買いはあきらめているという方もいるかもしれません。一方ネットスーパーであれば、配達可能エリアであれば自宅まで届けてくれるため、かさばるトイレットペーパーや、お米などの重たい商品も気軽に注文することができます。

購入額が明確で買いすぎを防ぎやすい

実店舗のスーパーでの買いものの場合、お買い得品やタイムセールなどについ目移りをして衝動買いをしてしまうということがあります。しかしネットスーパーであれば、買いものカートへ商品を入れるたびに現在の購入金額を自動計算して表示してくれるため、予算にあわせてカート内の商品を増減でき、衝動買いによる支出を抑えることができます。また、先にも解説したようにネットスーパーはパソコンやスマートフォンを手にして現在のストックと照らし合わせながら買いものができるため、「まだあるのに買ってしまった」という無駄な買いものを防ぐことも可能です。

利用者にとってのネットスーパーのデメリット

欲しい商品を自宅などへ届けてくれるネットスーパーですが、利用者によっては実店舗での購入がよい場合もあるかもしれません。ここでは、ネットスーパーを利用する際のデメリットについて3つ解説します。

利用者にとってのネットスーパーのデメリット
  • 商品を自分の目で確かめられない
  • 何を買うか決めておく必要がある
  • 実店舗よりも割高になりやすい

商品を自分の目で確かめられない

生鮮食料品も購入できるのがネットスーパーの利点ではありますが、欲しい商品を自分の目で確認してから購入するということができないのは大きなデメリットといえるかもしれません。肉や魚、野菜やくだものなどは、実店舗で購入する場合は利用者自身が持つ目利きで選ぶことができますが、ネットスーパーでは形や大きさ、鮮度などを確認して選ぶことができません。もちろん鮮度が落ちている商品が届くということはほとんどないかもしれませんが、「自分が思っていたより小さかった」「自分が思っていたより脂身が多い肉だった」というようなことは起こりうることでしょう。

何を買うか決めておく必要がある

ネットスーパーの魅力のひとつは、翌日・即日配達といったスピード感にあります。しかし、そのためには献立を想定したうえで購入しなければなりません。実店舗で買いものをする場合に可能な「実物を見てから買うか決める」「特売商品によって献立を考える」といったその場での購入が難しいのがデメリットともいえるでしょう。

実店舗よりも割高になりやすい

通い慣れている実店舗であれば、「おつとめ品シールが貼られる時間」「タイムセールが始まる時間」といったことを予測して来店することができますが、ネットスーパーの場合はおつとめ品はもちろん、タイムセールが日常的にあるわけではなく、実質的には店舗に足を運ぶよりも割高になりやすい傾向があります。さらにネットスーパーの場合は購入金額などによっては送料がかかることがあるため、実店舗に出向く時間を節約と考慮しない場合には、金額的には割高になりやすいと考えられます。

ネットスーパーの今後の展望

株式会社アクロスソリューションズと一般社団法人 日本唐揚協会が共同運営している食の窓口が2023年6月、20歳〜60歳以上の男女2420人を対象に実施した「ネットスーパーについての意識に関するアンケート調査」によると、「ネットスーパーを利用したことがありますか?」の質問に対して最も多かった回答が「利用したことはないが知っている」で55.8%、「ネットスーパーを利用しない理由は何ですか?」については「実際に目でみて食材を選びたいから」が33.4%、「送料など値段が高いから」という回答が27.0%ありました。

さらに全国スーパーマーケット協会の2024年版「スーパーマーケット白書」によると、ネットスーパーの実施率は2023年の業界推計値で20.7%(前年差3.8%増)となりました。また、一般社団法人全国スーパーマーケット協会が2023年に発表したスーパーマーケット年次統計調査報告書によると総売上高に占めるネットスーパーの売上高の割合は、2023年の業界推計値で1.5%(前年差0.1%増)と少ない状況が見受けられました。

利用者の回答のなかの「送料など値段が高いから」ということに対しては、人件費や配送車両の燃料費といったコストの増加が理由のひとつとなりますが、需要を高めるためには効率化やコスト減が課題となるかもしれません。

顧客へのアプローチとしては、高齢化を見据えた対策が必要となるでしょう。

参考:【2420人に調査】鮮度よりも送料が気になる!?〜ネットスーパーについてのアンケート〜
(2024年10月時点)
参考:一般社団法人 全国スーパーマーケット協会 2024年版スーパーマーケット白書
(2024年10月時点)
参考:一般社団法人 全国スーパーマーケット協会 2023年版スーパーマーケット白書
(2024年10月時点)
参考:一般社団法人 全国スーパーマーケット協会 2023年版スーパーマーケット年次統計調査報告書
(2024年10月時点)

まとめ

今回は、需要が高まるネットスーパーについて、ECサイトとの違いや、利用者にとってのメリットやデメリットについて解説しました。大型商品の購入やまとめ買いが困難な高齢者や子育てで時間がとれない方にとっては便利なネットスーパーですが、鮮度などが自分の目で確認できないことや、配送料がかかり総合的には実店舗より割高になってしまうことがネックでもあります。利用者にとっての具体的なメリットを見極めて展開していくことが今後の課題といえるでしょう。

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