社内外に企業の理念や目的を簡潔な言葉で表現した「企業スローガン」は、取引先や顧客が最初に目にする、企業の顔となるほど重要なものです。スローガンとはどのような意味があり、どのように作成すると、最も伝わるスローガンになるのでしょうか。今回は企業スローガンについての意味や重要とされる理由、作成時のポイントについて解説します。
企業スローガンとは?
スローガン(slogan)とは、団体の理念や目的を簡潔に言葉で表した標語のことを指しますが、企業スローガンとは具体的にどのようなことを指すのでしょうか。ここでは企業スローガンの意味と企業にとって企業スローガンが重要である理由について解説します。
企業の理念や目的をシンプルに表したフレーズのこと
企業におけるスローガンは、社内外に対して企業の理念や目的をメッセージ性の高い言葉に置き換えて伝えるものです。社外に発信する場合、この企業スローガンが企業の顔となるほど重要な意味を持つため、「コーポレートメッセージ」、「ブランドコンセプト」と呼ばれることもあります。
企業スローガンが重要とされる理由
先に説明したように、企業スローガンとは社内外で重要な役割を果たします。取引先や顧客が最初に目にするもののひとつが企業スローガンであり、スローガンが自社の印象を左右づけるものであるためです。さらに従業員にとっても企業スローガンとは業務上の指針となるような常に身近にある言葉でもあります。
スローガンと似た言葉との違い
団体の理念や目的をメッセージ性のある言葉でまとめたものがスローガンですが、他にも似たような意味を持つ言葉がいくつかあります。スローガンとはどのような違いがあるのかを解説していきます。
- スローガンとキャッチコピーの違い
- スローガンとクレドの違い
- スローガンと企業理念の違い
スローガンとキャッチコピーの違い
キャッチコピーとは、特定の商品・サービスに対して顧客の関心を持つために一言で表現する、たとえば「地域ナンバーワンを目指します!」「顧客満足度95%を目指します!」などのような広告的な要素の強い言葉です。英語では「Advertising slogan」ということからも、広告性のある言葉といえるでしょう。
スローガンとは理念や目標を簡潔に表現するものであり、キャッチコピーに比べ広告的な意味はあまり含まれません。キャッチコピーついて詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。
スローガンとクレドの違い
クレド(Credo)とは「信じる」という意味を持つラテン語であり、企業では行動指針として用いられます。経営理念とほぼ同義ではあり、こちらは社外ではなく従業員へ共有するための具体的な規範といえます。
スローガンが一文でキャッチーな印象であるのに対して、クレドはより具体的で分かりやすいといえます。
スローガンと企業理念の違い
企業理念とは、企業が大切とする考え方や価値観を言葉で表現したもので、企業を立ち上げた経緯や理由、経営に関する目的を言語化したものです。スローガンはひと言で伝わりやすいように表現するのに対し、企業理念は企業全体の指針を伝えるものであることからも、各企業とも長文で示すことがほとんどといえるでしょう。
企業スローガンの作り方やポイント
企業の理念や目的を社内外に対してわかりやすく伝えるスローガンを作成する際、どのような手順や注意点があるでしょうか。ここでは企業スローガンの作り方やポイントについて解説します。
- まずは社内でアイデアを出す
- 誰に伝えたいかを明確にする
- MVVを簡潔に表現する
- わかりやすさ・覚えやすさ・ポジティブさを意識する
- 社会に貢献できる内容を含める
まずは社内でアイデアを出す
企業スローガンは、外部の人物が考えたものではなく、企業をよく知っている人物が主導になってアイデアを出しあうことが重要です。また、企業スローガンは企業理念を簡潔に表現した言葉でもあるため、企業理念と乖離がないことも重要でしょう。コピーライティングの得意不得意や使えるか使えないかは別にして、従業員からアイデアを募るということに価値があり、それだけでも同業他社との差別化につながります。
誰に伝えたいかを明確にする
冒頭でも説明したように、企業スローガンは「社内外に対して企業の理念や目的をメッセージ性の高い言葉に置き換えて伝えるもの」です。とはいうものの、あまりにターゲットが広すぎると言葉が平坦なものになってしまってアピール性が弱いものになります。受け取り側をイメージしながら、誰に伝えたいかを明確にするようにしましょう。
MVVを簡潔に表現する
「MVV」とは聞きなれない言葉ですが、ミッション(Mission)とは、企業が実現したいこと、ビジョン(Vision)はそのミッションが実現したときの状態、バリュー(Value)は大切にしたい価値観や行動指針のことを表しています。つまり、このMVVと、企業スローガンとの間に乖離があっては整合性が失われてしまい、伝える相手も違和感を覚えることになります。MVVと企業スローガンに用いる鍵となるワードを統一するなど、MVVを簡潔に表現した形にするとよいでしょう。
わかりやすさ・覚えやすさ・ポジティブさを意識する
企業スローガンは企業の顔となるということを先に解説したとおり、ひと目で目的や意味を相手が理解できたり、関心を持ったりできるような表現であることが重要です。わかりやすさや覚えやすさ以外にもその言葉にポジティブさや誠実さを感じられるような言葉を意識しましょう。さらに声に出しても心地よく、記憶に残るものであるほうが、認知度アップにもつながります。
社会に貢献できる内容を含める
企業スローガンは自社側で伝えたいターゲットを設定したとしても、結局は多くの人の目に留まります。そのため、自社の利益だけをテーマにしたスローガンでは、利害関係のある相手以外には印象に残らないものとなってしまいます。自社が日頃から社会貢献できているというのであれば、そのことを企業スローガンに盛り込むことで多くの人の心に響き、世間から注目されるだけでなく、従業員自体のモチベーションアップにもつながる見込みがあります。
有名企業のスローガン事例7選
ここでは、大手企業で掲げている企業スローガンについて、7社の事例を紹介します。
株式会社ケーズホールディングス
家電量販店を展開する「株式会社ケーズホールディングス」では、「新製品が安いケーズデンキ」という企業スローガンを掲げています。サービス品質や価格など、顧客に最高の選択を提供するという理念を表現しています。
参考:株式会社ケーズホールディングス(2024年12月時点)
コスモエネルギーホールディングス株式会社
ガソリンスタンドのコスモ石油で知られる「コスモエネルギーホールディングス株式会社」では、コスモ石油の「ココロも満タンに」というブランドステートメントを掲げています。ガソリンスタンドにおける「レギュラー満タンで」という顧客とのやりとりをたとえに、地域社会との関係や社会貢献としての役割を前面に表現したものといえるでしょう。
参考:ココロも満タンに コスモエネルギーホールディングス(2024年12月時点)
株式会社永谷園
お茶づけ、ふりかけ、即席みそ汁などの製造販売を行う株式会社永谷園では、「味ひとすじ」の企業理念のもと、時代にあった価値や新たな市場に向けた創意・工夫を行っています。「食を通じて豊かな社会づくりに貢献したい」という創業時からの思いが企業理念に含まれているといえるでしょう。
参考:味ひとすじ 永谷園(2024年12月時点)
株式会社ニトリ
家具・インテリア用品の企画・販売などを行う株式会社ニトリでは、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」の企業スローガンのもと、よいものを世界の人々に提供するという企業のモットーが表現されています。
参考:ニトリ公式企業サイト(2024年12月時点)
株式会社日立製作所
日立グループのビジョン実現のために掲げられたスローガンが「Inspire the Next」です。日立グループがさらに伸びていく、新たな時代をよりよい社会にするために進んでいくという意思が象徴されています。
参考:日立製作所(2024年12月時点)
株式会社ミツカンホールディングス
株式会社ミツカンホールディングスのビジョンスローガンが「やがて、いのちに変わるもの。」です。いのちの源である食品を、安全・安心かつ健康でおいしいものを届けたいという気持ちが込められており、ミツカンのメイン商品であるお酢以外にも商品すべてに記載されています。
参考:ミツカングローバルサイト | MIZKAN GLOBAL(2024年12月時点)
株式会社リクルートホールディングス
人材紹介や人材派遣といった人材領域と、オンラインを中心としたプラットフォーム運営の販促領域のふたつの事業領域で構成されている株式会社リクルートのブランドメッセージが「まだ、ここにない、出会い。」です。情報提供だけではなく、ひとりひとりの選択に最後まで伴走していくということがこの言葉にこめられています。
参考:株式会社リクルート(2024年12月時点)
企業スローガンを浸透させる方法
最後に、企業スローガンを社内外に浸透させるには、どのような方法があるのかを3つ解説します。
- スローガンを作成した理由や背景を伝える
- 積極的に社内外に発信する
- 経営者がスローガンを実践して見せる
スローガンを作成した理由や背景を伝える
企業スローガンを周知させる際には、策定までの背景も詳しく伝えることがポイントです。このスローガンに至った経緯や、このスローガンで目指す未来像などがわかると顧客や取引先、従業員までもがビジョンを共有でき、愛着にもつながります。経緯や背景は、従業員だけでなく顧客や取引先もいつでも確認できるように、Webサイトでコンテンツ化しておくとよいでしょう。
積極的に社内外に発信する
作成した企業スローガンは、社内外に確実に認知してもらうためにも積極的に発信して記憶に留めてもらうことがポイントです。また、複数のメディアを通じて発信することで、自社とスローガンをセットで認識してもらえることにもつながります。
経営者がスローガンを実践して見せる
企業内の周囲から進言することは難しいかもしれませんが、企業スローガンを浸透させるには、なにより経営者が積極的に企業スローガンを守り推進する姿勢を継続的に見せることが重要です。具体的には公の場やメディアで企業スローガンを周知させたり、企業スローガンに即した経営方針を策定したりすることがあげられます。企業のトップである経営者が企業スローガンを守る姿勢を見せることで、従業員からの信頼性が高まるとともに、企業全体の一貫性や協調性が高まることが期待できます。
まとめ
社内外に企業の理念や目的を伝える企業スローガンは、取引先や顧客が最初に目にする、企業の顔となるほど重要なものです。誰に最も伝えたいのかを明確にし、わかりやすく伝わりやすい言葉にすること、利害関係ではなく、どのような形で社会に貢献できるかということを、企業や従業員の言葉でまとめながら、社内外の信用に伝わるような企業スローガン作りを目指してみましょう。