飲食店の開業を成功させるには、7割は立地で決まるともいわれるほど、立地は大きな影響を与えます。たしかに、おいしい料理や丁寧なサービスが揃った店舗であっても、不便な場所であれば客側も頻繁に通いたいとは思いにくいでしょう。そのため、立地に関する吟味は欠かすことのできない重要事項です。
そこで本記事では、立地の種類や特徴、開業前に必ず行いたい立地調査の方法などを紹介します。
目次
飲食店経営で立地が重要な理由
「料理の腕さえよければ、客側はそれに惹かれて通ってくれるだろう」と考える方もいると思います。どうしてそこまで立地が重要だというのでしょうか。それは、自店の特徴と、出店しようとするエリアの「相性」です。
例えば、自店がゆっくり食事を楽しむような高価格帯のコース料理を提供するお店であるにもかかわらず、学生が多く住むようなエリアに出店しても固定客は見込めないでしょう。反対に、高級住宅が多いエリアであれば、ランチをゆっくり楽しみたい主婦層に受け入れられるかもしれません。
このように、提供する料理やサービスなどといった自店のコンセプトにマッチしたターゲットを得られやすい立地であるかどうかは、開業するにあたって重要な要素を占めるのです。自店のコンセプトとエリアの相性がマッチしていれば「好立地」であるといえます。移動店舗と異なり、相性が合わないからといってすぐに場所を変えようということはできません。そのためにも立地の吟味は優先度の高い要素であるといえます。
立地の種類ごとの特徴
立地の検討を行うにあたり、立地の種類には、大きく分けて次の項目が考えられます。
- 繁華街
- 住宅街
- ビジネス街
- 駅近
- 郊外
それぞれどのような特徴があるのか説明していきます。
繁華街
「繁華街」とは、都市圏の駅前のような、公共交通機関が発達していて人通りや交通量が多く、飲食店や専門店、大きな商業施設が充実した便利な地域です。店舗のみならず、銀行や病院などさまざまな施設が並ぶことから、曜日や時間を問わず人の出入りが多く、集客数を伸ばしやすいエリアであるといえます。
また、平日ならビジネスマン、休日なら学生や若者など、昼夜問わず幅広いターゲット層が集まるエリアであるというのが繁華街の特徴です。
住宅街
繁華街と比較して賃料は安く、住民をターゲットとした店舗であれば固定客を得られる見込みもあります。
例えば高級住宅街では主婦層をターゲットとした高価格帯のランチやコース料理が好まれ、仕事が多忙な上に食べ盛りの子どもの多い家庭をターゲットとすれば、ボリュームや価格の安さを重視したものが好まれるなど、住民の層に合わせた集客が可能です。
ビジネス街
「ビジネス街」とは文字通り、企業が多く集まるエリアです。そのため、平日のランチタイムや仕事帰りの時間帯に大きな需要が期待できます。ビジネスマンというターゲットが明確であるため競合店舗は多く、自店がどのような差別化を図れるかがポイントとなります。反対に、ファミリー層や休日の集客を狙うのは難しいといえるでしょう。
駅近
繁華街とも共通していますが、「駅近(えきちか)」は人通りが多いことから、広告宣伝にかかわらずある程度の集客が期待できるエリアです。また、駅が近いため徒歩で行き来をする人が多く、アルコールの需要は大きいといえます。
一方、賃料は高いため、出店にはじっくりと吟味することが必要です。
郊外
「郊外」とは、都市の中心部から離れた、住宅が立ち並ぶ地域や緑や田園が広がるような地域をさします。中心部と比較して賃料が安いというのが郊外に出店する大きなメリットです。賃料以外の初期費用も比較的安く設定されている場合も多く、ゆとりをもった予算を組むことができます。競合店が少ない地域であれば固定客を得られやすいというのも大きな魅力です。
飲食店の立地選びのポイント
立地の種類が把握できたら、次は立地選びのポイントを紹介します。
- 商圏の範囲を確認する
- 周辺の人通りを調査する
- 最寄り駅までの経路を調べる
- 家賃を確認する
商圏という広い視点から、自店周辺の人通りや家賃まで、さまざまな方面に視点を置くことが必要となりますが、いずれも立地選びをする際には欠かせないポイントです。
商圏の範囲を確認する
「商圏」とは、出店するにあたって来店が見込める客層の生活する範囲のことをさします。商圏は一次商圏と二次商圏に分かれており、一次商圏は都市部であれば500m、郊外であれば3kmがその範囲であるといわれています。自店の商圏範囲を設定するときには、利用客が無理なく来店できる範囲であることが重要です。
また、自店の商圏範囲内の人口や、その中でもターゲットとなる人はどのくらいいるのか、という分析を行うことで、売上のシミュレーションができるため、商圏の範囲を設定することは大変重要なポイントとなります。
周辺の人通りを調査する
立地選びのポイントとして、自店周辺の人通りの調査も重要です。予約のみの店舗ではなく、ランチタイムにフリーで訪れるような客層をターゲットとしている店舗は特に徹底的な調査を行いましょう。
自店が人の目につきやすい場所にあれば、日常的に自店の存在をアピールすることができます。自店の存在を認識してもらうことができれば、常にランチタイムの店選びの候補としてあがるようになり、さらに人通りが多く利便性がよい場所であれば回転率の高い集客を期待することもできます。
最寄り駅までの経路を調べる
出店の候補としている場所から最寄り駅までの経路を自ら歩いて調査してみましょう。
最寄り駅まで歩いてみて遠いと感じるか近いと感じるか、急な坂道など歩くのに不便さはないか、自店の場所を説明するのに目印はあるか、周辺にはどのような店舗があるのか、客側の目線で確かめてみます。その際には最寄り駅の利用者はどのくらいの人数なのかも時間帯を分けながら調査するのも、先に紹介した人通りの調査とも関連づけられるのでおすすめです。
家賃を確認する
自店を運営するのに家賃の支払いは欠かすことができません。他の条件がどんなによくても、家賃が高額であればその分だけ売上が必要となり、それを維持し続けなければなりません。家賃を検討する際には、不況時や売上の多寡にも左右されることなく継続的に支払うことができるかを確認しましょう。自店のメニューやターゲットとする客層から予想される売上を、よい場合と悪い場合など数パターン考え、どの程度なら家賃に振り分けることができるか数値化します。
また、家賃は月々の支払いとしてとらえるのではなく、年単位で必ずかかるコストとして意識的な管理を心がけましょう。
飲食店の出店場所を決める立地調査の方法
自店の内装やメニューは、何度も見直しを図ることは可能ですが、出店する場所は一度決めたらそう簡単には変更することはできません。立地調査を軽視すると、思ったような集客や満足な売上が得られず、あとで後悔するという状況にもつながります。そのため時間をかけてでも立地調査は入念に行いたいものです。
- 近隣店舗から情報を集める
- 飲食店の需要の程度を把握する
最後に、主な立地調査の方法を紹介します。
近隣店舗から情報を集める
自身の足を使って立地調査を行うのは想像以上に時間と手間を要します。さらに立地調査は一度行えばよいのではなく、季節や一般的な繁忙期などといった年間での調査が必要です。
何度も時間をかけるのが難しいようであれば、思い切って近隣の店舗から情報を集めるのも一つの手です。競合となる飲食店だけでなくさまざまな業種の店舗に聞くことで、さまざまな視点からの情報が得られるだけでなく、顔見知りになることで立地調査に関連する以外の情報も手に入れることができるかもしれません。
飲食店の需要の程度を把握する
人通りや家賃面など条件がよいと思われる立地であっても、ふたを開けてみたら飲食店の需要がなかったということも少なくありません。ビジネス街のランチタイムを狙って出店してみたものの、昔からの習慣からお弁当を持参する会社が多かったり、大手の企業であればしっかりとした社員食堂を備えていたりして、ランチタイムの売上が予想を大きく外れてしまったということも想定されます。
一度出店してしまえば簡単に変更はできません。周辺の地域を歩いて、どのような業態の飲食店が多いか、どの程度の距離に競合となりそうな店舗があるのかなど、飲食店の需要の程度を総合的に把握することも重要でしょう。
まとめ
今回は、飲食店出店における立地調査の重要性について紹介しました。
飲食店出店が成功するためには、立地の良し悪しは非常に重要です。どんなに自店の料理やサービスが充実していても、需要がないことには売上は伸びず、存続にも大きな影響を与えます。
繁華街やビジネス街、住宅地など、自店のコンセプトがどのような立地に適しているのかをしっかりと見極めて、近隣店舗からも情報を得るなどで立地調査をあらゆる角度から徹底して行い、自身が納得した上で出店を検討するとよいでしょう。
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