美容院の集客について「なぜかお客様が集まらない」「狙ったとおりの成果が上がらない」といった悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。その原因の1つとして、美容院の「コンセプト作り」に何らかの問題がある場合があります。
美容室のコンセプトが明確になれば、お客様の満足度は向上し、従業員にとっても働きやすい環境が自然とつくられるでしょう。そこで、今回は美容院のコンセプトを決めるメリットや作り方、効果的な周知方法などについてご紹介します。
美容院のコンセプトを決めるメリット
- 店の魅力を明確に伝えられる
- 経営者とスタッフが店の方向性を共有できる
- 他店と差別化を図れる
- ターゲットが絞られる
コンセプトには「全体を貫くための基本的な観点や考え方」といった意味があります。美容院がコンセプトを決める理由は「お客様に美容院の魅力を伝え、スタッフに目指すべき目標を伝えるため」です。
コンセプトを決めることで、集客活動や職場環境など経営に関するさまざまな場面でメリットが生じます。ここでは、美容院がコンセプトを決めることで得られる4つのメリットをみていきましょう。
店の魅力を明確に伝えられる
美容院がコンセプトを決めることで、特に売りにしているサービスや魅力などをお客様に明確に伝えられます。人気のある美容院には、お客様がその美容室を利用したいと思わせるなんらかの理由があるはずです。
例えば「スタイリストのカット技術が高い」「カット以外の時間もお客様が心地よく過ごせるように工夫している」「小さな子供とも一緒に行ける」などです。コンセプトを明確に伝えることができれば、それに魅力を感じたお客様を惹きつけることができます。
金額や技術はもちろんのこと、サービスや世界観、雰囲気、立地などもコンセプトに基づいて決めることで、お客様はよりその魅力を感じやすくなるでしょう。
経営者とスタッフが店の方向性を共有できる
コンセプトが決まっていると、お店で働くスタッフは経営者が目指す方向性を正確に理解できます。一方で、コンセプトが曖昧な美容院は一貫性が無く、スタッフそれぞれが思うように行動してしまいがちです。
スタッフの行動や考え方がバラバラな美容院では、安定したサービスの提供も難しいでしょう。また、昨今では仕事に対して「やりがい」を重視する方も増えており、経営者が目指すコンセプトを決めて、仕事の意義や自分達の存在価値を伝える必要があります。
コンセプトによって店の方向性を共有したスタッフが多い美容院には、活気があるものです。人材採用の観点でもコンセプトに共感するスタッフを集めることができ、メリットの1つとなるでしょう。
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他店と差別化を図れる
明確なコンセプトを打ち出すことで、数ある美容院の中から顧客に選ばれるきっかけをつくれます。つまり、他店との差別化につながるということです。
他店にはない技術やサービスなどを伝えるには、次の3要素を決めることが重要となります。
- ターゲット:提供サービスは「どのような悩み」を持つ人に役立つのか
- ベネフィット:お客様が得られるメリットは何か
- 他店との違い:他店にはなく、自店舗にあるものはなにか
- アイテム
ただし、これらの要素はいずれも明確なコンセプトのうえに成り立つものばかりです。お客様がパッと見て「このお店のコンセプトはこれだ」と理解できれば、他店との差別化は自ずと図られます。
ターゲットが絞られる
コンセプトを決めるとサービスを提供するべきターゲットが絞られます。つまり、自店舗が持つコンセプトに沿ったお客様が来店する確率が上がるのです。
ターゲットを構成する要素は「年代」「性別」「地域」などさまざまです。しかし、コンセプトを持たず、すべてのお客様を集客しようとすれば、何を得意としている美容院かがお客様に伝わりません。
ターゲットを絞るためにもコンセプトの意味である「全体を貫くための基本的な観点や考え方」を明確にして、自店舗の強みや魅力を明らかにしましょう。
美容院のコンセプトの作り方
美容院経営における土台ともいえるコンセプト。魅力的な美容院にするためにも、コンセプトの「正しい作り方」について理解しておく必要があるでしょう。ここでは、5つの段階に分けて内容を解説します。
企業理念を考える
サロンコンセプトを作るうえで、まず「企業理念」を考える必要があります。企業理念とは、企業が重要とする考え方や価値観、存在意義などを言語化したものです。
美容院であれば「なぜその美容院が必要なのか」「何のために経営をするのか」といった根本的な考え方や方針、方向性が含まれます。また、スタッフの行動指針や社風についても、経営理念に含まれているケースが多いでしょう。
企業理念の内容は大きく次の3つに分けられます。
- ミッション
- ビジョン
- バリュー
この3要素の詳しい内容について、それぞれみていきましょう。
ビジョンを決める
ビジョンとは、経営者の考えやこだわりを軸に「企業が目指すもの」や「将来的な夢」をまとめたものです。さらに、ビジョンには2つの観点を盛り込み、それぞれに意味を持たせる必要があります。
まず1つ目は「顧客視点」です。お客様の視点で「この美容院でサービスを受けることで、どんな未来を得られるのか」をビジョンによって明示します。2つ目は「経営者視点」です。「この美容院がどのようなこだわりをもって営業を行い、将来的にどのようになりたいのか」を明示しましょう。
さらに、将来的に成し遂げたい「こと」や「状態」を時間軸を入れてビジョンを策定することで、働くスタッフが自身の将来像をイメージしやすくなります。
ミッションを決める
ミッションには「目的・使命・存在意義・役割」といった意味があり、美容院の存在意義や社会的役割を表すものです。例えば「もっと可愛くなりたい」「癒しの時間を得たい」といったお客様のニーズに対して、美容院としてどのような役割を果たし、どう貢献するかをまとめたものがミッションといえます。
ミッションもビジョンと同様に2つの観点を盛り込み、それぞれに意味を持たせる必要があります。1つ目の顧客視点では、お客様は自店舗のどのようなサービスや価値を求めているかを明記して盛り込みます。また、2つ目の経営者視点ではお客様にどのようなサービスや価値を提供できるのかを決めます。
ちなみに、ミッションは「現在」に焦点を当て、ビジョンは「将来」に焦点を当てています。ミッションが明確になるほどに、経営者とスタッフの考えがまとまりやすくなるでしょう。
バリューを決める
バリューとは「価値・値打ち」といった意味があり、企業や組織が社会に対して提供したい「価値」を指します。バリューは現在のミッションを達成しつつ、未来に目指すビジョンの達成につなげるための行動指針のようなものです。
何を基準として価値とするかは美容院ごとに異なります。だからこそ、自店舗のバリューを自分達で決めることで、提供すべきサービスが見えてくるのです。
バリューの内容は美容院のコンセプトに深く通ずる部分であり、メニューや集客方法など、いずれもお客様に対するサービスに直結します。「お客様に対してどのようなサービスを提供するべきか」をバリューによって決めることで、お客様に価値を提供できているかを見直すきっかけにもなるでしょう。
企業理念を参考に5W1Hでコンセプトを作る
ここまでご紹介した「ビジョン」「ミッション」「バリュー」で構成される企業理念を参考に「5W1H」に基づいた具体的なコンセプトを作ります。5W1Hとは次の6つの内容を指します。
- WHEN:いつ(時間)
- WHY:なぜ(理由)
- WHAT:何を(物・行動)
- WHO: 誰が(主体)
- WHERE:どこで(場所)
- HOW:どのように(手段)
コンセプトは、お客様やスタッフなどから「共感」を得られなければ、その効果を発揮できません。自身の感覚的な内容でコンセプトを作ったとしても、お客様やスタッフは理解できないでしょう。
企業理念を参考として、5W1Hを明確にしたコンセプトを作ることで、多くの方から共感を得られるコンセプトになります。
美容院のコンセプト作りのポイント
- ターゲットは具体的に決める
- 想いが伝わるものにする
- 店の強みを明確にする
美容院のコンセプト作りにおいて、いくつかの押さえておくべきポイントがあります。正しいコンセプトを決め、その通りに進んでいく美容室は需要が高く、経営も安定します。
実際にどのようなポイントについて考慮し、コンセプトを決定すべきかをみていきましょう。
ターゲットは具体的に決める
まずは、店舗の立地などを参考にしてターゲットとなるお客様の性別や年代などを具体的に決めます。「20代の女性」「30代の男性」といった条件に加えて、1度の来店で使う金額や来店頻度なども具体的に設定しましょう。
この時、自店舗の強みや得意とする技術、サービスなどを中心にしたうえでターゲットを決めます。他店に比べて「ターゲットを満足されられる点はなにか」を明確にすることが重要です。
想いが伝わるものにする
コンセプトから経営者の「想い」が伝わなければ、共感を得られません。想いとは「なぜ独立したのか」や「何を成し遂げたいのか」といった動機にあたる部分であり、お客様に対する想いや熱意にも直結します。
自身で美容室を開業した方の中には、以前に勤務していた店舗に対する不満がきっかけとなった方も多いのではないでしょうか。「店の運営方針を変えればもっとよい店舗になる」や「若いスタッフには新しい技術をもっと習得させてあげるべきだ」など、独立開業に至った背景には、何らかの強い想いがあるケースが多いです。
そのような強い想いが動機となって自らが行動したように、お客様やスタッフにもその強い想いをコンセプトに盛り込むことで共感が得られ、行動に移してもらえます。自分が独立した理由や自分が成し遂げたいことを軸に、経営者の想いが伝わるコンセプトを考えましょう。
店の強みを明確にする
美容院のコンセプトでは、お店の強みを明確にしておくことも大切です。そのためには「ベネフィット」を明らかにしましょう。ベネフィットには「利益・恩恵・便益」といった意味があり、美容院でお客様が得られる「効果」を指します。
例えば「全室個室」「21時以降も予約可能」「小さなお子様が遊べるキッズルーム完備」といった他店にはない特徴がベネフィットに挙げられます。これは、コンセプトに盛り込むべき要素であり、コンセプト決定の際にはあらかじめピックアップしておくとスムーズです。
美容院のコンセプトの効果的な周知方法
美容院のコンセプトが決定したのちは、お客様やスタッフ、関係者などに対して周知をする必要があります。さらには、周知だけでなく関係する全員が理解し、共感を得なければなりません。
コンセプトに対する認識のズレを防ぐためにも、ここでは「スタッフ」「顧客」に対する効果的な周知方法をそれぞれ紹介します。
スタッフに周知する方法
コンセプトが完成したら、次はスタッフに対して周知をする必要があります。「経営者からマネージャーへ、マネージャーからスタッフへと階層ごとに伝達する」や「スタッフ全員参加のミーティングで伝達する」といった方法があります。
美容院の規模や経営体制などによって適した方法は異なるため、自店舗に合った方法でスタッフ全体にできるだけ早く、確実に伝わる方法を選択しましょう。また、周知後はコンセプトを浸透させながら、認識のズレを防いでいかなければなりません。
「始業前ミーティングでの唱和」や「バックヤードでの掲示」などによって、常にコンセプトに触れる機会を作るのもよいでしょう。。経営者だけでなく、スタッフが何か困ったときにはコンセプトに立ち戻れるような仕組みを考えてみましょう。
顧客に周知する方法
スタッフへの周知と同時に、顧客に対してもコンセプトを周知する必要があります。その方法として、ホームページやチラシなどが代表的です。
ホームページは見た目のおしゃれさや雰囲気だけにこだわっても、自店舗を選んでもらうのは難しいです。そこで、自店舗のコンセプトが伝わるようなデザインや内容を盛り込むことで、競合との差別化が図れます。
これはチラシについても同様です。自社のコンセプトに沿い、お客様が得られるメリットや情報を堂々と表現してみましょう。
さらに、そのイメージが伝わるような写真選びも重要です。コンセプトをテキストだけでお客様に伝えるには難しく、視覚的にも訴える必要があります。ホームページや広告チラシなどには必ずコンセプトを載せ、顧客に対して効果的にアピールしましょう。
まとめ
美容院の個性や特徴をお客様やスタッフに伝えるためには、最初の「コンセプト決め」が重要です。コンセプトが明確になっている美容院は、それに共感したお客様やスタッフが自然と集まります。
つまり、コンセプトが効果的に作れるかどうかで美容院経営の成功が決まるといっても過言ではありません。競争の激しい美容院業界の中で生き残るためにも、魅力のあるコンセプトによって強い経営体質の美容室を目指していきましょう。