ビジネスに役立つフレームワークにもさまざまな種類があります。中でも3C分析は取り組みやすいフレームワークとして有名で、多くの企業で取り入れられています。
しかし、「3C分析はどのような目的でおこなうのだろう?」「3C分析をどのように進めればよいかわからない」という人も多いのではないでしょうか。3C分析をうまく進めるためには、フレームワークの概要を理解しておく必要があります。そこで今回は、3C分析の概要や目的、具体的な手法や成功事例について詳しく説明します。
目次
そもそも3C分析とは?
そもそも3C分析は、企業がマーケティング戦略を考える際に用いられるフレームワークのひとつです。次の3つの観点で企業内外の環境を分析するのが特徴です。
- Customer:市場・顧客
- Competitor:競合他社
- Company:自社の特徴
3C分析以外にも企業のマーケティング戦略を考えるフレームワークはたくさんありますが、3C分析は掘り下げる内容がそこまで専門的ではないので、多くの企業で手軽に取り組めます。また、企業の置かれている状況を客観視できるため、「今後どのような方針で事業を展開すればよいか」をイメージしやすくなります。
より具体的に3つのCの関係性をイメージできるように、身近なものを例にとって考えてみましょう。ここでは、とある高校のサッカー部で試合出場メンバーを決める状況に当てはめてみます。
Customer 監督 |
・これまでは実力主義で、技術を最優先にメンバーを決めていた。 ・現在はチーム全体の連携力も大事だと改めて考え始め、部員の意見も参考にしたい。 ・がんばっている人も評価してあげたいが、実力とのバランスが難しいと悩んでいる。 |
Competitor A君 |
・サッカー歴6年で部員の中でも上位に入る実力者。 ・朝練習を簡単に欠席したり、態度が悪かったりと、部活動や他部員に対して真摯とは言えない。 |
Company B君 |
・サッカー歴2年で、試合に出るには実力が少し乏しい。 ・A君と同じポジションを争っている。 ・練習は無欠席で、部活動全般に真面目に向き合っており、他部員ともよくコミュニケーションを取っている。 |
この場合、個人の実力を基準にするとA君とB君では圧倒的な差があるため、A君がメンバーに選ばれてしまう可能性は高いです。ただし、監督はチーム全体の連携力も大事だと考え始めているので、A君の日頃の振る舞いはチームに亀裂を及ぼす恐れがある一方、B君が他部員と築いている信頼関係はチームの団結力になり得ます。
B君が引き続き練習に真面目に向き合い、実力を上げていくことは大切ですが、経験の差などからA君に追いつくことは難しいでしょう。そこで、選抜メンバーに選ばれるための戦略としては、実力と同時にA君にはない「団結力への影響」を磨き、監督や他の部員に評価してもらう方法が考えられます。
ただし、監督が変わったり、A君が心を入れ替えて真面目に練習するようになったりと、B君以外の要素が変わってしまうと、この戦略だけでは通用しなくなってしまうでしょう。そのため、3つのCそれぞれのその時の状況をしっかりと把握し、自分が負けている要素や伸ばすべき要素を見極めていくことが大切なのです。
3C分析の目的を知っておこう
そんな3C分析はどのような目的でおこなうのでしょうか。
結論から言うと、3C分析の目的は「成功要因を見つける」ことです。先ほどもサッカー部の例において、自分が成功できるかもしれない要因を見つけることで戦略に繋げていくことを述べましたが、事業においても同じ考え方になります。
事業に影響を与える要因はさまざまなので、やみくもに情報を集めていくつもの施策を試すと、効率的に集客数や売上を伸ばすのが難しくなってしまうでしょう。
例として、「これまでは実店舗での売上が中心だったが、最近は通販部門の売上が大きく伸びている」という状況にある企業の場合、これだけでは成功要因が何なのか判断できません。このようなとき、3C分析で競合他社や市場の動きをリサーチすることで、成功要因を分析し、次のアクションを打つことができます。
具体的には、「テレワークの浸透によって外出が少なくなったサラリーマンの購買行動に変化が起きている。そのような市場のニーズの変化に競合他社はまだ対応できていないため、自社の通販部門の売上が伸びている」といった分析ができるかもしれません。すると、「サラリーマンを対象にオンライン販売に力を入れる」などといった戦略の方向性が見えてきます。
成功要因を見つけられれば、積極的に費用や手間をかける部分を明確化して、効率的な事業運営につなげられます。
3C分析と4C分析・SWOT分析の違い
ここまでは、3C分析の概要や目的について説明しました。3C分析と似たフレームワークには、「4C分析」や「SWOT分析」と呼ばれる分析方法もあります。それぞれどのような特徴があるか、ここでは3C分析との違いについて解説していきます。
4C分析との違い
3C分析が効率的なマーケティング手法を考えるフレームワークであるのに対して、4C分析は、自社製品の強みを「顧客目線」で分析する手法です。
4C分析では次の4つの観点で分析をおこないます。
- Customer Value:顧客価値
- Cost:顧客にとっての経費
- Convenience:顧客利便性
- Communication:顧客とのコミュニケーション
たとえば、「健康食品を購入したい」という顧客が、「仕事が忙しいので自宅にいながら自分に合った健康食品を手に入れたい」というニーズを持っているとします。
その場合、4C分析のフレームに当てはめると、「毎月定額で健康食品を届けるサブスクリプションサービスを導入するとともに、カスタマーサポートを充実させて、顧客1人ひとりに適した商品を提案できるようにする」といった戦略を考えられます。
4Cの各項目 | 詳細 |
Customer Value(顧客価値) | 毎月、自分に合う健康食品を手間なく入手できる |
Cost(顧客にとっての経費) | 毎月定額で支払う |
Convenience(顧客利便性) | 実店舗に行かなくても健康食品を入手できる |
Communication(顧客とのコミュニケーション) | カスタマーサポートを充実させて個別に商品を提案する |
3C分析と4C分析の違いを知っておけば、目的に応じてフレームワークをうまく使い分けて、効率的に集客や売上アップにつなげられるでしょう。
SWOT分析との違い
SWOT分析も、3C分析同様に戦略立案のために活用されるフレームワークです。詳しくは後述しますが、3C分析が自社と競合、市場という3つの視点で分析するのに対し、SWOT分析ではより細かく自社と外部環境との関係性を見ていきます。
自社の内部の要因を「強み」と「弱み」の2軸から、外部の要因を「機会」と「脅威」の2軸から、あわせて4つの軸を掛け合わせることで、改善すべきポイントや成長機会に繋がる要素を見つけ出します。SWOT分析は自社の状況を細かくみられる分析であることから、後にも解説する通り、3C分析におけるCompany(自社)の中で活用できるフレームワークでもあります。
3C分析の方法を知っておこう
- 市場・顧客の分析(Customer)
- 競合他社の分析(Competitor)
- 自社の分析(Company)
適切に3C分析をするためには、具体的な手順を知っておかなければなりません。
以下では、3C分析の方法について詳しく説明します。
市場・顧客の分析(Customer)
3C分析をする際は、まず「市場・顧客の分析」から始めます。市場分析と顧客分析はそれぞれ視点が異なるため、別々に分析を進める必要があります。
以下では、市場分析と顧客分析それぞれの手法を紹介します。
市場分析
市場分析は、企業がコントロールできない環境要因(マクロ環境)と企業に直接的な影響を及ぼす環境要因(ミクロ環境)に分けて分析を進めます。
マクロ分析をおこなう際は、「PEST分析」を用いるのが効果的だといわれています。
PEST分析は、次の4つの観点で環境分析を進めるのが特徴です。
- Politics(政治)
- Economy(経済)
- Society(社会)
- Technology(技術)
たとえば、教育系の教材を扱う企業の場合、以下のような分析ができるかもしれません。
4Pの各項目 | 詳細 |
Politics(政治) | 2020年から小学校でのプログラミングが必修化される |
Economy(経済) | 日本ではプログラミングスキルを持った人材が不足しているため、プログラミングスキルを身につけることで就職しやすくなる |
Society(社会) | 社会ではプログラミングを基盤としたエンターテインメントの需要が高まっている |
Technology(技術) | IT技術の発展で人々の暮らしが大きく変わろうとしている |
これらの情報から、「子ども向けプログラミング教材の必要性が高まる」といった分析結果を導き出せます。
一方、ミクロ分析をおこなう際は、「ファイブフォース分析」を用いるのが効果的だといわれています。ファイブフォース分析では、次の5つの観点から企業に影響を与える要因を分析します。
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
- 競争企業間の敵対関係
- 新規参入業者の脅威
- 代替品の脅威
先ほどの子ども向けプログラミング教材を販売する企業の分析例です。
ファイブフォースの各項目 | 詳細 |
買い手の交渉力 | 顧客は基礎的なプログラミング能力が身につく教材を安価で手に入れたいと思っており、無料で始められる教材はたくさんある(買い手の交渉力は高い) |
売り手の交渉力 | 教材の開発コストが高いので値下げが難しい(売り手の交渉力が低い) |
競争企業間の敵対関係 | 子ども向けプログラミング教材はすでに多くの企業が開発している(競争企業間で敵対しやすい) |
新規参入業者の脅威 | すでに子ども向けプログラミング教材の市場は飽和しつつあるので、新規参入は難しい(新規参入業者の脅威は弱い) |
代替品の脅威 | 消費者はインターネット上でプログラミング教材を簡単に比較できる(代替品の脅威が強い) |
これらの要素から、「子ども向けプログラミング教材のニーズは高まっていくが、競合が多く値下げ競争も激しい。開発コストがかかり値下げ競争だけでは生き残るのが難しい」といった分析結果が導き出せます。
顧客分析
顧客分析では、顧客がどのようなニーズを持っているかをなるべく正確に把握します。
具体的な手法として、アンケート調査やヒアリングなどがあります。「無料で始められる子ども向けプログラミング教材は多いが、掘り下げた学習ができないためうまく理解できない」のように、商品やサービスに対する不満も把握することで、顧客満足度を高める戦略を考えやすくなります。
競合他社の分析(Competitor)
市場・顧客の分析をしたら、次は競合他社の分析をおこないます。
先ほどの子ども向けプログラミング教材を例にすると、「A社では無料でサービスを提供しているが、一定のユーザー数を獲得するとともに利益も出せている。しかし、単元ごとに掘り下げた学習ができるものが少ない。一方、B社は費用を高く設定しているが、コンテンツが充実しているため長く学習を続けられる。しかし、子どもの興味や関心を引き出す仕組みが整っていない」といった分析ができます。
従業員数や求人の内容、オフィスの立地やアフターフォロー体制など、なるべく幅広い情報を集めることで、企業にとって有利なポジションを見つけやすくなります。
自社の分析(Company)
外部環境の分析ができたら、最後に自社の分析をおこないます。
自社分析をする際は、「SWOT分析」をするのが一般的です。SWOT分析では、次の4つの観点で企業の現状を把握します。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
こちらも同様に子供向けプログラミング教材を手掛ける企業で考えてみましょう。
SWOTの各項目 | 詳細 |
Strength(強み) | 自社では子どもに親しまれるオンラインコンテンツをたくさん配信しており、プログラミング教材の開発にも力を入れている |
Weakness(弱み) | 開発コストがかかるため値下げが難しい |
Opportunity(機会) | 2020年から小学校でプログラミング教育が必修化になる |
Threat(脅威) | すでに子ども向けプログラミング教材を開発している企業は多く、価格競争が激しくなっている |
このように、企業の強みや弱みを明確にできれば、「子どもに親しまれる既存のコンテンツを取り入れたプログラミング教材を開発し、学習したい内容ごとに料金を支払う仕組みを設ける」といった戦略を導き出せるでしょう。
もちろん業種や市場によって分析結果や立案すべきマーケティング戦略は変わりますが、基本的な流れを知っておくと3C分析を進めやすくなります。
3C分析の成功事例を見てみよう
ここまでは、3C分析の方法について説明しました。子ども向けプログラミング教材を例に解説しましたが、3C分析をより具体的にイメージするためには、さまざまな企業の事例を知るのがおすすめです。
以下では、3C分析の成功事例を紹介します。
アパレル通販サイトの事例
大手アパレル通販サイトの3C分析は次のようになります。
市場・顧客の分析(Customer) |
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競合他社の分析(Competitor) |
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自社の分析(Company) |
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競合の多いアパレルECサイトですが、この企業では「幅広い顧客ニーズに対応できるアイテムを扱う」という強みを活かして多くの売上を出しています。
コーヒーチェーン店の事例
コーヒーチェーン店における3C分析の事例は、次のようになります。
市場・顧客の分析(Customer) |
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競合他社の分析(Competitor) |
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自社の分析(Company) |
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この店舗は、他店のように手頃な価格で利用できる庶民的な店舗ではありませんが、積極的に新商品を開発することでファンを増やすことに成功しています。
ハンバーガーショップの事例
ハンバーガーショップの3C分析は次のようになります。
市場・顧客の分析(Customer) |
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競合他社の分析(Competitor) |
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自社の分析(Company) |
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価格だけでなく、スピード感や手軽さの面においても強みを活かせていることから、市場において有利なポジションを確立できています。
とんかつチェーン店の事例
とんかつチェーン店を例にして3C分析をすると、次のようになります。
市場・顧客の分析(Customer) |
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競合他社の分析(Competitor) |
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自社の分析(Company) |
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この事例の店舗では、とんかつの提供を強みとしていますが、市場の変化によって業績が伸び悩んでいるという課題を抱えています。しかし、男性客から支持され続ける店舗づくりを進めるとともに、お持ち帰りメニューの開発や提供をすることで業績を回復させています。
3C分析をうまくおこなうポイントとは?
ここまでは、3C分析のやり方について説明しました。成果につながるマーケティング戦略を立案するためには、手順だけでなく次の3つのコツを意識することも大切です。
- 正確な情報収集を心がける
- それぞれのCの繋がりを意識して分析をおこなう
- 戦略を長期と短期に分けて考える
以下では、3C分析をうまくおこなうコツについて詳しく説明します。
正確な情報収集を心がける
目的を持って情報収集するのは大切ですが、正確な情報収集も心がけなければなりません。どれだけ多くの情報を集めても、それらが間違っていれば誤ったマーケティング戦略の立案につながりかねないからです。
企業内の分析であれば、精度の高い情報を集められるでしょう。しかし、消費者のニーズや競合の売上、政治経済の変化によって市場に与える影響など、企業外の情報を集める場合は情報の信憑性が低くなりやすいです。
情報収集方法としては、「消費者のニーズを把握する場合ばヒアリング」「社会全体の動向を知るのであれば信頼性の高い研究機関が発表したデータを用いる」などが考えられます。信憑性が高い情報であるほど集客や売上につながるマーケティング戦略を立案しやすくなるので、情報収集能力を高めることが大切です。
業種によっては競合他社が多数存在する場合もありますが、それらすべての情報を集める必要はありません。自社の情報に比べると他社の情報は質や量はどうしても劣ってしまいますが、可能な範囲で必要と思われる情報だけを正確に収集していきましょう。
それぞれのCの繋がりを意識して分析をおこなう
3C分析は、3つのCがそれぞれ相互に影響しあっている事を意識して進めることで、導き出す結論に一貫性を持たせることができます。順序立てて分析していくことも大切な考え方ですが、それぞれの要素を切り分けて分析を行ってしまうと、方向性にずれが生じる可能性もあります。
1つの要素を分析している際には、他の要素との相互関係を忘れないようにし、何度も往復するような形でそれぞれの分析を深めていくとよいでしょう。
戦略を長期と短期に分けて考える
3C分析の結果、やるべきことが見えてきたら、短期的に実施すべきことと長期的に取り組むべきことに分けて戦略を練ります。
短期的に実施すべき戦略とは、大きな費用や手間をかけずに実行できる手法です。たとえば、関連商品の提案が売上につながることが分かった場合、「購買歴をもとにダイレクトメールやメールマガジンで関連商品を提案する」といったマーケティング手法につなげられます。また、販売スタッフに対して「商品を提案する際は関連商品も一緒におすすめする」といった教育をすれば、短期間で売上を伸ばせるでしょう。
一方、長期的に取り組む戦略には、新製品の開発や新規事業の展開といった、効果が期待できても費用や時間がかかる手法があります。たとえば、「現在は店舗周辺エリアでしか販売していないが、全国的にニーズがありそうなので将来的には全国に店舗を展開していく」といった戦略が考えられます。企業の規模にもよりますが、戦略によっては失敗したときの損失が大きくなる場合があるため、慎重に検討することが大切です。
まとめ
ここでは、3C分析の概要や目的、分析の手順や他店の成功事例について説明しました。ここで説明した内容を参考にして、3C分析で適切なマーケティング戦略を導き出しましょう。
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