レストランを運営していく上で、コンセプトの設定は重要な要素の一つです。コンセプトは明確であればあるほど、メニューや価格の設定、店舗のデザインなどを決めやすくなったり、レストランの方針にズレが生じてしまった場合でも、コンセプトを元に軌道修正をすることができます。

ここでは、レストランになぜコンセプトの設定が重要なのかについて説明した上で、実際にコンセプトを設定する際に役立つ「5W2H」の考え方について紹介します。

レストランの集客にはコンセプト設定が重要

レストランの集客において、コンセプトの設定は重要な要素の一つです。コンセプトは「方向性」「骨組み」を意味し、レストランの集客や経営プランを立てる際の指標となります。

また店舗側が来てほしいと望むターゲットと、実際にレストランを訪れる顧客のミスマッチが起こりにくくなることもメリットの一つです。

レストランのコンセプトは5W2Hで考える

数あるレストランの中で自分の店舗が埋もれてしまわないようにするためにも、コンセプトの設定は大切です。レストランのコンセプト作りは、5W2Hを基本に作ることで、コンセプトをわかりやすく明確化できます。5W2Hは以下の7つの項目に分けて考えることができます。

レストランのコンセプトは5W2Hで考える
  • What(何を)
  • Why(なぜ)
  • When(いつ)
  • Where(どこで)
  • Who(誰に)
  • How(どのように)
  • How much(いくらで)

「7つも細かく決めていくのは大変そう」と感じてしまうかもしれませんが、一つずつ丁寧に決定していくことで、より確固たるコンセプトを設定しやすくなります。

What(何を)

What(何を)では、「レストランでどんな料理や飲み物を顧客に提供するのか」について考えます。メニューの内容はもちろん、「地元の食材を使用したい」「ボリュームのあるメニューで顧客に満足感を感じてほしい」などのこだわりなども書き出してみましょう。

Why(なぜ)

Why(なぜ)では、「どうしてレストランを開こうとしたのか」について考えます。

例えば「地域に気軽に立ち寄れるようなレストランがなかったから」「中華料理について勉強したから」などの理由が挙げられる場合、さらに「なぜそのように思ったのか」について突き詰めていくことで、他の店舗にはないレストランの価値を見出すことができるでしょう。

When(いつ)

When(いつ)では、「何時から何時まで営業するのか」「定休日を週のどこに設定するか」を考えます。周辺にレストランを始めとする飲食店がある場合、どの時間帯に来店数が集中しているか、コアタイムを事前に調べておくとよいでしょう。

例えば商店街の中にレストランを構えており、帰宅途中に食事をとりたい社会人をターゲットとする場合、18時以降の夜間に営業し、週の中日である水曜日を定休日にするなどの時間設定が考えられます。

Where(どこで)

Where(どこで)では、「どのような場所で営業するのか」について考えます。

エリア選びは次に説明する「Who(誰に)」にも関連するため、レストラン経営において大切なポイントの一つです。

商店街なのか、住宅地の近くの閑静な場所なのか、オフィス街なのか、などよって顧客層が変わってくるため、レストランを出店したいエリアの特徴は把握したうえでコンセプトを考えましょう。

Who(誰に)

Who(誰に)では、「どんな人をターゲットにするか」について考えます。

前述したように「Where(どこで)」が決まればターゲットとなる顧客層もある程度絞ることができますが、さらに年齢層や性別、どういった職業の人でどんなライフスタイルなのか、などを具体的に設定していくことで後述する「How much(いくらで)」の部分も決めやすくなり、具体的なコンセプトもイメージしやすくなります。

How(どのように)

How(どのように)では、「どのようなスタイルで料理やサービスを提供するのか」について考えます。

コース料理を提供するのか、メインメニューだけテーブルで注文し、副食やデザートなどはセルフで提供するのか、またどんな空間で顧客にサービスを提供するのかを決めていきます。同時に、「自店のレストランではこのようなサービスを提供しています」ということをターゲットに知ってもらう情報発信の方法も検討しておくとよいでしょう。

How much(いくらで)

How much(いくらで)では、「レストランのメニューやサービスをいくらで提供するのか」について考えます。

どんなにレストランで提供するメニューの味やサービスに自信があっても、価格が「Who(誰に)」で設定したターゲットのニーズに見合っていなければ顧客が次も利用しようと思ってくれません。

価値にあった適切な値段設定をするためには、競合店と値段設定をあわせるのか安くするのか、または高くしてその分顧客にとってメリットになる要素を加えるのかなどについて考えましょう。

5W2Hを考えるときは、シートにまとめると分かりやすくなります。マネケルでは、無料でお使いいただける5W2Hコンセプトシートをダウンロードいただけますので、ぜひお使いください。

5W2Hコンセプトシート

レストランのコンセプトを設定するポイント・注意点

レストランのコンセプトを設定する際に、押さえておくべきポイントや注意点にはどのようなものがあるでしょうか。このセクションでは、大きく3つに分けて紹介します。

3つの視点を持って考える

レストランのコンセプト設定だけに関わらず、「あらゆる角度から客観的に物事を見る」ことは大切です。

レストラン側の視点だけでなく、顧客側から見てレストランがどう見えているか、ニーズを満たしているかを把握しましょう。顧客のニーズを知るには、次の3つの視点を持って考えます。

  • 鳥の目
  • 虫の目
  • 魚の目

一つずつどのような視点なのかを紹介します。

鳥の目

「鳥の目」とは高いところから物事を客観的に見る視点のことです。広い視野でレストラン全体を把握するために使います。

例えば、席数を多く確保したことによって入り口から座席までの動線が悪くなっていないか、席と席の間隔が狭くなって顧客が落ち着けない空間になっていないかなどを把握することができます。

虫の目

「虫の目」とは小さな問題でも漏らさず細部まで確認する視点のことです。

例えば、レストランのメニュー表が顧客にとって読みやすいレイアウトになっているか、店内や店舗の周囲の清掃が行き届いているかなどを把握する際に使います。

魚の目

「魚の目」とは流行や物事の変化などの「動き」を確認する視点のことです。

トレンドの移り変わりは早く、どんなに需要が急上昇したとしてもあっという間に次のトレンドに変化して需要が減少していきます。世間での動きや流行を察知し、レストランのコンセプト設定に活かしましょう。

5W2Hはそれぞれ矛盾がないか確認する

「5W2H」を設定した後は、各項目を見比べて矛盾しているところはないか確認しましょう。

例えば、Whoが小さな子供がいるファミリー層なのにWhereがビジネス街の場合は矛盾しているため修正する必要があります。「5W2H」を設定する際は項目を一覧にまとめたり、大切なキーワードに印をつけるなどして、あとで見返しやすくしておきましょう。

無理なコンセプトを設定していないか

「5W2H」のすべての項目を埋めた後は、「ターゲットと営業エリアに矛盾はないか」「営業時間や価格は対応できる範囲か」などを一つずつチェックしておきましょう。

前述した鳥・虫・魚の「3つの視点」から確認するとより確固たるコンセプトを作成しやすくなります。

コンセプトを伝える時はキャッチーな一言で印象付ける

コンセプトをターゲットに伝える際は、キャッチフレーズを用いて印象に残りやすくすると効果的です。キャッチフレーズ(キャッチコピー)とは、顧客の興味を引きつける謳い文句のことです。

例えば、ファミリーレストラン「デニーズ」の場合、「三世代が一緒にくつろげる空間」というキャッチフレーズから、家族団らんでゆっくりできる空間であることが伝わってきます。

他にも「シェフズ ライブ キッチン」の場合は「ヘルシー」「ビューティ」「フレッシュ」という3単語でどんな料理を提供しているか、どんな効果が得られるか、どんな食材を提供しているかをユーザーに示唆させる工夫がされています。短く覚えやすいワードを選択することで、顧客はコンセプトとレストランを紐付けやすくなります。

参考:2015年 リリース | デニーズ(2021年6月時点での掲載内容を参照)

参考:シェフズライブキッチン | ストリングスホテル 名古屋(2021年6月時点での掲載内容を参照)

まとめ

レストランのコンセプト作成は、「どんな店舗を運営していくか」を決める上で重要な指標になります。顧客に利用してもらえるレストランを経営していくためにも、自身がお店のコンセプトを詳しく理解しておく必要があります。

「どのような方法でコンセプトを定めればいいのかわからない」と悩んだ際、まずは今回紹介した「5W2H」を元に一つずつ要素を分解して考えることをおすすめします。「自分が実現したいレストランはどのような店舗か」を整理しやすくなるだけでなく、矛盾がないかということにも気づきやすくなるでしょう。

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