見込み客の獲得や口コミでの拡散を狙いとするサンプリングは、街頭での配布以外にも、購入商品に同梱したり、Webサイト上で行うなどさまざまな方法があります。商品・サービスのターゲット層にあわせて配布しやすいメリットがある反面、事前の準備を怠ってしまうと受け取ってもらえないこともあるため注意が必要です。今回は、サンプリングを行う方法や費用、期待できる効果や成功のコツについて解説します。

サンプリングとは?配布したときの効果も解説

マーケティング手法のひとつである「サンプリング」とは、商品サンプルやノベルティを消費者へ無料で配布することで、見込み客の獲得や口コミでの拡散を狙いとしたプロモーション活動を指します。「街頭配布」または「試用手法」とも呼ばれます。サンプリングを行うことにより、商品や企業の魅力を伝えることができ、購買促進だけでなく理解促進としての効果も見込めます。配布スタッフが消費者とコミュニケーションをとりながら、商品や企業の認知拡大はもちろん、ターゲット層からの反応や意見を集めることも期待できます。

サンプリングの具体的な配布方法と費用

サンプリングにはどのような種類があり、実際に必要とする費用はどの程度なのでしょうか。ここでは、サンプリングの具体的な配布方法と費用について解説していきます。

サンプリングの具体的な配布方法と費用
  • 街頭サンプリング
  • ルートサンプリング
  • イベントサンプリング
  • Webサンプリング
  • インフルエンサーサンプリング
  • 同梱サンプリング

街頭サンプリング

街頭サンプリングは、繁華街や駅前周辺など、人が多く行き交う場所で行うサンプリングです。商品のターゲット層や商圏と合致する場所で行うことで、効率的にPRを図ることができます。ブースを設けて行うわけではないため、出展費用や機材費用などが必要なく、最小限の費用で実施することができます。街頭サンプリングは事前に警察署への道路使用許可申請が必要です。

街頭サンプリングは出展費用や機材費用を必要としないものの、配布スタッフの人件費や交通費、道路使用許可申請の費用などがかかります。相場は下記の通りです。

費用種別 価格相場
人件費 10,000円(1人/2.5時間行った場合)
交通費 1,000円(1人につき)
道路使用許可証取得申請代行 10,000円前後
車両費 15,000円(1t車まで)

ルートサンプリング

ルートサンプリングは、他社の店舗や施設内でサンプリングを実施し、店舗利用者や会員など潜在顧客へのアプローチを行います。美容室、スポーツジム、サウナ、塾、薬局、空港など商品やターゲットに適した施設を選択して実施します。ルートサンプリングは主に手渡しサンプリングとレジ袋封入の2種類となります。施設内でのプロモーションの場合、施設スタッフによる手渡しとなるため、設定したターゲット層への効率的な配布が期待でき、消費者への認知拡大が見込めます。

ルートサンプリングでの費用はサンプル内容によっても変動し、下記はあくまで相場のため、事前に事業者へ確認するとよいでしょう。

手法 費用相場(サンプル1点につき) 配布物
手渡しサンプリング 30〜80円
※配布物によって変動あり
冊子、チラシ、化粧品、ヘアケア製品など配布施設や施設利用者とマッチングしやすいもの
レジ袋封入 5円〜10円 チラシやクーポンなど

イベントサンプリング

イベントサンプリングとは、イベント内でサンプリングを行うことで、イベント来場者に商品のよさを知ってもらうための手法です。スポーツイベント、ライブイベント、各種即売イベントなど、特定のニーズを持った人向けのイベントでは、ターゲット層と合致することでサンプリングの効果を期待できる手法となります。商業施設や学校などでも実施されます。

一度に多くの来場者へ商品のよさを訴求できるため、口コミやSNSなどで拡散されやすく、リピートにもつながりやすいという期待が持てます。多くの来場者の生の声を商品開発やサービス改善などにも活用することが可能です。

イベントサンプリングの場合、企画・制作費から会場費・機材費などが必要となり、ブースの出展方法やイベントやサンプリングの内容によって大きく費用は異なります。規模によっても違いがあるため、下記の相場は内容により変動することを考慮しておきましょう。

費用種別 価格相場
会場費(収容人数などによって変動あり) 10万円〜100万円
人件費(規模によって変動あり) 15万円〜25万円
企画費 5万円〜
制作費 20万円〜
機材費 5万円〜

Webサンプリング

Webサンプリングとは、自社のWebサイト上でサンプルを申し込んだ消費者に対してサンプル配布を行う手法です。サンプリングを行う商品や企業に対して関心を持ってWebサイトを訪れた消費者がターゲットとなるため、成果が期待できるほか、申し込み時に住所や年齢、性別などの情報を集められるという利点があります。Web環境があればどこでも実施できる魅力もありますが、ターゲットの属性を絞りづらいという点もあるので注意が必要です。

Webサンプリングは、Web環境があれば行える手法のため、配布スタッフとしての人件費や交通費は不要で、必要となるのはサンプル制作費や梱包費用程度です。送料は消費者負担とするケースもあります。ただし、Webサイトを新たに設ける場合には、Web制作費を外注するには数十万円がかかる場合があります。

インフルエンサーサンプリング

インフルエンサーサンプリングとは、Web上で影響力のある、YouTuberや芸能人、ブロガーといったインフルエンサーにサンプル品を使用してもらい、感想やレビューとして商品を紹介してもらう手法です。ただし、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す「ステルスマーケティング」は、2023年10月から景品表示法違反となったため、「PR」「広告」という表示が必要であることに注意しましょう。

化粧品や雑貨、食品などの個人向け商品の場合が多く、インフルエンサーの支持層がターゲット層と合致すれば、インフルエンサーの影響力や波及力次第でも高い効果を期待できます。ただし、インフルエンサーが芸能事務所やインフルエンサー事務所などに所属していない場合、個人への依頼となるため、実施までに時間や手間がかかるケースもあります。

インフルエンサーがWeb上で紹介するため、配布するためにサンプル商品を用意する必要はありませんが、インフルエンサーに対する紹介費用が必要となります。さらにインフルエンサーによって費用が異なり、2〜4円×フォロワー数が目安で、1度につき30万円以上かかる場合もあります。

参考:景品表示法 | 消費者庁 (2024年11月時点)

同梱サンプリング

同梱サンプリングとは、会員向け冊子や通販での購入商品の中にサンプル品を同梱して配布する手法です。化粧品や生活用品のサンプリングで活用されることの多い手法です。同梱サンプリングの場合、送付するのはすでに商品を購入済みの消費者のため、高い接触率で購買意欲を高められ、リピーターにもつながる見込みのあるサンプリング手法となります。購入商品の出荷数が高ければ高いほど、より多くのサンプルを消費者の自宅まで直接発送することが可能です。

同梱サンプリングは、配布物のコストとサンプル商品の郵送費用が主な費用となるため、サンプリング手法のなかでも比較的安価に済ませることができます。ただし、チラシやノベルティの配布と比較すると、配布物自体の費用がかかることも考えられるでしょう。

サンプリングで配布を行う際のメリット・デメリット

サンプリング手法で配布する際のメリットとデメリットは下記があげられます。
▼メリット

  • 時間帯やターゲット層をピンポイントで絞ってアプローチできるため、特定のセグメントに訴求が可能
  • ターゲット層に直接アプローチして配布することで、潜在顧客の獲得につながる
  • 相手のニーズを判断しアプローチすることで、より高い販促効果や来店促進が見込める
  • クーポンや引換券などは、商品の認知拡大以外に、サービス利用者増加も期待できる

▼デメリット

  • 絞り込みをしっかり行わなければ人件費のほうが上回ることにつながる
  • 手渡しサンプリングの場合は受け取ってもらえないケースもある
  • 顧客が手に取っても使用されずに終わることも考えられ、費用対効果が下がる場合もある
  • 屋外での配布の場合、天候次第で配布が中止になる

サンプリングに適した配布物

サンプリングを行う際、どのようなものを配布するのが向いているのでしょうか。ここでは、サンプリングに適した配布物を3種類紹介します。

サンプリングに適した配布物
  • チラシ
  • 飲料・食品・健康食品
  • 化粧品

チラシ

チラシは安価に大量発注から配布まで行えることから、サンプリングでの配布物として多く用いられています。サンプル商品・サービスにあわせたデザインにすることで内容が伝わりやすく、さらにクーポンや引換券を加えれば来店促進も期待できることから、集客に適した配布物といえるでしょう。

飲料・食品・健康食品

飲料・食品は実際に商品を口にすることで実体験できることから新規顧客の獲得が期待できます。また、サプリメントなどの健康食品はパッケージを見てどのようなものか把握しやすいため、健康志向のターゲット層はサンプルで試してみたいと考えるケースが多くみられます。飲料や食品は実際に口にしないとよさがわかりにくいために商品購入に至る難度が高くなりがちですが、サンプルで体験することで商品のよさが伝わることも見込めます。

化粧品

化粧品も、飲料・食品同様、肌にあうかどうかも含めて使ってみないとわからないことから、新商品を即購入するのは難しいというケースが多い商品です。そのため、サンプルを配布することで使用感が伝わり、新規顧客の獲得にもつながることが期待できます。

サンプリングの配布で人気なノベルティ

商品・サービスのPRのために配布するノベルティは、多くの消費者に使ってもらえるものや受け取りやすいものが適しています。ここでは、サンプリングの配布で人気のノベルティを6つ紹介します。

サンプリングの配布で人気なノベルティ
  • ティッシュ・ウェットティッシュ
  • マスク
  • うちわ
  • カイロ
  • あぶらとり紙

ティッシュ・ウェットティッシュ

実用性の高いティッシュ・ウェットティッシュは、時期やターゲット層にかかわらず配布ができ、老若男女に使ってもらえることから、多くの消費者に認知してもらいたい場合に向いています。パッケージデザインを商品・サービスがイメージしやすいものにすることでより伝わりやすくなるでしょう。ティッシュの相場は1つ3〜8円程度、ウェットティッシュの相場は50円~を見込んでおきましょう。

マスク

マスクはウィルスや花粉対策として人気のノベルティです。特に花粉症の人にとっては外出時の必須アイテムのため、春先や秋口などの発症しやすい時期がおすすめでしょう。インフルエンザの流行にあわせて冬にも適しています。1枚でおよそ30円、2枚で40円というコストもメリットといえます。

ボールペン

仕事や学業で使用する機会の多いボールペンはビジネスパーソンや学生など、幅広い世代に人気のノベルティです。ボールペン自体に企業名や商品名を名入れすることで日常でも商品名に触れることができます。単色のシンプルなものならおよそ20円、10色ボールペンなどでも80円〜100円程度で注文できます。

うちわ

テーマパークやアウトドア施設、スポーツ観戦などのレジャーや、飲食店での行列時など、夏季の暑い時期のノベルティとして人気のあるのがうちわです。夏祭りや盆踊り、花火大会などの近くで配布すると手に取ってもらえることに期待できます。デザインにもよりますが、1万枚制作で、1枚30円程度になります。

カイロ

寒い時期の待ち時間や移動時間の多い場所、通勤時などに配布すると、実用性の高いカイロは手にとってもらえる見込みがあります。チラシを同封するだけではなく、カイロのパッケージに広告をシールで貼付することでよりコンパクトになりつつ、商品・サービスのPRができます。1個につき15〜30円で、長期間保存できるカイロは、冬季の街頭配布に適しています。

あぶらとり紙

顔に押さえつけることで顔の皮脂やテカリを抑えることができるあぶらとり紙は、暑い時期など顔がテカリやすいという人や身だしなみに気を遣う人に喜ばれやすいノベルティです。関連性のある化粧品の宣伝にも適しています。10枚入りで10〜20円と安価に抑えられるうえに多くの人に手にとってもらえる見込みのあるノベルティといえるでしょう。

サンプリングで配布を成功させるコツ

サンプル商品を多くの人に手にとってもらえ、商品・サービスの認知拡大にもつなげられるようにサンプリング配布を成功させるには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。最後に、サンプリングで配布を成功させるコツを3つ解説します。

ターゲットに合ったエリア・タイミングで配布する

街頭サンプリングの場合、商品・サービスのターゲット層によって、適した場所が異なります。さらにタイミングも重要で、例えばビジネスパーソン向けの商品・サービスのサンプリングの場合、ビジネスパーソンが多く集まるからといって通勤ラッシュ時を狙ってしまうと、移動に忙しい人々には受け取ってもらえない可能性が高くなります。どのような場所であれば販促効果があるのか、場所やタイミングを事前に調べることが重要でしょう。また、Webサンプリングの場合はターゲット層が多く利用しているかどうかを調査・検討するとよいでしょう。

需要のある顧客に配布する

認知度向上やブランディングのためにサンプリングを行う場合をのぞいて、多くのサンプリングの目的は売上向上です。そのためには購買力のある消費者へ配布することが重要となります。20代の女性が使用する化粧品のサンプルを50代男性に配布するのでは、目的達成にはつながりません。需要のある顧客を選定することがポイントです。

コストを抑え、多くの人に配布できる方法を選ぶ

サンプリングは、商品・サービスの認知度向上に適したプロモーションではありますが、チラシやDMと比較すると高いコストとなります。その中でもメリットをあげるとすると、今回紹介した例だと、街頭サンプリングは不特定多数の方への配布ができるため、近隣の店舗への誘導に効果的です。

また、同梱サンプリングの場合、配送料のコストカットができ、実際に購入した商品や購入者にあわせてサンプルを選択できるということでは効率的といえるでしょう。コストをできるだけ抑えつつ、多くの人に配布できる方法を選択することが必要です。

まとめ

今回は、マーケティング手法のひとつであるサンプリングについて、手法の種類や費用、成功のコツについて解説しました。見込み客の獲得や口コミでの拡散を狙いとしたサンプリングは、街頭サンプリングや同梱サンプリング、Webサンプリングなどさまざまな方法があり、ターゲット層にあわせたアプローチができる反面、しっかりと絞り込みをしなければ、使ってもらえないどころか受け取ってもらえないことも考えられます。PRしたい商品・サービスにあわせて、適切なサンプリングで認知拡大を目指してみてはいかがでしょうか。

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