消費者に企業の魅力や商品・サービスの特徴を知ってもらい、来店や購買を促進する販促。効果的な販促を考える仕事として「販促企画」がありますが、具体的な仕事内容は意外と知られていないものです。
また、販促企画の仕事を通して魅力的な販促を実践するためには、販促をおこなう目的や具体的な手法を知っておくことも大切。今回は、販促企画の仕事内容や販促の目的、販促の対象や魅力的な販促企画の考え方などについて詳しく説明します。
目次
そもそも販促企画とはどのような仕事?
そもそも販促企画という仕事は、企業が開発した商品やサービスを消費者に購入してもらえるよう、販路を拡大したりプロモーションをおこなったりすること。企業がどれだけ魅力的な商品やサービスを持っていたとしても、販促企画の仕事がなければ消費者に認知してもらうことは難しく、売上につなげることはできないでしょう。
具体的には、ノベルティの制作や店頭イベントの開催、ダイレクトメッセージ(DM)やチラシの送付や内装・外装のデザインといった仕事が挙げられます。業種やターゲット層などによって考えるべき販促は異なりますが、消費者の購買意欲を刺激して売上を伸ばすことを目的としているのが特徴です。
販促をおこなう目的を知っておこう
販促企画の仕事で成果を出すには、最初に販促をおこなう目的をはっきりさせておくことが大切。単に売上を伸ばしたいからといって闇雲に販促を実施すると、思ったような成果が得られないケースもあるので注意が必要です。まずは、ビジネスにおける目標の1つである「売上」がどのように成り立っているのかを知っておきましょう。
- 売上=(新規顧客数×新規顧客の客単価)+(リピート顧客数×リピート顧客の客単価)
上の式のように、売上を伸ばすには新規顧客やリピート顧客の人数が重要になるとともに、顧客1人当たりが支払う金額の平均である「客単価」も重要になります。特に、リピート顧客は新規顧客よりも客単価が高くなりやすいとされているため、効率的に客単価をアップさせたいのであれば、リピート顧客の確保に力を入れることも大切です。
新たな顧客を集める
幅広い消費者に対して企業の魅力や商品やサービスに関する情報をアピールするには、新規顧客を集める販促企画が有効。比較的短期間で成果を出せるものが多いため、新商品の発売やイベント開催といった情報をアピールしたい場合に適した販促手法だといえます。
新規顧客を集める具体的な販促方法として、以下の5つが挙げられます。
- WEBメディアへの掲載
- 折り込みチラシ
- チラシのポスティング
- 店舗の外観や内装の整備
- 旗や看板の設置
これらの中でも、チラシの作成はコストをそこまでかけずに短期間で集客できるといわれています。旗を制作すれば、通行人に与えるインパクトを強められるだけでなく、時期に応じて場所や内容をスムーズに変えられることから、店舗型の企業では導入事例が多い販促手法です。
リピートしてくれる顧客を集める
新規顧客を獲得する販促は、即効性はあるものの、効果が一時的になりやすいのがデメリット。継続的に売上を伸ばすためには、過去の顧客からのリピート率を高める販促企画が重要です。
リピート顧客を集めるための具体的な販促企画として、以下のものが挙げられます。
- DMを送る
- メールマガジンを送付する
- 回数券を発行する
- ポイントカードを作成する
DMの場合、事前に顧客に住所や氏名を登録してもらっておく仕組みが必要ですが、コストを抑えて新商品やセールといった情報を確実に届けることが可能。メールマガジンも同様にメールアドレスを集めておく必要がありますが、チラシやDMよりも制作するコストを抑えながら、集客をおこなうことができます。飲食店などの店舗ビジネスでは、ポイントカードに貯まったポイントを現金として利用できる仕組みを設けることで、リピートしてもらえる可能性を高められるでしょう。
一度に購入してもらえる商品数を増やす
客数を増やすこと以外でも、一度の利用時に購入してもらえる商品数が増えれば、客単価が高まり売上を伸ばすことが可能です。
まとめ買いによって割安になる仕組みを設けたり、関連商品をセットで購入すると割引になるような販促企画をすれば、売上をアップさせる見込みが高まるでしょう。また、いつも利用してくれる得意客に対して、普段よりグレードの高い商品・サービスを提案することでも、売上を伸ばすことが可能です。
販促をおこなう対象は3種類ある
販促をおこなう対象は以下の3つに分けられており、消費者以外も販促の対象になるケースもあります。
これらの対象によって販促企画にどのような違いがあるかを知っておけば、目的に応じて適切な販促手法を選べるようになるでしょう。ここからは、対象ごとの特徴や具体的な販促例を紹介します。
消費者を対象にした販促
販促と聞いて最もイメージされやすいのが、消費者を対象にした販促です。
消費者に対する販促は、ダイレクトに売上につながることからほとんどの企業が実施しているといっても過言ではありません。
具体的には、試供品の配布やイベントの開催、チラシの配布やダイレクトメールなどが挙げられます。SNSで企業の情報を発信すれば、消費者の中で自然と情報が拡散していくため、販促手法として積極的に活用する企業が増えています。
販売チャネルに向けた販促
2つ目は、販売チャネルに向けた販促。
消費者の立場からすれば、販促は消費者に向けておこなわれるものだと思われがちです。しかし、販売機能を持っていないメーカーなどの業態の場合、販売代理店や小売店を通して消費者にアプローチを実施することもあります。その場合、代理店や小売店が消費者に向けてどのように働きかけるかで売上が左右されるので、自社の商品やサービスをより力を入れて販売してもらえるよう、販売チャネルに向けて販促をおこなう必要があります。
たとえば、販売目標を設定して売上コンテストを開催したり、勉強会を開催して商品やサービスについての理解を深めてもらうといった販促方法が挙げられます。販売チャネルへの販促を積極的に実施することで、さらに多くの消費者に企業が提供する商品やサービスの魅力を知ってもらえるようになるのです。
社内に向けた販促
3つ目は、社内に向けた販促。
「販促は企業の外に向かっておこなうもの」と考える人も多いですが、実は、社内に向けて販促企画をすることで売上アップにつなげることもできるのです。
特に、販促企画を担当する部署と、営業や接客を担当する部署が分かれている場合は、営業マンや接客担当者に商品やサービスの魅力を伝えることで、消費者に対して効果的なアピールをしてもらうことができます。また、販売コンテストを開催して成績に応じたインセンティブを設けることによって、さらに効果的に売上をアップさせることも可能です。
魅力的な販促企画の考え方とは?
販促にもさまざまな種類があるため、「どうすれば販促で高い効果を得られるか分からない」という人も多いです。魅力的な販促企画を考えるためには、以下の5つのステップを知っておく必要があります。
これらを意識しながら販促企画をすることで、求める成果を得やすい販促を実施できるでしょう。ここからは、魅力的な販促企画の考え方について詳しく説明します。
まずは販促をおこなう目的を明確にする
魅力的な販促企画をするために、まずは販促をおこなう目的を明確にすることが大切。「幅広い消費者が利用してくれる販促を企画したい」と思うかもしれませんが、目的に具体性を持たせておかなければ、企画の方針がブレてしまい一貫性のない販促になる危険性があるので注意が必要です。
「新規顧客を増やしたいのか、リピーターを増やしたいのか、それとも客単価を上げたいのか」といった掘り下げた目標を設定することによって、選ぶべき販促が変わってきます。複数の目的があるのであれば、それに応じて複数の販促企画をしてもよいでしょう。
適切な目的を考えるためには、現状の売上の分析をすることが重要です。上述したような「新規顧客・リピート顧客」で分ける方法や、性別や年齢層で切り分ける方法が代表的です。分析を行い、どの要素に課題があるのかを仮説立てておくことが魅力的な販促企画をするために大切なポイントだといえます。
具体的な目標を設定する
販促をおこなう目的が決まったら、目的を果たしたかどうかを測定可能にするために具体的な目標を設定しましょう。目標の設定方法にもコツがあります。「評判が前よりもよくなるかどうか」といった曖昧な目標では、今後の販促企画をする際の判断材料として利用しづらくなります。
実際に目標を設定する際は、「SMART」な目標を設定することが大切。「SMART」は以下の5つの頭文字を取ったものです。
- Specific(具体性がある)
- Measurable(数値などで効果測定が可能)
- Achievable(実現可能)
- Related(事業計画と関連性がある)
- Time-bound(期間内に達成できる)
「評判が前よりも良くなった」という目標をSMARTに合わせて修正するならば、例えば「主力商品に対する顧客満足度についてのアンケートで、昨年の星3.5の評価を4.0まで向上させる」といった形が考えられます。
これらのポイントを意識しながら目標を設定すれば、販促効果を評価しやすくなるだけでなく、次回以降の販促企画を考えやすくなるでしょう。
販促するターゲットを明確にしておく
目標を達成できる販促企画をするためには、販促するターゲットを明確にしておく必要があります。万人から受け入れられる商品やサービスはめったに存在しないため、どのような人であれば購入見込みが高いかを常に定めておく必要があります。誰にでも聞こえがよく感じる販促では、消費者の抱える真の悩みに突き刺さることは少なく、購買につなげるのは難しいでしょう。
具体的にターゲットを設定する際は、アピールしたい商品やサービスに応じて「50代男性」や「30代女性」のように決めます。なお、よりイメージを明確にするためには「商品やサービスを利用する典型的な人」のレベルまでユーザー像を限定した「ペルソナ」を設定するのも効果的。相場より値段の高い化粧水を売りたい場合は、「30代女性。既婚。子ども2人の4人暮らし。職業はOLで休日は家族でアウトドアを楽しむことが多い。肌が乾燥しがちなので肌のケアに気を遣っている」といった実在する人物のように仮説を立ててみましょう。
ペルソナを設定することによって、ユーザーのニーズを深く汲み取った販促企画ができるだけでなく、ターゲットとする顧客のイメージを企業内で統一することもできます。マーケティング戦略の方向性に一貫性を持たせることができるので、目標達成に向かって効率的に販促を進められるでしょう。
具体的な販促手法を考える
ターゲットが設定できたら、具体的な販促手法を考えます。販促にも多種多様な手法があり、どの手法を選ぶかによってえられる効果が大きく変わるため、慎重に選ぶことが大切です。
たとえば、SNSで特定のハッシュタグをつけて投稿した人の中から、抽選で特典を受けられるような販促をすれば、SNSを利用している若年層に商品やサービスの購入を促すことができます。高齢者や主婦層をターゲットに設定した場合、折り込みチラシを活用することによって認知度を高められるでしょう。チラシにクーポン機能を設けておけば、即効性のある集客が期待できます。
どの販促手法が成果が出るかを振り返る
どれだけ慎重に販促企画をしても、必ず思ったような成果が出るわけではありません。重要なのは、実施した販促手法から得られた成果を振り返ること。振り返りをしやすくするためには、先に述べたように、あらかじめ目標を数字で評価できるように設定しておくことが重要です。
複数の販促を実施した場合、最も成果につながった販促は何だったのかや、うまくいかなかった要因として何が考えられるのかを一つひとつ丁寧に振り返り、今後の販促企画の参考にしましょう。複数の販促をおこなったにもかかわらず成果が出なかった場合は、販促で成果が出ている同業種の事例を集めるのもよいでしょう。
まとめ
ここでは、販促企画はどのような仕事なのか、販促をする目的や販促の対象、魅力的な販促企画を考えるポイントなどについて説明しました。
販促には、一時的に高い効果を得られるものや継続的に集客や売上アップを期待できるものなどがあるため、目的に応じて適切な販促を企画することが重要です。ここで説明した内容を参考にして、求める成果を得られるような販促企画ができるようにしておきましょう。
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