マーケティングにおいて「ペルソナ」と「ターゲット」という言葉は多くの場面で使われていますが、それぞれの違いについて詳しくわからないという方もいるのではないでしょうか。
さまざまな商品やサービスが溢れ、顧客のニーズが多様化している現代では、ターゲットを絞り込むことや、ペルソナ設定をすることが重要になります。
今回は、ペルソナの概要やターゲットとの違い、ペルソナ設定をするメリット、注意点などについて詳しく説明します。
目次
ペルソナ設定とは?
そもそも「ペルソナ」はラテン語で「仮面」を指し、舞台や演劇などで使われることが多い言葉です。
マーケティングにおけるペルソナは、「企業が手がける商品やサービスを利用する架空の人物像・ユーザー像」のことで、ペルソナを決めることを「ペルソナ設定」といいます。
「ペルソナ設定とターゲット設定は同じ意味なのでは?」と考えるかもしれません。
これらは意味が似ているため混同してしまいがちですが、実は両者には違いがあります。正しくマーケティング施策を練るためにも、両者の違いをはっきりさせておきましょう。
ターゲット設定とペルソナ設定の違いを知っておこう
ターゲット設定とペルソナ設定には、「設定する範囲の詳細さ」に大きな違いがあります。
ターゲット設定では「40代男性」「〇〇県在住の高齢者」のように、年齢や性別、居住エリアといった属性でマーケティング対象を決めます。一方、ペルソナ設定では、「氏名:〇〇〇〇、32歳男性。〇〇県〇〇市在住。営業職で係長をしており年収は600万円。妻と子ども2人(5歳と3歳)の4人で一軒家に住んでいる。趣味はゴルフで、自宅にいるときは動画サイトを閲覧してフォームや飛距離を伸ばす方法に関する情報を集めている」のように、特定の人物像を詳細に設定します。
それぞれで設定すべき項目の例をまとめると以下の通りです。
ターゲットで設定する項目の例 | ペルソナで設定する項目の例 |
---|---|
・年齢(20代や30代など) ・性別 ・職業 ・居住エリア ・商材への興味の有無 など |
・実際の人物を想定した年齢と性別(32歳男性など) ・具体的な職業(会社の業種や規模感など) ・担当の職種と役職 ・過去の職歴 ・住居や居住地、生活圏(最寄り駅) ・家族構成 ・生活における悩み ・将来的な希望や求めていること ・趣味や生活リズム など |
これらの項目を見てもわかる通り、ターゲット設定では広く「属性」を明確にしていくことが求められます。顧客がどのような枠組みに属しているのかを明確にするのです。一方でペルソナ設定では、属性よりもさらに詳細に、とある1人の顧客像が浮かび上がるレベルまで定めていくのです。
項目の差を見ても、ターゲット設定をするよりペルソナ設定の方が手間がかかりそうですが、はたしてペルソナ設定にはどのようなメリットがあるのでしょうか。以下ではペルソナ設定のメリットについて詳しく説明します。
ペルソナ設定をするメリットとは?
ペルソナ設定をするメリットには、次の3つがあります。
- 顧客のニーズをより詳しく把握できる
- ターゲットが魅力を感じるアプローチができる
- 業務の効率化につながる
ペルソナ設定のメリット1:顧客のニーズをより詳しく把握できる
ペルソナ設定をすれば、特定の人物のニーズを満たすマーケティング戦略を考えやすくなります。これは、完成したペルソナ像からユーザーの悩みやニーズが具体的にイメージできるということはもちろん、ペルソナ像を設計する段階でも市場調査や分析を通してターゲット顧客のあらゆる情報に触れるため、市場のニーズを把握することができるということです。
先ほどのペルソナ像で例えると、「ゴルフをする際にフォームを改善させたい」「さらに飛距離が伸びる道具を手に入れたい」のようなニーズを把握できます。
正しく顧客のニーズを把握することは、事業の成否に大きく影響します。ペルソナ設定をして詳細な人物像を設定すれば、企業が取るべき戦略を考えやすくなります。
ペルソナ設定のメリット2:ターゲットが魅力を感じるアプローチができる
ペルソナ設定によって顧客のニーズを詳しく把握できれば、開発すべき商品やサービスを決めたり、認知や来店、購入につなげる手法を考えたりすることにも役立てることができます。
先ほど設定したペルソナを例にすると「飛距離を伸ばすクラブの開発」「動画サイトに広告を掲載して認知を促す」といったマーケティング戦略を立案できます。
設定したペルソナのニーズを満たす戦略を立案できれば、ペルソナと同じ背景やニーズを持つ顧客に同様のアプローチをすることになります。1人の具体的な顧客像をもとに施策を行っていることから、一見限定的なアプローチ方法を考えているように見えるペルソナ設定ですが、結果的に多くの顧客のニーズを満たすことにつながっているのです。
また、ペルソナによって集客方法やコンセプトを明確にできれば、顧客に対してより適切で効果的なアプローチ方法を取り入れられるようにもなります。
ペルソナ設定のメリット3:業務の効率化につながる
「30代男性」のようなターゲット設定をしてマーケティング手法を考えるのもよいですが、それでは担当者間でイメージする人物像が変わり、商品やサービスの開発に無駄やズレが生じるかもしれません。
ペルソナ設定をしていれば、アプローチすべき人物が特定されているので、担当者間の認識を統一しやすくなります。限られた日数や予算の範囲内で成果の出るマーケティングができれば、効率的な事業運営につながるでしょう。特に、部署を超えてマーケティング戦略を考える企業など、頻繁に方向性を確認・調整しながらプロジェクトを進める企業であるほど、ペルソナ設定の重要性は高まります。
適切なペルソナ設定をするコツとは?
ここまでは、ペルソナ設定をするメリットについて説明しました。ペルソナ設定は成果につながるマーケティングをするうえで重要ですが、「どうすれば適切にペルソナ設定できるのだろう?」と思う人もいるのではないでしょうか。適切なペルソナ設定をするためには、次の3つを意識することが大切です。
- 自社のデータを活用する
- アクセスデータを分析する
- アンケートやインタビューをする
ペルソナ設定をするコツ1:自社のデータを活用する
すでに事業を展開している企業の場合、自社データを活用してペルソナ設定するのがおすすめです。たとえば、頻繁に商品を購入してくれる優良顧客のリストや会員登録した顧客のリスト、過去のマーケティングの結果などが挙げられます。
「自社の優良顧客リストには30代男性が多い」「リピーターの中には、動画サイトから自社サイトにアクセスして購買に至る人が多かった」という傾向があれば、ペルソナにこれらを盛り込むとスムーズに人物像を考えることが可能です。
ペルソナ設定をするコツ2:アクセスデータを分析する
ホームページや通販サイトなどを運営している企業の場合、サイトへアクセスした人に関するデータを分析することで適切なペルソナ設定ができます。
アクセスデータの分析にはGoogleアナリティクスなどの無料ツールを活用するとよいでしょう。「ゴルフだけでなくアウトドア全般に興味を持っている」「〇〇県のユーザーが自社サイトに多くアクセスしている」といった分析結果が考えられます。
これらを先述した自社データの活用例と組み合わせれば、「〇〇県に住む30代男性で、動画サイトを利用してアウトドアに関する情報を集めている」といったペルソナ設定につなげられます。
ペルソナ設定をするコツ3:アンケートやインタビューをする
ここまでは、すでに事業を展開している企業がペルソナ設定する方法を説明しました。さまざまなデータを持っている企業ではペルソナ設定をスムーズに進められますが、新たにビジネスを立ち上げる場合、適切にペルソナ設定をするのは簡単ではありません。ペルソナ設定に活用できるデータが少ない場合、次の手法で情報を集めるのがおすすめです。
- アンケート調査
- ヒアリング
アンケート調査は、店舗に訪れた顧客に対して書面でおこなう方法や、メールやSNSでおこなう方法などがあります。店舗でアンケート調査をすれば、実際に商品やサービスを利用した顧客の年齢や性別といった属性だけでなく、使用感やニーズを把握することで、「より飛距離の出るゴルフクラブがほしい」「さらに軽量化したモデルがほしい」といった情報をペルソナ設定に活かせます。
また、ヒアリングをすれば、趣味や自宅での過ごし方、これまでの生い立ちや将来の夢など、より踏み込んだ情報を得られます。「〇〇県の〇〇高校を卒業し、都内の〇〇大学に進学した。ゴルフサークルでは部長をしており、ほかの大学のゴルフサークルとよくラウンドに回っていた。現在もゴルフを趣味にしており、休日は動画サイトでフォームについて勉強している。定年退職してからも現在のゴルフ仲間とラウンドしたいと思っている」のようにペルソナ設定をすれば、より具体的な人物像を定められます。
ペルソナ設計をする際の注意点とは?
ここまでは、適切なペルソナ設定をすることについて説明しました。ペルソナ設定をすれば集客や売上につながるマーケティング戦略を考えやすくなりますが、次の注意点を意識しなければなりません。
- 先入観や思い込みで人物像を設定しない
- 担当者全員がイメージできる人物像を設定する
- ペルソナを定期的に見直す
以下では、これらの注意点について詳しく説明します。
注意点1:先入観や思い込みで人物像を設定しない
ペルソナ設定をする際は、先入観や思い込みで人物像を設定しないよう注意が必要です。ペルソナは当然架空の人物にはなりますが、そこに企業側の主観や理想が入ってしまうと、実際にいるユーザーの姿とは異なる物になってしまう可能性があるためです。根拠がないにもかかわらず「年収600万円、スマートフォンでSNSを閲覧している」のようなペルソナ設定をすると、マーケティング施策で思った成果を出せなくなるかもしれません。
そこで、国や行政による調査や、自主的に行うユーザーアンケート、自社の過去の顧客情報などから、客観的な情報を集め実際のユーザーに近いペルソナ像を設定しましょう。先の例で言えば、「アンケート調査で年収600万円前後の顧客が多かった」「自社のWEBサイトへのアクセス状況を解析すると、スマートフォンユーザーがSNS経由で流入する割合が最も多い」といった根拠があれば、ペルソナとして適切であると判断できるでしょう。
注意点2:担当者全員がイメージできる人物像を設定する
根拠をもとにペルソナ設定をしても、担当者全員が同じように具体的な人物像をイメージできるとはいえません。先に例に挙げたような「年収600万円、スマートフォンでSNSを閲覧している人物」というペルソナも、人によって思い浮かべるイメージは多岐にわたるかもしれません。特に、年齢や性別、立場などが異なるメンバーが集まっているプロジェクトの場合、それぞれの経験や価値観の違いなどから、1つの情報に対して思い浮かべるイメージにも相違が生まれやすくなります。
そのようにペルソナ像が統一できない状態でマーケティングを進めると、担当者間で認識にズレが生じてしまい、求める成果が得られなくなる可能性が高まります。そのため、できる限り担当者間で同じイメージを持てるようにペルソナ像を統一することが大切です。
調査などをもとにした情報に加え、氏名や年齢、住所や年収など、より細かく具体的な情報を盛り込むことで、誰もが想像しやすいレベルまで人物像を作り上げましょう。写真を用いて視覚的に人物像をイメージできるようにしたり、グラフを用いて年収や金融資産の推移などを視覚化したりするのも、ペルソナ像を統一させるために効果的です。
注意点3:ペルソナを定期的に見直す
先述したように、設定するペルソナ像が具体的であるほど顧客の置かれている背景や人物像をはっきりさせられるので、集客や売上につながるマーケティング戦略を立案しやすくなります。時代の変化とともに年齢やライフステージ、価値観や趣味嗜好が変わるようにペルソナ像も変化するため、定期的に市場の変化や成果を確認してペルソナを見直すことが大切です。
たとえば、設定したペルソナ像に「34歳、年収600万円。妻と子ども2人の4人暮らしで一軒家に住んでいる」という情報が含まれる場合、1年後には年齢が35歳になりますし、3年後には子どもがもう1人増えているかもしれません。
「社会情勢の変化で年収が500万円に下がり、住宅ローンの返済が苦しくなっている。妻は専業主婦だったが、パートで働き始めて年収100万円得るようになった」という変化があれば、「手ごろな価格で手に入る商品を開発する」「夫婦で購入すれば割引率を増やす」といった戦略を検討する必要性が出てきます。
まとめ
ここでは、ペルソナ設定とターゲット設定の違い、適切なペルソナ設定をするコツや注意点について説明しました。
マーケティングによって得られる成果を高めるためには、マーケティング施策を振り返る際に、設定したペルソナが適切であったかを評価することも大切です。ここで説明した内容を参考にして、企業の集客数や売上の向上につながるペルソナ設定をしましょう。
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