企業のイメージアップを図ったり、商品やサービスの認知拡大や売上アップを狙うためには、販促をおこなうことが重要です。販促にもさまざまな方法がありますが、場合によっては多額の予算が必要になることも…。割り当てられた予算内で効果的な販促を考えるためには、販促における予算管理について正しく理解しておく必要があります。
そこで今回は、販促における予算管理の概要や具体的な予算管理方法、販促の予算を決める手順や適切な予算管理をするためのコツなどについて、詳しく説明します。
目次
そもそも販促とは?
そもそも販促とは、消費者に対して商品やサービスを「すぐに購入したい」と動機づける手法のことをいいます。商品を売るためのプロセスは、広告・販促・営業の3つに分類できることから、それぞれが持つ役割を明確に区別しておくことが重要になります。
広告には、チラシに来店を促す文言を記載するケースがあるため、販促と手法が重複していると思われがちです。しかし、あくまで広告は「企業や商品・サービスについて知ってもらうこと」や「企業や商品・サービスのイメージを形成すること」という役割がメインとなっています。
営業も、商品やサービスの購買に結びつけるという点では、販促と共通していると思うかもしれません。しかし、営業は、実際に契約を結んでもらったり、レジに並んでもらうといった、「契約や購買につながる最終的な行動を促す」ことを主な役割としています。そのため、「すぐに購入したい」と思わせる段階の販促とは違った意味合いがあるのです。
売上を出すためには、広告・販促・営業いずれも欠かすことはできません。販促がどのような役割を持っているかを明確に理解したうえで適切な手法を実践できるようにしておきましょう。
販促における予算管理とは?
ビジネスにおいて、一般的に何らかの施策を打つ際には必要な費用を計算し、計画通りに予算投下していく必要があります。販促においても、新たな商品やサービスの認知を図ったり、購入を動機づけるために一定のコストが発生するため、適切な予算管理方法を知っておく必要があります。
特に意識すべき点が、コストパフォーマンスの高い販促になっているかどうかです。どれだけ販促効果が高かったとしても、販促にかけた予算が多すぎると企業に残る利益が少なくなってしまいます。しかし、企業の規模が大きかったり、発注先が多くて金額の集計作業が困難な場合、コストパフォーマンスを検証するのは簡単ではありません。販促を計画する段階で予算を決めておくのはもちろんですが、効果測定をする時期や方法について考えておくことも大切です。
販売促進費として発生する費用は大きく2種類
販促の予算を決める際に、どのような費用がかかるのかを知っておくことは重要です。販売促進費は、以下の2つに分類できます。
これらの費用がどのようなものかを理解しておけば、販促の予算を適切に設定できるようになるはずです。ここからは、販売促進費として発生する費用について、詳しく説明します。
消費者に直接支出する費用
1つ目は、消費者に直接支出する費用です。
たとえば、店舗やイベント会場におけるノベルティグッズの配布や無料サンプルの提供、景品の贈呈といった販促施策を打ちたい場合、配布物を準備するためにまとまった予算が必要です。また、消費者への提供方法によっては、手渡しではなく発送するケースも。サイズによっては送料が高くなることがあるので、その点も考慮して正確に予算を考えておく必要があります。
ほかにも、購入代金の値引きやクーポンの配布、キャッシュバックの適用といった、品物の提供以外の販促にも費用がかかります。目に見える形で消費者に与えるものではありませんが、販促を実施することによって企業に残る利益が少なくなることから、販促費用として予算を計上しておく必要があります。
消費者に間接的に支出する費用
2つ目は、消費者に間接的に支出する費用です。
具体的には、チラシやPOPの制作費用や実演販売にかかる人件費、イベントへの出店費用などが該当します。これらは直接的に消費者へ手渡されるものではありませんが、販促を通して購買意欲を刺激するために不可欠な支出です。消費者に対して積極的に購買を促す手法とは少し離れていますが、企業イメージを高めたり、商品やサービスの認知度を高めるために重要な販促手法なので、しっかりと予算を確保しておきたい部分です。
消費者に直接的に使う費用と間接的に使う費用のバランスは、企業の方針や抱えている課題によっても異なります。もし以前に販促施策を実施した際には、その結果がどうだったかを分析したうえで、今回の予算を見積もることが重要です。
販促予算の管理方法を知っておこう
次に、確保した予算をどのようにマネジメントしていくかについて見ていきましょう。販促予算の管理方法としては、以下の2つが考えられます。
予算管理の責任をどこに持たせるかによって、販促の成果が左右されることもあるため、管理方法ごとの特徴を知っておくことは大切です。ここからは、販促予算の管理方法について詳しく説明します。
本社や本部が予算管理する
複数の店舗を持っている場合、本社や本部が販促予算を管理することで、各店舗に対して一貫性のある指示を出すことが可能。企業が消費者に対して与えたいブランドイメージにもとづいた販促が実施できるのがメリットです。また、販促の進捗や効果も確認しやすく、今後の事業運営を考えやすくなるのもよいところ。各支店や店舗ごとの成果を比較することもできるので、より効率的に売上を伸ばせるようになると期待できます。
ただし、このようなトップダウン型の予算管理になると、各支店や店舗は割り振られた予算に応じて販促を実施しなければならないため、店舗ごとの状況に合わせた柔軟な施策が打ちにくいのがデメリット…。また各店舗スタッフのモチベーションが低くなることもあるので、定期的に店舗の状況を視察しケアすることも必要になるでしょう。
支店や店舗に一定の予算を設定する
各支店や店舗に一定の予算を設定したうえで販促を計画させると、各エリアごとの実情に沿って柔軟に販促を実施できるようになります。販促効果によってスピーディに手法を変更できるため、トップダウン型の予算管理をおこなうよりも成果を高めやすいのがメリットです。
しかし、各視点や店舗に予算管理を任せると、エリアごとに販促の質にバラつきが出る危険性があるので注意が必要。本社や本部が考えていたイメージとは異なる販促を実施してしまったり、進捗の把握や効果測定が難しくなるケースもあるため、統一性のある販促をしたい企業には向いていないかもしれません。
販促の予算を決める手順を紹介
販促の予算を決める場合、以下の手順を知っておくとスムーズに予算を設定できるようになります。
- 売上予測を計算する
- 原価や経費を算出する
- 企業に残る利益を求める
- 利益から予算割合を決める
企業によっては毎年の成果に基づいて大まかに予算を設定するところもあるようですが、より精度の高い予算を考えておくことで、企業に残る利益をより多くできると期待できます。ここからは、販促の予算を決める手順について詳しく説明します。
売上予測を計算する
ある商品やサービスを販売しようと考える場合、まずはそれらがどれくらい売れるのかを予測するところから考えます。
たとえば、1個5,000円の商品を1ヵ月で100個販売すると、1ヵ月あたりの売上は50万円になります。「売ってみなければどれだけの売上が出るか分からない」と思うかもしれませんが、予算管理をする際に売上予測をしておかなければ、在庫不足によって売上を逃してしまったり過剰に在庫を抱えて資金繰りが悪化するリスクが高くなるので、過去実績をもとになるべく正確に予測することが重要です。
販売予定の商品やサービスの売上予測が出たら、ほかの商品やサービスの売上予測と合算して、全体の売上予測を算出しておきましょう。
原価や経費を算出する
次に、原価や経費を算出します。
事業を運営するためには、商品の仕入れや店舗の家賃、人件費といった支出が生じます。月によって変動する支出も多いですが、年単位で支出を考えると計算しやすくなるでしょう。
企業に残る利益を求める
原価や経費を算出したら、年間の売上予測から年間の経費を差し引いて企業に残る利益を求めます。
その利益が販促予算として計上できる最大限の金額になり、利益の中からどれくらいの金額を販促費用として利用するかを考えていきます。
利益から予算割合を決める
企業に残る利益が販促予算の限度額であると述べましたが、企業によっては、将来のために貯めるお金や、事業を拡大するために投資する費用のことも考えてお金を使う必要もあります。実際に販促費用として使える金額はさらに限定的になるのです。
最終的に商品やサービスにどれくらいの販促予算をかけるかは、それらが企業にとってどれくらいの利益をもたらすのか、事業を継続するためにどれくらい重要度の高いものなのかによって変わってきます。「なるべく多くの利益を企業に残したい」と考えるのであれば、販促費用を抑えたほうがよいケースもあるため、利益の使い道を慎重に検討することが大切です。
適正な販促の予算を設定するコツとは?
企業に残る利益からどれくらいを販促予算として計上すればよいかは、事業方針や販促の重要性によって異なるため一概にはいえません。しかし、以下のコツを知っておくことで、適正な販促予算を設定しやすくなります。
これらのコツを意識しながら予算を設定することで、コストパフォーマンスの高い販促ができるようになるでしょう。ここからは、適正な販促の予算を設定するコツについて詳しく説明します。
同業界の予算比率を参考にする
1つ目は、同業界の予算比率(売上に対して何%を販売促進費にかけているか)を参考にすること。
販促にもさまざまな手法がありますが、業種によって販促にかける予算は異なります。同業界の企業が、売上に対してどれくらいの販促予算を設けているかを参考にすれば、設定する予算の目安を考えやすくなるでしょう。
たとえば、広告宣伝費の予算比率で考えると、外食関連サービス業では売上の5%程度を予算として設定する傾向があるのに対して、通販や化粧品業では売上の15~20%程度の予算を設定しているとされています。同じ販促方法であっても業界によって設定する予算比率が大きく変わることから、予算比率の相場を把握したうえで予算を設定するのがおすすめです。
参考:業種別・業界別広告宣伝費(販促費)の売上比率・割合の平均|販促の大学
効果の高い販促に予算を寄せる
2つ目は、効果の高い販促に予算を寄せること。
販促を実施した経験が少なければ、どの販促に注力すればよいかを判断するのは難しいでしょう。しかし、これまでいくつかの販促を試した経験がある場合は、より高い効果が見込める販促に予算を寄せると成果を出しやすくなります。
ただし、効果の高い販促方法を見極めるためには、効果測定が可能な形で販促を実施しておくことが重要。ノベルティを配布することによって、配布前とどれくらい効果に差が出たのかを測定したり、チラシとDM(ダイレクトメール)を配布する場合は、異なるクーポンをつけてそれぞれの反応率を比較するといった方法をとると、効果を測定しやすくなります。
客観的なデータがなければ本当に効果のある販促かどうかを判断できなくなるので、販促を企画する際は、必ず効果測定方法についても考えておきましょう。
コストを抑えた販促方法を知っておく
販促にかけられる予算が限られている場合、コストを抑えた販促方法を知っておくことが重要です。
たとえば、ノベルティの場合、単価の安い文房具や布バッグなどの商品を選んだり、大量に発注したりで1個あたりの価格を抑えることが可能。SNSは基本的に無料で利用できるので、チラシやインターネット広告よりもコストを抑えて情報を拡散することができます。
予算を有効活用して販促をおこなえば、ほかの販促に予算を回せるようになるため、さらに売上を伸ばすことができるでしょう。ただし、企業に利益を残すために販促コストを抑えようとすると、かえって売上が伸び悩んでしまう危険性があるので注意が必要。コストを抑えた販促方法を活かすことで、コストパフォーマンスの優れた販促を実践できるようにしておきましょう。
まとめ
ここでは、販促の予算管理がどのようなものか、具体的な予算管理方法、販促予算の設定方法や適正な予算管理をするコツなどについて説明しました。
コストパフォーマンスの高い販促をするためには、適正な予算設定をするとともにコストを抑えた販促方法を実践できるようにしておくことも重要です。ここで説明した内容を参考にして、高い成果を出すとともに利益がしっかり残る予算管理ができるようにしておきましょう。