キャッシュレス決済には、クレジットカードやコード決済、非接触型IC決済などさまざまな方法があります。中でもクレジットカードは従来から多くの店舗や消費者に利用されていますが、インターネットやスマートフォン、ITツールなどの普及によって、その他のキャッシュレス決済を導入するケースも増えています。
また、2019年10月の消費税増税の負担を軽減する目的でおこなわれていた「キャッシュレス・ポイント還元事業」では、決済金額の一部が消費者に還元されていたため、キャッシュレス決済の導入数増加につながっています。経済産業省によると1,189社に実施したアンケートで回答した事業者におけるキャッシュレス導入率は約7割となっており、キャッシュレス決済がより一般化してきたといえるでしょう。
しかし、「キャッシュレス決済を導入しようかまだ悩んでいる」「キャッシュレス決済を導入したらどのような変化があるのだろう?」と考える事業者も多いのではないでしょうか。今回は、キャッシュレス決済の種類や店舗に導入するメリットデメリット、導入する際の注意点について詳しく説明します。
参考:キャッシュレス決済 実態調査アンケート集計結果│経済産業省
目次
まずはキャッシュレス決済の種類を知っておこう
- クレジットカード
- 非接触型IC決済(電子マネー)
- QRコード・バーコード決済
キャッシュレス決済にはいくつかの種類があり、3つに分類できます。
クレジットカード決済は、「VISA」「Master」「JCB」など、さまざまなカードブランドが提供するサービスで、日本では多くの消費者が利用している方法です。決済金額を1ヵ月ごとに、後日銀行口座からまとめて引き落とす「後払い方式」になっています。
また、デビッドカードのように決済と同時に口座から現金が引き落とされるタイプを使えば、口座残高の範囲内でショッピングできます。
非接触型IC決済は、「Suica」「PASMO」のような交通系ICや、「WAON」「楽天edy」のようにカードやスマートフォンに内蔵されているICチップを専用の端末で読み込むことでチャージ金額から決済する方法です。クレジットカードのように審査をせずに作成できるため、誰でも手軽にキャッシュレス決済を使い始められます。ただし、サービスごとにチャージ金額の上限が設けられているので、高額商品の購入に対応しづらいのがデメリットです。
コード決済には、QRコード決済やバーコード決済が含まれており、スマートフォンアプリで決済用のコードを表示させ、店舗側の端末で読み込むことで決済を完了させる方法です。サービスによっては、店舗側がコードを表示させて消費者がアプリで読み込む仕組みを設けているところもあります。わざわざカードを作成して持ち歩く必要がなかったり、アプリ上でチャージや決済金額の履歴を確認できたりすることから、より手軽に金銭管理できます。
店舗にキャッシュレス決済を導入するメリット
そんなキャッシュレス決済には、次の4つのメリットがあります。
- 現金を扱う手間を抑えられる
- 売上や在庫の状況をデータ化できる
- 店舗の売上アップにつながる
- セキュリティ対策にもなる
以下では、これらのメリットについて詳しく説明します。
現金を扱う手間を抑えられる
店舗にキャッシュレス決済を導入すると、現金を扱う機会が減るので業務の手間を抑えられます。会計時の現金の受け渡しやレジ締めといった業務をスムーズにしてくれるので、ほかの業務に専念できます。
「会計業務がスムーズになるのでレジ業務の人員を接客に回そう」といった戦略をとれば、より効率的にお店を運営できるでしょう。
売上や在庫の状況をデータ化できる
キャッシュレス決済による取引データは、レシートなどの紙媒体ではなくシステム上にデータとして残されます。「曜日ごとに売上がどのように変化しているのか」「先月と比較して売上はどの程度増えたのか」といった情報を簡単にチェックできるので、事業方針を考えやすくなります。
また、取引データを在庫管理と連携させれば、リアルタイムで商品の在庫を確認することも可能です。「商品が品薄になってきたから追加発注しよう」「在庫が余りそうだから早めに割引しよう」といった施策をタイムリーに考えられるので、過剰在庫や品切れを防ぎやすくなります。
店舗の売上アップにつながる
キャッシュレス決済を導入すれば、現金以外の支払い方法に対応できます。先述したように、現金を受け渡しする手間も軽減できるため、商品やサービスに対して高まった興味や関心をそのまま購買行動につなげることも可能です。
また、キャッシュレス決済の種類によっては、利用金額に応じて所定のポイントが付与されるものもあります。店舗によっては独自のデジタルクーポンを配布できるので、より多くの顧客を呼び込めるでしょう。
セキュリティ対策にもなる
現金の受け渡しをする機会が少なくなるキャッシュレス決済では、店舗で管理する現金を少なくできるのでセキュリティ対策にもなります。
また、店舗によっては売上が多く、銀行などに多額の現金を持ち運ばなければならないケースもあります。キャッシュレス決済を導入すれば、持ち運ぶ現金を少なくできます。
店舗にキャッシュレス決済を導入するデメリット
ここまでは、店舗にキャッシュレス決済を導入するメリットについて説明しました。さまざまなメリットが生じるキャッシュレス決済ですが、次のデメリットも知っておかなければなりません。
- 導入費用が発生する
- 決済手数料を負担しなければならない
- 入金まで時間がかかる場合がある
以下では、これらのデメリットについて詳しく説明します。
導入費用が発生する
キャッシュレス決済を導入するには、必要な環境を整えるためにある程度の費用を負担しなければなりません。具体的には、次のような費用がかかります。
- スマートフォンやタブレット代:数万円
- 決済専用端末:0~数万円
- インターネット通信費:月額3,000円~
- レシートプリンター:2~5万円
どのキャッシュレスサービスを選ぶのか、店舗にどのような設備があるのかによって導入費用は異なりますが、金額によっては大きな負担になる場合があります。事前に見積もりをしてもらうなど、費用をシミュレーションしておくことが大切です。
決済手数料を負担しなければならない
キャッシュレス決済事業者によって違いがありますが、キャッシュレス決済を導入すると、決済金額の3%程度を「決済手数料」として負担しなければなりません。たとえば、10万円の決済をした場合、決済手数料の割合が3%であれば3,000円を負担する必要があります。キャッシュレス決済の金額が多くなるほど店舗の負担が増えるため、利益を多く残すためには決済手数料を抑えることも大切です。
また、キャッシュレス決済事業者によっては、売上とは別に月額費用や別途手数料が発生する場合があります。費用を抑えてキャッシュレス決済を導入するためにも、キャッシュレス事業者ごとの料金設定を慎重に比較しましょう。
入金まで時間がかかる場合がある
キャッシュレス決済は現金を使わない決済方法なので、決済金額が店舗の口座に入金されるまでにタイムラグがあります。具体例として、「決済金額の入金日は毎月〇日と〇日」「締め日の翌月末に一括振込み」といった入金方法が挙げられます。
キャッシュレス事業者によっては入金する時期が遅かったり頻度が少なかったりするため、必要な現金が必要なタイミングで手に入れられなくなるかもしれません。仕入れなどで必要になる現金が不足すると円滑な店舗運営ができなくなるので、手数料だけでなく入金タイミングもしっかり確認しましょう。
キャッシュレス決済を店舗に導入する際の注意点
ここまでは、店舗にキャッシュレス決済を導入するデメリットについて説明しました。キャッシュレス決済を適切に導入してメリットを活かすには、次の注意点を意識することが大切です。
- 利用者が多いキャッシュレス決済を導入する
- 業種に合ったキャッシュレス決済を選ぶ
- 複数店舗の売上管理に対応しているか確認する
- 複数の支払い方法に対応しているかチェックする
以下では、これらの注意点について詳しく説明します。
利用者が多いキャッシュレス決済を導入する
店舗側に生じるメリットが大きいキャッシュレス決済を選んでも、利用者数が少なければ意味がありません。キャッシュレス決済をたくさんの人に利用してもらうには、複数の決済方法から利用者数が多いものを導入することが大切です。
特に、クレジットカードは優先的に導入を検討したほうがよいキャッシュレス決済方法です。日本銀行決済機構局によると、キャッシュレス決済の中でもクレジットカードを利用する人の割合は9割以上となっています。クレジットカード決済を導入するだけで、キャッシュレス決済を利用する人のほとんどをカバーできるため、まずクレジットカード決済を導入してからほかの決済方法を選ぶのもよいでしょう。
参考:日本銀行決済機構局
業種に合ったキャッシュレス決済を選ぶ
導入すべきキャッシュレス決済方法としてクレジットカードを挙げましたが、業種によってはほかのキャッシュレス決済を選んだほうがよい場合もあります。たとえば、顧客1人あたりの単価が1,000円以内で多くの顧客が訪れる店舗など、会計手続きの手軽さが求められるところは、非接触型IC決済やコード決済を導入するのがおすすめです。
しかし、商品1つあたりの金額が高い業種では、これらの方法では決済できない可能性があります。必要に応じてクレジットカードを導入するなど、業種ごとに適したキャッシュレス決済を選びましょう。
複数店舗の売上管理に対応しているか確認する
事業者によっては、店舗を複数運営していたり、今後店舗数を増やそうと考えていたりするかもしれません。しかし、キャッシュレス決済によっては店舗ごとでしか売上管理できず、最終的に手作業で売上を集計しなければならないケースもあります。これではキャッシュレス決済の導入によって業務効率を改善できたとはいえません。
キャッシュレス決済のメリットを活かした店舗運営をするには、多店舗経営に対応しているかを確認することが大切です。サービスによっては、独自に設定した売上分析ができたり、スマートフォンと連携させて離れた場所からリアルタイムで店舗の売上をチェックできたりするので、目的に応じて適切なキャッシュレス決済を選びましょう。
複数の支払い方法に対応しているかチェックする
高額商品を取り扱う店舗の場合、顧客によっては「分割払い」「ボーナス払い」といった複数の支払い方法を希望する場合があります。しかし、非接触型IC決済やコード決済のほとんどは「1回払い」にしか対応していないため、導入しているキャッシュレス決済の方法によっては顧客を取りこぼしてしまうかもしれません。
そのため、店舗によっては「複数の支払い方法に対応しているか」を確認したうえでキャッシュレス決済を導入する必要があります。多くのクレジットカードでは複数の支払い方法に対応しているため、優先的に導入を検討したほうがよいでしょう。
まとめ
ここでは、キャッシュレス決済の種類や導入のメリットデメリット、導入時の注意点について説明しました。
ここで説明した内容を参考にして、利便性や売上の向上につながるキャッシュレス決済を導入しましょう。